広告:オンナノコになりたい! コスプレ編
[携帯Top] [文字サイズ]

■女の子たちのウィンターカップ・最後の日(4)

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 
前頁次頁目次

↓ ↑ Bottom Top

P高校相手に接戦を演じていることでハーフタイムのN高校控室は明るかった。
 
「でも次のピリオドは仕掛けてくるでしょうね」
「このままもつれたままというのではチャンピオンである向こうが苦しくなる。突き放す策を打ってくるはず」
 
「まあ何をされても焦らないことが大事。無理な作戦は絶対歪みも来る。そこを狙って反撃すればいいんだ」
と宇田先生は言っていた。
 
「バストパッド沢山入れて作った胸は、歩いている最中にパッドを落っことすのと似たようなもんだな」
と暢子。
「僕もおちんちん落としてしまったことあるな」
と留実子。それは周囲がパニックだったろう!
 
そろそろ時間だというのでフロアに戻る。コート上では東京I学園のバレエ部の生徒たちによる美しい舞が披露されていた。
 
↓ ↑ Bottom Top

「きれーい」
と言って絵津子が見とれている。
 
「私も小学2年生の頃までバレエ習ってたんだけどな」
とソフィアが言う。
 
「へー。すごい」
「でもあんたはバレエよりバレー向きじゃないかと言われたから辞めた」
「ソフィーの詰まらないダジャレが出る時は調子がいい時だな」
 
「千里さんもバレエ習ってたんでしたっけ?」
「うちは貧乏だから、そんなの習ってないよ」
「でも小学3年生の時に女の子のチュチュ着て白鳥の湖を踊ったと聞きましたけど」
「どこでそんな根も葉もない噂が」
 

↓ ↑ Bottom Top

バレエ部の生徒達のパフォーマンスが美しく終了した後、大きな拍手が送られて彼女たちが退場する。N高校とP高校の生徒がベンチに座りゲーム後半の開始を待つ。
 
その時、千里はふと視線のようなものを感じて観客席を見た。
 
嘘!?
 
そこには貴司の顔があった。
 
うっそー!? 今日まで練習があるから来られないけど頑張れとか言ってなかった? 来てくれたんだ! 千里は心のタガが外れて自分の思いが全部表情に出てしまうのを停めきれなかった。
 
「そこな非処女は何、恋する乙女のような顔をしている?」
などと暢子から言われる。
 
「えへへ。私頑張るね」
と千里。
「千里さん、彼氏が見に来てるんですか?」
と絵津子。
「全然そんな話聞いてなかったんだけどなあ」
と千里。
「恋人観戦はいいが、腑抜けにならないように」
と薫。
「いや、千里はとっくの昔に腑は抜いていたはず」
と暢子。
 
↓ ↑ Bottom Top


第3ピリオド。
 
P高校は180cmトリオを揃い踏みさせた。徳寺/渡辺/河口/宮野/佐藤というラインナップである。渡辺純子も178cmの背丈があり、162cmの徳寺を除くと見上げるような背丈のチームである。
 
N高校は雪子(158)/千里(168)/蘭(168)/リリカ(175)/留実子(184)というメンツにする。揚羽は前半ずっと出ていたので、取り敢えずこのピリオドはお休みとする。
 
オルタネイティング・ポゼッションがP高校の番だったので、センターラインからP高校のスローインでゲームは開始される。宮野がスローインして徳寺がドリブルして攻撃の筋を伺う。
 
N高校はマンツーマンで守備をするので、徳寺−雪子、渡辺−蘭、河口−リリカ、宮野−留実子、佐藤−千里というマッチアップになる。ここで渡辺の所が突破しやすそうな気がするので渡辺にボールを送るが、蘭が物凄いガードをする。たまらず徳寺に戻し、宮野にパスして、宮野が留実子を抜き、まず2点。
 
↓ ↑ Bottom Top

N高校の攻撃となる。雪子がドリブルで攻め上がり攻撃態勢を整えるが、P高校はさっとゾーンディフェンスを敷いた。但し佐藤だけが飛び出して千里の傍に付く。ダイヤモンド1のシステムである。
 
