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■女の子たちのアジア選手権(10)

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凄まじく気合いが入っている風の中国ベンチに対して、日本ベンチは冗談など言い合いながら、頭の中を空っぽにして出て行く。これっておそらく国家の威信を背負って出てくるチームと、そもそも大して期待もされていないので気楽にプレイできるチームの差かなという気がした。今回全敗ではあったもののインドの子たちは自分たち以上に楽しく試合をしていた感じだ。
 
中国側は最初は馬/林/魏/王/劉というメンバーで来た。予選リーグの第2・第3ピリオドで使った布陣だ。これに対して日本は早苗/渚紗/江美子/玲央美/誠美というオーダーで始める。
 
今日は消耗が激しくなりそうなのでポイントガードは早苗と朋美が交代で行くことにしていた。そして彰恵が特命を帯びていた。
 
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ティップオフ。
 
劉さん(201cm)と誠美(184cm)で争い、劉さんが取って最初中国が攻め上がる。
 
中国は馬さんのドリブルで攻め上がってくるが、こちらはゾーンで守る。しかし向こうの攻撃配置の関係で、結果的には魏さんと江美子、王さんと玲央美が対決する感じになった。
 
実力が拮抗しているだけに、お互いにどんどん点を取り合う(観客にとって)好ゲームとなった。
 
こちらが江美子・玲央美の最強ペアで点を奪っていくと、向こうも魏・王のふたりが競い合うように得点する。リバウンドでは201cmの劉さんに(公称)184cmの誠美が17cmもの身長差にもめげず、ほぼ互角の戦いを演じる。ふたりはゴール下で結構ぶつかっているのだが、どちらもそれで倒れたりしない。予選の時フロッピングの警告をされたのがどちらも頭にあるのか、お互いハードな戦いをしていた。
 
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ただ千里はベンチで試合を見ていて、中国側のテンションが物凄く高く、そして動きも物凄く良いのを感じていた。予選の時とはまるで違うチームのようである。ほんとに向こうは、決勝戦に照準を合わせて調整してきていたのであろう。
 
取り敢えず第1ピリオドを終えて22対16と中国側が6点のリードである。
 

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第2ピリオド、中国は白/孫/勝/張/黄と、オーダーを一新する。そしてここまで1度も使っていなかった勝さんを入れてきた。こちらは朋美/千里/彰恵/百合絵/華香というメンツで行く。千里以外はF女子高2人・J学園2人で、もっとも連携のしやすい組合せである。
 
すると勝(シェン)さんが出てきたのを見て、中国側応援席で「勝、勝、勝利(シェン、シェン、シェンリー)」という大きな横断幕を掲げる人たちがいる。そして物凄い歓声である。千里たちはやはりね〜という感じで頷きあった。
 
オルタネイティング・ポゼッションが中国側の順番だったので、中国側がセンターライン横からのスローインでゲーム開始する。
 
この時、日本は彰恵がさっと勝さんのマークに付き、他の4人でゾーンを組む「ダイヤモンド1」のフォーメーションをする。中国側が「え?」という感じで驚いている。
 
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勝さんのことを日本が知ってる!?と考えたのだろう。しかしそれでも白さんは勝さんの後ろに向けて素早いパスを送る。彰恵がカットを試みるが、遠い側なので無理である。勝さんでさえギリギリでキャッチしたが、足1本で踏み留まって、そこから勝さんの方にアプローチしてきている彰恵をほんの一瞬で抜き去った。
 
百合絵がフォローに行くが、百合絵も一瞬で抜かれてしまう。そのままゴール近くまで進入してシュート!華香がブロックを試みたものの成らず。中国側が2点取ってこのピリオドは始まった。
 

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日本は朋美がドリブルで攻め上がる。千里にパスしようとするが、千里には予選リーグでもマッチアップした張さんがピタリと付いている。諦めて彰恵にパスする。彰恵(169cm)には孫さん(184cm)が付いている。彼女がなかなか手強くて彰恵は中に進入できない。フォローに来た百合絵(174cm)にパスする。百合絵がその体格を活かして中に飛び込む。
 
ところが百合絵がシュートに行った時、勝さんが百合絵の手から離れたばかりのボールを叩き落とした。
 
勝さんがそのままボールを確保して白さんにパスし、白さんがドリブルで攻め上がる。浅い位置に居た千里が必死に戻って白さんの行く手を阻む。彼女を数秒足止めしている間に他のメンバーが戻る。
 
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そこで白さんはまた勝さんにパスする。勝さんには彰恵が付こうとしていた所であったが、それより早く勝さんはボールを受け取る。そしてそのまま飛び込んでいきシュート。2点。26対16。
 
試合は中国側が立て続けに点を連取した。
 

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その後も中国は選手たちの長身を活かした固い守りでなかなか日本にシュートを撃たせない一方で勝さんを使ってどんどん得点していく。勝さんは守備も攻撃もずば抜けている。千里はこの人、今すぐアメリカのW-NBAに行っても活躍できるのではという気さえした。
 
