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この日(8/15)、甲子園から戻ってから、千里は自宅で清香と公世に言った。
「姫路城で盆踊りがあるらしいよ。一緒に行こうよ」
「ああ、夜店とかのぞくのもいいね」
と清香。
「まあ行ってもいいかな」
と公世。
「じゃ2人とも浴衣着ようよ」
「浴衣とかあったっけ」
「小糸、浴衣3着持って来て」
「はーい」
それで小糸が持って来てくれる。
「着方が分からない」
「ああ、清香には私が着せてあげるよ。小糸、きみちゃんに着せてあげて」
「はい。公世さん、こちらへ」
それで千里は清香に蘭の模様の浴衣を着せて、自分では百合の模様の浴衣を着た。小糸は公世に蝶の模様の浴衣を着せた。
「これ、女物じゃないの?」
などと公世が言っている。何を今更。
「女の子の浴衣は私のや清香のみたいに植物柄だよ。動物柄は男の子用だよ」
「そう?」
などと公世も往生際が悪い。
しかしそれて浴衣を着た3人はサハリンに車で送ってもらい、姫路城に出掛けた。夜店はたくさん出ていた。清香が「ここは私がおごろう」などと言って、お好み焼きの箸巻きをおごってくれた。3人はそれを食べながら散策していたが、様々な夜店や道々フォークとかの路上パフォーマンスをしている人たちを見ているだけでも楽しかった。
そのうちバッタリと島根姉妹と遭遇する。
「おっ剣道部の最強美人の浴衣3ショットだ」
と言われて、千里・清香・公世が浴衣で並んでいる所を携帯で写真に撮られる。
でもそこに更に谷口春恵(しゅんけい)君が来て、島根姉妹(夏向きのワンピースを着ている)も入れた5人並んだ写真を撮られた。
「でも村山さんも木里さんも工藤さんも浴衣姿が可愛い」
と谷口君。
「可愛いよね。私たちも浴衣着たらと母ちゃんに言われたけど、着崩れさせそうと思ってワンピースにした」
と双葉。
「女の子はいいなあ。可愛い浴衣着れて」
などと谷口春恵(しゅんけい)が言っているので
「はるちゃんも可愛い浴衣着せてあげようか」
と言って、駐車場まで拉致して行き、車の中で金魚模様の可愛い浴衣を着せてしまった。
「はるちゃん、可愛いよ」
と双葉がおだてている。
「それ女の子用の浴衣?」
と公世が訊く。
「女の子用に見えるが」
と双葉。
「いや、女の子用は植物模様で動物模様は男の子用と聞いたから」
と公世。
「まあ、虎とかライオンの模様は男の子用かもしれんが、金魚や蝶など可愛いのは女の子用でしょ」
「キリンとかトンボは微妙だな」
「だったら、もしかしてぼくのも女の子用の浴衣?」
「何を今更」
「そもそもきみちゃん女の子なんだから、女の子用の浴衣を着るのが当然」
「ぼく男の子なのに」
「いや君は女の子だ」
「ちんちんも付いてるし」
「いや、ちんちんなど付いてないという確かな証拠がある」
「そんな証拠がある訳無い」
「きみちゃんの水着姿の写真見ちゃったけど、お股に出っ張りが無くスッキリしてるから、お股の形状が女の子であることは間違い無い」
「水着写真?」
「ああ、去年の夏のサマースクールの写真かな」
「うーん。。。女の子水着を着せられた記憶はある」
「そうだ。サマースクールでは女の子水着の上に男子用のトランクス型水着を穿いた気がする」
(本当は男子水着を着て胸も曝しているが、きっと記憶の混乱。女子水着の着用を勧められたが着ていない。但しサマースクールでは女子トイレを使用した(見た目が女子に見えるので男子トイレに入ろうとしたら叱られた。その後クラスメイトの女子たちに女子トイレに連行された)。あの時、本当に女子水着と男子水着の重ね着をしたのは病気治療のため女性ホルモンを投与されて胸が膨らんでいた鞠古君。公世は鞠古君と同じ部屋に一時的に入れられた:最終的には男の娘部屋で寝たのは鞠古・雅海・司で、公世は男子部屋で寝た:みんな公世が着替える時は後ろを向いていたし、公世の布団と他の子の布団の間には荷物を置いて区切っていた)
「きみちゃんが女の子であるという前提で男の子になりたいというのは理解してあげるからさ」
「困ったな。ぼくほんとに男の子なのに」
と公世はまだ言っている。
「きみちゃんには『私は女の子、私は女の子』とか催眠テープでも聴かせた方がいいかも」
「ああ、そしたら自分が女だという自覚ができるかもね」
「やだあ」
