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■女の子たちのウィンターカップ・最後の日(10)

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笛。
 
ヘルドボールである。
 
一瞬全員がポゼッションアローの方向を確認した。
 
ポゼッションアローは現在P高校を示していた。それでP高校のボールとなる。
 
この試合、最初はN高校がティップオフに勝った。しかし揚羽のシュートがリングに挟まる事態が起きて、P高校のスローインで再開された。その後、ボールの所有権が不明確になる事態は起きず、2PはN高校・3PはP高校・4PはN高校・5PはP高校がスローインの権利を得て、この第6ピリオドはN高校のスローインで開始されている。その状態で「ジャンプボール・シチュエイション」が起きると、オルタネイティング・ポゼッション・ルールに従って、P高校がスローインの権利を得るのである。
 
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渡辺や宮野がホッとするような表情をしている。
 
この時、もしポゼッション・アローがN高校を示していたら、この瞬間P高校は敗北していた。
 

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残り時間は7秒。
 
横川がスローインをする。
 
宮野から伊香にパスが行く。伊香が不二子を振り切ってシュート体勢に入る。ぎりぎりスリーポイント・ラインの外側である。これが入れば逆転で、勝利は濃厚となる。
 
ところがそれを回り込んで阻止しようとした不二子が伊香の目の前で派手に滑って転んでしまった。
 
ビクッとして伊香の手元が狂う。
 
それで伊香のシュートはゴールには届かず手前に落ちてしまう。
 
あやうくアウトオブバウンズになりそうなのを、渡辺が飛び付き、自分の身体と入れ替えるようにして駆け込んできた宮野にパス。宮野がシュートするも揚羽のブロックが決まる。こぼれ球に佐藤と千里が駆け寄るが、一瞬速く佐藤がボールを取り、そのままシュート。
 
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直後にブザーが鳴る。
 

審判はシュート成功のジェスチャー。
 
「2ポイントゴール、札幌P高校・佐藤玲央美」
という場内アナウンス。
 
「同点に付き、再々延長、トリプル・オーバータイムになります」
とアナウンスは続けた。
 
第6ピリオドの得点は12-12.合計では122-122である。
 

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「不二子ちゃん、大丈夫?」
とベンチに引き上げてきた不二子に心配そうに南野コーチが声を掛ける。
 
「あ、平気です。身体だけは丈夫なんで。でもすみません。大事な所で転んでしまって」
と不二子。
 
「いや、あれはファインプレイだった気がする」
と暢子は言っている。
 
「暢子ちゃんはもう大丈夫?」
「もう全然痛みは無いです。次のピリオド行きます」
「よし」
 

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F女子高のメンバーが居る付近。
 
「延長戦って何回までやるんでしたっけ?」
と晴鹿が訊いている。
 
「決着がつくまで」
と彰恵。
「10回でも20回でも」
と百合絵。
 
「確かNBAでセックストゥプル・オーバータイムまでしたことあるはず」
と彰恵が言うと
 
「セックス?」
と志麻子が声を出す。
 
「ラテン語で6のことだよ」
と隣で美稔子が言う。
 
「私、中学の時、友だちから英語で『6匹の動物』って廊下で叫んでごらんと言われたことある」
「叫んだの?」
「叫んだら、男子が凄く変な顔して見てた」
「まあ男避けにはなるかな」
 
「どっちみち女子高では恋愛機会は無いし」
「私、女子高ってレスビアンとかあるのかなって入学する前思ってたけど、その手の話って聞きませんね」
「やってる子もいるのかも知れないけど、私たちはバスケ一筋だしなあ」
 
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などと言っていたら
「絵津子ちゃん、女の子たちからラブレター随分もらってましたよ」
と美稔子が言う。
 
「ああ。確かに漢らしい子だからなあ」
「そもそも最初、女装男子かと随分思われたみたいだったしね」
 
「でも去年のインターハイ準決勝でN高校はJ学園とトリプル・オーバータイムまでしましたね」
「今年のインターハイでもうちと準々決勝で延長戦やったしね」
と言って彰恵は唇をかみしめる。
 
あれは終了間際4点差をつけてほぼ勝利を確信していた所を千里にうまくやられて土壇場で追いつかれた苦い体験であった。
 
「勝利を確信してしまうと、なぜかそこから負けるもんなんだよなあ」
と彰恵がひとりごとのように言うと
 
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「漫画でよくある死亡フラグですね、それ」
と美稔子は言った。
 

第7ピリオドが始まる。
 
N高校は 雪子/久美子/海音/暢子/紅鹿
P高校は 赤坂/伊香/猪瀬/河口/岩本
 
というオーダーで始める。佐藤・宮野、千里・揚羽は疲労が激しいのでどちらも休ませた。また渡辺はさっきアウトオブバウンズになりかけたボールを戻した時に身体を床にぶつけてしまい、少し打ち身をしたようである。それでアンメルツを塗ってもらって休んでいる。N高校は海音が出たことでベンチ全員出場である。P高校は控えセンターの工藤だけがまだ出ていない。
 

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先ほどのヘルドボールでP高校がスローインしたので第7ピリオドはN高校のスローインで始める。
 
海音が雪子にスローインして雪子がドリブルでボールを運ぶ。海音には猪瀬が付いていて、どう考えてもこちらが弱い。そこで雪子は伊香とマッチアップしている久美子にボールを送った。
 
すると久美子の頭の中には今朝揚羽から言われた「出場したらひたすらスリーを撃て」ということばが残っている。そこでいきなりスリーを撃とうとする。伊香はびっくりした。自分ならまさかこんな遠距離から撃たないという距離である。慌てて停めようとして、久美子の腕に当たってしまう。
 
笛が鳴る。
 
「チャージング、白11番」
「すみません」
と言って伊香は手を挙げる。
 
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スリーポイントシュート中のファウルなのでフリースローが3本与えられる。久美子はこれを3本ともきれいな決める。0-3.
 