ピリオド開始後3分でこのピリオドの得点が12対2と圧倒的な点差。合計では34対18で、ワンサイドゲームのようになり始める。ベンチはボールがアウトオブバウンズになった所で、彰恵に代えて玲央美を投入した。
 
玲央美が彰恵に替わって勝さんのマーカーになることにする。
 
勝さんのプレイの映像は昨夜やっと入手できた。それはたった1試合の映像であったが、日本チームに衝撃を与えるものであった。
 
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彼女はゲームの支配者、ドミナントであった。
 
相手チームはかなり強豪として知られる高級中学(日本の高等学校相当)であったにも関わらず、勝さんのプレイになすすべもなくやられていた。
 
彼女の唯一?の欠点としては体力があまり無さそうということである。しかし彼女は出場している15分か20分の間に他の人が60分か80分かけて取るくらいの点数を取り、相手チームを圧倒していた。
 
昨夜日本チームは全員で彼女のプレイを何度も何度も見て、その癖をつかもうと努力した。とにかくスピード、器用さ、パワーを併せ持っているので、そう簡単には対抗できない。しかしこういう硬軟使い分けるタイプは強いて言えば日本チームでは彰恵がいちばん似ている。そこで彰恵が勝さんのマークをすることを決めたのだが、スピードでも瞬発力でも勝さんが彰恵を上回っているので、完全に圧倒されてしまったのである。
 
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そこで篠原監督は、勘の良さとパワーを持っている玲央美を試してみることにしたのだろう。
 

玲央美はベンチで3分間勝さんのプレイを見ていた。それで彼女なりに考えて勝さんとのマッチングに臨んだと思う。実際玲央美は勝さんを最初の1度は停めた。しかし2度目にマッチアップした時、彼女は玲央美と微妙な距離を取ってすり抜けようとした。思わず玲央美の手が出る。
 
笛が鳴る。
 
玲央美のブロッキングが取られる。
 
勝さんは玲央美のシリンダー(自身が優先される空間)のわずかに外を通過しようとしてファウルを誘ったのである。
 
勝さんとのマッチアップではこちらの攻撃の時に百合絵もチャージングを取られた。要するに彼女は気合いやフェイントをうまく利用するソフト型、パワーとスピードで圧倒するハード型、そして知的なプレイで相手を嵌める頭脳型のどのプレイもうまいのである。
 
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第2ピリオド6分が過ぎたところで26対4と完璧に一方的な試合。合計では48対20とダブルスコアだが、このまま放置するとあっという間にトリプルスコアになってしまうだろう。
 
篠原監督がタイムを取った。
 

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「済みません。勝てませんでした」
と玲央美が完敗を認める。玲央美がこんなに素直に負けを認めるのは極めて珍しい。ふだんはまず弱音を吐かない子である。
 
「私も参りました」
と彰恵が言っている。
 
「んー。じゃ、もう諦めて試合放棄する?」
 
と監督が言うが、誰も妙案が浮かばない。
 
「次は私がやるしか無いですよね」
と江美子が言う。
 
「いや、ここは鞠原君を投入しても、結果は変わらない気がする」
と片平コーチが言った。
 
重い空気がベンチに流れる。実際問題として、彰恵・玲央美・江美子の実力はそんなに変わらない。総合力として玲央美が頭一つ出ているくらいだ。タイプの違う彰恵・玲央美で通じなかった相手である。江美子でも確かに大差無い結果になりそうな気もする。タイムアウトの時間は60秒である。もう既に25秒が過ぎてしまった。
 
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「みんな性転換して女を廃業して逃げだそうか」
と誠美が言ったので緊張がほぐれる。
 
高田コーチが言う。
 
「これはトバ火山爆発並みの衝撃だね」
「何ですか?その鳥羽なんとかって?」
という質問が出る。分かるのは先日の遊覧飛行に出た、千里・玲央美・江美子・早苗の4人だけだ。
 
「今人類を滅亡させるほどのトバ火山級の噴火があった時、このメンツの中でいちばん生き残りそうなのは誰だと思う?」
と高田コーチは質問した。
 
メンバーが顔を見合わせる。
 
その時早苗が言った。
 
「千里だと思う。千里って、他の子に比べたら身体的な能力は落ちるかも知れないけど、なぜかいちばん良い場所に居るんだよね。きっと千里は他の人が残したごはんを見付けたり、偶然崖から落ちて死んだウサギを見付けたりして、のらりくらりと生きて行きそう」
 
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江美子も玲央美も頷いている。
 
「ということで、村山君、シェン君を封印したまえ」
と高田コーチが言った。
 
千里は敬礼した。
 

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日本チームは、早苗/千里/江美子/桂華/サクラというメンツで出て行く。千里以外の4人を入れ替えた。メンバーを一新して気分を新たにしようということである。中国は特にメンバーは変更せずにそのまま出てくる。
 
中国側が攻めて来る。
 
千里はセンターライン付近でもう勝さんにピタリと付く。そのままこちらのコートにボールは運ばれてくる。千里は勝さんの至近距離でマークしている。しかし白さんは構わず勝さんの後ろに向けてボールを投げる。勝さんがボールを取るためにバックステップしたが、千里は無理して彼女を追わない。彼女との距離が開く。
 
