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■女の子たちのアジア選手権(8)

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「千里、ナイス・逆フロッピング」
と彰恵がベンチで言った。
 
「まあファウルを誘うのはよくあるプレイ。ファウルされたかのように演技するのもまあ結構あるプレイ。だからフロッピングを誘ってみた」
と千里。
 
「あれは向こうは転び損になったね」
と百合絵。
 
「急激に進入しようとすれば、絶対仕掛けてくると思ったからわざと急停止したら、案の定だった」
と千里。
 
「要するに欺し合いなんだ!」
とこういう問題にいちばんナイーブっぽい早苗が呆れたように言う。
 
「バスケットは頭脳戦だよ」
と千里。
 
「審判を味方につけることが大事なんだよ。さっきの判定で向こうはもう演技することができなくなった」
と玲央美は冷静にコメントした。
 
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「その代わり強烈に当たってくるかもね。こちらも簡単には倒れられないから」
と桂華。
 
「まあ、そういう試合にはみんな慣れてるよね」
「バスケットは格闘技だもん」
 

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ハーフタイムの間、中国ベンチは何やら選手と監督がやや険悪?と思われるくらい議論していた。
 
そして第3ピリオド、何と第2ピリオドと同じメンツで出てきた。こちらは桂華と玲央美で行く。ポイントガードは早苗、センターは華香に交代する。
 
千里は中国チームの気合いが第2ピリオドとは全く違うのを千里は感じた。物凄く気迫あるプレイをする。どうも選手たちが監督の方針に反発して小細工無しで実力勝負に来たようである。王さんとマッチアップしていても、前ピリオドではややフラフラしていた視線がしっかりとこちらに向けられて、視線の圧力を感じるほどである。自分の力と技でこちらを圧倒したいという気合いが伝わってくるかのようであった。
 
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その中国勢の勢いがあらわれて、当初立て続けに得点していったん51対51の同点までたどり着く。しかしその後は千里が積極的にスリーを撃ち、突き放しに掛かる。玲央美と桂華もどんどん点を取り、万一外れた場合は華香が前に出ていたサクラ・誠美に負けるものかと頑張ってリバウンドを取る。劉さんとサクラはかなり激しくぶつかりあっていたが、どちらも倒れなかったし笛も吹かれなかった。
 
それでこのピリオド後半には点の取り合いという感じになり、最終的には66対72で第3ピリオドを終えた。このピリオドだけ見れば25対21と中国がリードしている。
 

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第4ピリオド。千里は休んで渚紗が出て行く。フォワードは江美子・彰恵で行き、センターは誠美である。向こうは白(9)/孫(10)/魏(6)/王(7)/黄(13)というメンツできた。馬さんと林さんはずっと出ていたので、さすがに限界だろう。しかしフォワードの2人は第2ピリオドからずっと出たままだ。恐らくこの相手には魏・王の主力2人は外す訳にはいかないという判断なのだろう。
 
このピリオドも基本的には点の取り合いという感じにはなる。ただ、向こうはある程度外れて、そのリバウンドを取る前提で戦っているのに対して、こちらは最初から直接ゴールに確実に入れるつもりで戦っている。またリバウンドでは誠美が落下点にうまく陣取っていることもあり、向こうが背丈の差だけではこちらを圧倒できず、オフェンスで3割、ディフェンスで6割くらいしか取れない。両軍の点数の差はじはじわじわと開いて行く。
 
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また渚紗は相手に妨害されても積極的にスリーを撃ち、7割くらい成功させる。しかし孫さんのスリーは3割くらいしか入らない。
 
最終的には90対102で決着した。
 

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両軍が並んで審判が日本の勝利を告げる。試合後はお互い笑顔で握手しあった。
 
こうして日本代表は予選リーグを5勝0敗。1位で終えることができた。これで1日置いて8日の準決勝の相手は4位のチームということになるので台湾かマレーシアである(もうひとつの準決勝は2位の中国対3位の韓国で確定)。
 

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「ところで中国側は15番の勝(シェン)さんを使わなかったね」
「秘密兵器とか?」
「いや秘密兵器なら、リードされた展開で投入するでしょ」
 
篠原監督がiPhoneでスコアを確認していた。
 
「勝さんはマレーシア戦とインド戦で1ピリオドずつ使っているね。でもどちらでも4点しか取ってない」
 
「じゃ純粋に実力の問題かな」
「背丈も低いしね」
「そうそう。正ポイントガードの馬(マー)さんより低いよね」
 
中国選手は背が低い方から、控えPGの白さん、勝さん、馬さんの順である。この3人だけが170cm台である。
 
「強い相手には使えないということなのかもね」
 

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試合が終わった後、着替えてから、その準決勝で当たる相手が決まることになる台湾・マレーシア戦を見る。韓国は3勝2敗で既に予選リーグを終えていて3位確定である。台湾とマレーシアはここまで1勝3敗なので、この試合に勝った方が4位になり、明後日の日本の対戦相手になる。
 
しかし両者の実力差は明白だった。序盤から台湾が大きくリードする展開である。第2ピリオドで台湾が主力を休ませている間にマレーシアも頑張ったが、後半は台湾が一部の主力を戻して、突き放した。
 
これで準決勝の日本の相手は台湾と決まった。5位のマレーシアは6位インドとともに、2部リーグとの入れ替え戦に出ることになる。
 
「しかし勝てば決勝トーナメント、負ければ入れ替え戦ってのは天国と地獄だね」
「まあ、インドもマレーシアも前回のアジア選手権で2部の1位2位になって、入れ替え戦で上に上がってきたんだけどね」
「1回だけで2部に逆戻りにならないといいけどね」
 
