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■女の子たちのアジア選手権(2)

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「あ、そうそう。KARIONの今週水曜日に発売する新しいCD」
と言って美空がまだ発売前のCDをそこに居た全員に1枚ずつ配ってくれた。
 
「おお、すごーい」
「聴いていい?」
 
それでスタジオの機器に掛けて聴くが
 
「方向転換した?」
という質問が出る。
 
「うん。性転換してもいいけど方向転換かな」
と美空。
 
「この『秋風のラブレター』って凄く若い人の歌詞だよね?」
と蓮菜が言った。
 
「福島県の中学生らしい。実はKARIONに歌わせたい歌詞コンテストというのをやったんだよ。その優勝者」
 
「へー。櫛紀香さんか。女子中生にしてはけっこうしっかりした詩を書くなあ」
と梨乃が言ったのだが
 
「あ、その人女子中学生じゃなくて男子中学生」
と美空が答える。
 
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「何!?」
「『のりか』で男なの?」
「もしかして紀香と書いて『よしたか』と読むとか?」
 
「あ、分かった。これ KARION SUKIのアナグラムだ」
と蓮菜。
 
「そうそう。よく分かるね」
と美空が感心して言う。
 
「でも実は女の子になりたい男の子だったりして」
「そこまでは分からないなあ」
 
「『水色のラブレター』はこれ、少女A・少女Bでしょ?」
と千里が尋ねる。
 
「うん。そのふたり。いつまでも少女A・少女Bじゃ可哀想ということで、森之和泉・水沢歌月という名前を小風が付けた。だから今度のツアーのパンフレットでは『Crystal Tunes』もそうクレジットするかも」
 
「あ、ツアーやんの?」
「来月ね。全国12箇所」
「すごーい」
「札幌にも来るよ」
「すごい。何日?」
「札幌は11月1日・土曜日」
「土曜日なら動けるね」
 
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「ね、ね、そのチケット何とかならない?もちろんお金払うから」
「なると思うよ。全然売れてないし」
「うむむ」
 
「いや、今年デビューした新人のチケットがそうそうは売れないでしょ」
「何人来る?」
 
すると千里以外田代君を含めて全員手を挙げる。
 
「ごめーん。私その11月1日はインドネシア」
と千里が言っている。
 
「インドネシアに性転換手術にでも行くとか?」
と美空が訊くが
「いやバスケットの試合なんだよ」
と千里は答える。
「すごーい。海外で試合やるんだ?」
 
「そもそも千里は既に性転換手術済のはず」
という声があちこちから出る。
 
「インドネシアでも性転換手術やってるんだっけ?」
「どうだろう?タイは有名だけど」
 
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そういう訳で、月夜が「もしよかったら」と言って1曲提供してくれたので、その曲『負けるな△Love(トライアングル・ラブ)』をその日の午後は練習して収録した。順調に進んで夕方はみんなで一緒にラーメンを食べに行ったのだが・・・・。
 
「美空ちゃん、それ3杯目? よく入るね」
「まだ3杯目だよ」
 
などと最初の頃は会話を交わしていたものの、みんなやがて無言になる。何人かが美空の前に積み上げられた丼の数を目視で数えていた。
 
「私、この世の中にはやはり不思議なことがあるんだと理解した」
「物理的にどうやってあの量のラーメンがこの小さな身体に収納されるのかが不思議だよね」
 
「ね、美空ちゃん。芸能契約書に体重制限とかは書かれてないの?」
「どうだったっけ?」
 
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日曜日、午前中は麻里愛が書いた『旭川奏鳴曲』を収録した。奏鳴曲というのは「ソナタ」の日本語訳である。『大雪山協奏曲』・『石狩川序曲』・『加伊の道』と麻里愛が書き続けてきた北海道への讃歌もこれでいったん完結ということになった。
 
(加伊とはアイヌ民族の自称のひとつとされ「北海道」の語原。ただし現代の研究では本当に「カイ」という呼称が使われていたのかは不明。ひょっとしたらカムイのこと??)
 
最後に千里がインターハイの時に書いた『Aqua Vitae』を収録する。これにも千里の龍笛、恵香の篠笛、貴子のトンコリをフィーチャーしている。更に収録中に見学していた月夜が
 
「この曲には津軽三味線の音が欲しい」
と言い出した。
 
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「誰か弾ける?」
「ってか誰か持ってる?」
 
「津軽三味線ならうちのお母さんが持ってる」
「よし。借りよう」
「でも誰が弾くのさ?」
「お母さんごと借りよう」
 
ということで、この曲には智代のお母さんがゲスト参加することになった。月夜が「こんな感じの音が欲しい」と言うとお母さんはみんなの演奏を聴きながら、とても風情のある三味線を入れてくれた。
 
「すごーい。格好いい」
という声があがる。
 
「いや、みんなの演奏が格好良いよ」
とお母さんは言った。
 
そしてこの曲の収録でDRKの活動は終了したのであった。
 

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終了後智代のお母さんも入れてみんなでケーキを食べに行った。月夜美空の姉妹だけは飛行機の時間があるので「11月1日に札幌で」と言って別れた。
 
「本州方面の大学に進学する人や遠くに就職する人もあるかも知れないけど、印税は遅れて入ってくる分もあるから、移動した人は口座番号を私に連絡してくれない? それで振り込むから」
と蓮菜が言うので、蓮菜の電話番号・メールアドレスを持っていない人は赤外線で転送してもらっていた。
 
