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■女の子たちの精密検査(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2014-05-31
 
少し休んだ所でトイレに行く。列ができているのでそこに並ぶ。丸刈り頭で女子トイレの列に並ぶのも、最初の頃はいいんだろうか?と思っていたもののこれまで騒がれたことはない。だいたい男子トイレに入ろうとすると「混んでるからといって男子トイレに来るなよ」と言われるから、女子トイレに入らざるを得ない。
 
個室で用を達し、また手洗いの列に並ぶ。その時、トイレに入って来た40歳くらいの女性が千里を見て
 
「あら、あなた?」
と声を掛けた。
 
「はい?」
「あなた、今男子の試合に出てなかった?」
「ええ。出てましたけど」
「じゃ、あなた男なの?」
 
周囲が騒ぐ。千里は小さい頃から普通に女子トイレを使ってきた。それがこんな場所でいきなりこういう詰問をされるのは初めてである。女性は下げているネームプレートを見る感じでは運営関係の人のようである。
 
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「自分では女だと思っていますが」
「生徒手帳持ってる?」
「あ、はい」
 
千里はウェストポーチから生徒手帳を出して見せた。
 
「ああ、ちゃんと性別女と書いてあるわね」
「そうですね」
「でも手帳の写真は長い髪」
「バスケするのに不便なので切りました」
「それは邪魔かも知れないけど、また極端に短くしたものね!」
「髪洗うの楽でいいですよ」
「確かに。でも、なんで女子なのに男子の試合に出た訳?」
 
「出場許可は頂いてます」
と千里は答える。
 
ここで戸籍上は男子だなんて言ったら、この人痴漢として警察でも呼びかねない気がした。
 
「選手登録証見せて」
と言われるのでそれも見せる。春の大会にしても今回にしてもこの登録証を人に見せるの、もう何回目だろう?
 
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「ああ。こちらの写真は髪切ってから撮ったんだ?」
「はい」
 
「でも、男子チームに登録されているのか。女子生徒なのに。なんか疑問を感じるなあ。協会にこの件で照会させてもらってもいい?」
とその女性。
 
「それは構いません。私は協会の判断に従うだけです」
と千里は答える。
 
その女性は頷いていた。
 

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試合でスッキリしなかったのに、トイレでトラブって、何だか不愉快な気分でトイレから出た来たら、ちょうど男子トイレから出て来た貴司とバッタリ会う。
 
「お疲れー」
「お疲れー。でも不完全燃焼だよー」
「僕も。何か今日の試合はスッキリしない」
 
「お互いファウルは気をつけようよ」
「全く。でもあの回避は必要無かったよ。あそこはお互いぶつかっていた方が安全だった」
「あれで始末書を書けって言われた」
「うん。退場するのは仕方無いけど、怪我してシーズン棒に振ったら、その方がよほど痛い」
 
「貴司が怪我したらS高一大事だよ」
「千里も怪我したらN高一大事」
 
「しかしトイレの前での立ち話も何だし、どこか行かない」
「そうだね」
 
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それでふたりで体育館の裏手に出た。周囲に人は居ない。
 
取り敢えず抱き合ってキスする。
 
たっぷり5分くらいはキスした。微笑みあって並んで座り、お話をする。
 
「千里たくさん汗掻いてる」
「うん。着替えようかと思ってたんだけどね。貴司も汗掻いてる」
「この後、着替えるよ。だけど汗掻いても千里って男臭くないよな」
「女の子だもん」
 
「うん。女の子特有の甘い香りがする」
「ふーん。それ私分からないんだよねー」
「女性ホルモン飲んでるんだっけ?」
「飲んでるけど」
 
貴司はやはりそうか、という感じの顔をしていた。
 
「じゃ、声変わりとかは来ないのかな」
「どうだろうね。来なければいいのにとは思うけど、来たら来た時という気がしてきたよ、最近」
 
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「千里とした2度のセックス考えてたけど、あれヴァギナじゃないよね?」
「お金があったら今すぐヴァギナ作る手術受けたい」
「僕、結局どこに入れたの?」
「スマタだよ」
 
