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■娘たちの開店準備(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-04-04
 
旭川N高校が出場するインターハイの北海道予選は6月18-20日に札幌市内の3つの会場に分かれて行われた。なお、今回道予選に出場するのは女子のみで、男子は地区予選4位で、道大会に進出できなかった。
 
1回戦は不戦勝で18日(金)午後の2回戦からの参加となる。江別市の高校が相手だったが快勝して明日の試合に進出した。
 
19日(土)の午前中はブロック決勝で、相手は強豪の函館F高校であった。しかしこれも20点差で勝利。今年のN高校は凄いぞというのを関係者に認識させることとなった。
 
19日午後と20日の午前・午後を使い、ブロック決勝に勝った4校による、決勝リーグが行われる。今回ここに出てきたのは、札幌P高校、旭川N高校、釧路Z高校、旭川L女子高の4者である。Z高校は札幌D学園との延長にもつれる死闘を制して勝ち上がり、旭川L女子高は帯広C学園を最後の3秒で逆転して勝ち上がってきた。
 
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19日午後に行われた第1試合では下記のようになった。
 
N78-58Z P82-53L
 
Z高校もL女子高もブロック決勝の疲れが出た感じで、どちらも大差を付けられての敗戦となった。
 
20日午前中の第2試合ではN高校とP高校の“頂点対決”が行われる。絶対的女王のP高校だが、道内の試合でN高校にだけは、ここ数年、何度も敗戦を喫している。この試合でも最初から激しい攻防が続き試合はシーソーゲームで移行した。16-18 19-17 と続いて前半はタイ。第3ピリオドも15-15の同点で勝負は第4ピリオドに持ち越させれる。
 
ここでP高校は第4ピリオド前半にフォワードを渡辺純子・並木貴穂・工藤典歌・久保田希望と4人並べ、それと天才シューター伊香秋子を入れて猛攻を掛ける。これで一時は10点差が付いたものの、その後タイムを取って気合いを入れ直したN高校が反撃に出て、残り1分で1点差に迫る。
 
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そして最後は渡辺純子のシュートを由実がブロックしたのを、紫の遠投→絵津子の逆転シュートというので1点差逆転勝ちをおさめた。
 
N74-73P L68-64Z
 
絵津子にやられた純子はまたまた頭を坊主にしようとしたが、会場近くの床屋さんで待ち構えていた高田コーチに「坊主は校則違反」と言われて、会場にそのまま連れ戻された。
 
「性転換して男になったら坊主にしてもいいけど」
「性転換は興味あるけど、そしたらえっちゃんと対決できないからパスです」
「だいたいお前、今頭を坊主にしたら、アジア選手権でタイに入国しようとした時に、性別を疑われてトラブるぞ」
「う・・・それもまずいな」
 
L女子高とZ高校の試合も激しい試合だったが、最後は4点差でL女子高が制した。
 
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これでN2勝 P1勝 L1勝 Z0勝だが、この時点ではまだどこもインターハイ進出は確定していないし、どこも脱落確定していない。最終戦でP高校とL女子高が共に勝てば2勝が3校となって、得失点差の勝負になる。またN高校とZ高校が勝つと1勝が3校となって、それも得失点差の勝負になる。
 

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午後からの最終戦で、Z高校は相手が女王P高校ではあっても臆せず、激しい戦いを仕掛けた。どうしてもファウルがかさみ、渡辺純子がついエキサイティングしそうになったりもしたが、何と前半はZ高校が1点リードする展開となる。
 
しかし十勝監督がハーフタイムに全員に座禅をさせたP高校は後半、冷静に試合を進める。そうなるとどうしても実力差が効いてきてじわじわと点差は広がる。それで最終的には10点差でP高校が勝利した。
 
一方のN高校とL女子高の旭川勢対決では、地区大会の雪辱に燃えるL女子高が第1ピリオド物凄く頑張って、N高校に6点差を付けてリードを奪った。しかし、その後、三年生トリオ(絵津子・ソフィア・不二子)の活躍で第2ピリオドで逆転。後半も手を緩めず、そのまま逃げ切った。しかし最後まで競った感じの試合であった。
 
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N82-76L P68-58Z
 
この結果N高校が3勝で優勝、P高校が2勝1敗の準優勝で、この2校がインターハイに進出することになった。この2校が進出するのは、これで2008年から3年連続である。また絵津子と純子のライバル2名も3年連続インターハイ出場となった。この2人は6月23日からのU18アジア選手権にも出場する。
 