こうしてこのピリオドはN高校が久美子の(実質)スリーで始まった。
 

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久美子は第3ピリオドでもスリー2本と渡辺の自殺点を招いて8点ももぎ取っている。P高校は、やはりこの子は隠し球の要警戒人物と判断して、なんと猪瀬がマッチアップする。
 
他の組合せは、赤坂−雪子、伊香−海音、河口−暢子、岩本−紅鹿となった。
 
PG対決の所では雪子の方が上手いのだが、河口−暢子の所は河口がこの5分間に集中して暢子を停めるつもりで入っているので、このピリオドはお互いになかなか点を取れないままピリオドが進行した。本来ならP高校は猪瀬も得点要員なのだが、彼女は久美子にピタリとついて久美子のプレイをひたすら邪魔する。一方の久美子は技術は大したことなくても体力はあるのでひたすら走り回る。それで猪瀬も久美子を追って走り回ることになり、このピリオドはそれで終始してしまった。
 
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このピリオドでは両軍ともシュート失敗からの攻守交代を何度もやる。かろうじて3分ほど経った所で赤坂が2点取るが、すぐに紅鹿が2点取って、2-5となる。
 
これはやばいぞというのでP高校は佐藤・渡辺を投入する。N高校も千里・絵津子を投入する。
 
それで佐藤が何とかスリーを撃ち込んで5-5とした所でピリオドは終了した。
 
このピリオドの得点は5-5で、合計では127-127である。
 

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インターバルに野村君とお互いの近況報告をしていたら、若葉の頭に突然何か落ちてくる。
 
「わっ」
と声を挙げて手に取ると花束である。
 
「ごめんなさーい」
と後(上)の席に座っていた、同い年くらいの女の子が謝る。
 
「いえいえ」
と言って若葉も笑顔で花束を返す。
 
「すみません」
と隣に座っている男の子も一緒に謝っている。若葉はそのふたりの関係が判断つかない気がした。兄妹ではなさそうだし、といって恋人というほども打ち解けていない感じ。あ、自分と野村君くらいの関係かな、などと思った。
 
「ローズマリーの花束、香りがいいですね」
「ええ、私この花が大好きなんですよ」
「今出ているどちらかの高校の応援ですか?」
「いえ、この後の男子の準決勝の応援で」
 
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「なんか試合が伸びてるみたいですね」
「ええ。でも凄い熱戦ですね」
「ほんとほんと、私もつい見てて力が入っちゃう」
 
若葉はそんな会話を交わしながらも、その女の子に何か不思議な「影」があるのも感じ取っていた。
 

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第8ピリオド(クアドルプル・オーバータイム)になる。
 
どちらも、もうこのピリオドで決着付けようという態勢で来た。
P高校 徳寺/伊香/渡辺/宮野/佐藤
N高校 不二子/千里/絵津子/暢子/揚羽
 
と第1ピリオドのスターターとほぼ同じラインナップになる(雪子の代わりに不二子が入っているだけ)。
 
このピリオドでも両者激しい戦いが行われるのだが、主力が揃っているにも関わらず、両者ともシュート精度を欠いた。いつも精度のいいシュートをする佐藤・千里が各々1回ずつシュートを失敗している。どちらも相当のスタミナを持っているのだが、さすがに疲れが身体を包んでいる。佐藤もやはり疲れ切ったのか、あまり千里に話しかけてこなくなった。
 
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伊香はこのピリオドで撃ったスリーが全部外れた。疲れの問題もあるが、しばしばシューターというのは入る時はどんどん入るのだが、外れだすとどんどん外れる傾向があるのである。
 

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点数はシーソーゲームで進む。
 
中盤、千里が佐藤をうまくかわしてスリーを入れ4-7にすると、佐藤も千里をうまくかわしてスリーを放り込み、7-7の同点にする。
 
その後のN高校の攻撃。残り時間はあと1分ちょっとである。不二子がドリブルして攻め上がる。千里にパスするが、佐藤は疲れているにもかかわらず気力を振り絞って接近ディフェンスする。バックステップしても付いてくるので、やむを得ず隣に居る絵津子にパスする。
 
その時、渡辺がそのボールをカットしようと飛び出して・・・
 
床に躓いて転んでしまう。
 
そして渡辺の身体はロケット弾のような感じで絵津子の身体を直撃し、2人は一緒に倒れてしまった。
 

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笛が吹かれる。
 
審判が駆け寄ってくる。千里と佐藤も駆け寄る。
 
「大丈夫?」
と声を掛ける。
 
渡辺が起き上がって「絵津子ちゃん、ごめーん」と言っている。
 
ところが絵津子が起き上がらない。
 
「えっちゃん!?」
と言って千里は近寄り、絵津子の身体を揺すろうとしたが《びゃくちゃん》に停められる。
 
『頭を打ってる。動かしてはダメ』
 
渡辺も絵津子が起き上がらないのに驚き
「絵津子ちゃん?」
と言って身体を動かそうとしたので千里が停めた。
 
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