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■女の子たちのウィンターカップ・最後の日(2)

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貴司はふと気づいた時、自分がどこに居るのか分からなかった。
 
車の運転席に居る。車は駐まっている。エンジンも停止している。隣を見ると芦耶が助手席で眠っている。揺すってみたが熟睡しているようだ。貴司は取り敢えず車の外に出てみた。あれ?ここは見たことがある。貴司は誘われるように、建物の中に入った。
 

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冬子は12月19日の大騒動以降、世間的にはずっと自宅内に籠もっていることになっていたのだが(親戚の家に身を寄せているのではという噂も立っていたもよう)、実際には若葉を身代わりにして度々外出し、22-26日にはKARIONの制作にも参加した。
 
親の説得には数ヶ月かかるかもと思っていたのだが、自分の父も政子の父も「歌手活動を高校卒業まで自粛する」という条件で、むしろレコード会社との契約自体には許容的になってくれたのが助かった。
 
(それでこのあとローズ+リリーは数年間にわたって「活動していないメジャー歌手。ただしCDは度々リリースされる」という不思議な存在になるのであるのだが、冬子もそこまでは思い至らなかった。この頃冬子は高校卒業まで自粛とは親と約束したものの半年程度で現役復帰するつもりでいた)
 
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27日に都内某所で冬子・政子とその両親、町添部長・松前社長・加藤課長・秋月さんが会って契約書の交換をした。
 
そしてこの日は蔵田さんから「お前しばらく引きこもりしてるだろ?だったら時間取れるよな?」などと言われて、どさくさまぎれに押しつけられた楽譜の整理作業をするつもりだったのだが、朝から若葉が来訪する。
 
母もここ数日冬子の身代わりに家の中に居てくれた若葉とすっかり仲良くなっていて
「この子が、ふつうの男の子だったらお嫁さんになってほしいくらい」
などと言って歓迎して、お茶を入れてケーキを出して歓待した。
 
「でも若葉、ほんとにありがとう。若葉がいなかったら私、どうにもならなかったよ」
と冬子も言う。
 
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「学校どうするの? 冬休み明けには出てくる?」
「うん。それが学校からはほとぼりが冷めるまで自宅待機していてくれないかと言われていて。たぶん1月いっぱいくらい自宅待機になるんじゃないかな」
「謹慎?」
「いや、あくまで自宅待機。先生が時々顔出して出張授業してくれると言ってる」
 
「それはいいね。でも1ヶ月もあったら、その間に性転換手術くらい受けられるんじゃないの?」
 
「それ高校卒業するまでは身体にメス入れないってお父ちゃんと約束したから」
「黙ってやればバレないよ」
と若葉が言うと、冬子の母は笑っている。
 
「なんかテレビ局が私が性転換手術済みである証拠といって、病院の診断書を映していた。あれどこで入手したんだろうね。私おかげでお父ちゃんにまだ性転換していない証拠にあそこを見せるはめになったよ」
 
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「ああ、あの診断書は私が流しておいた」
「犯人は若葉か!」
 
「実際は、奈緒がワープロで作ったニセモノなのにね。あんな名前の病院、どこを探しても存在しないし」
「若葉にしても奈緒にしても、随分私を煽るからなあ。早く女の子の身体になっちゃえよと」
 
「そうそう。新宿の○○クリニックの先生が、おちんちん切るだけなら、いつでも手術してあげるからその気になったら連絡してねと言ってたよ。今年中に切っちゃったら2月から学校に出て行く時はもう完全に女子高生になれるでしょ?」
と若葉が言うと、母はさすがに顔をしかめる。
 
「いや、高校卒業まで男子高校生でいるとお父ちゃんと約束したし」
「これだけ世間に自分の性別さらしちゃったんだし、2月からは女子制服で出ていった方が問題無いと思うけど」
「自粛する。おちんちんも切るのは高校卒業した後にするつもり」
 
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「だってもう睾丸は取っちゃってるんだし、おちんちんは立たないから切っても別に影響無いでしょ?」
「まだ睾丸も取ってないんだけど?」
「そうだね。お母さんの前ではそういうことにしておこうか」
 

