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ロビンはセリアの承認ももらい、A大神に頼んでこのフルートのコピーをいくつか作ってもらった。
0(original) Selia 狐のシール
00 R 稲荷寿司のシール
1 Y2 おにぎりのシール
2 G 犬のシール
3 J タヌキのシール
6 オーリタ 金色のテープ
セリアが「金のフルートのコピーも欲しい」と言ったので大神に作ってもらい渡した。セリアはそれに銀色のテープを貼っていた。銀色グループの持ち物にはどこかに銀色の部分または銀にちなむもの(AUDIの4 silver ringsなど)が無いといけないらしい。
グレースはこの機会にセリアに銀色グループの素性について訊いてみたのだが、自分たちもよく分からないと言っていた。銀色は最低5人はいるが、それ以上はいないのかも分からないと言っていた。
銀色:サリー(Sarry)・シルビア(Silvia)・スーザン(Susan)・セリア(Selia)・ソフィア(Sophia)
百円ショップのセリアはSeria だが、それとはスペルが違う。日本語でセリアと言う名前にはCelia, Ceria などもあるが(英語読みするとシーリア)、それらとも違う。どうも銀色グループの名前は全員Sで始まるようである。
セリアは、自分達は千里が6歳の時に一度死んで金銀銅の3つに分れて再生(reborn)した内の銀の系列と聞いてると言ったので、グレースは自分達がβ(ベータ)と呼んでいた系統なのではと推測した。オーリタはベータは死んだのかもと言っていたがセリアたちが“本物”であれば実は生きていたことになる。
「不確かな情報だが」金色は最低3人、銀色は最低5人、虹色は最低7人いると聞いたことがあるが、本当なのか、本当だとしても各々の実数が何人かは分からないとセリアは言っていた。それでグレースは、やはりオレンジ(青のミラー)も居るのかもと思った。もう一色は何色だろう。藍色かピンクか水色か黄緑か。あるいは白も数えるのか。ただ千里たちはお互いにみんな他の千里を装ったりするから見ていても気付かなかった可能性もある。
それによく似ているグリーン(緑)とジャスパー(碧)、赤とロゼ(薔薇)、Y2(濃黄)とy(山吹)、Y1(淡黄)とΥ(レモンイエロー)を見分けられる人は少ない。それを見分けている玲羅は特殊能力者なのではと思いたくなる。きーちゃんは赤と青の違いも分からんと言う。千里たちは全員波動も同じである。
銀色の5人は普段は三泊のP神社とは姉妹社の関係になるH町のP神社に居たらしい。H町のP大神は三泊のP大神の姉妹分に当たるはずである。関西では京都のM神社にお部屋をもらっているらしい。
「ああ、福知山市のね」
「いや、その系統の神社が京都市内にもあるんだよ。歓迎するから一度来てよ」
「じゃその内」
セリアたちが金と言っているのがグレースやオーリタの言うγ(ガンマ)で、銅と言っているのがグレースやオーリタの言うα(アルファ)であろう。今まであまり自分達と関わってなかったのは別の神社が拠点だったせいかもとグレースは思った。
また銀色は金色よりは人間に近いが、虹色ほど人間ではないようである。また銀色5人は体液が共通なので誰か一人がお酒を飲むと全員酔っぱらうとも言っていた。また一番下のソフィアはほとんど御飯を食べないが、ほかの4人が食事をしているので問題無いらしい。
この付近の性質も虹色グループと似ているようだ。青は中学時代ほとんど冬眠していたが、赤や黄色が食事しているのでその栄養で生きていた。またBw-Y1-Bs, R-Y2 の間では一人がお酒を飲むと全員酔うというのが成り立っている。また各々生理のタイミングが同期している。だいたい卵巣が無い青にも生理があるのは黄色に生理があるからだろう。子宮が無いはずの青の生理がどこから出て来ているのかはグレースにも謎である。千里の身体の仕組みはいまいちよく分からない。
8月17日 - 東京都千代田区内幸町の帝国ホテルで火災が発生したが、幸いにも宿泊客などに負傷者はなかった。
8月20日(水・友引・なる)、伊藤君と裕美は結婚式を挙げた。旭川市内のホテルのロビーで、きーちゃんが司会を務める人前式の形式でおこない、そのあと同じホテルで祝賀会をした。
式自体には双方の親や兄姉、そして睦子と千里Gだけが出た。祝賀会には2人のクラスメイトやバスケ部の部員たちが出てくれたがみんな
「いつの間に子供産んだの?」
と驚いていた。みんな裕美の代役の“ゆめ”が普通に学校に出て来てバスケもしていたのを見ているので、子供を産む暇があったとは思えなかったのである。
千里は2人にイーグレットの紙人形のお雛様(男雛・女雛セット)をあげた。また祝賀会の出席者に引き出物としてユーハイムのバウムクーヘンを渡した。これは1ヶ月前に予約しておき、ジェーンに神戸に行って買って来てもらったものである。
祝賀会は睦子が発起人をつとめたが、川南が司会をしてくれて、千里はエレクトーンを弾いた。隠し芸では“分身の術によるフルートデュエット”と称して、オーロラとセリアが金狐と銀狐を使ってレハールの『金と銀』を演奏した。
