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■娘たちの開店準備(11)

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23-25日(水木金)にこの大学生チームと濃厚な練習をした上で、26日(土)には現地のクラブチームと練習試合をした。22-25歳くらいの選手が中心のチームで、昨年モスクワ地区のクラブ大会でBEST4になっているチームということだった。
 
大学生チームより身体がしっかりできあがっている人が多い感じだった。最初その体格差で圧倒されそうになるが、こちらもすぐにペースを掴む。
 
王子や玲央美・サクラといった体格の良い選手に相手が気を取られている隙にこの日ポイントガード役を買って出た星乃が千里とうまく連携して、相手の隙間を縫うようにして走り回り、いつの間にか得点している。そういう訳で第1ピリオドを終わって18-20とこちらが2点リードしていた。
 
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この2点リードという微妙な点数差が結果的にはこちらに有利に働いた感じがあった。あまりやられている気がしないので、すぐ挽回できるだろうと向こうは思ったようである。それで第2ピリオドが16-18である。
 
更に第3ピリオドが20-21となり、ここまでの点数が54-59である。
 
これはもしかして劣勢?と相手はやっと気付いたようで、第4ピリオドの冒頭、向こうは猛攻に来る。
 
しかしこれを江美子・彰恵・百合絵といった、一癖も二癖もあるメンツがうまくしのいでしまう。
 
そして第4ピリオド後半、千里・玲央美・王子といった中心選手を出してこちらも反撃に出ると、結局このピリオドだけで22-32と大量の得点が入り、結局、76-91と15点の大差で日本側が勝利した。
 
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この日の午後は自主練習の予定で、**大学の体育館で練習していたら、予定には無かったのだが、タチアナさんたち数人の選手が出てきて、一緒に練習してくれた。
 
ところが午後3時になって、もう一試合したいという連絡が入る。
 
それは昨年モスクワ地区で優勝しているクラブチームで、午前中の試合を見て、こことやってみたいと思ったのだそうである。
 
こちらは大歓迎なので、向こうのクラブがふだん練習に使っている体育館で試合をすることになった。
 
確かに午前中に対戦した所よりは強い感じがあったものの、こちらは逆に午前中の試合で、相手の「強さの感覚」を覚えている。それで相手の強い当たりにもめげずに試合を進めることができた。
 
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結局68-72で4点差勝利した。
 
向こうのキャプテンが試合終了後首を振って
 
「Вы сильны(君たちは強い)」
と言って握手を求めてきて、他のメンバーを相手チームのメンツと握手したりハグしたりしていた。
 

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27日(日)には、ちょうどこの日から合宿をするために集まってきていたロシアのU20チームと非公開の練習試合をした。お互い撮影禁止ということにした。要するにマジでやろうよ、ということである。隠しカメラとかで撮影したら分からないかも知れないが、そのあたりは紳士淑女としてお互いを信じることにする。
 
昨年のU19で対戦したメンバーもかなり入っていて、クジーナ、モロゾヴァ、ペトロヴァ、コフツノフスカヤなどといった面々と、試合前からハグ大会となった。
 
「また来年U21で闘(や)ろうね」
「また楽しい試合になるといいね」
「今度はうちが勝つからね」
「今度もうちが勝つよ」
 
と、このメンツはだいたい英語が通じるので英語で軽くジャブを交わしてから試合を始める。
 
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お互いの手の内が結構分かっているので、最初からハイレベルの駆け引きが行われる。千里は相手と対戦していて、こちらをかなり研究してきたなと思った。しかしこちらも特にクジーナやモロゾヴァを結構研究している。
 
かなり本気で停めに来るので、こちらもかなり本気で抜きに掛かる。それでも最初の内、かなりこちらのシュートをたたき落とされた。そして千里も最初のピリオドではモロゾヴァのスリーを全部叩き落とした。
 
そういう訳で第1ピリオドは16-16のタイであった。
 
第2ピリオドでは、どちらも第1ピリオドに出なかった選手を出した。ロシア側に、こちらが知らない選手がいたし、こちらも向こうの知らない星乃や留実子を出す。留実子は少々位置取りが悪くてもどんどんリバウンドを取るので、試合中にゴンチャロヴァが早苗に「あの子、すげー!うちに欲しい」などとロシア語で話しかけていた。
 
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確かに留実子はサクラや華香に比べると勘が悪くて、必ずしもボールが落ちてくる所に居ないのだが、より貪欲にボールを奪い取るのである。またサクラたちに比べてシュート自体の精度が悪く、得点力が低い弱点がある。つまり留実子は見た目の派手さのわりに数字に表れる成績はよくない傾向がある。
 
「サーヤって呼んでるね?」
「うん。サネヤというのが彼の自称」
「彼(Его)?」
 
「あ、まちがった。彼女(Её)。でも、あの子は男の子になりたいらしいんで、みんな基本的に男の子扱いしてあげてるんだよ。むろん、医学的には女性だし、男性ホルモンとかもやってないけどね。ドーピング検査も定期的に受けてるよ」
 
「ああ、男の子になりたいのかぁ」
「ちんちん欲しいらしい」
 
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「そうだ。ちんちんは付けても卵巣は取らなきゃいいんだよ。そしたら、多分女子選手のままだよ。ちんちんが付いてるくらいはオマケしとくよ」
「その線はこちらとしても交渉してみる価値はあるなあ」
 
「いや、マジで国際大会に出てると、こいつちんちん付いてないか?と思う選手って結構居ない?」
「居る居る。なんか体臭からして男みたいな選手もいる」
「そうそう。あれ怪しいよね〜」
 
