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■女の子たちのアジア選手権(4)

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10月30日。
 
千里たちU18女子日本代表の一行はインドネシアに向かう。
 
千里はその日の朝、貴司から「頑張れよ」というメールをもらい「ありがと。優勝してくるね」と返信する。その時、ちょっとサービスしちゃおうかなと思い、自分の下着写真を《きーちゃん》に撮ってもらって添付した。(貴司の彼女を牽制する目的もある)
 
朝から協会が用意したバスで成田に向かう。そして空港内で、バスケ協会の幹部さんたちが出席し、報道陣もいる中で壮行会が行われた。
 
そのあと出国・搭乗手続きをするが、例によって千里はSex:Fの航空券・パスポートで何の問題もなく出国できて、選手・スタッフ一同11時のシンガポール・チャンギ国際空港行きB767(全日空・シンガポール航空共同運行)に乗り込んだ。
 
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「もう千里がひょっとしたら男の子だったのかも知れないという話は忘れることにした」
などと桂華から言われる。
 
フライトは約7時間で到着は現地時刻17:05である(時差が1時間ある)。長いフライトなので、みんな機内ではぐっすり寝ていた。千里や玲央美は機内でお昼を食べたが、百合絵などは熟睡していて結果的にお昼を食べ損なった。
 
チャンギで1時間半の待ち時間であった。ここは3つのターミナルに別れていてその間が列車で結ばれているのだが、到着も出発もターミナル2だったので移動も無かった。19:00インドネシア・メダンのポロニア国際空港行きのシンガポール航空の便に乗り継ぐ。到着は19:20着だが時差が1時間あり、1時間20分のフライトであった。この便の中ではずっとおしゃべりしている子が多かった。
 
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「到着は何時だっけ?」
「19:20の予定だよ」
「え?私の時計くるってるのかな。今20:20なのに」
と言ったのは彰恵である。
 
「彰恵、時差があることを忘れている」
「あ、そうか」
「シンガポールが1時間、インドネシア西部は2時間の時差」
「みんな時計を直してるの?」
 
「私はシンガポールまで行く機内で2時間ずらした」
「私は成田を出た所で1時間ずらして、シンガポールを出た所で1時間ずらした」
「まめだな」
「私のは世界時モードがあるからBKKバンコクに設定した」
 
「バンコクってインドネシア?」
「バンコクはタイの首都」
「時刻帯が同じだから」
「インドネシアってタイと同じ時刻帯?」
「西部はね」
 
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「スマトラ島・ジャワ島・西カリマンタンとかは西部時刻、日本と時差2時間、バリ島・東カリマンタンとかは中部時刻、日本と時差1時間だからシンガポールとも同じ、ニューギニアとかは東部時刻で日本と時差無し」
 
「東カリマンタンってパタリロ!に出てきたな」
「いや、あれはこちらのカリマンタンとはほぼ無関係だと思う」
 
「現実にはもっと美しいニューハーフさんも多いよね」
「いや、現実にはもっと凄いニューハーフさんも多い」
「まあ本人が女でありたいと思うのであれば容姿は関係無い」
「女装は開き直りだって、ネットで知り合った女装趣味の人が言ってたよ」
 
「まあ女子トイレでも、こいつ男では?と思いたくなるような恐らく天然女性のおばちゃんたちもいる」
「つい悲鳴あげちゃったことある」
「私は悲鳴あげられたことある」
「ボクはふつうに悲鳴あげられる」
 
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「でもメダンって西部?」
「そうそう。スマトラ島。でも実はタイにとっても近い。プーケットの真南くらいに位置してるんだよ」
 
「今回の選手権で3位以内に入れば来年7月にタイのバンコクで世界選手権に出ることになる」
「今回のメンツがそのまま出るのかな?」
「どうだろうね」
「多分半分くらいは入れ替わるんじゃないかな」
「ここに居る子、誰も出なかったりして」
「あり得るなぁ」
 

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ポロニア国際空港で入国審査を経て用意されていたバスに乗り、選手宿舎になっている市内のリゾートホテルに入った。ここで遅めの夕食となるが料理は美味しくて好評であった。
 
「この焼き鳥、けっこう美味しいね」
「カレー味というのが面白い」
「これサテというんだよ。いろんなお肉を串に刺して焼く。地区によってスパイスとかが違うらしいけど、この界隈はこの黄色いカレー味」
 
