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■娘たちの開店準備(6)

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千里がトイレに立ったので、保志絵も部屋の隅に行き、コーラの缶を取ってきて開けて飲んだ。座った時にうっかり千里のバッグを倒してしまった。
 
「あ、ごめーん」
などと、今ここに居ない千里に謝るかのように言って、そのバッグを起こすが、何か書類のようなものが、バッグからこぼれた。それを拾い上げてバッグに戻そうとした時、それが戸籍謄本であることに気付く。
 
保志絵はそういう書類を勝手に見てはいけないと思った。
 
しかし好奇心を抑えきることができなかった。
 
千里の一家の戸籍謄本である。
 
武矢  夫 昭和36年8月18日 父:村山十四春 母:村山天子 続柄:長男
津気子 妻 昭和42年6月23日 父:奥沼大治 母:奥沼紀子 続柄:二女
千里 平成3年3月3日 父:村山武矢 母:村山津気子 続柄:長女
玲羅 平成4年7月23日 父:村山武矢 母:村山津気子 続柄:二女
 
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あら、津気子さんって私より1つ上だったのか。雰囲気が若いから自分より2つくらい下かと思ってた・・・・などと思って眺めていたのだが、何かこの戸籍謄本に違和感を覚えた。
 
何だろう・・・・と考えるが分からない。
 
その内、足音がする。あ、千里ちゃん戻って来た!と思い、慌てて保志絵はその戸籍謄本を畳んでバッグの中に入れた。
 
千里が障子を開けてこちらにニコっと会釈をするので、こちらも会釈を返す。ちょっとだけ心が後ろめたい。
 
その時、保志絵はやっと今見た戸籍謄本の記載に感じた違和感の正体が分かった。
 
千里ちゃんが「長女」と記載されていた!!
 
だったら・・・だったら・・・・千里ちゃん、男の子だったというのが実は嘘で元々女の子だったの〜〜〜〜!?
 
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でもそれなら、なぜわざわざ自分は男だとか、自分は子供が産めないなんて嘘をつかなければならないのだろう??
 
保志絵は物凄い疑問を感じたものの、それを千里に訊く訳にはいかないので、頭の中が半ばパニックになっていた。
 

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法要は翌日6日(日)の朝11時から行われた。
 
お坊さんが来て、仏檀の前で長々とお経を読む。ここの仏檀は昔の家なので、かなり巨大なものである。中に入っている仏さんの数もかなり多い。宝蔵の前妻の貞子もここに入っている。やはり淑子さんが留萌に出てきたのは、この家に自分の居場所が無くなった気がしたのかも知れないなあ、などと保志絵は思っていた。
 
お坊さんのお経は30分ほど続き、足がしびれる人が続出した感じである。その後焼香をするが、参列者が多いのでこれにもかなり時間が掛かる。しかし焼香の時はとにかく立ち上がって歩けるのでホッとする。もっとも足がしびれていたため、ふらふらとしてしまう人もかなり出ていた。
 
12時頃になって、やっと法事は終わり、お膳を出す。朝から女性親族一同で協力して作った料理である。精進料理にする予定だったのだが、長男の芳郎さんが「親父は魚が大好きだったから、魚を食おう」と言ったため、近海で取れた本マス(樺太鱒の地方名)やホッケなどの刺身を作った。この作業には魚をさばくのが得意な千里・美沙や梨菜が大活躍で、鶴子(芳郎の妻)は
「若い人がやってくれると助かる。私は最近目が衰えてきたから寄生虫を見逃すかも」などと言っていた。実際最近ではここの家で魚をさばくのはだいたい鶴子の娘の梨菜がしているらしい。
 
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お坊さんもお魚が刺身とか煮魚とか出てくるので、ちょっと驚いたようであったが、芳郎さんが趣旨を説明すると「なるほど。故人の好きなもので送ってあげるのがいちばんですよ」と言って、自分も魚に口を付けていた。
 