彼女はボールを持つとドリブルしながら千里の前に進むと複雑なフェイントを入れて千里の左を抜こうとした。
 
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その瞬間、千里は腰を落として正確に彼女がドリブルしているボールの途中を左手で掠め取る。
 
動体視力と反応速度の勝負である。
 
そして身体を伸ばしながらジャンプして、身体を4分の1回転させ、取った左手からそのままボールを早苗に投げる。早苗がドリブルで走り出す。他の4人もフロントコートめがけて全力疾走する。
 
白さんと孫さんが素早く戻る。
 
早苗の行く手を孫さんが阻むが、素早く江美子にパス。江美子が華麗にシュートを決めて2点。日本は反撃の烽火を上げた。
 

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千里はひとつの仮説を立てていた。
 
確かに彼女は素早いし瞬発力もある。瞬発力を支えるのは白筋、走り続けるのに使うのは赤筋である。彼女の場合、いきなり走り出したり、突然変化を付けるのに使う白筋は凄いのだが、赤筋はそれほどでもない気がしたのである。つまり変化した瞬間は素早いのだけど、そこからトップスピードになるまでに掛かる時間は意外に長い。
 
ということは彼女にはあまりピタリと付くより、少し間を開けて守った方が守りやすいのでは、と。
 
彰恵も玲央美も勝さんにはピタリと付いていた。しかしボールを受け取る瞬間は「後ろ向き」にステップする。そこでボールを受け取ってから彼女の白筋の凄さで逆に「前向き」に走り出す。すると動きが逆方向になるから、赤筋の(相対的な)弱さのため実際に速度が乗るまで少し時間が掛かる。時間がかかるといってもほんの0.4-5秒なのだが、その0.4-5秒あればスティールするには充分である。
 
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昨夜ビデオで見た中国の大会で勝さんと対峙した選手にしても、彰恵・玲央美にしても、みんな瞬発力があるので勝さんがバックステップした瞬間、彼女との間を開けるまいと踏み込んでいた。しかし踏み込むことによってこちらの次の反応が遅れる。そこで千里は敢えて踏み込まずに、距離を置くことで相手が結局どちらを抜こうとするのかを見極める時間を確保するとともに、スティールのための動きをする余力を残したのである。
 

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次の中国側の攻撃。
 
さっきスティールされたことで勝さんも少し考えたようである。今度はボールを受け取る時に、左斜め後ろにステップした。それを見て千里は左真横に動いて彼女の正面に入る。そのあと複雑なフェンイト合戦の末、今度は千里の右を抜こうとした。その瞬間、やはり千里が今度は右手を伸ばしてボールを奪い取る、
 
そのまま今度はジャンプせずに右足1本で立ったまま、ボールを盗った右手からそのまま桂華にトスするようにしてパスする。桂華が早苗にパスして日本の攻撃に移る。
 
相手にうまく阻まれて速攻はならず相手は防御態勢を整える。ここで千里には孫さん、桂華に張さん、江美子に勝さん、サクラに黄さん、早苗に白さんが付いている。
 
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すると早苗は目の前にいる白さんの右側を抜くような動作をする。白さんが左手を伸ばして停めようとするが、彼女は中国チームの中では最も身長が低い(勝さんより低い)ので、わずかに届かない。張さんが急いでフォローに来る。そこでその走り寄る張さんのそばでバウンドするようなバウンドパスでボールを桂華に送る。桂華がボールを受け取り中に飛び込んでシュートする。黄さんがブロックしようとしたが、桂華はダブルクラッチでそのブロックをかいくぐり、きれいにボールをゴールに放り込んだ。
 
日本側の連続得点で48対24。
 

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千里は一応右利きであるが、握力などは実際には左手のほうが強いし、右手に比べると品質は落ちるものの左手でも文字が書ける。右利きに矯正された覚えはないのだが、暢子には「隠れ左利きでは?」などと言われている。
 
それで千里は左手でも右手でもきれいにスティールを決め、そのまま左手でも右手でもボールを正確に投げることができる。ボールを持ち替える時間が掛からない分、千里の所で反転が起きると、日本側は速攻気味になった。
 
そしてともかくも千里はこのあと勝さんを8割方停めることに成功する。勝さんはプレイしていて、次第にイライラしてきているようだった。千里が一見大したことがないように見えて抜けそうなのに抜けないし、無理に抜こうとするとボールを盗られてしまう。
 
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それでも中国は勝さんにボールを集めて得点しようとする。それが8割の確率で日本側の高速反撃につながる。
 
そのため第2ピリオド後半ではどんどん日本が追い上げ、52対30とかなり改善した点数で前半を終えることができた。第2ピリオド自体の点数は30対14である。
 
中国が大量リードをしているので中国の応援席はかなり盛り上がっている。既に「恭喜第一名」(第一名は第一位、つまり優勝の意味)なんて旗を振っている人たちもいる。一方の日本側応援席も一時は一方的な試合になりかけたのを何とか踏みとどまったので、必死に声援を送ってくれる。
 

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