「やはりそうか。。。。。僕もかなり考えてそれしかないかもと思ってた」
「あまり気持ちよくなかった?」
「天にも昇る気持ち」
「ふふふ」
 
「千里以外の女の子としたことないから、比較のしようがないけどね」
「私と別れた後で、たくさん経験するといいよ」
「うん。それはそうするつもり」
「私と恋人でいる間は他の子とはしないで欲しい」
「うん。やりたくなったら千里を呼び出す」
「いいよ。その時は留萌まで行って一晩一緒に過ごしてあげる」
 
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ふたりはまたキスする。
 
「だけど雌雄を決するという話では、今日は私が男の子で貴司が女の子だね」
「じゃ僕が性転換しないといけない?」
「お茶に眠り薬混ぜて、寝ている内に手術室に運び込んで、おちんちんチョキンと切って女の子に改造しちゃったりして」
 
「やだなあ。でも千里男の子になってもいいの?」
「おちんちんだけならあってもいいかな。タマタマは要らないから取っちゃおう」
「ってか、千里、タマタマは無いよね?」
 
千里はそれには答えず微笑んでいる。
 
「貴司、おちんちん無くなっちゃったらどうする?」
「とりあえず、小便するのに困りそうだ」
「どうしても困った時は、私のをあげようか?」
「千里のって、使えるの?」
 
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「そうだなあ、普通の男の子に比べたら少し短いかも」
「何cmくらいあるの?」
「うーん。0.5cmくらいかなあ」
「それ、チンコではなくて、クリトリスなのでは!?」
「ふふ」
 

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「なんか、チンコとかの話してたら立って来た」
「舐めてあげようか?」
「えーー!?」
「誰も居ないよね?」
と言って千里はあたりを見回す。
 
「うん」
「物音とかしたら教えて」
と言って千里は貴司のハーフパンツをめくり、トランクスの脇から手を入れてそれを掴む。ひゃー、既にこんなに堅く、大きくなってるじゃん。そしてそこに顔をうずめて、舐めてあげた。
 
「あ・・・」
思わず貴司が声を出す。接触している顔から貴司の心臓の鼓動が伝わってくる。すごいドキドキしてる。私もドキドキしてるけどねー。
 
10回くらい舐めてあげて「今日はここまでね」と言って離れようとした時、いきなりバシャッという音がして閃光がした。
 
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え?何?
 
「御免。全然気付かなかった。多分盗撮された」
「えーーー!?」
 
「いや、こんな所でこんなことしてた僕たちが悪いんだけど」
「どこかに投稿されちゃうかな」
 
「個人的な趣味でコレクションにするだけならいいんだけど・・・」
 
「私たちのユニフォーム写ってると思う?」
「多分僕の方は顔だけ写ってる。千里は顔は写ってないと思うけどユニフォームはパッチリ写ってると思う」
「背番号見たら私と分かるね」
「ごめーん。N高厳しいよね。千里、万一退学とかになっちゃったら」
 
千里は少し考えるようにしていた。そしてやがて微笑んだ。
 
「大丈夫だよ。きっと、そのカメラ壊れちゃうよ」
「へ?」
 

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男はカメラを持って走っていた。何か凄い場面が撮れた。高校生カップルがデートしているのに気付き、キスでもしたら盗撮しようと思っていたのに、いきなりフェラ始めた。最近の高校生は凄いぜ。しかしあの女の子凄い短髪だったな。女の子の丸刈りって、それだけでそそられる。
 
そんなことを考えていた時だった。
 
いきなり何かにぶつかる感触があった。
 
何だ!?何だ!?
 
