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■娘たちの危ない生活(3)

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合宿は明日からなのだが、このチームの常で前日20:00から打合せがある。王子の顔があったので、篠原監督が
 
「おお、高梁君が来ている。偉い偉い」
と褒めたら、王子は照れていた。
 
基本的にスケジュールの確認、所持品の確認、ドーピングコントロールに関する注意などがある。例によってパスポートが回収されて、スタッフで預かることになる。今回はパスポートを忘れてきている子は居なかった。
 
そのあと、休憩なのだが、みんな自主的に練習を始める。このチームは本当に練習好きの子が多い。高田コーチが付いていてくれた。
 
23時頃になって部屋に帰ったが、倫代のお母さんから「手術は無事成功しました。私たちに新しい娘ができました」というメールが来ていた。千里は「お嬢さんの誕生、おめでとうございます」と返信しておいた。
 
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13-14日の2日間は各々の役割を確認するような感じの練習を行った。今回はシューティングガードが千里ひとりなので、千里が下がっている時のフォーメーションも何通りか確認していた。
 
15日朝食を取ってからバスで成田に移動する。出国手続きをして11:05のJL405 B777-300に搭乗する。機内で千里や玲央美たちは寝ていたのだが、王子・純子・絵津子の3人は元気いっぱいでおやつを食べながらおしゃべりしていたようである。この3人をセットにしたのはかなり良かったかもという気がした。
 
出発したのと同じ日1月15日の15:50にパリのシャルルドゴール空港に到着。その後、入国手続きをしてから国内便でトゥールーズ(Toulouse)に向かった。
 
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1/15 NRT 1105(JL405 B773)1550 CDG 1815(AF7788 A320)1935TLS
 
なお、フランスは今の時期は日本との時差は8時間である。夏時間は3月下旬から始まる。成田からパリまでの飛行時間は 15:50+8:00-11:05=12:45.
 
「このトゥールーズって、画家のロートレックと何か関係あるんですかね?」
と渡辺純子が訊いたが、彰恵が知っていた。
 
「このトゥールーズの伯爵家の子孫だよ」
「へー!」
 
「日本ではロートレックと言っているけど、正しくはアンリ・マリ・レモン・ドゥ・トールーズ=ロートレック=モンファ(Henri Marie Raymond de Toulouse-Lautrec-Monfa)。苗字はトールーズ=ロートレック=モンファだからそれをロートレックと略すのは三田村さんを田さんと呼ぶようなもので、変なんだけどね」
 
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「ああ、そういう指摘はよくある」
 
「でも実際にこの苗字の起源としては、トゥールーズ伯爵(Comtes de Toulouse), ロートレック子爵(Vicomte de Lautrec), モンファ子爵(Vicomte de Montfa) の子孫ということなんだよね。アンリは若死にしたから継いでないけどお父さんも実際に伯爵だった。アンリが生まれたのはトゥールーズからも近いアルビ(Albi)という所」
 
「いい所のお坊ちゃまだったのか・・・」
 
「最初はかなり溺愛されて育っているみたい。ところが両親が不仲になって生まれ故郷から離れてパリで母親と暮らすようになり、後に父親の所に戻ったものの、今度は父親から嫌われて育っていて、ある時期から一転して辛い少年時代を送ったみたいね」
 
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「それが絵を描く原動力になったのかもしれんね」
と江美子が言った。
 
「やはり芸術家になるような人って、何か人生に問題を抱えていることが多いもんなあ」
「うん。幸せで満ち足りた生活からは、何も生まれないよ。ごく少数の例外を除いては」
 

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トゥールーズに到着したのはフランス時刻(中央欧州時刻CET)で19:35だが、日本と8時間の時差があるので、日本時刻では1/16 3:35である。多くの選手は長旅の疲労もあり「夕食パス」と言って、ホテルの部屋に入り寝たが、王子・純子・絵津子の3人はお腹が空いたと言って、協会スタッフの掛川さんと一緒にホテルのレストランに入り、元気に夕食を取った上で、夜食のおやつまで調達に買い物に出たらしい。どうもこの3人には時差ボケというものが存在しないようである。
 
