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大会2日目は団体戦が行われていたのを見学した。この日のお昼はマクドのクォーターパウンダーを食べた。夕飯は先生と一緒に懐石料理風の御膳を食べた。
大会3日目は午前中に個人戦の準々決勝以降が行われたが、慎(さくら)はここで負けてベスト8であった。
3日目のお昼は主催者からもらったお弁当を食べてからコンビニのカツサンドを食べた。
大会が終わってから電車で神戸に戻る。慎(さくら)は大会の疲れから帰宅するとすぐ眠ってしまった。夢の中に母が出て来た。
「あんた、インターハイまでに性転換する予定は無いとか言ってたけど、インターハイ終わったし、ちんちん切っちゃう?」
慎(さくら)は、別にちんちんが無くなってもいい気がした。
「そうだなあ。取っちゃってもいいかなあ」
「じゃ切っちゃうね」
と言って、母は慎(さくら)の制服スカートをめくり、“ショーツ”を脱がせると、ペニスの根元に鋭そうなハサミを当て、ちよきん、と切り落としちゃった。ちんちんが無くなったお股を見てスッキリしたなあと思った。
なんであんな邪魔な物をつけてたんだろうなどとさえ思う。小さい頃よく母に「切っちゃうよ」と言われてたけど、あの頃切ってもらってたら良かったなどとも思った。
翌日、慎(さくら)は就職のガイドブックを買うかなと思い町に出ることにした。
「お出かけするならこっちかな」
と思い、女の子の私服を着て出掛ける、バスに乗って町に出て、歩いていたら、声を掛けられた。
「川添さんだっけ?」
22-23歳の女性である。
「私、沼田沙苗の姉で雪代と言います」
「お世話になります」
沼田早苗というのはクラスメイトである。
「でも暑いね」
「ほんとですね」
「ねえ、プールでもいかない?おごってあげるから」
「でも私水着持って来てないし」
「ああ、水着くらい買ってあげるよ」
「そうですか」
慎(さくら)は貴子さんに電話した。
「私をまた1日だけ女の子にしてもらえませんか」
「いいよ。今どこにいる?」
「三宮のミント神戸という所なんですが」
「了解。そっちの一階トイレで」
それで慎(さくら)はミント神戸の中に入ると
「ちょっとすみません」
と沼田さんに言い、トイレに行った。むろん女子トイレに入る。するとそこに貴子さんがいた。
「もう一生女の子にしてあげようか」
「まだそこまでは」
「だったら今月いっぱい」
「それなら9月10日までいいですか?9月の第一週は女子制服で登校するから」
水泳の授業もあるし、などと思う。
「OKOK。じゃ9月11日の朝に“今の状態”に戻すね」
「ありがとうございます」
それで慎(さくら)は自分の身体が変化したのを感じた。トイレ内の個室に入り、確かに女の子になっているのを確認する。
トイレを出てから、沼田さんと一緒に水着売場に行く。ビキニを勧められたが恥ずかしいと言うと、競泳用のワンピース水着を買ってくれた。沼田さんは自分も競泳用ワンピース水着を買っていた。
その後、8階の飲食店街に行き、洋食屋さんのランチをおごってもらった。そのあと、そこから歩いて10分ほどのスポーツセンターに行き、プールに入る。女性同士なので、一緒に女子更衣室に入る。隣同士のロッカーを使い、水着に着替えた。
「均斉の取れたいい身体してるね」
と言われた。
「剣道してるからかも」
「ああ、インターハイ行ったんだっけ」
「準々決勝で負けてBEST8止まりでしたけど」
「そこまで行ったのなら充分優秀」
「ですかねー」
中では取り敢えず泳ぐ。2人共上級者レーンに入り、取り敢えず4往復ほど泳いだ。沼田さんが速いので驚いたが、慎(さくら)もがんばって泳いだ。
「結構よく泳ぐね」
「沼田さん速いです」
「君も結構速い」
ここはレジャー施設のようなものは無いが、二人とも休みながら2時間近く泳いだ。
途中ではメドレーみたいに、背泳ぎ・平泳ぎ・横泳ぎ、と泳法を変えながら泳いだりもした。
「乗っていた船が沈没したような場合、横泳ぎは重要だよ。息しながら泳げるから」
などと沼田さんは言っていた。背泳でも息できるけど方角が分からないよな、などとも思う。確かに横泳ぎは大事かも。
しかし妹の早苗ちゃんはあまり運動が得意では無いのに、お姉さんの方は運動神経いいみたいと思った。沼田さんはバタフライも見せていて、かっこえ〜と思った。