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一方、岡山県では19-20日にインターハイ県予選の準決勝と決勝が行われた。19日の準決勝では倉敷K高校と岡山E女子高という、王子の所属校と古巣との対決となった。お家騒動の直後は軒並み部活動が弱体化したK高校だが、昨年末に日本代表の経験もあるOGがバスケ部監督に就任して体制を建て直し、残った部員に加えて積極的な新人勧誘をしてまたかなりの強豪になっている。特に今年はレギュラーの半数が1年生であった。
 
しかし王子のパワーは誰にも停められなかった。かつてのチームメイトで今年はキャプテンを務めている清水由布子が王子にマッチングしたものの、王子はこの1年半で物凄く成長していて、どうにもならない。
 
結局30点差の大差でE女子高が決勝戦に進出した。もうひとつの準決勝は岡山H女子高が快勝した。
 
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20日は男女の決勝戦のみが行われる。
 
先に12:30から女子の決勝が行われた。このH女子高にもかつての王子のチームメイトで180cmの身長を持つ山城麗美がいる。彼女が王子とマッチングし、しかも彼女はここ数試合での王子のプレイをかなり研究した雰囲気もあった。
 
しかし王子は少々研究した程度で停められる相手ではない。パワーで相手をけちらしてしまう。
 
結局、H女子高は全体的には善戦したにもかかわらず、王子がほとんどフリーに近い状態でどんどん得点を重ねるので、彼女ひとりのパワーに負けてしまった感じで20点差の大差でE女子高が優勝。岡山県ではたった1枚のインターハイ切符を獲得した。
 
男子の決勝が行われている間に、ロビーでは、かつてのK高校のメンバーで、E女子高に来た高梁王子や平野弓恵、H女子高に来た山城麗美や中本晴実、そしてK高校に残った清水由布子や水谷三津子などが集まり、泣きながら抱き合って、今後もお互い頑張ろうと言い合う場面が見られ、関係者の涙を誘っていた。
 
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王子の後見人のような感じで会場に来ていた藍川真璃子が各校の監督に許可を取って彼女らを並べ、記念写真を撮っていた。
 

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千里は(株主総会を終えて)13日夜に旭川から千葉に戻ってきた後は、14-18日の週は大学にはまたまた《きーちゃん》を行かせて、自身は藍川真璃子に頼んでジョイフルゴールドの練習に参加させてもらっていた。
 
佐藤玲央美をはじめ、熊野サクラ、池谷初美、湧見昭子、ナミナタ・マールと千里をよく知っているメンツがおり、
 
「来ると聞いて手ぐすね引いて待っていた」
と言った池谷たちに、たくさん「可愛がって」もらうことになる。
 
千里がジョイフルゴールドの練習場に来ると言ったら「マイちゃんとマチも連れてきていいよ」と玲央美が言っていたので、ローキューツのチームメイトである、溝口麻依子と森下誠美も連れて行った。
 
「初美先輩、ごぶさたしておりました」
「マイもごぶさた、ごぶさた」
 
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ふたりは旭川L女子高の先輩・後輩である。
 
「もうお怪我は大丈夫なんですか?」
「うん。もう完璧。怪我する前より強靱になった感じ」
「だったら良かった」
 
誠美とサクラはパンチを当てあっていた。この子たちはほとんど男の子感覚のようである。なおサクラはU20代表、誠美はU24代表候補になって、どちらも今年は各々の日本代表チームでの活動もしている。
 

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「昭ちゃんはいつから試合に出られるの?」
と千里は湧見昭子に訊いた。
 
「8月30日解禁なんですよ。でもこのチームは無茶苦茶鍛えられます」
と彼女は言っている。
 
「9月の全日本実業団バスケットボール競技大会には昭ちゃん出すよ」
とキャプテンの伊藤寿恵子が声を掛けた。
 
昭子は2008年8月30日付けの去勢手術を受けたという証明書を持っていたので、2010年8月30日から女子選手として試合に出ることができる。彼女は性転換手術は昨年の7月3日、高校3年の夏休み直前に受けており、今は午前中銀行で窓口業務をして、午後からは練習に参加している。
 