「でも結構楽しかったね」
「大学に入ってからも、近くにいる人に呼びかけて再開したいな」
「その場合、DRK, Dawn River Kittens の名前は使わない方がいいよね?」
「うん。それぞれ新しい名前を考えればいいんじゃないかな」
「DRKはここにいるメンツが半分以上集まった場合のみということでいいんじゃない?」
「半分も集まれば名乗ってもいいかもね」
 
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智代のお母さんが考えたようにして言う。
「その手の問題って今はみんな仲良くしているからいいけど、あとからしばしば揉めやすい。誰が名前の権利を持っているのかを明確にしておいた方がいい」
 
「んー。じゃ、蓮菜・千里・花野子の3人の共同所有ということで」
と麻里愛が提案する。
 
「ああ、そのあたりが実際いちばん頑張っていたと思うし、それでいいんじゃない?」
と鳴海が言う。
 
それで特に異論は出なかったので、その3人がDRK, Dawn River Kittensの名前を所有することになった。孝子が紙にそれを明記して、その場に居た全員の署名をもらった。
 
「美空ちゃんからは今度の札幌ライブの時に署名をもらおう」
と恵香が言う。
 
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「印税の分配に関しては数日中に私が書類を書いて全員に郵送するから、各自署名して返送してもらえる?」
と蓮菜。
 
DRKの音源はCDの売上の45%、ダウンロード売上の70%をもらう契約でそれをその時の制作に参加した人で均等割することにしている。蓮菜はこれをExcelで計算して入金する度に各自の口座に振り込んでいる。
 
「蓮菜、そのあたりの作業でけっこう費用がかからない?」
と心配する声もあるが
 
「私は作詞印税までもらっているからいいんだよ」
と蓮菜は答えた。
 
「振込手数料もそちらで負担してくれているよね?」
「振込手数料は千里持ち」
「そうだったんだ?」
 
「蓮菜が作業してくれるから私は代わりにお金を出してる。私も作曲印税もらってるから」
と千里。
「まあ千里にExcelのフォーム作ったりオンラインで振り込んだりの作業は無理だから」
と蓮菜。
「私、その手の作業、苦手〜」
と千里も言う。
 
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「確かに千里は理系の頭脳が欠けてるよね。典型的な文系女子」
「千里、理学部やめといたら?文学部か法学部あたりがいいかも」
 
「うーん。お父ちゃんとの妥協の産物だから。お父ちゃんが水産学部を主張したのを、妥協で理学部にしたんだよ」
と千里は答えた。
 

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千里・暢子・留美子・薫の4人は、超特例でウィンターカップへの参加が認められたので、毎日放課後、バスケ部の1−2年生と一緒に練習に参加した。4人は受験生なので授業は朝の0時間目(7:10開始)から夕方8時間目(17:00終了)までたっぷりある。それでも千里は朝6時頃からの朝練をした上で夕方は8時間目終了後女子バスケ部の練習が終わる20時まで汗を流していた。
 
インターハイが終わって、いったん部活から引退ということになった直後は1−2年生の練習をたまに見ても物凄い疎外感を感じていたのだが、また彼女たちと一緒に練習していると、物凄い充実感を感じていた。
 
私ってやはりバスケが好きなんだなあ。
 
などとあらためて思う。でも大学に入ったあと、どうしよう?
 
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2008年10月24日(金)。この日の朝のホームルームは全体集会に切り替えられ、アジア選手権に出場する千里の壮行会が行われた。理事長・校長・生徒会長からの激励のことばがあり、千里も決意の言葉を述べた上でチアリーディング部の激励パフォーマンスを受けた。
 
そして千里はこの日の夕方の便で東京に向かった。美輪子も会社を早退して見送りに来てくれたが、暢子や揚羽たちバスケ部のメンバー、宇田先生や南野コーチ、教頭先生に生徒会長、クラスの女子全員!が見送りしてくれた。
 
「みんなありがとう。優勝してきますね」
と千里が手荷物検査の前で笑顔で言うと歓声が上がっていた。
 
羽田空港から電車を乗り継いで本蓮沼駅まで行き、そこからまたまた高田コーチの「言わなくても分かるよな?」ということばに「はい頑張ります」と答えて15kgほどの荷物を抱えてNTCまでジョギングである。
 
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ロビーに居た、玲央美・江美子・誠美・桂華たちと手を振り合って挨拶する。
 
「いや、朝から壮行会とかされて緊張した」
と千里が言うと
「それ話してた」
とみんな言ってる。
 
「インターハイの前とかも壮行会あったけど、壇上に大勢居たし、決意の言葉も部長の暢子が言ったからさ。ひとりだけ壇上に立って理事長・校長・生徒会長から激励の言葉をもらってチアリーダーのパフォーマンスを受けて、もう羞恥プレイされている気分」
と千里が言うと
 
「確かに壇上が1人か2人というのはけっこう恥ずかしいよね」
と他の子も言っている。
 
「私は部長だからインターハイでも決意のことば述べた」
と江美子。
「右に同じ」
と桂華・玲央美。
 
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「でも千里のところはチアリーダーか」
「うちは応援団のエールだった」
と誠美が言う。
 
「千里の所、女子高だったっけ?」
「共学だよ〜。でも、うちは応援部は数年前に消滅したんだよね」
と千里。
 
「今どこでも消滅の傾向にあるみたいね」
 

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