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■女の子たちの精密検査(6)

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その日、夕方近くになって行われた2回戦では、千里が出られないので同じ1年の落合君がシューティングガードで出た。相手は結構な強豪で、落合君は相手チームの強いチェックにあってなかなかまともに撃たせてもらえない。
 
しかし北岡君・氷山君の活躍で何とか辛勝することができた。
 
宿舎に戻ってから電話で貴司と話した。貴司はもう留萌に戻っている。
 
「始末書、あと1枚増えたら、私退学になっちゃうみたい」
「ごめーん。こちらも始末書書いたけど、こちらは退学まではいかないや」
「大会終わってから、留萌に行くね。Hなことは自宅とかでしなさいと言われちゃった」
「えっと、むしろ僕がそちらに行っていい? こちらは妹2人もいるし、とてもHできない」
「いいよ」
 
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翌日午前の準々決勝には千里が出場する。
 
相手は今年のインターハイ予選では札幌Y高校に敗れて決勝リーグに残れなかったものの、昨年のウィンターカップの代表でもあった帯広C学園である。
 
しかし千里は前の試合に出られなかった鬱憤を晴らすかのように活躍した。レベルの高いチームなので、千里を完全にはフリーにしてくれない。しかし、それでも千里はどんどんスリーポイントを放り込む。結局この試合で千里は20本のスリーを撃ち半分の10本を成功させて30点をもぎ取る。試合は62対46でN高が勝った。
 
午後の準決勝では今年のインターハイ予選を1位で通過した室蘭V高校と当たった。さすがに苦戦したものの、向こうが6月にはこちらに勝っていて多少甘く見ていた感もあり、その油断を突く形で千里と北岡・氷山の1年生トリオがフル回転し、最終的には10点差で勝利した。
 
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そして最終日、決勝戦に臨んだ。
 
N高校は女子チームも準決勝でインターハイ予選で2位だった釧路Z高校を下して決勝戦に進出している(6月の大会の決勝リーグではZ高校に負けていたので雪辱を果たした)。
 
最終日はこの男女の決勝戦のみが行われる。
 

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試合前のミーティングをしようとしたら、キャプテンの真駒さんが居ない。
 
「どこ行ったんだ?」
「すみません。なんかあいつ、腹の調子が悪いとかでさっきから何度もトイレに行ってました」
「トイレにいるの?とりあえず呼んできて」
 
それで1年生男子部員が数人で体育館内のトイレを探した所、真駒君を見つけて連れてくる。
 
「どうなの?」
「すみません。さっき、食べたおにぎりが悪くなってたかも」
「どこかで買ったやつ?」
「いえ。一昨日の朝、家から持って来たおにぎりで」
「2日も経ってるの!?具は?」
 
「シャケなんですけど、暖房の吹き出し口のそばに置いてたから、それで悪くなっちゃったかなあ・・・」
「こういう時に、食べ物には気をつけなきゃダメじゃないか」
 
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結局、真駒さんが使い物にならない感じなので、この試合は1年の氷山君がポイントガードとして先発することになる。PG.氷山 SG.千里 SF.白滝 PF.四条 C.北岡 というスターティング・メンバーになる。
 

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決勝戦の相手は6月のインターハイ予選でも当たった札幌Y高校である。元々強豪でインターハイ・ウィンターカップに何度も出ているが、6月の決勝リーグでは初戦でそれまでノーマークであったN高校に敗れたことから、調子をくるわせて三連敗で敗退した。
 
しかし今回はN高校をちゃんと研究してきたようであった。特に千里についてはかなり研究したような感じであった。一番強そうな選手がマンツーマンで付くので、ほとんどフリーにさせてもらえない。正直貴司より厳しいと思った。恐らく「仮想村山」役を誰かにやらせて練習したと見た。
 
それでこの試合では、N高側では、北岡・四条・白滝といったフォワード陣がゴール下まで攻め入って得点を狙うパターンを主軸にせざるを得なかった。一番強い人が千里に付いている分、どうしても向こうのゴール下の守りは手薄になっているので、攻め入る隙があるのである。
 
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試合はシーソーゲームで進む。第2ピリオドまで終わって32対32の同点。この間、千里はスリーを2回しか撃つことが出来ず、1本は叩き落とされて、1本入れたのみである。
 
「村山、完全に封じられていますね」
「でもそれで向こうの10番の選手が村山にずっと付いてるから結果的に4人対4人で試合しているようなもの」
 
「あの10番、高校を卒業したら実業団にって誘われているらしいよ」
「すげー。その選手を村山対策に使ってるんだ?」
 
「向こうも村山をフリーにしたら大量得点されると考えて、割り切っているんだと思う。だから、これはこれでちゃんと村山は仕事してるんだよ」
 
「それでも村山、ここまで2回フリーになりましたね」
「10番が悔しそうにしてた」
 
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第3ピリオドに入ると、お互いに少し疲れが見えてくる。そうなると、どうしても地力に勝る方が強い。向こうが得点先行するパターンが多くなり、やがて点差が開き始める。第3ピリオドが終わって50対44と6点差を付けられた。
 
「もう、腹は気合いで押さえ込みます。自分を出してください」
と真駒さんが言い、宇田先生も頷く。
 
それで第4ピリオドは真駒さんが先発する。必死で反撃する。ほんの一瞬千里がフリーになった所へ真駒さんからレーザービームのようなパスが来る。向こうの10番が慌ててダッシュしてくるが、一瞬早く千里が撃つ。入って50対47。後1回3ポイントが決まれば同点。
 
その後双方確実に攻めてゴールを奪い合い、56対53とスコアは進む。北岡君のシュートを向こうの選手が止めようとして腕に触れてファウル。フリースロー。ここで北岡君が2本の内1本を入れて56対54。
 
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向こうの速攻。ゴール下乱戦の中からシュートが撃たれ、ボールはリングの所で1回転したものの、外に落ちてくる。そのボールを真駒さんが確保。そのままドリブルで走る。残り時間20.9秒。千里には10番の選手が付いているが一瞬の隙をついてフリーになる。そこに真駒さんからパス。即撃って3点。56対57と逆転!
 
