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■娘たちの開店準備(3)

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一方、2010年6月10日まで、マリ・ケイおよびその関係者との接触を禁止されていた須藤美智子は、ふたりをプロデュースするための会社《宇都宮プロジェクト》(UTP)を2010年2月に資本金500万円で設立した。最初の事務所は常磐線の金町駅の近くの住居を兼ねたワンルームマンションで「ぎりぎり東京都内」という場所であった。資本金は全額須藤本人が出し、家族を名目だけの取締役にしている。
 
須藤は接触禁止が解禁される少し前の5月、○○プロの浦中取締役と都内某所で密談した。
 
「ローズ+リリーが事実上フリーになったということで、最初は80社もケイちゃんちとマリちゃんちに押し寄せたんだよ」
「それは凄いですね。それだと話を聞くだけでも半月掛かるでしょ」
 
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「それがケイは80社全部の話を1晩で聞いて、その内の65社に直筆のお断りの手紙を2日掛かりで書いた」
 
「ひゃー。なんつーバイタリティなんだ」
「直筆なら定型文章でもよかったと思うけど、1社1社にそこの事務所の事情に合わせた文章を書いた」
 
「私にはできん・・・」
 
「それがケイちゃんの凄い所さ」
と浦中は言う。
 

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「まあ最初80社だったのがいきなり15社になって、その後どんどん振り落とされて、今も独占契約を狙っている所が3社ある。しかし、○○プロ、△△社、∴∴ミュージックなどは撤退したから」
 
「え?なんでですか?」
「ケイとマリが共同の個人事務所を設立したんだよ。実は僕らはその会社自体に出資させてもらった。だから契約する必要が無くなった。そちらの会社が★★レコードとも契約したし」
 
「あらら」
 
「だからふたりはその個人事務所と委託契約を結んでマネージメントをしてくれる事務所を求めている。今ふたりとの契約を目指している3つの事務所もその線で交渉している」
 
「はい」
 
「しかしふたりはその3社とは契約する意志はない。実はね、マリちゃんのお父さんが、1年半前の件では須藤君が全ての責任を負って結果的にケイやマリの側は批判されずに済んだから、迷惑を掛けたおわびに再度芸能契約するなら、須藤君としたいと言っているんだよ」
 
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「そうですか・・・」
 
「だから6月11日に取り敢えずふたりと会って欲しい。場所も確保したから。それで契約の話はそのまま進むはずだから。僕自身、ケイのご両親にも会ったし、町添君と一緒にバンコクまで行ってマリのお父さんにも会って、契約書もまとめた。これを須藤君から提示してふたりとご両親の署名捺印をもらえば、それで契約成立だから」
 
と言って浦中は印刷した契約書を3部須藤に渡す(ケイ・マリ・須藤の元に1部ずつ残る事になる)。
 
「ありがとうございます!ではお預かりします。どうも私は契約とかの文章書くのが苦手で」
 
などと須藤は言っていた。
 
実は2008年夏に須藤が作ったローズ+リリーの“暫定契約書”があまりにも穴がありすぎたので、○○プロの法務担当者や、紅川・兼岩・雨宮も入って、しっかりした契約書を作り上げたのである。
 
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これはケイとマリが作詞家・作曲家としてフリーハンドを持てると同時に、KARIONの活動も妨げないように、微妙な記述が入っているのだが、そもそも須藤は結局この契約書の中身も読まずに、そのまま当日ケイ・マリに提示したので、実は契約内容が「専属契約」ではなく「委託契約」になっていることにさえ、1年ほど先まで気付かなかったし、ふたりが共同の個人事務所を設立したこと自体、認識していなかった!(浦中がちゃんと説明したのに)
 

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「なんでこういうメンツなんですか〜?」
 
とケイは円卓に並ぶ他の3人に言った。
 
「まあ、あまり深く考えずにとりあえず美味しい御飯食べよう」
 
と若葉が言う。
 
「これは不思議なメンツよね」
 
と雨宮。
 
「元々は丸花さん、俺、しまうらら、という3人だったのだけど」
 
と蔵田が言っている。
 
ちなみに席順は、蔵田−雨宮−ケイ−若葉となっている。これは若葉を雨宮の毒牙(?)から守るための席順ともいうべきである。
 
「私は和泉ちゃんから、代わってと言われて出てきた」
と若葉。
「私は三宅行来から、代わってと言われた」
と雨宮。
 
「どこら辺から和泉とか、三宅先生が出てきたのだろう」
とケイは疑問を呈する。
 
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この当時、三宅と雨宮が実は夫婦であることをケイも蔵田も知らない。
 
