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■娘たちの開店準備(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2017-04-01
 
5月11-14日、U17女子代表候補とU18女子代表候補の合宿が同時に東京北区のNTCで行われた。U17は7月16-25日にフランスで行われるU17世界選手権、U18は6月23-30日にタイで行われるU18アジア選手権に参加する。
 
とにかくこの年は多数の世代別日本代表が動いていたのである。
 
このU17代表候補に旭川N高校の原口紫、U18代表候補に湧見絵津子が選ばれた。
 
U17の方はこれが初めての合宿だったのだが、U18は実は3月から始動していて3月にはいきなりリトアニア遠征をおこなっている。絵津子はこの時のメンバーには選ばれていなかったのだが、その後、調子を落としたメンバーがいたことから入れ替えが行われ、絵津子は今回から日本代表候補の活動に参加した。
 
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原口紫は昨年旭川N高校でキャプテンを務めた原口揚羽(今春、実業団関東2部のCJ化学に入社)の妹である。
 
旭川N高校には3年生にも広尾愛実/杉山海音/夢野胡蝶という優秀なポイントガードがいるものの、紫は昨年から既にその3人を凌駕し、ウィンターカップでも森田雪子(今春、東京N大学に入学)のバックアップ・ポイントガードとして活躍した。バスケ雑誌などでも、1年生ながら光るものがあると評価されていた。それで今回日本代表候補にも招集されたのであった。
 
「これで秋以降の新キャプテンが決まったな。よろしくね」
などと松崎由実が紫の肩を叩きながら言った。
 
「え〜〜〜!?私はキャプテンなんて柄じゃないよー。次期キャプテンはゆみちゃんでしょ?」
「日本代表をさしおいてキャプテンなんかできないよ。しかしサキの姉貴の揚羽先輩も、自分はキャプテンの柄じゃないとか言いながら、しっかりキャプテン務めたからなあ」
などと由実は言っていた。
 
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5月17日(月)、日本バスケット協会は、バスケット女子日本代表(A代表)候補について、スペインリーグに参加しているパワーフォワード横山温美を追加招集すると発表した。向こうでのレギュラーシーズンの日程が終わったので、この後は9月の世界選手権に向けて日本代表と合流する。彼女は普段の練習は古巣のビューティーマジックでさせてもらえることになっている(日本滞在中はそちらの会社の寮に泊まり込む)。
 
その日本代表候補の第3次合宿は5月20-31日に東京北区の合宿所で行われたが、それと重なる日程で21-23日にはU20代表の合宿も同じ場所で行われた。千里と玲央美は両方を兼任しているので、20日だけA代表の合宿に出て、その後21-23日はU20の合宿をして、24日からまたA代表の合宿に戻るということをすることになった。
 
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A代表合宿の初日には、またまたベテラン組対ヤング組の練習試合をしたが、今回は1点差でベテラン組が勝った。
 
「ほらほら、ヤング組、気を抜いているとベテラン組に食われるぞ」
と夜明コーチが発破を掛けていた。
 
21日からのU20の合宿に今回は高梁王子は参加していない。3日間だけの合宿でもあり、そのために学期の途中でのアメリカとの往復は大変だろうということで今回は免除である。
 
「プリンが居ない間にたくさんアピールするぞ」
などと補欠参加の竹宮星乃は言って、張り切って練習していた。
 

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この代表合宿が行われていた5月26-28日に、旭川N高校はインターハイ地区予選に臨んでいた。N高校は順調に1回戦・2回戦を突破して決勝リーグに臨む。ここで旭川L女子高、旭川A商業、新鋭の旭川C高校との4者リーグでもキャプテンの3年生湧見絵津子、2年生の松崎由実・原口紫などの活躍で3勝で地区予選をクリア、道大会に進出した。
 
今年はL女子高にも姫川夏鈴という才能あふれるポイントガードがいるのだが、紫のプレイには圧倒されていた。
 
「さすが日本代表がふたりもいるチームには勝てん」
 
などとキャプテンの風谷翠花は言っていたが、L女子高も2勝1敗の準優勝で道大会進出である。
 

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6月4日(金)9:00。高梁王子(たかはし・きみこ)は留学中のルビー高校の春学期終業式に臨んだ。彼女の留学はこれで終了。迎えに行った藍川真璃子と一緒に関係各方面への挨拶を済ませて翌5日午後の飛行機に乗った。そして日本時間で6月6日(日)夕方に成田空港に到着した。
 
