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10月4日(土)は友引の土曜日(しかも“さだん”の縁談吉日)なので、立花K神社には結婚式が3件も入っていた。これはいづれも和也が祭主を務めた。三三九度は恵美さんと弓佳さんでして、巫女舞は高校生巫女(高3の千里、高2の浩美、高1の志織)で舞った。太鼓は越智さんが叩き、笛は知帆さんが吹いた。披露宴の司会は光貴、エレクトーンは森田レミが弾いた。お食事は3つの式の内1番目と3番目を母里食堂が、2番目を冷水食堂が担当した。
「冷水さん、これ原価割れしてない?」
「半世紀ぶりのお呼びだから特別です。次からは普通になります」
「持続可能な営業してね」
3つ目の結婚式が終わった後、まゆりと和也は星弥・月弥を連れてウィングロードで神戸空港に向かい、桜ジェットで旭川空港まで飛んで、留萌に移動した。
旭川空港から留萌への移動はサハリンに空港まで持って来てもらっていたカローラを使用した。
ウィングロードにもカローラにも後部座席に2つのベビーシートがセットされている。
サハリンからはカローラの駐車位置だけメールしてもらった。この車の合鍵は和也がいつも持っている。(サハリンはミッキーの運転する車で留萌に戻っている)
また姫路から神戸空港まで乗ったウィングロードはコリンの手で姫路に戻され、千里の家に駐めて車カバーを掛けている。この車が神社に駐まっていると和也が居ると思う氏子さんがあるからである。
10月は北海道では七五三のシーズンである。七五三の集中参拝日は11-12日と18-19日になると思われる。姫路では権禰宜の花絵と出仕の越智で留守を預かる。人手が足りないので10月は上町社でのご祈祷は休止させてもらう。その代わり11月は毎日11:00-12:00と17:00-20:00に祈祷を受け付けるし、特に11/15-16(土日)は1日中受け付けるという掲示を出しておいた。15-16日は花絵が一日中上町社に行くことにしている。花絵は和也や千里よりは祝詞が下手だが、まゆりよりは上手い!
(祝詞の上手さ:千里>越智>>和也>花絵>まゆり:まゆりは宮司なのに!)
千里は桜ジェットのキャビンにベビーシートを2つ設置したので、今回飛行中はそこに星弥・月弥を寝せておいた。離着陸の時はまゆりと和也が抱いておく。だいたい、星弥が和也の左のおっぱい、月弥がまゆりの右のおっぱいに吸い付くのが安定するようである。
基本的には星弥はお父ちゃんが好きで月弥はお母ちゃんが好きなようである。ただしおっぱいの味は2人共まゆりのおっぱいの方を好むようである。和也はまだ子供たちがおつぱいに吸い付くので、水分を充分に取り、飲酒を控えるのはもちろん、脂肪分の多い食品(チーズ・バターなど)も避けるようにしている。まゆりはビールを飲もうとして光子に叱られていた。
神社に奉納されたお酒などはだいたい越智さんに引き取ってもらっている。
千里は京都南部の家(京都南邸)について間取りを設計した。まず住む人を本命卦の東西により分類するとこうなる。
東四命:清香・双葉・千里
西四命:コリン・公世・きーちゃん
取り敢えず小糸・百合のことは考えない。最悪近くに別の物件を買ってそちらに宿舎を建ててもいい。
さて、各々の吉方位はこうなる。
東四命:南西・西・北西、および北東
西四命:東・南東・南・および北
それでこの家には、個室を北に3部屋・南に3部屋並べて、その間にLDKやバストイレを作ることにした。北側の個室は西から双葉(北西)・コリン(北)・千里(北東)とし、南側の個室は清香(南西)・公世(南)・きーちゃん(南東)とする。千里の部屋は“洞門の鏡”を置く必要があるので必ず留萌を望む北東に置く必要がある。コリンは千里の隣に置きたい。それでこうなった。
姫路の家より少し狭いが、やむを得ない。姫路のような地方都市と京都のような大都会では地価が数倍違うから制約もまるで違う。ここは基本的に1階を住居にして2階を道場にする。誰かが朝練を始めたら、他の人にとってはそれが目覚ましになる。小糸と百合の寝室は道場の上のロフト?に取ってもいいし、建蔽率にわずかの余裕があるので離れを建ててもいいかも知れない。小糸は自分と同室でもいいし。最悪は百合はきーちゃんと同室にする手もある(彼女はきーちゃんの眷属である)。だいたいきーちゃんはきっと別の家に実質住むだろうし。きっと京都の男の娘をたくさん女の子に改造することをたくらんでいるに違い無い。