「そうだ。合宿しようよ」
と島根姉は言った。
「なぜ突然合宿の話が」
「合宿と言えばお風呂だよ。それできみちゃんの性別が確認できる」
「なんか趣旨が不純な気がしますが合宿はしてもいいかも。自然の家とかに泊まり込みます?」
「みんなで千里ちゃんちに泊まり込もう。道場もあるし」
「あまりたくさん部屋が無いけど」
「道場でゴロ寝すればいいよ」
「女の子がそれでいいのかなあ」
「誰も襲ったりしないよ」
「剣道女子とか柔道女子を襲おうなんて男がいたら表彰してもいい」
「賞品は性転換手術だな」
などと双葉たちは言うが
「ぼく襲われそう」
と公世が言っている。(公世は自分の部屋で寝てもいいと思う)
「きみちゃんは当然解剖して性別検査をするということで」
「やだー」
「きーちゃん?」
「よし、ドーミトリーを作ろう」
「やった」
「カプセルホテル程度のでいいよね」
「そのレベルなら充分ですよ」
「大浴場は?」
「うーん。大浴場作っても普段の使い道が無いしなあ」
「そうだ、プールを作りましょう。それなら普段でも使えますよ」
「プールに裸で入るの?」
「それでもいいけど、水着姿でも性別は確認できますよ」
「それ男女とも女子水着を着るのね」
「そうです。それで身体のラインを確認できます」
「女子水着を着てみたい男子は多いですよ」
「着てもらいましょう」
「ちんちんの有無もバストの有無も分かりますね」
「やだあ。私ちんちんあるのバレちゃう」
と島根姉。
「女の子からラブレター殺到するかも」
「私もちんちんあるのバレるな」
と清香。
「大丈夫だよ。既にバレてるから」
「秋から男子剣道部と女子剣道部が入れ替わったりして」
「それも面白そうだ」
それで、千里は九重達に言って、自宅の庭にアパートを一棟建てさせた。ユニット工法(*3)で部屋の部品を積み重ねてアパートにしてしまう。部屋の数は1フロアに8部屋の3フロアである。各部屋(シングルルームサイズ)にカプセル型のベッドを2つずつ入れるので最大48名を泊めることが可能である。各ベッドには電源コンセントと携帯充電用のUSB端子付きである。ネットにはwi-fiでつなぐことができる。
一方道場(37m×14m)の地下(というより床下)には4レーンの25mプールを作り込んだ。トレーニング用にはこのくらいで充分だろう。長さは“約25m”でわりと適当である。水泳部の練習に使うのではないから、いいことにする。深さは水道代・石油代節約のため約1.5mにして飛び込みを禁止にした、この深さなら、運動神経の良い子たちばかりでもあるし、溺れることはあるまい。
(後に千里の妹になる某は水泳選手のくせに東京オリンピックのゴール直後に溺れかけたが)
プールの穴を掘るのは九重たちに掘らせたのでロハであるが、浄水装置に200万円掛かった。ボイラーは本館のもの(お風呂などで使用)を兼用する。水温は26-28度“程度”で維持する。自動調整装置は付けてないので“湯加減”を見て給湯・給水を切り替える。水温計は数ヶ所に付けている。基本的には排水口の水温を見て調整する。なお、プールの底や壁はプラスチック(FRP)である。これは衝突した時の安全性を考えたものである。
なおこのプールは夕方以降は“給水”側の蛇口を閉め、“給湯”側だけにして、ほぼお風呂として利用された。裸で入浴?する女子が相次いだ。男子たちは女子たちの裸を見て遠慮した。見かねて、きーちゃんはカーテンを設置して、男子たちも利用できるようにした。
(*3) 千里はこの機会に住宅のユニットを製造する会社“ユーニン”を買収してミンタラ木材の子会社とした。このアパート建築にはここのユニットを使用した。ユニット製造には“関西組”を大量投入した。(後のムーラン・ハウジング)
また大量の木材を必要としたので、奈良県内の3つの製材所を買収。先に買収していた吉野製材と合わせて“ミンタラ奈良”として組織化した。以降、製材所は県単位で統括組織を作っていく。ミンタラ兵庫も作った。元のミンタラ木材は“ミンタラHlD”“ミンタラ北海道”に整理した。“ユーニン”はミンタラHLDの子会社とした。
翻田和弥はまゆりから「初盆やるから、もし姫路に来るようだったら寄って」と言われたので、近鉄で難波まで行き、地下鉄で新大阪に移動して新幹線で姫路駅まで行った。姫路駅には花絵に迎えに来てもらう。