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12時半頃、千里と並んで座っている貴司がトイレにでも行くのか席を立ったのを見て保志絵は自分も席を立った。
 
「あんたたち2人で来たのは初めてだね」
「僕も千里も忙しかったのもあるけど、僕が浮気していて、千里を怒らせていた時期もかなりあった」
 
「そのあたりは理歌からも聞いてたけど、あんたがそんなに浮気してもあんたを捨てない千里ちゃんは、本当にいい子だと思うよ」
 
「うん。普通なら愛想尽かされてそうだというのは反省している」
と貴司は言う。
 
「でも今は上手くいっているみたいね」
「そうだね。ここ半年くらいは安定してるかなあ」
 
「どのくらい会ってるの?」
「月に2回くらい。去年は千里が大阪に来てくれることが多かったんだけど今年は僕もかなり東京に出てきてるから、東京で会うのと大阪で会うのとが半々くらいになっているかな」
 
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「交通費大変なんじゃない?」
「そんな気はする。だから千里が大阪に来てくれた時は、新幹線代あるいはガソリン代を渡してる」
 
「車で来ることもあるの?」
「うん。千里が大阪に来る時は車で来ることが多い。千里は火木土の深夜にファミレスのバイトをしてるんだよ。それで土曜日の夜勤が開けた日曜日の朝から車で5時間走って大阪に昼前に着いて、それから日曜の午後から夜までデートして、夜中の12時くらいに車で帰っていくというパターンが多い」
 
「それいつ寝てるのよ!?」
「実は僕も疑問なんだけど、千里は平気平気と言っている」
「それちょっと事故とかが心配」
 
「うん。だから新幹線にしなよと言うんだけど、新幹線だと時間が合わないから、充分な時間デートできないと言うんだよね。確かに夜中は新幹線が走ってないから」
 
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「でも心配だなあ」
 

その時、ふと保志絵は思いつくように言った。
 
「あんたたち、セックスする時はちゃんと避妊してるよね?」
「うん。ちゃんと付けてるよ」
「だったらいいけど」
 
「今妊娠するとバスケの活動に支障が出るから、ちゃんと避妊してねと言われてる。実は何度か付けずにやってしまって、凄く怒らせたこともある」
と貴司は言った。
 
保志絵はその貴司の言葉で昨夜から持っていた疑問が大きくなった。
 
「ね、千里ちゃんって、妊娠するんだっけ?」
「そのあたりが実は僕もどうも良く分からないんだけど、千里、生理はあるみたいなんだよね」
「うーん・・・」
 
「金曜日にマンションで一緒に寝た時も『今日は排卵日だから』なんて言ってたし」
 
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「うーん・・・・・」
 
保志絵は悩んだ。やはり千里ちゃんって、元々女の子なの!?だったら、京平も本当は千里ちゃんが、自分で産んでくれるのでは??
 
「貴司、千里ちゃんが男の子だった頃に、おちんちんとか触った?」
 
「それ一度も触らせてくれなかった。僕が千里と初めてセックスしたのは千里が高校に入った時なんだけど、その時も僕は千里のおちんちんとかは見てない。まるで女の子とするかのような感覚だった。もっとも、僕は千里以外の女の子との経験がほとんどないから、普通の女の子と同じなのかどうかはよく分からないんだけど」
 
貴司が千里以外とセックスしたのは緋那とした2回だけである。しかし2度とも貴司は到達できなかった。貴司は自分のはひょっとしたら細すぎるのかも知れない。その細いものが千里の人工的に作ったヴァギナに結果的にジャストフィットなのかも知れないという可能性も考えていた。
 
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「千里ちゃんって、高校1年の時に性別検査受けさせられて女の子だと判定されたんでしょ?」
 
「性別検査を受けさせられたのが高校1年の11月なんだけど、千里のチームメイトの話を聞くと、それ以前に6月にあいつドーピング検査を受けさせられているんだけど、その時『女子選手として』問題なしという検査結果が出ていたらしいんだよ」
 