「洋子(ケイ)は誰に言われて出てきたの?」
と蔵田が尋ねる。
 
「私は∞∞プロの鈴木社長からローズ+リリーの活動再開について、蔵田さんほか数名と打合せしたいからと言われたのですが」
 
「なぜ鈴木さんが絡んで来る?」
「ケイ、∞∞プロとも関わってたっけ?」
「それがこれまで何の接点も無かったので不思議に思いました。∞∞プロには大西典香がいるから、ローズ+リリーは競合するのであまり興味を持っていなかったようなんですけどね」
 
「いや、大西とは競合しないと思う」
「うん。世代も違うし、ソロとデュオの違いもある」
「むしろ競合するのはボーラスでは?」
「確かに同世代だけど、あまり売れてないから関係無いと思う」
 
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「あんた、神田のメイド喫茶に勤めているわよね」
と雨宮が若葉に言う。
 
「先日はご来店ありがとうございました。実はあの日が初勤務だったんですけどね」
と若葉。
 
「私はこの子がメイド喫茶でバイトするなんて言うから、驚くというより呆れたんですけどね」
とケイ。
 
「男性恐怖症だと言っていた」
と雨宮。
「それを少しでも直したいから、やってみることにしたんです」
と若葉。
「そもそもこの子の家、凄いお金持ちだから、バイトなんてする必要ないんですよ」
とケイ。
 
「俺はそちらの線で、この子のこと知っていた」
と蔵田が言う。
 
「うちの伯母の会社でイベントにドリームボーイズをお呼びしたことが何度かあって、その時、私が振袖着て、応接係をしたのよね。ある理由で男性は応接係ができないという話だったし」
 
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と若葉が言うと、雨宮はニヤニヤしている。むろん男性が応接係をすると蔵田にレイプされかねないからである。
 
「ふつうの女の子と違う雰囲気持ってるから、もしかして男の娘?と期待したんだけど、男性恐怖症ということだった」
と蔵田。
 
「ふつうの男はダメだけど、蔵田ちゃんみたいな人なら問題ないんでしょ?」
と雨宮。
 
「女性に興味の無い人なら問題ないですよ〜。雨宮先生のように一見女性にも見えるような服装の人も割と平気です」
と若葉。
 
「一見女性に見えるとは、面白い言い方をする」
と蔵田。
「だって女装ではないですよね?」
と若葉。
「あんたはよく私のこと理解している」
と雨宮。
 
「しかし気をつけろよ。こいつ、無茶苦茶女に手が早いから」
と蔵田が注意している。
 
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「上島には負けるけどね」
と雨宮。
 
「確かに、あいつの女への手の速さと、俺の男の子への手の速さは、いい勝負だと思う」
と蔵田。
 
「そんなナンパの速さじゃなくて音楽で勝負してくださーい」
とケイは言った。
 

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「マリちゃんの精神的な回復状況はどうなの?」
と蔵田が尋ねる。
 
「かなり回復してますよ。今の感じなら、あと半年くらいで復活できるんじゃないかなあ」
「今すぐはダメか?」
 
「5月16日に、FMで鍋島先生の一周忌特集の番組の司会をマリとふたりでさせて頂くことになりました。私たちが歌った『明るい水』が、鍋島先生にとっては最後のゴールドディスクになったんですよ」
 
「なるほどー!」
 
「その番組の中で2人で生歌唱します」
「そのくらいはできるんだ?」
「観客の居ない所でなら、歌えるんですよ」
「ああ、その状態か」
 

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「ローズ+リリーの問題点は、突然売れてしまったから、やむを得なかった面もあるのだけど、準備不足すぎたからな」
 
と蔵田が言う。
 
「お互いに思い込みがあったのは事実だけど、まさか親の承認を取ってないとは思わなかったのよね」
 
「結果的に△△社との契約書が無効と認定されたから良かったんですが、私は∴∴ミュージックとは母の口頭での承諾を得てKARIONをしていたので実質的な二重契約だったんですよ。それを津田社長に言って、停めないといけなかったのですが」
とケイが言うと
 
