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7月17日(土)早朝。
今年も宴会の後、そのままP神社に泊まっていた(ゴロ寝していた)桜組の手で神輿(みこし)が船に乗せられる。
(女性メンバーは会議室ではなく巫女控室に用意されたお布団で寝ている)
和弥が同乗し船は沖に出る。そして日の出と同時に和弥は神降ろしの祝詞を奏上した。
留萌の日出・日没
2010/07/17 4:05 19:13
2010/07/18 4:06 19:12
神霊の乗った神輿を浜に持ち帰り、今年もP神社の夏祭りが始まる。
神輿(みこし)は町内を一周してからA町の御旅所(旧胡桃神社)まで行き、神輿殿に収められる。巡回の途中では、桜鱒の養殖場や新鮮産業の工場・風力発電所などの近くも通った。
神輿殿は去年は鉄骨の骨組みにトタン板を張っただけの簡易なものだったが、今年は壁は江差ヒバの縦板で覆い、屋根はガルバリウム鋼板にして結構高級感が出た。この屋根は軽くて丈夫だし雪にも強い。夏は暑く冬は寒いのが欠点だが、長時間居る場所ではないのでよいだろう。
(トタンは鉄に亜鉛メッキしたもの。ガルバリウム鋼板とは鋼板にAl 55%+Zn 43.4%+Si 1.6%の合金をメッキしたもの。耐久性がぐっと向上する。見た目もかなり美しい。これに自然石を吹き付けた“ジンカリウム鋼板”はもっと美しいし耐久性も高いが、雪対策で滑りの良いのを優先した。P神社の社務所はジンカリウム鋼板を使用している)
高校生巫女(玲羅や貞美など5名)による巫女舞のあと、町内会長や市会議員さん、漁協の三泊支部長、留萌新鮮産業の専務さん、桜水産の社長(柳里)などによる玉串奉奠があった。
その後、幼稚園児(+小学1年生)の巫女舞が奉納される。今年も巫女舞のメンバーには年中の男の子が混じっていた、それに続いて稚児衣裳の男の子たちが今朝穫れた魚を奉納する儀式が行われる。昨年巫女衣裳を着て巫女舞に加わっていた年中(今年は年長)の男の子は今年は稚児衣裳で初魚の儀のほうに加わっていた。
オーリンが出て来てロビンに言った。
「去年まで3年間巫女舞をしてくれた男の子に、巫女を3年間したご褒美に本物の女の子に変えてあげるよと言ったんだけど、断られた」
「あまり余計なことしないように」
(既に睾丸は除去して卵巣を入れてて排尿は女の子と同じにしてることは言ってない)
「第八西海丸司厨の飛鳥ちゃんは凄く可愛いから女の子に変えてあげていいよね?」
「あの子、男の子と付き合ってるんだっけ?」
「こないだは彼氏に押し倒されたから、緊急に男の子とセックス可能な身体に変えてあげた」
(お風呂に入った時は単に陰毛に隠れていただけだが、卓也に押し倒された瞬間、女の子の形に変えられた)。
『飛鳥ちゃん、女の子の身体に変えてあげるよ』
『オーリン?分かった。よろしく』
(押し倒されたあと「毛布の下で」と言っていったんブレイクした。そこから再度ベッドの中に入るまでの間に身体が変化した。それまで本人は求められたら口でしてあげるつもりだった。卓也は酔いすぎていて自制が効かなかった)
「本人が女の子になりたいと言うのなら変えてあげてもいいよ」
「了解了解。ずっと女性ホルモン飲んでたし、問題無いよね」
「そういう子ならいいんじゃないの?」
(中学生の時に睾丸を取って卵巣を入れてあげたことは言ってない:だから飛鳥は中学の時以来生理をしている。実は女性ホルモンなんて飲んでない。ただちんちんはずっと付いたままだった。ほぼクリトリス化していたが)
中2の翠花ちゃんの笛が鳴る中、和弥が祝詞奏上をして、祭りは小休止に入る。
今年も出店は10軒出ていた。千里は今年も峠の丼屋さんと銀馬車(パン屋)を出した。小学校の児童会はいつものように鈴カステラ屋さん。養護学校の保護者会は今年も綿菓子屋さんを出していた。また“桜観光”は今年も昼間だけクロワッサンのローストビーフサンドを売ったが、好評だった。
峠の丼屋さんは、熊カツカレー、猪カレー、牡蛎丼、牛飯、うな丼と出したが、今年も牡蛎丼がいちばん売れた。今年は岡山産冷凍牡蛎ではなく、北鹿島産の生牡蠣を使用している。うなぎは台湾産、牛肉はオーストラリア産。猪は姫路産。熊は留萌産!