「はぁ?」
 
「その時、千里は女性の検査官に検査されている。ということはその時点で既に千里は女だったということになる。ということは、そもそも僕と初めてセックスした、高校入学の時も既に女だったのではという気がする」
 
と貴司は言う。
 
「そのあたりどうなっている訳?」
 
「僕が千里のヌードを初めて見たのは中学2年の時だけど、その時千里のヌードは女の子にしか見えなかった」
 
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「うーん・・・」
 
「だから僕は千里がよく分からない。もし千里が本当に最初は男の子だったのなら、ひょっとしたら、中学1年生か、あるいは小学生の内に性転換手術しちゃったのかも知れない」
 
「そんな年齢で性転換手術なんてできるの?」
 
「普通は18歳以上でないとしてくれないよ。だから、僕はもうひとつの可能性もずっと考えている」
 
と貴司は言う。
 
「千里が男だったというのが大嘘で、実は最初から女の子だったのではってね」
 
保志絵は貴司の言葉に頷くようにしていた。
 
それなら、あの戸籍謄本と矛盾しないのである。
 
それで保志絵は、もしかして千里ちゃん半陰陽で最初は男児として届け出がなされたけど、本当は女の子だったということになって手術を受けてちゃんと女の子の形にして戸籍もその時点で修正したのでは?という可能性も考えていた。その場合、千里が妊娠できる可能性は50:50(フィフティー・フィフティー)という気もした。
 
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昨日は着くなり宴会が始まってしまい、多くがお風呂に入りそびれた。それで法要が終わった後、みんなで温泉に行くことにした。
 
礼文島温泉《うすゆきの湯》に行く。ここは昨年10月にオープンしたばかりの新しい温泉施設である。昔は礼文島には湯脈は無いと言われていたのだが、実際に掘ってみたら出てきたのである。但し地下1300mから源泉は湧出している。
 
芳朗の家からは結構な距離があるので、お友達の家からワゴン車を借りてきて何往復かしてみんなを運んだ。だいたい6人くらいずつ運ぶので、保志絵・望信・貴司・千里・理歌・美姫が一緒に運んでもらい、結局、保志絵・千里・理歌・美姫の4人が一緒に女湯に入ることになる。
 
「千里お姉さん、でも腕が太いですよね〜」
と美姫が言う。
 
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「全然女らしくないでしょ?」
と千里は微笑んで言う。
 
「そんなことないです。素敵だなあと思って」
「まあ貴司さんはこの腕の太さが気に入ってくれているみたいで、よく撫でているけど」
「おやおや」
 
「やはり元男の子だから太いの?」
と保志絵は訊いてみる。
 
このメンツだからできる質問である。
 
千里は微笑んで答える。
 
「私、男の子だった頃は、女みたいに細い腕だと言われていたのよね〜。でも女の子になってからは男に負けないような身体を作ろうと頑張って鍛えて、腕も太くなったんだよ」
 
「何だか面白い話だ」
「貴司さん、けっこう腕フェチ、足フェチみたいだし」
「ああ、あの子はそういう子かも」
 
どうも保志絵は貴司のセクシャル・アイデンティティに疑惑を感じているようである。
 
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「いつ女の子になったんだっけ?」
と保志絵は訊いた。
 
「それが自分でもよく分からないんですよね〜」
と千里は困ったように言った。
 
「今は女の子だよね?」
「まあそれは脱いでみれば分かるかと」
と言って千里は全部脱いでしまう。
 
「間違い無く女の子ですね」
と理歌。
 
「あ、パンティライナー付けてる」
と美姫が言った。
 
「今排卵期だから特におりものが多いんですよね〜」
と言いながら、千里はパンティに貼り付けているそれを外してまるめると、ティッシュに包んで脱衣場の汚物入れに捨てる。
 
「確かにそのくらいの時期に多くなりますよね」
と理歌は言いながら、首を傾げていた。保志絵も指を下唇の所に当てて、悩んでいるようであった。
 
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