「うん。洋子(ケイ)が悪い」
と蔵田が言う。
 
「洋子はうち($$アーツ)とも、活動について親御さんと口頭での承認を得ている」
 
「まあケイはあちこちと口頭での親の承認を元に活動している」
 
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「△△社だけ承認してもらっていなかったんですよ」
 
「だけど須藤君の暴走のおかげで、ケイがやっとデビューできたのは大きいと思うよ。だって、あの状態では多数のプロダクションがお見合いになって、いつまでもデビューできなかったと思う」
と雨宮。
 
「まあ、物事はけっこうああいう暴走型の人間によって動いていくんだよ」
と蔵田も言う。
 

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「しかし今回は準備万端だな」
と雨宮。
 
「契約書は多数の人間が集まって完璧なものを作った。マリちゃんのお父さんが須藤君との契約を望んでいるから、あそこを窓口にする。マリちゃんの精神的な回復も進んでいるし、秋に出した『雪の恋人たち』など聴くと、歌唱力は、かなり上がっている。ケイの方もあの時点では去勢が済んでいただけで、性転換手術がまだだったから、オカマタレントと思われてしまった面があったけど、もう性転換も済んで後は20歳になったら戸籍の修正を申請するのを待つだけだから、女性歌手として何も問題無いし」
 
と蔵田が言った。
 
「済みません。まだ去勢も性転換もしてませんけど」
とケイが言うと
 
「何〜〜〜〜!?」
と蔵田と雨宮が言った。
 
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「冬、このメンツの前で嘘つくことないよ。本来は18歳未満は手術してもらえないのを、こっそりやったから、まだ手術してないことにしたいんだろうけど」
と若葉。
 
「私、ほんとに手術してないけど」
「それはありえない。3月下旬に、政子ちゃんと2人で鬼怒川温泉に泊まったんでしょ」
「あ、うん」
「その時、既に冬にはおちんちんもタマタマもなくて、女の子の形だったって、政子ちゃん言ってたよ」
 
「いや、あれは何と説明すればいいか。って、あの話を若葉聞いたの〜?」
「おのろけでも言うように言ってた」
 
「あんたたち、レスビアンなの?」
「えっと・・・・お互い友だちのつもりですが、確かにあの晩はそういうこともしました」
とケイは少し照れながら言う。
 
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「レスビアンできたということは、当然、性転換手術終わってるんでしょ?」
「まだです」
 
すると雨宮と蔵田と若葉はお互いに顔を見合わせた。
 
「だったら今すぐ性転換しなさい」
と雨宮と蔵田は同時に言った。
 
「え〜〜〜?」
 
「病院は私が予約してあげる。即手術してくれる先生知ってるから」
と若葉。
 
それは・・・・きっと、あの先生だ!
 
「ちょっと待ってね。今問い合わせてあげる」
と言って、若葉は電話している。何か調子よく受け答えしている。そして電話を切って言った。
 
「明日、手術できるそうだから、明日朝から病院に行ってね。今夜は21時以降食べ物も飲み物も取らないこと」
 
「え〜〜〜〜!? 明日!?」
とケイはさすがに驚きの声をあげる。
 
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「性転換手術って今日予約して明日手術できるもんなの?」
と蔵田が訊く。
「普通は無理」
と雨宮。
 
「冬の性転換手術の予約は既に2007年12月に入っていたんです。それなのになかなか手術を受けに来ないから困っていたそうです。お母さんから承諾書ももらっていたのにって。やっと手術できると先生は張り切ってました」
と若葉は説明する。
 
「ちょっとぉ!!」
 
「よし。それでは洋子は、明日性転換手術を受けること」
と蔵田が言った。
「ケイもやっとこれでちゃんと女の子になれて、ローズ+リリーの再稼働に関する障害は無くなるわね」
と雨宮。
 
「まさに。邪魔物を取っちゃうんだな」
と蔵田。
 
「心の準備が・・・」
 
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「何を今更!」
と3人から言われた。
 
「だって6月11日には活動再開だからね。あまり時間無いよ」
と雨宮。
 
「あれ手術してからどのくらい静養してないといけないの?」
と蔵田が雨宮に訊く。
 
「ケイなら1週間もあればフルマラソン走れるよ」
と雨宮。
 
「それはさすがに無茶です」
とケイは言った。
 

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