神社の縁起物で、招き猫(常滑焼き)と赤べこ、更に来年のえとである卯にちなんで、福島のウサギの桐のこ人形と常滑焼きのウサギを売ったが、どちらもよく出た。イーグレットのウサギ紙人形も売れていた。
今年も公世を召喚して千里と模範試合をし、その後、彼に審判をしてもらって、小学生剣道大会をする。優勝者には、いつものように特製の木刀を贈呈した。これも定着してきた。常弥さんの字で「平成二二年・留萌三泊P神社」という金墨の文字が入っている。北海道産の白樺の木で作られたものである。
午後からは留萌オロロン太鼓、小平町のハワイアンダンスのグループ、留萌市内のサンバチームの音楽とダンス奉納の後、近隣で活動するバンドの演奏が4件あった。全部桜観光の船でも演奏しているバンドである。千里もエレクトーンで、いきものがかりやポルノグラフィティなどの曲を弾いた。『ブルーバード』『ありがとう』『花は桜、君は美し』、『アポロ』『アゲハ蝶』『メリッサ』などといったところである。
そのあとカラオケ大会、N小のブラスバンド部の演奏の後、19時からはお神楽が奉納された。
日曜日は神輿(みこし)が今日は御旅所を出発してから町内を練り歩き本社に戻る。昼間は民謡大会、オロロン太鼓の演奏、玲羅のコネでS高校吹奏楽部の演奏、そしてまた、昨日に続いて4つのバンドの演奏があった。千里もエレクトーンを弾いたが、この日はイージーリスニングの類いを演奏した。『夏の日の恋』『恋はみずいろ』『シバの女王』、『オリーブの首飾り』『妖精コマネチのテーマ(*15)』『エーゲ海の真珠』などといったところである。
児童会が主催したビンゴ大会も盛り上がった(今年も景品は留萌新鮮産業さん提供:大当たりは東京ディズニーリゾートのチケット)。
(*15) この曲はテレビ局が“ルーマニアの妖精”と呼ばれた体操選手ナディア・コマネチの演技シーンにかぶせてよく流したため日本では『妖精コマネチのテーマ』と呼ばれるが、本来はアメリカの長寿ドラマ『The young and the restless(青春のざわめき)』のテーマ曲である。実はコマネチとは全く無関係。
夕方、最後はソーラン節が奉納される。民謡をやっている人が10人ほど拝殿に並び歌う。参拝者が歌いながら踊り、境内は熱狂となった。
ソーラン節のあとは、神輿(みこし)を船に乗せ和弥も一緒に沖合に出る。そして日没と同時に和弥が神上げの祝詞を奏上して祭りは終わった。
(ソーラン節→中学生巫女:珠の舞い→木遣り歌→神輿船出・神上げ神事)
祭りの最後の付近は秒単位の正確なタイムキープが必要である。ここ数年は巫女の元締め・梨花さんがしてくれている。
今年もこの神上げの様子がテレビカメラで撮影され、境内に設置した映写スクリーンにプロジェクターで映された。またスクリーンには昨日朝の神降ろしの様子や神輿運行、オロロン太鼓、お神楽などの映像も映された。
今年も札幌で旅行会社が募集したバスツアーの人たちが30人ほど来ていて、オロロン太鼓、バンド演奏、ビンゴ大会、ソーラン節と楽しんでくれた。ツアー客には宝剣クトネシリカも見せた。
ツアー客は祭り終了後、三泊会館に入れて夕食を取ってからクルーズ船に乗り、明朝は稚内になる。鰊の昆布巻きとカズノコのセットのお土産付きである(翌日夕方に渡す:峠の丼屋さん謹製)。
ロビンはその夜のうちに洞門の鏡で京都に戻った。和弥は星月を連れ、月曜日に公世と一緒に桜ジェットで神戸空港に戻った。公世は子供たちのお世話係兼任だが、星月は公世のおっぱいにたくさん触っていた!