「これお肉は何の肉だろう?」
「牛肉と、こちらはヤギ肉だと思う」
「へー、ヤギか?」
「豚肉とかは無いのかな」
「インドネシアはイスラム国だから豚肉はNG」
「なるほどー」
 
「でもほんとにこれ美味しい」
 
「インドネシア頑張ってくれてるね」
「部屋もきれいだった」
「このホテルできたばかりだから寝具とかもきれいらしいよ」
「数年後にはヤバかったりして」
 
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「でもこういうのって開催地によって極端な差があるみたいね」
「うん。どうかした所だと夏なのにエアコンが無いとか、シャワーが無いとか、御飯があきらかに腐敗していたりとか、酷い所もあるらしい」
「食品の賞味期限って日本は厳しいけど、アバウトな国もあるからね」
「夏にエアコン無しは辛すぎるな」
「シャワーが無いのも辛い」
「入浴の習慣の無い国もあるからなあ」
 

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ホテルのレストランでは近くにインドチームの子たちが居て、彰恵がボールペンを落としたのを向こうの子が拾ってくれたのをきっかけにテーブルを動かしてきて!近くに陣取り、お互いに英語でおしゃべりが始まる。何だか気さくな子たちであった。
 
「へー、そちらはヤギ肉と鶏肉にしてもらったのか」
「うん。私たちは牛肉は食べられない」
とインドの子たちは言っている。
 
「実は食べられる子もいるけど、合わせてもらった」
「ヒンズー教徒、シーク教徒、イスラム教徒、キリスト教徒、色々混ざってる」
「たいへんそー」
「お肉自体が食べられない子もいるから、タフ(豆腐)の串もある」
「あ。それ私も食べてみたい」
「どぞ、どぞー」
 
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などという感じで江美子が豆腐のサテを食べてみて
「けっこう美味しい!」
と言っていた。
 
「でも日本人ってチマチョゴリ着てるのかと思った」
「それは韓国だよ」
「あ、そうか。日本は何だっけ?」
「フリソデじゃない?」
「あ、そんなの。着ないの?」
「振袖は成人式とかパーティーとかで着るんだよ。ふだんは洋服だよ」
「学校の制服は?」
「こんな感じ」
と言って写真を見せてあげると
「おお、可愛い!」
 
などと声が上がっていた。
 
「インドは制服あるの?」
「あるけど、日本の夏服に近いかも」
と言ってレーミャちゃんという子が写真を見せてくれる。
「可愛いじゃん!」
 
白いブラウスに青系統のチェックのスカート。それに棒タイである。
 
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「棒タイはミッションスクールに多い」
「サルワール・カミーズ(いわゆるパンジャビ・ドレス)とか着ないの?」
「あ、それが制服になってる学校もあるよ」
 
「でも日本は夏服・冬服あるんだね」
「インドの気候だと日本の冬服は暑くてたまらんかも」
 
「でも今回は外国の選手ってみんな背の高い子たちばかりかと思ってたけど、インドチームは私たちとあまり背丈が変わらないみたいだから安心した」
とこちらの子が言うと
「私たちもー。こんなに低いのは私たちだけかと思ってた」
とジョーティーちゃんという子が言っている。
 
「でもそちらにも1人背の高い人がいる」
という日本側からの指摘。
「私、イギリス系なのよ」
と本人。ステファニーちゃんという子である。
「でもそちらにも凄く背の高い人がいる」
と彼女。
「私はサクラ、こちらは誠美、こちらは華香」
とサクラが紹介する。
 
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「ステファニーちゃん、何cm?」
「184cmくらいかなあ。マサミちゃんは?」
「私も184cmくらい」
 
「ふたりは嘘をついている」
という声が双方からあがる。
 
「よし。測ってみよう」
と百合絵が言ってメジャーを取り出し双方の身長を測ってみた。
 
「ステファニーちゃんは188cm, マサミは186cm」
 
「やはりね〜」
という声があがっていた。
 
「だけど夕方、中国チームを見たよ。すごく背が高かった」
とインドの子のひとりが言う。
 
「中国は民族によってはかなりの長身の人も居そうだね」
「センターのリュウさんって201cmらしいよ」
と玲央美が言う。
 
「きゃー」
「そんな選手とどうやってリバウンド争えばいいのよ?」
と向こうのセンターのアーラーサーナーちゃん(181cm)。
 
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「Well, Sometime we just have to giveup(まあ諦めが肝心)」
などとこちらの早苗(164cm)が言うと
 
「Not sometime, "every time"」
と向こうのラースラーちゃん(159cm)が言っていた。
 
 
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