プールのあとは「汗を流そう」と言われ、市内のスパに行った。女の子の身体でお風呂に入るのは初体験でドキドキしたが、今自分は女の子なんだから何も恐れることはない、と自分に言い聞かせてしっかり入浴した。
お風呂に浸かりながら、沼田さんはこんなことを言った。
「さっき、船の沈没の話したけどさ、ある人が船が沈没して、板きれに捕まって漂流してたんだって。そこに別の人が来て、その人もその板に捕まろうとした。でも板は小さくてとても2人分の体重を支えきれない。それで彼は板に捕まろうとした人を殴って海に沈めてしまった。この人の罪は?」
「緊急避難で無罪です。カルネアデスの板ですね。たとえ人を殺しても、緊急避難、正当防衛、正当行為に該当する場合は罪に問われません」
「よく知ってるね」
「警察官になろうと思ってた時期があるから少し法律のことも勉強しました」
「なろうと思ってた時期があるって、今はなりたくないの?」
「そういうわけじゃないんですけどねー」
性別が変わっちゃったからとは言えないなと慎(さくら)は思った。
スパを出た後は
「暑い時は熱い物食べるのがいいんだよ」
と言われ、インド料理店に行き、スープカレーを食べた。スープが熱いし香辛料も利いて身体がほんとに熱くなった感じだった。でも確かに気持ちいい気がした。
よくお礼を言って別れた。
8月6日(日)、夏の甲子園が開幕した。
E高校の剣道部は夏季合宿を実施することになった。これまでは兵庫県の常勝校だったのに今年は春の大会でもインターハイ予選でもH大姫路に敗れて優勝できなかったことから、再度鍛え治そうという趣旨である。
「六甲の“少年自然の家”で一週間な」
「泊まり込みで朝から晩まで剣道の練習」
「なんか凄い」
参加者は3年生8人、2年生10人、1年生14人、の32名、“男子剣道部”16名と“女子剣道部”16名である。ここで慎(さくら)は“3年生”“男子剣道部”としてカウントされている。
男子顧問の北島先生と女子顧問の宮古先生は話し合った。
「川添さんの宿泊はどうしよう?」
「男子部屋には泊めれないし、私と同室にしましょうか」
「ではそれでお願いします」
ということで慎(さくら)は玉竜旗の時と同様、宮古先生と同じ部屋に泊まることになった。その話を聞いて慎(さくら)も宮古先生となら安心だと思ったのである。今自分は一時的に?女の子の身体になってるから男子とは泊まれない。といって女子と泊まると、自分が女の身体になっていることが女子たちにバレてしまう(今更だと思いますが)
それで8月10日、学校に集合し、送迎バスで自然の家まで行った。行くとすぐに遊歩道をジョギング。昼食にラーメンを食べた後、施設内の体育館に入り準備運動・柔軟体操、素振り・切り返し、そして対戦練習となる。慎(さくら)は2年生の新キャプテン・中田君と組んで切り返しや対戦をした。今回の合宿の主たる目的は1・2年生を鍛えることであり、3年生は指導役である。
体育館で2時頃から4時頃までたっぷり練習した。けっこういい汗を掻いた。
「夕食は6時からだから、それまでにお風呂はいってて。荷物は各自割り当て表にある部屋に置いといて」
という指示がある。慎(さくら)は宮古先生と一緒に泊まることになっているツインルームに行き、荷物を置いた。
「あれ?この部屋、お風呂とかは無いんですか」
「うん。お風呂は大浴場で」
「大浴場って男子用と女子用ですか」
「うん。ここは森の湯と岩の湯があって男女一日交替なのよ。今日は・・・」
と言って先生は部屋に張ってあるカレンダーを見ている。
「今日は森の湯が女性用になってるよ」
「女性用に行くと、女子部員たちと多分遭遇しますよね」
「そうかもね」
慎(さくら)は考えた。お風呂に入るときは当然ヌードになる。女性用の風呂に入れば、女子たちに自分のヌードを見せることになり、女の子の身体になっているのがバレてしまう。と言って、男性用のほうに入るわけにはいかない。てっきり個室にはお風呂もあるものと思っていたのに。
「ああ。そうか。身体を他の子たちに見られたくないのね」
「ええ」
「困ったね。でもお風呂入らない訳にもいかないし」
先生は少し考えていたが電話を掛ける。
「あ、百合ちゃん、ちょっと相談があるんだけど」
それで宮古先生は3年生の西川百合と会って相談したようである。それでこういう入浴の仕方をすることになった。