そして次の瞬間、慣性の法則で、持っていたカメラが走っていた勢いで前方に飛んで行く。道に転がる。そしてそこに大型トレーラーが通り、カメラを轢いてしまった。
 
トレーラーが停まる。運転手が降りてくる。
 
「何か轢いたな。あんたのもの?」
「あ。えっと大したもんじゃないです」
「そう? でも悪かったな」
「いえ、こちらこそ、突然道に転がしちゃってごめんなさい」
 
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それでトレーラーの運転手は手を振って運転席に戻り、去って行った。
 
男は、あ〜あぁと思いながらカメラの残骸を見詰めていた。カメラ壊れちゃった。まあ2年くらい使ったからいいよね。お母ちゃんに泣きついて買ってもらおう。今度はどこのがいいかなあ。取り敢えずCFカードは回収しておかなくちゃ。
 
それでカメラの残骸の中からCFカードを探していたのだが・・・・
 
そこに突然強い風が吹いてくる。思わず顔を手で覆う。その時、残骸の中に転がっていたCFカードらしきものが風に飛ばされ、近くの溝のふたの格子状のところから落ちてしまった。
 
あっ!
 
慌ててその中を覗き込むが、中は凄い量の濁流が流れている。
 
えーー!?
 
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だってこの中にはこないだ女子高生の着替え中を盗撮したのとか、5歳くらいの女の子がおしっこしている所を盗撮したのとか、公園のベンチで女ふたりが濃厚なラブシーンしてたのを盗撮したのとかあるのに!!!!
 
男は呆然としてその流れを見詰めていた。
 

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しかしふたりのラブシーンを見ていたのは、盗撮男だけではなかったようであった。
 
ふたりがそれぞれのチームの所に戻ってから1時間ほどした頃。宇田先生が運営の腕章を付けた男性に呼ばれてどこかに行く。そしてしばらくして渋い顔をして戻ってくると、千里にちょっと来るように言った。
 
宇田先生は千里を少し人の少ない座席付近に連れて行った。
 
「大会関係者でね。体育館の裏手で濃厚なラブシーンをしている選手を見たという人があってね。ひとりが留萌S高のユニフォーム、ひとりが旭川N高のユニフォームだったらしい。その人は選手の顔までは見てないというのだけど、心当たりない?」
 
「申し訳ありません、それ私です」
「相手はS高の細川君?」
「はい」
「今回はコート上ではないけどさ。大会中はちょっと控えてくれない?」
「済みません」
 
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「別に法律に触れるようなことでもないし、恋愛は別に禁止しないけど、そういうのは、自宅とかでやりなさい」
「はい、本当に申し訳ありません」
「取り敢えず、次の試合、君は謹慎。あとそれも始末書書いて」
「はい」
 
「始末書、あと1枚書くはめになったら、君、特待生取り消されるよ」
 
特待生を取り消されると、自分には退学の道しかない。
 
「肝に銘じます」
「今後こういうことは2度とないようにね」
「はい」
 

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千里はさっき女子トイレの中で、運営関係の人から自分の性別について質問され、協会に照会してみると言われたことも話した。
 
「村山君は、やはり女子の方に出た方が問題ないのかも知れないなあ」
と宇田先生は言った。
 
「でも出られないのでは?」
「君さ、正直に答えてよ。性転換してるの? ここだけの話」
 
「してません。女性ホルモンは飲んでいますが、男性器は存在します」
「睾丸も取ってない?」
「はい。取ってません。でも女性ホルモン優位なので、睾丸の機能は物凄く低下しています。声変わりがまだ来てないのもそのせいだと思います」
 
「胸、あるよね?」
「女性ホルモンの影響で少し膨らんでいますが、AAカップ程度です。ただ、ふつうの授業とか受ける時は、Cカップ程度になるパッドを入れていることもあります」
「なるほどね。つまり、君って男性器以外は女性なんだ?」
「うーん。。。それは新しい見解かも」
 
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「それに君って医学的に男性かも知れないけど、うちの女子生徒だよね?」
「自分では女子高校生だと思っています」
 
先生は頷いていた。
 

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