雪子は普段と変わらない表情でパスを回すが、ボールマンに対して相手は隙間を詰める運用をするので、どうにも進入が困難である。そこで千里にボールを送るものの、佐藤が激しいガードをするのでシュートさえ撃てない。やむを得ず雪子に戻すが、攻めあぐねている内にショットクロックはどんどん消費される。
 
リリカと留実子がディフェンスとの身体の接触覚悟で制限エリアに同時に走り込む。雪子がボールを投げる。いったんリリカが掴み掛けたのだが、河口が素早い動きでそのボールを叩き落とすように奪う。こぼれたボールに徳寺が飛び付きターンオーバー。徳寺はそのまま高速で走って行き、速攻の姿勢である。
 
↓ ↑ Bottom Top

しかしN高校も蘭が必死に戻って速攻だけは何とか防ぐ。徳寺と蘭が対峙している間に他の4人も戻る。
 
徳寺に蘭が付いているので、(こちらから見て)左肩に佐藤−千里、右肩に渡辺−雪子、左底に河口−リリカ、右底に宮野−留実子という変則的なマッチアップになっている。
 
ここでP高校は今年の同校の「お家芸」であるスピード・バスケットを仕掛けた。全員が素早く動き回ると同時に物凄い速度でボールがパスされる。これにあまり慣れていない蘭やリリカがボールの場所を見失っているので千里が声を出して注意する。それでも一瞬リリカがボールを見失った瞬間、そこから河口が飛び込んで来る。あっという間にシュート。
 
入って2点。
 
↓ ↑ Bottom Top

第3ピリオドはP高校が立て続けに点数を取って始まる。
 

P高校がゾーンを敷いているので、N高校はT高校戦でやったように右側にプレイヤーを集めるオーバーシフト戦略を用いてみたものの、P高校は千里に佐藤が付いているほかは他の4人を右側に全員集める。千里が佐藤に厳しくマークされているので、「引いて守っているゾーンをスリーで崩す」戦略が使えない。
 
反対側にボールを放り込むと同時に雪子や蘭が走り込む作戦も採ってみたが、すぐに渡辺がカバーに走って行き、行く手を阻む。そういった向こうの動きがとてもスムーズである。どうもP高校は昨日の準決勝T高校戦の後で、N高校がオーバーシフトをしてきた時の対処をかなり検討し実践練習もこなしていたようである。
 
↓ ↑ Bottom Top

結局攻めあぐねている内にショットクロックが鳴ってしまう。24秒ヴァイオレーションでP高校のボールとなる。
 

↓ ↑ Bottom Top

P高校が4回続けてゴールを奪い、このピリオドの点数が8-0となった所でN高校はタイムを取った。放送局の人にベンチ・マイクのスイッチを切ってくれるよう頼む。
 
「済みません。ボールの動きに目が付いていきません」
とリリカが弱音を吐いた。
 
「あれはボールに気を取られすぎると、マークを外されるんだよ」
と千里が注意する。
 
「あ、そうですよね!」
「だから声を出し合おう。とにかく自分がマークしている相手に置いて行かれないようにしっかり走って。それで今目の前にボールがあったら、声に出して『ボール!』と言うこと」
「はい!」
 
「相手のゾーンはどうやって攻めましょうか」
と揚羽が訊いたのに対して、宇田先生は
 
↓ ↑ Bottom Top

「攻めなくてもいい」
と言った。
 
「え〜〜!?」
 
「どんどん走ろう。こちらが走り回れば向こうはそれ以上に走り回らなければならない。向こうはわざわざたくさん走り回ってくれている。だからもっと走り回らせればいいんだよ」
と宇田先生は言った。
 
「昔アニマル1というアマレス漫画があってね」
と先生は言う。
「ローリングストーンという大技が出てくる。相手の身体と一緒になってグルグルと転がり回るんだけど」
「それ、どういう意味が?」
「うん。意味不明。でも必殺技ということになっていた。その技を掛けられた主人公がその技を破るのに使ったのが、相手と一緒に更に転がるという対処法だったんだよね」
「意味が分かりません」
「うん。当時の読者もみな意味不明だったと思う」
 