・慎(さくら)は女子部員たちと一緒にお風呂の前まで行く。
・慎(さくら)が入浴する。
・慎(さくら)があがってから、他の女子が入る。
「こうすれば他の女子部員には裸を見られなくて済むよ」
「ありがとうございます。ではそれで」
それで、慎(さくら)は宮古先生や女子部員たちと一緒にお風呂の前まで行く。そして先に慎(さくら)だけが“森の湯”の脱衣場に入る。中に入って、慎(さくら)はガーンと思った。確かに女子部員たちは外で待っていてくれるからここには居ない。
しかし森の湯の脱衣場には一般の女性客がたくさん居て、服を脱いでいる。既に裸になっている女性もある。一瞬逃げだそうかと思ったが、宮古先生や西川さんがしてくれた配慮を無にすることはできないと思った。
自分は先日も沼田さんのお姉さんと一緒に女湯に入ったではないか。慎(さくら)はそう思って空いているロッカーの前で服を脱ぎ、その服と着替えをロッカーに入れて、浴室に入った。そして洗い場でできるだけ急いで髪を洗い身体を洗い、シャワーを全身に描けてから浴槽に浸かった。
そして上がると身体をバスタオルで拭いて着替えの下着を身に付け、パジャマ代わりの体操服を着て脱衣場を出た。それで女子部員たちが脱衣場に入った。
こうして慎(さくら)は大浴場で平和に?入浴することができたのである。
お風呂の後はいったん各々の部屋に戻ってから17:50くらいに食堂に行き、夕食のカレーを食べる。カレーはお替わり自由なので男子も女子も、みんなたくさん食べていた。
慎(さくら)の隣の席に座った湯中みどりは言った。
「私たちはさくらちゃんのヌードを直接見てないけど、一般の女性客が入浴している中でさくらちゃんが入浴しても騒ぎにならなかったことで、さくらちゃんが女の子であることは確実。でもさくらちゃんが女の子なのは水泳の授業とかでも既に判明しているから今更だね」
「ぼく別に変な目的じゃなくて純粋に入浴のためにお風呂に入ったんだからいいよね」
「もちろん女の子が女湯に入るのは普通だから何も遠慮することないよ」
「ぼくも自分の性別のことあまり深く考えないことにする」
「自分の性別を深く考えている女子なんて居ないから、さくらちゃんもそれでいいと思うよ」
「うん」
「だから他の女子部員と一緒に入ってもいいのに」
「それはもう少し考えさせてください」
「まあいいけどね。身体が女子でも男子部員というのは、H大姫路の工藤さんも一緒だね」
「ほんとだね!」
でも自分が入浴する間、他の女子を待たせるのが悪いので翌日からは女子部員たちと同時に入る事にした。ただ他の子たちからできるだけ離れた洗い場で身体を洗い、浴槽でもできるだけ離れた場所で浸かるようにした、他の子のヌードをあまり見ないようにである。百合やみどりからは「恥ずかしがらなくていいのに」と言われたが。しかし股間に変なものがぶらさがってないのはみんなにしっかり見られた。
8月11日(金)、甲子園でH大姫路は初戦(2回戦)を迎え、甲府工業に4-2で勝利して3回戦に進出した。
千里たちは応援に動員され、甲子園球場に行って応援した。
「何この熱さ」
「殺人的な暑さだよね」
「スタンドでこんなに熱かったらグラウンドでプレイしている選手はもう鍋の中にいる気分では」
「神戸ドームか大阪ドームを使うべきよね」
「いやそれでもみんな甲子園にあこがれている」
「だったら甲子園をドーム化すべきよ」
「でもドームにしたら人工芝になるから土を持ち帰れない」
「人工芝を剥がして持ち帰るとか」
そんな荒っぽい。でも甲子園自体現在でもかなり人工芝も使用されている。
(痛みやすい部分に人工芝が使用されている。人工芝導入の際、球児たちが土を持ち帰れないではないかという意見はあったが、ちゃんと土の部分も残されている)
「今日はまだ曇ってるからまだマシだな」
「晴れてたらたまんないね」
千里は九重にかき氷を作って持って来させ、近くにいる子で食べていた。また冷水で搾った濡れタオルも配った。(「あ、いいな」と言われて結局数十人に配った)。
8月15日(火)、甲子園でH大姫路は3回戦、桐生第一に5-2で勝利して準々決勝に進出した。
千里たちはまた応援に行ったが、この日もとても暑かった。
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女子高校生・夏はスカート(10)