「母性本能を刺激されない?」
「ぼくは男だからそんな本能は無い」
「はいはい」
(留萌→旭川空港は助手席に公世が乗り、和弥が運転した。神戸空港にはコリンが迎えに行き、神戸空港→姫路はコリンが運転して和弥は助手席。公世は電車で京都に戻った)
7月17日、京成成田空港線(成田スカイアクセス線)開業。成田空港連絡特急列車“スカイライナー”は同線経由での運行となり、車両も新車両のAE形が就役し、日本国内の新幹線以外では北越急行ほくほく線に続く2例目となる最高速度160km/hでの走行を実施。
フィンランドの製紙プロジェクトでは何度かの試作品製造を経て、オットーネン親子に気に入ってもらえるトイレットペーパーが完成した。
「でもこれどこで売るの?」
「まだ何も考えてないんですよ」
「じゃ僕が営業してあげるよ」
「ありがとうございます!」
それで彼が営業してくれた結果、イダルの町でケラン以外に2軒、ケダルで3軒の店でヴィージ・プリンセッサのトイレットペーパーを扱ってもらえることになった。
7月18日(日)、雅の振袖注文で“本友禅”の内“光”(山崎工房)が枠に到達して締め切りとなった。東山工房で製作する“夢”はまだ少しゆとりがある。“夢”と“光”は枠数は同じだが、低価格のほうが先にソールドアウトしたものと思われる。
朝日のところに大阪に住んでいる従妹の光から電話が入った。
「朝日ちゃん結婚するんだって?」
「うん」
「相手は男の人?」
「そうだよ」
「事実婚?」
「法的にも婚姻予定。実は既に同棲してるんだよ」
「すごーい。だったら性別変更したんだ?」
「うん」
「えらーい。ねえ、一度そちらに行っていい?」
「いいよ」
それで光は大阪国際空港(伊丹)から飛行機で福岡空港(板付)まで飛んできたのである。
オーリンが出て来て言った。
「光ちゃんを一晩泊めてあげなよ」
「何かしてあげるつもりなんだ?」
「してもいいでしょ?」
「本人がいいと言ったらね。だったら布団一式買ってきてくれない?」
と言って朝日はオーリンに1万円札を渡した。
「なんで私がオーリンの趣味に協力しなきゃいけないんだ?」
と文句言いながら、オーロラは布団を一式、朝日のマンションに運び込んだ。ひとりでは持てないので、清川に協力させている(報酬は九州の地酒)。
(オーロラちゃんは優しい)
朝日は光を福岡空港まで迎えに行った。
「凄く女らしくなってる」
「恋愛中だからフェロモンのせいかもね」
「すごーい」
「光ちゃんも恋をしたら女らしさがアップするよ」
「男らしさがアップしないか怖くて」
「あはは。今日はうちに泊まりなよ」
「でも彼氏来ないの?」
「来るけど、まあ多少の騒音は気にせず寝てね」
「了解」
朝日は表の部屋に布団が置いてあるのを見て言った。
「今夜はこちらの部屋で寝て。私たちは奥の部屋で寝るから」
「うん」
お茶を入れて、光が持って来た抹茶饅頭を食べながら話す。
「手術はどこで受けたの?やはりタイ?それとも国内?」
「ひみつ」
「なんで〜?」
「明日の朝までにはきっと分かる」
「へ?」
「平日で申し訳無いけど結婚式には来てよ。平日で来る人少ないし。交通費は出すからさ」
「うん。いいよ。私ドレスとか着てもいい?」
「男物スーツとかは着ないでよね。そうだ。振袖貸してあげるよ」
と言って朝日は自分の振袖を渡した。
「うちの母ちゃんとかも着付けできるから」
「これ高そうなのにいいの?」
「勤め先が呉服屋だからね。安く買えるんだよ」
「へー」
「お店だから土日休めないから平日挙式にしたんだよ」
「なるほどー」
ほどなく和彦が帰宅する。
「お帰りー。これ従妹の光ちゃん。光ちゃん、こちらフィアンセの和彦」
「初めまして。いらっしゃい」
「初めまして。お邪魔してます」
その日はホットプレートで薩摩和牛の焼き肉をした。和彦は光の性別には気付かなかったようである。
翌日、光は凄く嬉しそうな顔をして大阪に帰っていった。