16日(日)。
 
ホテルのレストランで朝食を取る。
 
が、フランスは基本的に“コンチネンタル・ブレックファスト”である。パンとカフェオレに、せいぜいフルーツが付く程度。
 
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しかしこれでは足りないと騒ぐ子たちがいる。
 
足りないなどと言っているので、お店の人たちがその子たちの席にクロワッサンを追加してくれた。
 
彼女らは朝からお肉が食べたいようだが、それはこの地では無理というものである。外資系のホテルだと、アメリカンな朝食が選べる所もあるのだが、結局、高田コーチが「後で何か買いに出よう」と言ってなだめていた。
 

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このトゥールーズでの練習は、19日までの4日間で、市内の高校の体育館を借りている。
 
この日は移動の後なので、体調を整える程度の軽い練習にしたのだが、王子たち3人は最初からかなりハードな練習をしていた。それに結局は千里・玲央美・江美子の3人も加わり、21歳学年と19歳学年とで3on3を濃厚にやった。
 
王子たちは練習に夢中になって、何か買ってきて食べるというのを結局忘れていたようだが、お昼に入ったレストランでブイヤベースがメニューにあるのを見つけると3人で7人前注文して、楽しそうに食べていた。
 
17日は体育館を借りている高校の女子バスケ部の人たちが練習相手を務めてくれた。しかしいくらフランス人といっても、高校生ではとても練習相手にならない。それで向こうの人達が激論していたようだが、午後からは同系列の大学の女子バスケ部の人たちが出てきて練習相手になってくれた。それでも練習試合をして、ダブルスコアでこちらが勝ってしまう。
 
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そしたら18日にはなんと地元のプロバスケットリーグのユースチームの人たちが出てきて、練習相手になってくれた。この相手はかなり手応えがあった。なんといってもフィジカルの強い選手が多く、彰恵や朋美など軽量の選手は吹き飛ばされてしまう。
 
しかし体重差があっても千里や江美子はびくともしないし、王子などはむしろ相手選手をけちらしてゴールを決める。この日はかなり充実した練習になったのだが、最後に紅白戦をしたら20点差でこちらが勝った。
 
そしたら19日にはとうとう、そのプロ球団のトップチームが出てきた!フランスの女子プロバスケットボールリーグLFBに所属するチームである。
 
順位としては下位に低迷しているようだが、それでもプロはプロである。強い。強い。全てにわたって圧倒されるのだが、それでも負けるものかと対抗していっていたら、王子やサクラが相手選手と結構いい勝負をするし、千里や玲央美は遠距離からどんどんシュートを放り込むので、相手も苦戦していたようである。この日の午後に練習試合をしたら10点差で向こうが勝ったものの、相手選手たちは険しい表情をしていたし、相手側のファウルも多かった。
 
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そういう訳でこの4日間は練習相手になってくれるチームが少しずつグレードアップしていくという面白い現象に遭遇することとなった。
 
ところで千里は18日に生理が来ていた。高校2年の時以来、ずっと処置をしているので、今更気にならないものの、千里が生理用品(日本から持って来ていた)を持ってトイレに入っていくのを見て同室の玲央美があらためて
 
「結局千里になぜ生理があるのかがよく分からん」
などと言っている。
 
「なぜって、女の子はみんな生理あるんじゃないの?」
「確かに女の子ならそうなんだけどね」
 
なお、千里は合宿中は激しい運動をするのでタンポンを使用している。特に初日は量が多いので、タンポンをした上にナプキンもしてガードルで押さえていた。他の子もだいたいタンポン派が多いようである。
 
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20日は朝御飯を食べた後ホテルをチェックアウトし、トゥールーズ・マタビオ(Toulouse-Matabiau)駅からインターシティ(都市間特急列車:新幹線に相当するTGVのひとつ下のランク)に乗り4時間揺られてマルセイユのサン・シャルル(Marseille-St-Charles)駅に到着した。更にここでローカル線に乗り換えて30分ほどでエクソン・プロヴァンス(Aix-en-Provence)という町まで行く。ここが今回の遠征の後半の合宿地である。
 