なお、向こうの寮の王子の部屋にあった荷物は真璃子が思わず「Unbelievable!」と叫んだほど凄まじく、結局真璃子はアメリカにいる知人に頼んで「必要そうなもの」と「ゴミ」とを分別して、必要そうなものだけ日本に送ってもらうことにした。
 
王子は結局日常的な着替えと、バッシュだけ持って飛行機に乗った。
 
成田空港には王子の両親と妹が迎えに来ており、その日は都内に宿泊。翌7日(月)午前中の新幹線で岡山に向かった。ただちにE女子校に両親とともに赴き、復学の手続きをした。
 
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「いや、こちらの学校に入れて頂いてから1年4ヶ月もして、やっとこの制服に袖を通しました」
と王子は校長に照れながら言った。
 
「背が高いから、洋服屋さんも特別対応したとか言ってたね」
 
「型紙の合うのがなくて、特別に作ったらしいです。私がアメリカに行っている最中に母に頼んでもらったのですが、あまりに大きいので、オカマさんが女装に使うんじゃないかと思ったとか」
 
「この子、結構男の子に間違われるんですよね〜」
と母が言う。
 
「もう慣れてますから。女子トイレや女子更衣室とか女湯で悲鳴あげられるのも慣れてるし。髪も開き直って短くしてるし」
と本人は言うが
 
「一応うちの校則では、もう少し髪は長くして欲しいんだけど」
と校長。
 
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「この長さではダメですかね?」
「うーん・・・取り敢えず伸びるまでは容認ということで」
「髪洗うのが楽なんですけどね〜」
 
「あんたもそろそろ女の子に性転換してもいい頃だよ」
と母は言った。
 
「そうかなあ。じゃ、手術してちんちん取らなきゃ」
などと王子が言うので、校長が「へ?」という顔をする。
 
「君、まさかちんちんあるの?」
「すみません。ジョークです」
「びっくりしたぁ」
と校長。
「あんたが言うとそれジョークに聞こえないからやめなさい」
と母は注意した。
 

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6月5日(土)。千里は貴司と一緒に10:10関空発の稚内行きANA1797便に乗った。
 
12:20に稚内空港に到着。稚内港で留萌から来た貴司の妹たち・両親・祖母、また札幌・網走・枝幸などから来た親戚と合流する。そして15:25の礼文島行きフェリーに乗り、17:20に礼文島の香深(かふか)港に到着した。
 
明日は一昨年の6月9日に亡くなった貴司の祖父・宝蔵の三回忌法要が行われるのである。
 
千里が礼文島に来るのは一昨年の7月以来である。
 
宝蔵が亡くなった時は、千里は中間試験中だったのでパスさせてもらった。その後、四十九日に代えて行われた三十五日の喪明け法要には参加した。但し貴司は葬儀にも三十五日にも、リーグ戦とぶつかり参加できなかった。代わりに貴司は秋に単独で礼文島を訪れてお線香をあげている。その年の初盆には千里も貴司も出ていない。妹の理歌と美姫が出席したが、その時、貴司の祖母(宝蔵の妻)の淑子が「動物の森がしたい」と言って、留萌に一緒に出てきて、結果的に引っ越してしまった。
 
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昨年の一周忌の時は、いったん千里と貴司の関係は切れており、貴司は当時緋那と付き合っていた。しかし6月下旬の貴司の誕生日に千里は手作りのクッキーを貴司のマンションの郵便受けに入れてくるというパフォーマンスをして(爆弾投下)、そこから次第に貴司を緋那の手から取り戻していく。その最中の8月のお盆にはお汁粉のセット(積み上げると供養塔になる)を留萌の貴司の実家に送っておいた。
 
貴司の方も昨年は結局一度も礼文島を訪れなかった。
 
そして今回の訪問は千里と貴司が初めて一緒に礼文島を訪れるものとなったし、貴司にとっても千里にとっても、宝蔵の法要での礼文島への2度目の訪問となった。
 

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稚内港で親戚一同と会した時、札幌から来た晴子(貴司の父・望信の実姉)が千里の左手薬指に輝くアクアマリンの指輪に目を留める。
 
