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■娘たちの開店準備(10)

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19:08頃になって高田コーチが食堂にやってきて
 
「全員揃っているかな?」
 
と声を掛ける。
 
みんな周囲を見回している。
 
「プリンがいません」
 
「あぁ・・・」
 
それでコーチが王子の携帯に電話する。
 
「すみません!新幹線に乗り遅れて。さっき名古屋を出た所です」
などと王子は言っている。
 
現在19:12だが、本来19:00集合だったので、王子は本来は岡山14:40発の新幹線(18:03東京着)に乗らなければならなかったはずである。しかし今名古屋を出た所ということは岡山を17:14か17:23の新幹線に乗ったことになる。2時間以上の遅刻である。到着はおそらく22時近くになる。
 
「高梁君、君は遅刻が多すぎる。困るんだけどね」
「申し訳ありません。気をつけます」
「じゃ君は、到着したらランニングシュート300本」
「はい。頑張ります」
 
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「ちなみに、君、パスポート持っているよね?」
「パスポートですか?」
と言って、どうも探しているようだ。
「あれ〜?どこ行ったかな?」
 
高田コーチは苦虫を潰したような顔をしている。
 
「高梁君、もし持ってないようだったら、お母さんか誰かに電話して、寮を探して見つけて追ってこちらに持って来てもらって。あ、いや僕がお母さんと直接話そう」
 
王子に話させると危ないとコーチは判断した。郵送などされて行方不明になったりするとやばい。
 
「すみません!」
 
それで結局、高田コーチの連絡を受けて、お父さんの車でお母さんと妹さんが急遽E女子高の寮まで走り、お母さんと妹さんが、ふたり掛かりで、まだここに入ってから半月も経っていないとは思えない散らかりようの王子の部屋から無事パスポートを発見。お母さんが翌朝1番の新幹線で合宿所まで持って来てくれた。
 
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ちなみに今回は前科のあるサクラはじめ他のメンツは全員ちゃんとパスポートを持って来ていた。
 

合宿所で21日まで濃厚な練習をした後、千里たちU20代表は6月22日(火)、有志だけの早朝練習、朝食の後、朝8時にバスケ協会が用意してくれたバスで合宿所を出た。9時すぎに成田空港に入り、搭乗手続き・出国手続きをする。
 
「へー。千里はちゃんと性別Fの航空券なのか」
と今回初めて千里と一緒に海外渡航する留実子が、千里の航空券を見て言っている。留実子自身はこれが初めての海外である。
 
「そうなんだよ。この子、昨年も一昨年も、ちゃんと性別Fの航空券で入出国している」
と玲央美が言う。
 
「パスポートがFだし」
と千里は言って自分のパスポートをみんなに見せている。
 
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「それも不思議なのだが」
と桂華。
 
「まあ千里が万一性別を疑われたとしても、裸にしてみたら女だと確認されるから全然問題無いね」
などと江美子は言っていた。
 
江美子は千里と出羽修行の仲間なので、冬の間は毎日のように千里と一緒に湯殿山の温泉につかっている。
 

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今回、留実子と雪子は自動化登録をしていなかったのでこの2人だけ新規に登録をした。他のメンバーは全員登録済みなのでスムーズに出国手続きをして「国外領域」に出る(星乃もU18の時オーストラリア合宿に参加した際、登録をしている)
 
早めの昼食を取ってから、12:00発モスクワ行きSu576 (A330)に乗り込んだ。多くの子が早朝練習もした上での出国だったので、みんな機内ではぐっすり寝ていたようである。(寝坊して早朝練習どころか朝御飯も食べ損なった)王子のいびきが大きいので、サクラに蹴られていた。
 
モスクワのシェレメーチエヴォ国際空港に到着したのは17:25である。時差が5時間あるので、所要時間は10時間半掛かっている。機内食も食べているのだが、みんな「お腹空いた〜」と言っている。この日は入国手続きをした後、ホテルに入って、夕食を取りすぐに寝た。
 
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なお入国手続きの時、王子とサクラが「性別が違う」と言われてトラブっていた。
 