ふたりはこんな会話を交わしながら、ボールを取り合ったりフェイントを掛け合ったりしている。
 
留実子はロシア語が分からないので、何か自分のこと言われてるみたいだなとは思っても首を傾げるだけであった。
 

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第2ピリオドも結局18-18で、前半終わって34-34。シーソーゲームが続く。
 
これが本戦ならどちらかが何か仕掛けてくる所だが、今回はどちらにとっても強化目的の練習試合で、勝つことは目的ではないので、奇をてらった作戦はしない。お互い堂々勝負である。
 
第3ピリオドはまた第1ピリオドと似たような選手同士の対戦になったが、モロゾヴァは第1ピリオドで全部スリーを叩き落とされたので、彼女なりに工夫をしてきた。タイミングをずらしたり、高い軌道のシュートを使ったりする。しかしそれでも千里はよく彼女の動きを見ていて、ほとんど叩き落とす。1本だけ通ったシュートは惜しくもリングに当たっただけで落ちてきた。
 
一方、モロゾヴァは千里の低いシュートに絞って発射タイミングを予測してブロックしようとする作戦に出た。低いシュートを叩き落とされると、こちらは高いシュートを多用することになり、高いシュートは精度も落ちる。
 
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実は千里にしても今回ここに来ていない花園亜津子にしても、低いシュートを使うことによって高確率でボールをゴールに放り込んでいるのである。
 
それに気付くと千里はその発射タイミングを物凄く読みにくくするフェイントを入れるようにした。撃ち掛けて一瞬停止してから撃つとか、ジャンプの途中で撃つとか、色々するので、モロゾヴァもなかなか読むのが難しいはずだ。しかし、それでもモロゾヴァはこのピリオド、かなり千里のシュートのブロックに成功した。
 
第3ピリオドを終えて21-19。合計では55-53。ロシアの2点リードである。
 

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第4ピリオドの前半もまた控え組中心のラインナップで行く。ここで首脳陣に自分をアピールしたい星乃が物凄く頑張った。このピリオド前半、ひとりで10点取り、点数も一時59-67と大きく開く。ここでロシアは主力を投入。クジーナやコフツノフスカヤがどんどん得点する。こちらも千里や玲央美を投入する。
 
ロシアの必死なプレイで、点差が縮む。残り1分になって70-74と4点差まで迫る。こちらのシュート失敗から向こうが攻めあがってくる。
 
千里がモロゾヴァに早い時期からピタリと付く。それを見て、プロツェンコがクジーナにパスする。クジーナのそばには彰恵が付いている。彰恵が激しくガードしているので、先に進みにくい。反対側に居るペトロヴァには玲央美が付いている。プロツェンコがスクリーンを仕掛ける。そのスクリーンを使ってペトロヴァがクジーナからパスを受ける。
 
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が、そのパスの途中を、よく読んでいた華香が叩き落とす。いつの間にか近くまで来ていた千里が飛びつくようにしてボールを取る。身体を半回転させ、床の上を背中で滑りながら、腕の力だけでフリーになっている朋美にパスする。
 
プロツェンコがスクリーンを仕掛けに行ったため、朋美が空いていたのである。朋美が高速ドリブルで攻めあがる。俊足のモロゾヴァが必死で戻る。朋美の前に回り込むが、朋美は彼女を抜くかに見せて、その後を追ってきていた玲央美にそちらを見ないままバウンドパスする。玲央美がスリーポイントラインの所で立ち止まりボールを受ける。そのまま撃つ。
 
これが入って7点差となり、勝負があった感じになった。
 
この後ロシアは反撃してクジーナが2点取ったが、そこまで。
 
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72-77で日本が勝った。
 

この日はきちんと整列した後、
 
「77 против 72, Япония」
とロシア人の主審が告げて、その後、お互いに握手したり、またハグしたりした。
 
試合の後、ロシア代表チームと一緒にお昼をとって、賑やかに交歓をした。
 
「サーヤ、サーヤ」
と留実子と随分対戦したゼレンコフスカヤが手を振って呼ぶ。
 
「What?」
といって、留実子が行くと
 
「オクリモノ〜」
と日本語で言って、なにやら紙袋を渡す。
 
「Don't open. Insert your hand」
などと言っている。
 
留実子は首を傾げながらも手を入れて触り、笑った。
 
「I heard you want to be a boy」
とゼレンコフスカヤ。
 
「Thank you. This is that I wanted」
 
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と言って留実子は笑いながら彼女と握手していた。
 
「何もらったの?」
とサクラが訊くので、留実子はサクラと華香にだけそれを見せる。
 
ふたりも笑っていた。
 
後で見せてもらったが、靴下をまるめて作った“ペニぐるみ”だった。
 
「キミコにも同じもの贈らなくてもいい?」
と横からペトロヴァが言っているが
 
「いや、キミコは既に持っていると思う」
などとゴンチャロヴァは言う。
 
「持っていたけど、取っちゃったのかも知れないよ」
「取っちゃったのなら、今更いらないかも」
 

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27日の午後はロシアのスーパーリーグ(プロバスケットボールリーグ)の女子チーム同士の試合を見学した。
 
スーパーリーグ(ロシアのトップリーグは男女ともこの名前で行われている)のレギュラーシーズンは10-3月で現在はオフシーズンなのだが、若手の強化のための夏のリーグが行われているのである。それで出場しているのも若手中心のチーム編成ということではあったが、千里たちにとっては充分見応えのあるものであった。
 
「もし私たちがA代表で世界選手権に出た場合は、この人たちより更に強い人たちとやることになるわけだ」
と玲央美が言う。
 
「ぜひやってみたいね」
と千里は言った。
 
その会話を聞いた星乃が
「やはり、あんたたちは凄いわ」
と言っていた。
 
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