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試合が終わってからホテルに戻り、食事に行くと、またまたインドチームの子たちと遭遇した。
 
「はーい。おはこんばんちはー」
などとネット用語で挨拶してくる。
 
「ハローハロー」
などと言ってこちらも近くのテーブルに陣取って、多少入り乱れながらおしゃべりした。
 
「1位おめでとー」
「ありがとう」
 
「今回は1勝もできなかったよー」
とインドチームの子たち。
 
「残念だったね。入れ替え戦頑張ってね」
「相手はカザフスタンかフィリピンになりそうだけど、どちらも強そー」
「まだ3日あるから練習、練習」
 
「せっかく日本の人たちにシュートの指導とかしてもらったのに」
「だけどパルプリート、今日の韓国戦でスリーを5本入れた」
「優秀、優秀」
「やはりパルプリートは次からはシューティングガードの登録でいいかも」
 
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「もし良かったらまた少しシュート見てもらえませんか?」
「いいよ」
 
ということで、その日もこちらの4人(千里・玲央美・江美子・桂華)と向こうの4人(パルプリート、レーミャ、パルミンダル、ステファニー)と、各々のコーチ・通訳付きで、夜の体育館に入って一緒に練習した。こちらは高田コーチが付き合ってくれた。
 
「パルプリートちゃん、少し体勢が違う。ここでね腕を伸ばす方向が身体の重心移動と違うんだよ。だから、きちんと身体のバネがボールに伝わってない。もう少し下を狙う感じがいい」
 
「え〜? でもそんなに下だと届かない気がして」
「大丈夫。欺されたと思ってやってごらん」
 
と言ってやらせてみると、ボールが速い速度で飛び出して、ダイレクトにゴールに飛び込む。
 
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「すごーい。入っちゃった」
「低い弾道でもスピードが乗れば入るんだよ」
「そうだったのか」
 
この日はパルミンダルが桂華に、レーミャが江美子に、ステファニーが玲央美にと各々個別指導してもらう感じになったものの、彼女たちは「なんか自分がたくさんできるようになった気がする」などと言っていた。
 
1時間半ほど練習したところで
 
「じゃそろそろ引き上げようか」
 
という話になる。
 
「決勝トーナメント頑張ってくださいね」
「そちらも入れ替え戦頑張ってね」
 
「そうだ。たくさん教えてもらったから、こちらもとっておきのこと教えてあげる」
とレーミャが言い出した。
 
「何?」
 
「中国のね。15番のシェンさん、要注意だよ。マッチアップして、この人凄くうまいじゃんと思った」
 
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千里たちは顔を見合わせた。
 
「私たちが言ったことは内緒ね」
「うん。聞かなかったことにしておこう」
 

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「どう思う?」
 
千里たち4人は高田コーチと、レーミャの情報について話し合った。
 
「あり得る話だと思う。決勝トーナメント用の隠し球なんだよ」
「今日の試合で使わなかったのは?」
「予選リーグは4位以上であれば問題無いと割り切っているんだと思う。決勝で勝つことが大事。だからそれまでは使わない」
 
「インド戦・マレーシア戦でゴール2回しか入れなかったのは、注目されないようにするためかもね。試合感覚を忘れないようにするため、調整を兼ねて出したんだよ。強いチーム相手に出たら実力あるのバレるから」
 
「おそらく巧いけど体力とかに問題があるんじゃないかな」
「あるいは何か欠点があって、バレると使えないんだろうね」
「あるいは何か資格に問題があって出場に制限がかかっているとか」
「資格というと?」
「それは国籍とか年齢とか性別とか」
「国籍はたまにトラブるよね」
「年齢は18歳越えてたら出られないでしょ」
「性別はこの世界、男みたいに見える女はふつうに多いから分からんなあ」
「むしろ女みたいに見える男なのでは」
 
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「いや、そういうのでもし特別に許可がでてたとしても、むしろ予選リーグだけ出場できて、決勝トーナメントには出場できないと思う。それなら予選リーグでフルに使ったはず」
 
「ちょっと日本の本部に連絡して、彼女が中国国内の試合とかでプレイしている所の映像が無いか調べさせるよ」
と高田コーチが言った。
 

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11月7日。
 
一部リーグは昨日までで終わり、決勝トーナメントは明日からである。この日は二部リーグの試合が行われていたが、一部リーグの選手は休養日になる。一応朝から軽く(?)3時間ほど汗を流したのだが、午後は本当にお休みとなる。サクラや朋美などは「寝てる」と言って部屋に戻って本当に寝ていたようだが、高田コーチが「観光でもする?」と言う。
 
「どこに行くんですか?」
「実はトバ湖を見ておきたいと思ってたんだよね。それでヘリをチャーターしてるんだ。もし行く人がいたら一緒にどうかなと思って」
 
「それって自費ですか?」
「ヘリが6人乗りなんだよ。操縦士以外に5人乗れる。僕は2000アメリカドルでチャーターしたんだけど、もし行く人がいたら1人200ドルくらいでどうかなと思って」
 
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つまり4人が200ドル払えば、高田さん自身の負担は1200ドルで済むことになる。
 
「200ドルって何円だっけ?」
「今100円を切ってる。だいたい98円くらいかな。だから19,600円」
「優勝したらタダになりませんか?」
と江美子が言う。
 
高田さんが苦笑する。
 
「いいよ。じゃ優勝したら全員タダにする。でも優勝できなかったら払ってね」
と高田コーチは言った。
 
それで先着4名ということで、玲央美、千里、江美子、早苗が行くことにした。
 
「よし2万円がかかっているから優勝するぞ」
などと江美子は張り切っていた。
 
 
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