「サーヤは引っかからなかったね」
と彰恵が言うと
 
「うん。女に見えたのかと思うと悔しい」
と留実子が言うので
 
「悔しいの?」
「男に見られたかったのか!?」
と声があがっていた。
 
「せっかくちんちん付けてきたのに」
「それ逆に裸にされていたら、やばかったね」
 
「髪もっと短くしようかなあ」
と留実子は言うが
 
「わざわざトラブルを増やすのは勘弁して下さい」
 
と通訳も兼ねてサポート役で随行しているバスケ協会の事務の女性・坂倉さんが言っていた。坂倉さんは特に王子について、この子は間違い無く女性ですと係官にロシア語で説明して納得してもらうのに苦労していた。
 
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翌6月23日から、強化スケジュールが始まる。今回の遠征前半で相手になってくれたのは、モスクワ市内の大学、**大学の女子学生チームであった。同大の体育館を練習場所として使わせてもらえる。
 
ここは市内の大学生リーグの中では割と強い所らしく、主将のオリアさんは2008年のU18ヨーロッパ選手権で代表になったものの昨年のU19世界選手権には出場できなかったらしい。
 
「私が出ていたら、日本には負けなかったのに」
と彼女は半ば独り言のように言っていた。
 
昨年のU19世界選手権では日本はロシアに辛勝したことから決勝トーナメントに進出することができた。
 
「U21に出てきてください。そして対戦しましょう」
と千里がロシア語で言うと、相手はこちらがロシア語が分かっていたことに少し驚いたようで
 
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「Да.Давай,Давай(そうだね。頑張ろう)」
と言って千里と握手をしていた。
 
なお、こちらでロシア語が分かるのは千里と早苗、彰恵、雪子、それに高田コーチである。
 

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千里とオリアの交歓で和やかに始まったものの、練習を始めてみると相手は強い強い。しかも体格の良い選手揃いである。玲央美も王子も最初の内は相手のプレイに圧倒されている感じであった。
 
しかし少し経つと、各々自分を取り戻し、相手のちょっとした隙を突いていく。向こうも最初こちらがかなりやられっぱなしになったので、何だアジア・チャンピオンといっても大したことないな、ロシア代表に勝ったのもまぐれだろう、みたいな雰囲気になったのだが、玲央美の俊敏な動き、王子のパワフルなプレイが発揮されはじめると、結構相手はそれを停めきれないし翻弄される。
 
更に彼女らに気を取られていると、千里のスリーが炸裂する。
 
そこまで行くと、今度は彰恵や江美子のような、いかにも簡単に潰せそうなのに潰せない選手にいいように引っかき回されてしまう。
 
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それで最初の練習試合は78-72となり、ロシア側が勝ちはしたものの、彼女たちは
 
「あんたたち強い」
 
と言ってこちらの実力を結構評価してくれたようであった。
 

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練習試合の後は、ガード組、シューター組、フォワード組、センター組に分かれて練習をする。
 
朋美・早苗・雪子はむろんガード組、彰恵・桂華・玲央美・江美子・百合絵がフォワード組、華香・サクラ・留実子がセンター組に入ったが、王子はフォワード組に入ろうとして、向こうの正センターの人に「Ко нам(あんたはこっち)」と言われてセンター組に連れて行かれていた。
 
そして星乃は本来はフォワード組に入るべき所なのだが、相手の体格を見て「こっちに入れて〜」と言ってガード組に加わっていた。
 
そしてシューター組は千里・渚紗の2人と向こうのシューター3人であるが、このグループは最初から和やかすぎた!
 
「6.25mから6.75mになるの、どう思う?」
と(ロシア語で)訊かれて、千里は
「Вот не меняет(そんなの関係無い)」
 
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と答えたが、千里から通訳してもらった渚紗はフランス語で
 
「入る確率が2割落ちる」
と言った。
 
向こうの3人もフランス語は分かるみたいで、以後このグループはフランス語で話しながら練習をすることになるのだが、向こうの3人も
 
「私たちもやってみたけど、やはり2割くらい確率が落ちる感じだ」
と言っていた。
 
実際、現在引かれている6.25mの線の外側にビニールテープで6.75mの線を引いてみて5人とも各自20本ずつ試投する。
 
すると向こうの3人タチアナ、ユリア、ダリヤは6.25mからは、8本、7本、7本入れたものの、6.75mからは6本、5本、4本しか入らなかった。渚紗も6.25mからは9本入れたが6.75mからは7本しか入らなかった。
 