↓ ↑ Bottom Top

「でも何となく分かります」
と暢子が言う。
「相手が走り回るバスケを仕掛けているんだから、こちらはもっともっと走り回ればいいんですね」
「そういうこと。そして走り回れば疲れるよね」
 
「あ」
 
「じゃ私たちの役目は相手を疲れさせることですね」
とリリカが言う。
「うん」
 
「じゃ、待って。それならみんなの左手の梵字を消す」
と千里は言い、近くに置いている自分のバッグの中からインククリーナーを染み込ませた脱脂綿(個包装)を取り出し、蘭とリリカに渡す。
 
「激しく動き回るんなら、梵字を消しておかないと体力がもたない」
「わあ、これで消えるんですか?」
「うん。緊急に消したい時のために持っているんだよ。本来筆の洗浄や衣服に付いた時のために作られたものなんだけどね」
「へー」
 
↓ ↑ Bottom Top

「森田(雪子)は交代させましょうか」
と南野コーチが言う。
 
「ああ。体力が足りないよね。じゃ越路(永子)君で」
と宇田先生。
 
「え〜〜〜〜!?」
と本人がびっくりしていた。
 
「じゃ、永子ちゃんにも」
と千里は言ってインククリーナーを渡した。
 

↓ ↑ Bottom Top

タイムアウトが終わり、雪子だけ永子に交代して出て行く。向こうはこちらが不二子を出してくると思っていた雰囲気で、対不二子用に落ち着いたプレイをする3年生の北見幸香を出そうとしていたようであるが、こちらが永子というのに気づき交代を取り消した。さっきと同じメンバーで出てくる。スピード・バスケットを仕掛けるにはさきほどのメンバー、あるいは猪瀬・歌枕あたりで構成する必要がある。
 
ゲームが再開される。
 
永子がゆっくりとドリブルで攻め上がる。
 
しかしこの場面で永子というのは意外に正解かもと千里は思った。彼女は決して慌てたり焦ったりはしないので、どんな状況でも平常心で自分ができるだけのプレイをしてくれる。また彼女は練習の鬼で、いつも人の倍くらい練習している。おかげで技術力は低くても体力だけはある。
 
↓ ↑ Bottom Top

そしてその永子も、千里・リリカ・蘭・留実子もこのタイムアウトの後では、ひたすら走り回った。細かいダッシュを繰り返すので、相手ディフェンスはゾーンにほころびが出ないよう同様にダッシュをする必要がある。元々ゾーンというのは運動量が多くなりがちなディフェンスなのだが、それを更に走り回らせる。
 
むろん相手の足が付いてきていないとみたら、そこから進入してゴールを狙うことができる。
 
それでタイムアウトの後、最初はN高校が何とか留実子で2点取って(これでみんな随分心に余裕が生まれた)、その後、P高校が2回ゴールを決めて12-2になったものの、その後向こうのゾーンに穴が出来てリリカが2点取る。リリカもさっきベンチで弱音をはいたものの、得点をあげられてかなり自分を取り戻せたようである。
 
↓ ↑ Bottom Top


コート上では実は激しい戦いが繰り広げられているのだが点数だけ見ると、このピリオドは一方的ともいえる展開になっていた。
 
7分経過したで24-6である。
 
こちらの6点は、留実子・リリカに、途中から蘭と代わった志緒が2点ずつ取ったものである。蘭と志緒を交代させたタイミングで留実子も疲れ切っているので紅鹿に交代させる。向こうもずっと出ていた宮野を歌枕に交代させている。
 
会場ではこの一方的な展開を見て
 
「ああ、やはりP高校が本気を出したらN高校は全然かなわないね」
などという声があちこちでささやかれていた。
 
 
↓ ↑ Bottom Top

前頁次頁目次

[*前頁][0目次][#次頁]
1  2  3  4  5  6  7  8  9 10 11 12 
女の子たちのウィンターカップ・最後の日(4)

広告:AKB48-言い訳Maybe-コスチューム-コスプレ-高品質衣装