昔のプロヴァンス伯爵領の州都であり、画家のポール・セザンヌ、デザイナーのエマニュエル・ウンガロの出身地でもある。
 
練習場としては、またここの高校の体育館を借りられることになっており、到着した日は旅の疲れを癒やすように調整的な練習をした。
 
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そして21-23(金土日)は、マルセイユ市内の体育館で日本、フランス、リトアニア、ポーランド4ヶ国のユースチームのリーグ戦が行われることになっていた。フランスの食品メーカーがスポンサーになり、有料入場者も入れた興行としておこなわれる試合である。
 
なお、今回リトアニアとポーランドはU21世界選手権への出場を逃している。昨年のU20ヨーロッパ選手権で、リトアニアは6位、ポーランドは9位であった。世界選手権に進出できるのは5位までだった。フランスは4位で世界選手権に出てくるのだが、日本とは別の予選リーグの組に入っている。そしてフランスとしては「多分日本は予選リーグ落ちするだろう」からフランスとの対戦はあるまいと考えていたふしがある。
 
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各チームの構成だが、フランスはU21代表のボーダー組で構成したようであった。おそらくは代表選考の参考試合にするつもりだろう。U19世界選手権の時に見た選手も数人入っている。そしてポーランド・リトアニアはどうもユニバーシアード(8.13-22 中国深圳Shenzhen)の代表チームで出てきているようであった。なお日本のユニバーシアード・チームは3月に代表が発表され、その後強化合宿が行われる予定である。今年もU24とU24(Univ)の2チーム体制で強化は行われることになっている。
 

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試合日程はこのようになっていた。
 
1/21 18:00 LTU-POL 20:00 FRA-JPN 1/22 16:00 POL-JPN 18:00 FRA-LTU 1/23 16:00 LTU-JPN 18:00 FRA-POL
 
金曜日だけ18時から、土日は16時からの試合開始時刻である。それでこの3日間、日本チームはこのようなスケジュールで行動することになった。
 
1/21 午前中練習 13:00-16:00仮眠 17:00開会式 17:30 軽食 20:00-21:30 試合
1/22-23 6:00-8:00練習 9:00-13:00仮眠 13:30軽食 16:00-17:30試合 18:00夕食 19:00-22:00練習
(23日は20時から表彰式・閉会式がある)
 
なお、試合前は疲れない程度の軽い練習をする。
 

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21日のフランス戦で、篠原監督は王子・純子・絵津子の3人を使わない方針を示した。向こうは「本番での対戦は無いだろう」と考えているかも知れないが、むしろこちらは準決勝あたりで激突する可能性があると見ている。そうなると向こうが直接知らない戦力はあまり見せたくないところである。
 
しかしこの3人が出ていないと、やはり日本は押され気味になる。千里や玲央美が頑張っても、向こうは基礎的な体力からして違う。背丈も違う。男子と試合をしているのに近い感覚である。
 
そういう訳でフランス戦は72-54で負けた。
 

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22日のポーランド戦。
 
この日は王子たち3人も出すが、
「8割くらいの感じで試合をしろ」
と全員に指示を出した。
 
ポーランドチームは背が高くて体格の良い選手が多く、ややラフなプレイが目立った。日本の160cm台の選手は向こうからすると子供とゲームをしているようで、かえってやりにくいようである。ゴール前の乱戦で「邪魔」になるもので、つい手で払うようにしてファウルを取られるケースもあった。
 
全体的には彰恵や江美子などがみんなに声を掛け、怪我に結びつきやすい緩慢なプレイをしないように注意しながらゲームを進めた。
 
試合は76-84で日本が勝った。
 
23日のリトアニア戦も似たような感じの試合になったが、リトアニアは充分強いチーム(FIBAランキングでリトアニアは17位・日本は15位)なので、「9割くらい真剣」なイメージでプレイした。途中まではかなり競ったのだが、最終ピリオドで、少しだけ本気を出して突き放す。
 
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それで72-76で日本が勝った。
 
それで結局この大会ではフランスが3戦3勝で優勝、日本は2勝1敗で準優勝となり、表彰状と2位の盾のほか、スポンサーの食品会社からたくさんのアイスクリームをもらって、みんな喜んで食べていた。3位はリトアニアであった。
 

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