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しかし千里は6.25mからも6.75mからも20本全部入れた。
 
「Je comprends que tu as dit "Il ne change pas"(関係無いと言った意味が分かった)」
「Ты с ума(あんたは狂ってる)」
と言われた。
 
後のはわざとロシア語で言ったようだが、むろん千里はロシア語は分かっている。このс умаというのはt.A.T.u.の大ヒット曲「Я сошла с ума(私は狂ってしまいそうだ:英語タイトル All The Things She Said)」のс умаである。
 

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「千里はフリーである限り全て入れる。彼女が外すようにするには目の前でプレスしたりするしかない」
と渚紗が説明するので、その後は、お互いにディフェンスしながらシュート、あるいはドリブルで抜く、という練習にする。
 
確かにこれをやると千里も全命中というわけにはいかなくなるものの、千里のフェイントが巧みなので、結局半分くらいは入れてしまう。
 
「さすがスリーポイントの世界女王だ」
 
と半分は称賛、半分は呆れられている感じだった。しかしやはりフェイント合戦に関しては相手の正シューター・タチアナはかなりうまく、千里の巧みな釣りや“偽の隙”には引っかからない。しかし向こうのフェイントもなかなか千里には通じない。
 
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「千里とやるのは楽しい。明日もたくさんやろう」
と言って、彼女とは笑顔で硬い握手をした。
 

ガード組はひたすら1on1をやっていた。1人の相手とやったら、次は次の子とやるということで、同時進行で1人ずつずれながら回していくのである。向こうの人数の方が多いので、ロシア側は数分おきに休めるが、日本側は全く休む暇が無い! ひたすら対決するので、体力の無い雪子などは途中で息が上がって精度が落ちそうになるのを精神力で何とか抑えて頑張っていた。
 
そして休憩時間には死んだように眠っていた。
 
しかしこの練習に参加した星乃はこれでかなり鍛えられたようである。彼女はU18をやっている最中に怪我で離脱してしまったため、こういうハイレベルの相手とやった経験が他のメンバーに比べて圧倒的に少なかった。
 
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センター組はひたすらゴール付近での攻防をやっていた。彼女らはゴール下でぶつかりあうのはノーファウルなどと言って格闘技並みの激しいぶつかり合いをしていた。みんなそういうぶつかり合いに耐える体格の子ばかりである。
 
しかしその中でも王子はちょっと異彩を放っていて
 
「Кимико мальчиком?(キミコは男の子?*1)」
などと言われるので、通訳としてこのグループに付いている坂倉さんが
 
「Нет.Она женщина.(いえ、彼女は女性ですよ)」
と答える。すると
 
「Она стала девушкой, перенесшей операцию?(手術して女の子になったの?)」
 
などと尋ねられたが、坂倉さんはそれはそのまま受け流してもう答えなかった。正直、坂倉さんも向こうがジョークで言っているのか、マジで疑っているのか判断がつかなかったが、向こうは王子が元から女であっても、元は男だった女であっても別に構わない雰囲気であった。
 
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みんな強い子と対決するのが楽しいのである。
 
なお、もう1人ロシア語が分かる高田コーチはフォワード組に付いている。ガード組は雪子と早苗がロシア語ができるのでロシア語でコミュニケーションが取れる。
 

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(*1)注。
 
男の子はМальчик、女の子はдевушка(小学生女子くらいならдевочка)。バスケットボールのカテゴリー Under 20 for women はロシア語ではдевушки до 20 летと言う。つまり20歳くらいまではдевушкаと言っていいのだろう。
 
переноситьは「受ける」で、операцияが手術(英語のoperation)。性転換手術はоперация по смене пола。ここでсменаが交換・置換で、полが性。また、операция на гениталииという言い方もある模様。гениталииは生殖器(英語のgenital)。つまり「生殖器の手術」。婉曲表現か。それ以外に Хирургическая коррекция полаという言い方も。Хирургическаяは外科手術(英語のsurgery)。коррекцияは矯正。つまり「性矯正外科手術」。
 
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確かにある意味、性転換って歯列矯正などと似たものかも!? 形がおかしいから正しい形に矯正しちゃうんですね。
 

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