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東京体育館。
 
岐阜F女子高と東京T高校の試合が終わり両軍のメンバーがフロアから去る。とともに1階観客席で応援していた両校の生徒・関係者も退場する。そして代わりに札幌P高校と旭川N高校の応援の生徒たちが入って来た。
 
札幌P高校からも旭川N高校からも各々数百名の応援の生徒・OGなどが集まっている。関東周辺に住んでいるOGや関係者もいるが、多くは昨夜夜行急行《はまなす》で津軽海峡を越え、新幹線に乗り継いで来てくれた人たちである。
 
札幌2200(はまなす)539青森552(つがる2)648八戸655(はやて2)951東京
 
N高校の応援団は貸し切りバスで札幌まで移動して《はまなす》に乗ったらしいが、《はまなす》の車内では、チケットを交換したりして一応両校の関係者の車両を分離したらしい。それでも多少入り乱れたものの、入り乱れた箇所は結構和気藹々としたムードであったということだった。また旭川の市長さんまで来てくれたらしいが、市長さんは朝一番の飛行機(新千歳730-910羽田)で来たとのことであった。(旭川からの第1便は1050羽田着なので間に合わない)
 
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「なんか凄い雰囲気ですね」
とその観客席を見て、揚羽が言った。準決勝までも結構自費で北海道から来てくれた生徒や東京近郊のOGなどが応援席に座ってくれていたのだが、今日は物凄い数になっていて声援も凄い。それを見て千里も武者震いしていた。
 
やがて12:00、決勝戦が始まる時刻になる。ひときわ凄い歓声である。
 
コートの正面に向かって左側に札幌P高校・右側に旭川N高校のメンバーが並ぶ。両チームで最初に出る5人がウィンドブレーカーを脱いで他のメンバーとは別れて立っている。
 
場内アナウンスで
「札幌P高校。今年のインターハイ優勝校、北海道」
と学校が紹介されたあと、スターティング・ファイブが紹介される。
 
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「4番・宮野聖子」
と名前が呼ばれると、宮野は他のスターター4人とひとりずつハイタッチ、更にそれ以外のメンバー全員ともひとりずつハイタッチしてからコートに出る。
 
「5番・徳寺翔子」
と呼ばれると、徳寺は残っているスターター3人とハイタッチ、他のメンバーともハイタッチしてからコートに出る。
 
「11番・伊香秋子」
「12番・渡辺純子」
と呼ばれて各々その儀式をしてコートに出た後、最後に
「15番・佐藤玲央美」
と呼ばれ、(スターターは残っていないので)ベンチメンバー全員とハイタッチして佐藤もコートに出る。
 
佐藤はキャプテンなので本来4番をつけるのだが、今回、彼女は道予選の時にU18アジア選手権に出ていたので、道予選では副主将の宮野が4番をつけていた。それで本戦でもその番号を踏襲し、佐藤は道予選で2年生ポイントガード中島茉莉子がつけていた15番をつけているのである。従って佐藤はバスケ部のキャプテンではあるが、今大会の試合上のキャプテンは宮野である。
 
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続けて
「旭川N高校・北海道代表。今年の国体を制した旭川選抜に多数の選手を出しています」
と紹介された上でこちらもスターティング・ファイブがひとりずつ紹介される。
 
「4番・原口揚羽」
と呼ばれるので揚羽が他のスターター4人とハイタッチ、それ以外のメンバーともハイタッチしてコートに出て行く。
「5番・森田雪子」
「7番・湧見絵津子」
「16番・若生暢子」
と呼ばれ、最後に
「17番・村山千里」
と呼ばれて、千里がベンチメンバー全員とハイタッチしてからコートに出た。
 
今日のN高校のスターターに関して、センターを揚羽で行くか留実子で行くか、若干の議論があったのだが、南野コーチが「キャプテン頑張れ」と言い、揚羽も「はい。では自分が最初は行きます」と言って先発することになったのであった。
 