残り時間はもう8.5秒。向こうは必死に反撃してくる。ポイントガードがそのままゴール近くまで走り込んで来てシュート。北岡君が停める。
 
がファウルを取られた。
 
フリースロー2本である。時計は残り2.8秒。
 
1本目。決める。これで同点。
 
2本目。ボールはリングに当たって外にこぼれる。そこに、ずっと千里とマッチアップしていた10番の選手が飛び込んでボールを確保。
 
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そしてシュート。北岡君・氷山君が必死にジャンプしたものの及ばず。
 
ボールはゴールに吸い込まれた。
 

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審判がゴールを認めるジェスチャーをしている。そして即、北岡君がスローインしたもののそのボールを真駒さんが受け取ってすぐに試合終了のブザーが鳴った。
 
しばらくみんな動けなかった。真駒さんはボールを持ったまま座り込んでいた。
 
審判が整列を促し、みんな並ぶ。
「59対57でY高校の勝ち」
と審判が告げる。
 
「ありがとうございました」
と挨拶して、お互いに握手し健闘を称えた。真駒さんは宇田先生に「失礼します」
と声を掛けてトイレに駆け込んだ。
 
こうしてN高校は、あと少しの所でウィンターカップの出場権を逃したのであった。
 

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「インターハイ予選は男女とも3位、ウィンターカップ予選はどちらも準優勝か・・・」
「女子チーム、どちらにも出られなかったってのでOGから何か言われそう」
と久井奈さんが言う。
 
女子チームは決勝でインターハイ1位だった札幌P高校に結構善戦はしたものの最後は地力の差が出て16点差を付けられて敗退した。
 
「男子の方はこれまで北海道大会でBEST8になったこともなかったから、すごく健闘してるんだけど、女子はこれまでインターハイにもウィンターカップにも出てるからねぇ」
 
「やはり千里を女子チームに欲しいよ。真駒ちゃん、トレードしてよ。代わりに私が男子チームに入ろうかな」
と久井奈。
 
「岬が男子チームに入るのは無茶。だって女にしか見えないじゃん」
「いや、それを言うと村山も女にしか見えないんだけど」
「そうなんだよねー」
 
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「その問題、ちょっと小耳にはさんだけど、協会が再審査するっぽいよ。宇田先生がまた呼ばれていた」
と真駒さんは言った。
 

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11月11日(土)。千里は朝8時半、友人の蓮菜・鮎奈たちと一緒に旭川市郊外の録音スタジオ前に集まった。春頃からこのメンツでバンドを組んで練習していたので、その成果を録音してCDを作ろうということにしたのである。練習ではなかなか全員は揃わず毎回楽器担当を流動的にして練習していたのだが、この日は全員何とか都合を付けた。
 
楽器の担当は、リードギター梨乃、リズムギター鮎奈、ベース鳴美、ピアノ孝子、ドラムス留実子、鉄琴・蓮菜、ライア(竪琴)智代、大正琴・花野子、フルート恵香、ヴァイオリン千里、トランペット京子である。但し曲によっては少し担当を変更する。千里が龍笛を吹いたり、トランペットを鮎奈も吹いてツイン・トランペットにする曲もある。ギターを弾ける子は多いし、ピアノは孝子・智代・千里・花野子の4人が弾けるので結構曲によって交替している。
 
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この日、スタジオの3時間パックを借りることにしている。結局自分たちで録音やミクシング・マスタリングもすることにした。そしてその作業をするため、わざわざ札幌から来てくれたのが田代君であった。
 
「おまえらの話聞いてたら不安になったから来てやったぞ。ミキサーでお菓子でも作るの?とか質問された時は絶句したぞ」
と田代君。
 
「私は別に来なくてもいいよって言ったんだけどね」
と蓮菜。
 
ふたりのいつもの口調なので、どうやらふたりは縒りを戻した感じである。
 
「田代君もバンドやってると言ってたね」
と千里が尋ねる。
 
「ああ。高校の同級生3人でやってる。俺がギターで、後2人がベースとドラムス。ただ歌える奴がいなくてさ」
 
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「ああ、雅文って音痴だもんね」
「どうせなら女の子のボーカル入れようかと言ってるんだけどね」
「ふーん。雅文なんかのバンドに参加してくれるような女の子が居たらいいね」
 
などと言い合っている。見かねて恵香が
「蓮菜、歌ってあげたら? 蓮菜、歌うまいじゃん」
と言う。
 
ふたりは視線をぶつけ合っている。
「そうだなあ。蓮菜がどうしても歌いたいって言うんだったら、歌わせてやってもいいぞ」
「札幌までの交通費と食事代を雅文が出してくれるんなら考えてもいいけど」
 
ということで話がまとまりつつあるようである。
 

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女の子たちの精密検査(6)

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