「あら素敵な指輪ね」
「12月に貴司さんから頂きました。法要の最中は外しておきますが」
「いつ結婚するの?」
 
「まだそこまでは決めてないんですよ」
と千里。
 
「お互いにバスケの活動で忙しいもので」
と貴司も言っている。
 
「特に今年は千里は日本代表候補に選ばれていて、本戦に出場する場合は9月の世界選手権と、10月のU20アジア選手権に出るし、お正月の皇后杯に出る可能性もあるし、U20アジア選手権で上位に入ると来年はU21世界選手権だし、しばらく結婚する暇が無い感じで」
 
「あら。でも日本代表って凄い!」
 
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「籍だけ入れちゃってもいいんじゃない?と私は言っているんですけどね」
と貴司の母・保志絵は言う。
 
「ああ、それでもいいわよね」
 
「入籍して結婚式も挙げて、でも同居せずでもいいかもですね」
などと千里も言っている。
 
実際には千里が戸籍上の性別を変更するまではふたりは法的に婚姻することができない。その件に関しては保志絵と千里の母・津気子の間で、どっちみち婚姻届を出すのは千里が大学を卒業した後でいいのではというコンセンサスが形成されている。
 

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礼文島に着いた当日は親戚一同、芳朗の家に泊まり込む。人数が多いので、親族関係とは無関係に男女で部屋が分けられた感じであったが、おかげで男部屋の方は大量にお酒やビールを消費したようであった。
 
「千里ちゃんは、昨日大阪に入ったの?」
と保志絵が訊く。
 
「はい。4日・金曜日に大学の授業が終わってから新幹線で大阪に移動して、昨夜は貴司さんのマンションに泊まりました。それで早朝一緒に出て関空から稚内に飛んできたんですよ」
と千里は答える。
 
「でも今年日本代表とかに選ばれたら無茶苦茶忙しいでしょ?」
「ええ。昨年もU19日本代表しましたが、チームが既に固まっていたから実際には1ヶ月くらいしか拘束されなかったんですよ。でも今年はフル代表候補は2倍の生存競争を戦わないといけないし、その上にU20代表とを兼ねているので、両方の合宿があって大変です。10月まであまり大学に出られない感じで」
 
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「わぁ」
 
「一応合宿や大会と日程のぶつかった講義は出席扱いにしてもらえるし期末試験もレポートに代えてもらえることになっているんですけどね」
 
「そのレポート書くのも大変そう」
「同じクラスの友人にノートのコピーを私のアパートに投函しておいてもらうようお願いしているんですよ」
「でもそれを読む時間が」
「そうなんですよ!」
 

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保志絵は“京平”についても尋ねてみた。
 
「京平ちゃんって、どうやって作るつもり?」
「私にも分かりません。その時が来たら分かるなんて、言われているんですけどね」
 
保志絵は「誰に」言われているのか訊きたかったが、何故か訊いてはいけない気がした。
 
「私に赤ちゃん産める訳無いし。もしかしたら貴司さんが他の女性に産ませるのかも。あの人、浮気性だし」
 
「うーん・・・・」
 
「私が自分で産めたらいいんですけどね〜」
「千里ちゃん、卵巣とか無いんだっけ?」
「無いですよ〜。それ昨年はタイで徹底的に検査されましたよ。頭のてっぺんから足の先まで長時間掛けてMRIで検査されたんですよ」
 
「なんか大変そう」
 
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「検査内容のひとつはどこかに睾丸が温存されてないか。睾丸って、お股の所になくても、足の皮膚に埋め込んだりしても、ちゃんと機能するんですよ」
「へー!」
「それと卵巣や子宮が無いことの確認。もし存在したら、それは私本人ではなく別の女子が身代わり受診している可能性があるから」
 
「なるほどー!」
 
「だから私に卵巣は無いはずです。20歳すぎたら、性別の変更を申請しますけど、どっちみち、それまでは貴司さんと籍を入れることができないですね」
 
「うんうん。以前は24歳くらいまでふたりが恋愛関係にあったら、とか言ってたけど、20歳すぎたらすぐ籍を入れちゃってもいいからね」
 
「そうですね〜。でも正直、リオデジャネイロの次のオリンピックくらいまではとても結婚してられないかもという気もするんですよ」
 
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(この当時はまだ2020年のオリンピック開催地は決まっていない)
 
「そんなに待たせると、淑子さんに京平の顔を見せてあげられるかどうか怪しくなってしまう」
と保志絵さんは正直な感想を言う。
 
「もしかしたら、だから他の女性に産んでもらうのかも」
「うーん・・・」
 

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娘たちの開店準備(5)

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