ここにはグランドピアノは置かない。弾きたい時は洛北の家(京都北邸)のほうに行く。千里自身は両者を瞬間的に移動できるし(自転車やスクーターでも20-30分程度だと思う)。
しかし司令室はどの辺に置こう。司令室は2DK程度の広さが取れたら充分なんだけど。それにしても京都の町中は高そうだ。
10月5日(日)、千里(ロビン)は朝から洞門の鏡を通って留萌に移動した。実は常弥さんから呼ばれたのである。
「ああ、千里ちゃん来たね。それでは行こうか」
と常弥さんが言い、宮司の車(カローラ:サハリンの車とは別)に善美(ドライバー)、和也・常弥・千里が乗り、A町の端まで行く。ここには鳥居は立っているものの、ほかには何も無い。
「ここは以前うちの神社の御旅所として使われていたらしいのだけど、もう30-40年くらい放置されているらしいんだよ」
常弥さんが三泊P神社の宮司に着任したのは14年前の1994年春である。それより更に20年くらい前から放置されているらしい。
「鳥居に何か額が掛かってるね」
と和也。
「年配の氏子さんによると胡桃(くるみ)神社と読めたらしい」
「くるみですか?」
「御祭神はだいこく様と聞いていたというんだけどね」
千里は言った。
「それ実はオキクルミ神を祭っていたのでは」
「ありえると思う」
と常弥も答えた。
オキクルミ(別名:アイヌラックル)とはアイヌの神様で日本神話の大国主命(おおくにぬしのみこと:だいこく様)に相当する国作りの神様である。
「だから多分これでいい」
と言って、常弥は持参のリュックからビニール袋に入れた木の枝を取りだした。そして袋から枝を取り出すと、地面に刺す。
「通(とお)ってますよ」
と千里が言う。
「やはりね」
と常弥は言う。
「ひもろぎですか」
と善美。
「そうそう」
“ひもろぎ”とは神の依代(よりしろ)となる木の枝の類いである。
常弥はその“ひもろぎ”の前で2礼2拍1礼した上で和也が聞いたことの無い祝詞を唱えた。
「いらっしゃいましたね」
と千里
「ぼくにも分かった」
と和也。
善美も頷いている。
「ちなみにこの枝はどこから」
「日高町の某所で拾ってきた」
「ああ。オキクルミゆかりの地ですね」
「これで多分1年後くらいには使えるようになりますよ」
「やはりそのくらい掛かるか」
「来年の祭りからだな」
「うちの工務店の手が空いたら祠(ほこら)を置かせます」
と千里は言った。
「よろしく」
H大姫路。
卓球部の顧問の先生が言った。
「県の卓球連盟の方からね、武藤さんと片山さんの性別を確認させて欲しいと言ってきてるんだよ」
「性別確認って何するんでしょう?連盟の人の前で裸になるとか?」
「それでは人権問題になるから(*10)、一応病院で検査を受けて欲しいと言うんだよ」
「はあ」
「それで申し訳無いけど明日神戸まで行って指定の病院で診察を受けてもらえない?」
と言って。武藤さんと雅は病院に出す書類を渡された。
(*10) オリンピックでセックスチェックが始まった当初は女子選手に裸で行進させて人権無視だと批判された。裸にするまではいいとして裸で行進させる意味が不明。
その夜0時、雅の部屋にまたオーリンが出現する。
「こんばんは。ぼくは“男の娘の味方”魔女っ子千里ちゃんだよ。雅ちゃん何か悩んでない?」
「実は明日病院で性別検査受けてきてと言われたんだけど、どうしよう」
「だったら、雅ちゃんを完全な女の子に変えてあげるよ」
「やっぱりそれかなあ」
「女の子になっちゃってもいいんでしょ?」
「戸籍上の性別も変更申請しちゃったし、もう女の子になるしかない気がする」
「性転換手術とか受けたら無茶苦茶痛いけどぼくの力で女の子になるのは痛くないよ」
「ああ。性転換手術って痛そうだね」
「女の子になってもいいと思ったら、ぼくと握手してから寝て。朝までには女の子になってるから」
それで雅は少し悩んだものの、オーリンと握手してから布団の中に潜り込んだ。その夜見た夢の中では雅はふわふわしたドレスのような服を着て数人の女性と一緒に池のようなところで水浴びをしていた。
翌朝目覚めたら何だか凄く爽快な気分だった。
はっとしてお股に手をやってみると形が変わってる。
「ぼくほんとに女の子になっちゃったみたい」
朝食はとらずに行ってという指定だったので何も食べずに、いつものように女子制服を著て家を出る。
バスで姫路駅に出て新快速に乗る。この電車の中で隣に村山さん?が座った。
「村山さん?」
「私は“魔女っ子千里ちゃん”の姉でオーロラ。雅ちゃん、女の子のこと、まだよく分かってないだろうから色々教えてあげるよ」
「あ、うん」