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このあと両軍のベンチで指揮を執るコーチが紹介される。
 
「札幌P高校・十勝広重コーチ」
「旭川N高校・宇田正臣コーチ」
と呼ばれて各々前に出て一礼をした。
 
その後、このゲームの審判3名が紹介され、テーブル・オフィシャル4名とモップを持った掃除係6名が名前は紹介されないまでも前に出て一礼する。この試合のTOと掃除係をしているのは実際には東京E学園のバスケ部員で、その中には国体で対戦した東京チームに入っていた手塚さんの顔もある。千里は制服姿の手塚さんの熱い視線を感じた。自分がこのコートに選手として立ちたかったろうなという思いを感じ取ると、本当に自分はここで全力を尽くさなければという気持ちがあらためて沸き起こってきた。
 
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キャプテン同士、宮野と揚羽で握手をした後、ティップオフもするその2人がセンターサークルに入り、他のプレイヤーはその周囲を囲む。この時、P高校とN高校のメンバーがひとりずつ互い違いに並ぶのが一般的である。
 
審判がボールを高くトスする。ボールは揚羽がうまくタップし、雪子が取ってドリブルで攻めあがった。
 
P高校はマンツーマンの守備を選択している。雪子−徳寺、千里−佐藤、絵津子−渡辺、暢子−宮野、揚羽−伊香という組合せになった。
 
今日の対戦ではスターターにしても、マッチングにしても両軍とも奇策を用いることなく、最初から正々堂々と実力でぶつかり合おうという態勢である。
 
雪子から暢子にパスが行く。
 
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宮野との一瞬の心理戦のあと右側を抜いて中に進入する。シュートしようとするが、フォローに来た伊香がうまいディフェンスをする。そこでシュートするかのようなステップから右側に素早いパス。それを揚羽が取ってミドルシュート。
 
ボールはリングに当たったのだが・・・
 

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ボールはなんとリングにはさまってしまった。
 
審判が棒を持って来てボールを下に落とす。
 
これはジャンプ・ボール・シチュエイションである。昔のルールならここで再度ジャンプボールをしていた所であるが、2003年のルール改訂でオルタネイティング・ポゼッションが適用されることになっている。先ほどのティップオフでN高校がボールを取得したので、P高校のスローインということになる。試合中、このようにボールの所有権が不明確になる度に1回交代でスローインの権利を得るのである。
 
(昔のルールならこういう場合、片方に長身のプレイヤーが居た場合、本来は公平になるべきジャンプボールが全く不公平なので、その問題を解消するために導入されたルールである。オフィシャル席の所には次のオルタネイティング・ポゼッションがどちらになるかを示す矢印(ポゼッション・アロー)が設けられている)
 
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揚羽に「ドンマイ」と声を掛けてから、N高校のメンバーは全員自コートに下がってディフェンスの態勢を取る。P高校が伊香のスローインから徳寺がボールを運んで攻め上がってくる。
 
徳寺から渡辺に速いパス。しかしこれを絵津子が物凄い瞬発力でカットする。ところが渡辺はカットされた次の瞬間、更に物凄い瞬発力で飛び出し、カットされたボールを再び奪い取った。
 
そして攻撃に転じようと走り出していた絵津子を置き去りにしてそのままドリブルで中に進入する。フォローに来た暢子を華麗にかわしてシュート。渡辺のシュートは物凄い速度でリング内側に当たりネットが激しく揺れる。ボールはいったん小さく上に跳ね上がったものの、落ちてきて・・・・
 
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リングの所でそのまま止まってしまった!
 

ボールは一見リングの上で停まっているかのように見える。
 
審判が脚立を持って来て登り、ボールの状態を確認する。審判はいったんそのまま下に降りてから、ゴールが有効であるというジェスチャーをした。念のため言葉で説明する。
 
「ボールの下部1cmほどリングの下に出ているので、ゴールを認める」
 
バスケットのボールは「ボールの一部が少しでもリングの内側の上面より下にかかっている場合」はゴール成功とみなされるルールである。
(JBA競技規則16.1)
 
スコアボードのP高校側に2点が表示された。場内アナウンスも「2ポイントゴール、札幌P高校・渡辺純子」とアナウンスする。
 
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あらためてボールをゴールネットから外し、ついでにネットの状態も調整した上でゲームはN高校のスローインから再開された。
 

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