そして花絵の車でまず有明町のK神社本社に連れて行ってもらった。拝殿でお参りしていたら宮司の松岡さんに声を掛けられる。
「昇殿していきなさい」
「はい」
それで花絵と一緒に昇殿して、松岡さんにご祈祷してもらった。
「しかし翻田さん、立花K神社の禰宜に任命されちゃったんだって」
「そうなんですよ」
「笠間さんはどうも誤解したようだね。僕が話をして解任してもらおうか」
「あ、いえそれは何とかなりそうなんですけど」
と言って、和弥は巫女の村山さんが個人所有のジェット機に乗せてくれて、姫路から留萌まで6時間で行けるので兼任ができないこともない状態にあることを説明する。
「凄いね。アメリカにはジェット機で飛び回る牧師がいるらしいけど、日本もそういう時代になったね」
「それでちょっとお願いがあるのですが」
「うん」
和弥は伊勢の神宮の神職さんに相談したら、姫路に留萌の神社の遙拝所を作り、留萌に姫路の神社の遙拝所を作ることを勧められたことを話す。
「遙拝所を作るのはいい考えだ」
と松岡さんも言う。
「その時、立花K神社自体がここの神社の遙拝所なので、遙拝所を拝んでも仕方無いので、ここの神社の遙拝所にしたいんですよ。それで留萌に設置する祠に収める何か依代を。御札か何かでいいので、いただけないかと思って」
「なるほど」
と言って、松岡さんは少し考えていたが
「あれがまだあったかな」
と言って、拝殿の棚から何か小さな厚紙の箱を取りだした。
「これをあげるよ」
「これは」
取り出して見ると銀杯であった。
「以前この神社で縁起物として頒布していたものなんだよ。この神社は赤松氏の城跡に建っているけどこの銀杯も赤松氏の家紋入り。作ってた会社が無くなってもう10年くらい前からは出して無いけど、これが依代にはいいと思う」
「ありがとうございます。いただきます」
「ちなみに材質は洋銀ね」
「ああ。五百円玉の材料ですね」
「神社が儲かってたら本物の銀で作れるけど」
「どこも経営厳しいですよね」
松岡さんからは普通のこの神社の御札も頂いたので、伊勢にいる間はこれを拝礼に使うことにする。御札はP神社の方でも頂いてくる予定である。
その後、松岡さんも一緒に立花K神社に行き、精霊棚が設置されている平田家の神棚に拝礼した。和弥は遙拝所に掲げる「K神社」という額については、まゆりに書いてもらった。
「私字が下手だけど」
「宮司さんに書いてもらうのが一番いいからね」
と和弥。
「ぼくの字よりはずっとマシ」
と松岡さん。
立花K神社の境内には既に大小2つの祠が設置されていた。和弥はそこに先日千里から渡された金と銀の鏡を収めた。
「和弥さん、これを」
と村山さんが2枚の木の板を渡す。常弥の字で“旭岳神社”“三泊P神社”という字が書かれている。この額を収めて遙拝所は8割くらい完成した。あとは次に留萌に行った時にしなければならない作業がある。その時は留萌側の遙拝所もセットアップすることになる。今日頂いた銀杯と、まゆりに書いてもらった額を使う。
なお村山さんによると、立花K神社内に建てた祠の材質は函館近くで採取した江差ヒバ、留萌P神社に建てたらしい祠の材質は兵庫県内(しかも姫路市内)で採取した檜らしい。今日まゆりに書いてもらった額は姫路市内で採取したイチイということである。常弥が書いてくれた額は留萌の山で採取したイチイの木で作られている。イチイは内地でも北海道でも神聖な木である。祠の建築費は3つ合わせて100万円と言われたので、まゆりに言って村山さんに払ってもらった。実費が1000万くらい掛かっている気がするが、ありがたくそれで済ませてもらう。
なお、立花K神社内の2つの遙拝所は、右に旭岳神社、左に三泊P神社で、各々正確に旭岳・三泊の方角に向けて(実際にはほぼ同じ向き)建っている。旭岳神社の方は高さ2.5m, P神社は1.8mくらいの高さである。
(和弥からは100万円と言われたものの、そんなんではどう考えても足りないと思いまゆりは実際には千里に300万円払った。千里はそれに自分で更に200万円足して500万円をP大神に渡した。千里はその他に材料の檜を300万円相当くらい拠出している。江差ヒバはA大神からもらったので大神のセルフ・サービスのようなものである)
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女子高校生・夏はスカート(11)