「窓口では笑顔の女子行員でやってるの?」
「頑張ってます。千里先輩、よかったら定期預金作って下さい」
「いいよ。じゃ、後でね」
 
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「おお、積極的に女子銀行員としてのお仕事もしている」
 
「でも女の子の声出すの、だいぶうまくなったね?」
 
「出るようにならなかったら入社・入団の話は無しで手術代も払ってもらうと言われたから必死で練習しました。でも実はまだ長時間連続で出すのが結構辛いんです」
 
「そのうち普通に出るようになって、むしろ男の声の出し方を忘れちゃうよ。私ももう男の声の出し方、忘れつつある」
と千里は言った。
 
千里は声変わりが起きてしまってマジで焦った1年半前の出来事を遙か昔のことのように思い起こしていた。
 

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日吉紀美鹿たちが参加している、U24(Univ)女子日本代表は6月10-14日に国内NTC合宿をしたあと、15-20日には台湾に遠征した。
 
それと入れ替わるように、18日(金)夕方には、千里や玲央美などU20の代表がNTCに入った。ふたりは同じU20代表・熊野サクラとともにジョイフルゴールドでの練習を午後いっぱい、たっぷりやった後、服を着替えてから合宿所に行った。なお、麻依子と誠美は「玲央美とサクラを代表に出している間の人質」などと言われて月末までジョイフルゴールドの練習にそのまま参加することになったようである。麻依子も千里が代表に出ている間は適当な練習相手がいないし、誠美は元々リバウンドを争えるような練習相手が普段から得られないので、ここでナミナタやローザと一緒に練習するのがとても刺激になっているようであった。
 
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「マチは普段でもこちらで練習していいよ」
とキャプテンの伊藤さんが言っていた。
 

さて、北区のナショナル・トレーニング・センター。
 
千里たちはもちろんIDカードはもらっているのだが、3人ともここは常連になってきているので顔パスで中に入り、先に来ていた江美子や彰恵などと手を振り合った。
 
千里たちは三鷹のKL銀行体育館から千里のインプレッサに乗って合宿所に直接入ったのだが、江美子も自分のランエボで大阪から走って来たらしい。TS大学の渚紗・彰恵・桂華はつくば市からつくばエクスプレスで北千住に入り、そのあとJRで赤羽駅まで来ている。朋美と華香は名古屋から新幹線、早苗は山形から新幹線である。留実子は旭川から飛行機(ADO 13:35-15:20)で飛んできた。都区内に住んでいる雪子は神保町から都営三田線で本蓮沼駅に入ったらしいが、メンバーの中では最初に合宿所に入った(2番目が留実子)。神経質な雪子は時間的な余裕を持って行動していないと不安らしい。ここまでは18:30までに集まり、のんびりと夕食を取りながら、おしゃべりしていた。
 
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神奈川J大学の百合絵と星乃は小田急と埼京線を使ってやってきたが、夕方のラッシュにひっかかって大変だったようである。彼女たちは19:00ジャストに辿り着いた。はあはあ息をしているので駅から走って来たのだろう。
 
「もう少し早く向こうを出るべきだった」
「新宿駅の中を埼京線ホームまで辿り着くのに苦労した」
「埼京線も圧縮された」
「荷物が多いからだいぶ白い目で見られた」
「ついでに痴漢が出たけどぶん殴ってやった」
などとふたりは言っていた。
 
「赤羽から来たの?厚木から来るなら、本蓮沼のほうが近いかと思った」
 
合宿所はJR赤羽駅から2.1km、徒歩20分(ジョギング12分)、都営三田線・本蓮沼駅から800m、徒歩7分(ジョギング5分)くらいである。
 
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「実はどちらでもほとんど変わらないんだけど、新宿経由で赤羽に入る方が少しだけ早いんだよね」
 
赤羽だと、本厚木(小田急)新宿(埼京線)赤羽
本蓮沼だと本厚木(小田急)代々木上原(千代田線)日比谷(三田線)本蓮沼
 
いう連絡になる。厚木からの直線距離は本蓮沼の方が近いし、駅から合宿所までの距離も近いものの、本蓮沼に行くには日比谷経由になるので、路線的には遠くなるのである。埼京線を板橋で降りて新板橋まで400m歩いて三田線に乗る手もあるが、そこまでするなら赤羽まで埼京線で行ってしまったほうが楽だ。
 
「ちょっと遅れたと思って新宿経由にしたのが失敗だった」
 

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なお、雪子・星乃・留実子の3人は実はU24(Univ)代表候補とU20代表補欠を兼任しているのだが、今回はU20の方を優先してくれと言われたので、台湾にも行かなかったし、それに先行する14-20日のNTCでのU24(Univ)合宿にも参加していない。
 
今年は6つの代表チームが同時稼働しているので、兼任者が多く、スケジュールも重なるので、兼任している選手をどちらに参加させるかというのは、代表チームを統括している強化育成部としても、かなり悩ましかったようである。
 

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娘たちの開店準備(9)

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