「今のどうやったの?」
「ただのペッパーズゴーストだよ」
などと答えるのはグレースである。
「いや、やはり千里は2人居るんだと思う」
「前からそう思っていた」
「千里は実は10人居るという噂もある」
「そうそう。赤青黄、緑オレンジ・バイオレット、白黒灰色、金銀銅、ダイヤ・ルビー・サファイア」
「それだと15人になる」
「いやそのくらい居てもおかしくない」
「そばに千里が居るのに千里から電話がかかってきたことある」
「札幌で千里に会った後新千歳から羽田に飛んで、東京でまた千里に会ったことある」
「試合中でも千里を抜いたはずなのにまた目の前に千里が居る」
それはむしろ玲央美のわざだよな、とグレースは思った。彼女はフットワークが凄いので抜かれてもすぐに相手の前に回り込む。
「千里がひとりでギター・ベース・ドラムス・フルート・サックス・クラリネット・ピアノ・ヴァイオリンとオクテットバンドの演奏してるビデオを蓮菜ちゃんが持ってた」
「あれはただのクロマキー合成だよ」
「いやきっと8人の千里で演奏したのに違い無い」
千里たちって各々が勝手に生きてて連帯感が無いから集まって合奏とかしないのではという気がした。
「でも金色のフルートと銀色のフルートって凄いね」
「ちょっと待って。これ本物の金では」
「まさか、私が貧乏なの知ってるくせに」
「いや千里は貧乏なように見せて意外に経済力がある」
「1000円は出せなくても1000万円なら出せるのが千里だ」
8月24日、北京オリンピックの閉会式がおこなわれた。
千里と清香は剣道連盟から呼び出されたので神戸市の連盟県本部まで趣いた。
今月末の国体のことで何か言われるのかなと思ったら違った。
「君たちがインターハイで優勝したし、対戦もハイレベルだったので特別に四段をあげようという話があったんだけど君たち既に四段取ってたんだね」
「はい。全中優勝のご褒美に中3の夏に三段を頂いてそれから3年経過したということで四段の試験を受けられるよとご連絡を頂きましたので7月に昇段試験を受けて合格して四段を頂きました」
「それで五段をあげてもいいのでは、あの試合は充分五段のレベルに達してるという声もあったんだけど、高校生に五段はさすがに早すぎるという声もあってね」
「はい」
「それで1年後に五段をあげることになった」
「ありがとうございます」
「これ剣道連盟会長の推薦状ね。来年の7月以降にその時所属している都道府県の剣道連盟に提出して。試験とかは無しで五段をもらえるはずだから」
「はい。ありがとうございます」
「その5年後、今から6年後には六段の昇段試験を受けられる」
「分かりました。精進に励みます」
「うん。頑張ってね」
9月1日 - 福田康夫首相は首相官邸で緊急の記者会見を行い、「首相および自由民主党総裁の職を辞することを決めました」と辞意を表明。福田は8月2日に内閣改造をしたばかりだった。
辞任の理由は全く不明で「国民生活の為に、新しい布陣で政策実現を期してもらいたい」ということを述べただけである。
記者会見で「あなたたちとは違うんです」の名言?を残した。佐藤栄作の「(君たちは嘘ばかり書く)。NHKはどこだ?」(つまりテレビカメラに向かって話し、記者の主観とかを入れず自分のことばをそのまま国民に伝えてもらいたいということ)、宇野宗佑の「明鏡止水」と並ぶ辞任にあたっての言葉か?
福田の辞任についてはアメリカから米軍基地の再編問題で不当な要求をされ、それを拒否して辞任したという噂(福田英雄説)がネットでは広まったが、真偽や情報の出所などは不明。
夏休みも終わりが迫った8月30日、千里や清香たちは今年も新神戸駅に集合し、国体参加のため九州に向かった。引率してくれる剣道連盟の部長さんから今年も「国体というのは開催県が優勝するためのイベントだから」と説明され、今年初参加になる1年生が呆れていた。
新幹線で小倉(こくら)まで行き、日豊本線の特急(ソニック)で大分まで行く。更に豊肥線の鈍行で三重町駅(みえまちえき)まで行き、駅近くのホテルに泊まった。
“小倉”は一般的に“おぐら”と読むことが多いが北九州のここは“こくら”であり、九州の人や鉄道ファン以外は誤読しやすい。しかし九州の人は逆に小倉を“こくら”と読むのに慣れているので京都の地名などで“おぐら”と読むケースに驚く。京都と九州で読み方が変わるものには“桂川”などもある。京都のは“かつらがわ”だが、九州のは“けいせん”である。
8月31日、少年男子と少年女子の試合がある。国体代表チームはこのようになっている。
少年女子
先鋒 花本涼世(1年・W学院)
次鋒 芳本愛美(2年・E高校)
中堅 島根双葉(3年・H大姫路)
副将 村山千里(3年・H大姫路)
大将 木里清香(3年・H大姫路)
少年男子
先鋒 木下唯太(1年・E高校)
次鋒 高村正樹(2年・W学院)
中堅 山崎一(2年・H大姫路)
副将 福田一鉄(3年・H大姫路)
大将 工藤公世(3年・H大姫路)
千里たちはホテルからタクシーで会場の大原総合体育館に入った。