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■女子大生・春は出会い(6)

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剣道の関西大会が終わった翌日、5月24日はるり・えりの誕生日だった。千里はラウンドケーキを買ってきて誕生祝いをしてあげた。コーラで乾杯する。
 
「私たちチューハイとかも行けますよ」
「君たち未成年でしょ」
「はーい」
 
ケーキは9分割して、コリン・小郷・百合にもあげた。千里はお刺し身たくさんとすし太郎・焼き海苔も買ってきたので、それで手巻き寿司とする(御飯はたくさん炊いておいてもらった)。
 
「お寿司大好き」
「お魚美味しい」
 
お魚は、鰤(はまち)、かつお(上りがつお)、鮭、タイ、イカ、マグロのすき身、いくら、甘エビ、ついでにカニカマ、と用意した。
 
「私唐揚げも好きだなあ」
「ああ、作りますよ」
と言って百合さんが鶏の唐揚げを2kgほど作ってくれたら、みんなもりもり食べていた。
 
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「だけど5月24日って微妙な日付だね。牡牛座?双子座?」
「双子座でーす!」
「私たち双子座生まれの双子でーす!」
「ほほお」
「でも誕生日が同じだと何でもひとつにまとめられちゃうんですよね」
「まあ仕方無いね」
「でも双子でもタイミング次第では誕生日が1日違う双子ってできそう」
と双葉が言うが
「甘い。1日違いくらいはまとめられる」
と公世は指摘する。
「確かにそうだ」
 
微妙なタイミングで生まれて双子なのに星座が違い性格も違うというのは1972年の映画『悪を呼ぶ少年』(原題:The other)のネタ。
 
赤の千里は関わらないが、青の千里は6年後に、生まれが1年違いの双子という凄い子たちに遭遇することになる。(千里・青葉・天津子の共同処理案件。桃川春美の遺伝子上の子供たちである)
 
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「千里も3月3日生まれだから、おひな祭りとまとめられる」
「なるほどー」
「おかげで毎年みんなから誕生祝いしてもらってたけどね」
「忘れられない代わりにケーキ1回分損しますね」
「12月24日生まれとかまさにそれだな」
 

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京丹後市。
 
その電話は唐突に掛かって来た。千鶴子が手元に置いている子機で取る。向こうが何か言ったのに対して千鶴子は
「しんいちかい?」
と聞いた。しんいち?と絹恵が首を傾げる。千鶴子は電話をスピーカーモードに切り替えた。電話の相手が言う。
「俺交通事故起こしちゃってさ、相手に多額の補償しなきゃいけないんだよ。母さん、120-130万でもいいから助けてくれない?」
「じゃ120万」
「助かる。どこに行けばいい?」
「じゃ網野駅前に」
「分かった。俺今取り調べ受けてて動けないから代わりに友だちに行ってもらうから」
「うん。お金下ろしてから行くから2時頃でいい?」
「分かった。友だちは目印に青いバッグ持ってくから」
「了解」
 
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それで電話は切れた。
 
「千鶴子さん、この電話」
「よくある詐欺だね。だいたいしんいちって誰だろね。絹恵さん、警察に電話してくれない?警察は年寄りの話はちゃんと聞かないから」
「はい」
 
それで絹恵からの通報で2時に網野駅前に来た受け子が逮捕されたのであった。
 
ちなみに千鶴子さんの息子の名前は政(まさし)である。彼は“俺”などという言葉は使わない。いつも“僕”である。
 
警察への通報では絹恵は話を簡単にするのに千鶴子の娘を名乗った。千鶴子さんは絹恵から“母”と呼ばれて微笑んでいた。
 
しかしいい話のネタができたようで、千鶴子さんは初美さんとも慶子さんとも大笑いしていた。この件はテレビでもニュースになっていた。またこの事件を受けて町内放送でも縮緬組合の広報でも特殊詐欺に関する注意喚起のお知らせを流していた。縮緬製作者には高齢者が多い。
 
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和彦は朝日に言った。
「ダイヤの指輪買いに行こう」
「え?夏のボーナスが出たらとか言ってなかった?」
と朝日は言う。
 
「だって僕たち夏には結婚しなくちゃ」
「あ、そうか」
「4月から給料あがったから何とかなるよ」
「うん。でも無理はしないでね」
「無理はしないよ。1000カラットのダイヤとかは買ってあげられないけど」
「そんな大きな石着けたら指が折れちゃう」
「でも場合によっては結婚式の費用少し助けて」
「もちろん。でも私たちもホテルの式場とか使わずに、神社で式挙げてあとはお食事会だけにしようよ」
「うん。こちらには友だち少ないしね」
 
それでルビーの指輪を買ったのと同じ、三越の宝石売場に行った。和彦は最初からこちらの予算を伝えて
「予算50万円くらいでダイヤのエンゲージリングが欲しい」
と言った。
「リングの材質は?」
「18金のストレートで」
 
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「そのご予算ですとこのあたりですね」
と言って店員さんが見せてくれたのは結構大きな石である。
「こちらは0.7ct, SI2で48万円でございます。こちらは品質が上がってVS1, 0.6ct, 51万円でございます」
 
(ダイヤモンドのクラリティはF>iF> VVS1>VVS2> VS1>VS2> Si1>Si2> i1>i2>i3)
 
「どう思う?」
と和彦はこちらに訊く。
「品質の違いって分かる?」
「僕には分からない」
「専門家が拡大鏡で見ると違いが分かるんですよ」
「私たち素人だし、人がつけてる指輪を顕微鏡で見る人も居ないし、パッと見て分からない程度なら大きい石のほうがいいんじゃない?」
「そだねー。じゃその0.7カラットので」
「かしこまりました。刻印とかお入れになりますか?」
「刻印の料金は?」
「10文字までは8000円でございます。それを越すと1文字800円で承っております」
「じゃ、“K TO A LOVE”」
と和彦は紙に書いて渡した。
 
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その場で指輪のサイズも調整し刻印も入れてくれた。その指輪を和彦が左手薬指にはめてくれる。何だか夢でも見てるみたい。半年前には思いもよらなかった展開だ。
 

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本屋さんで神宮館の運勢暦を買い、またケーキとワインを買って帰った。
 
ワインで乾杯しケーキを食べてセックスを1回してから、運勢暦を見て結婚式の日取りを決める。8月24日と決めた。
 
当日は火曜日でお店が休みである。一粒万倍日で“中段”が“開く”の吉日である。占星術に詳しい友人に電話して訊いてみたら当日は17:29から23:10までが“ボイド”なので、結婚式・披露宴がこれにぶつからないようにしたほうがよいということだった。時期的には新月と満月の間(満月は翌日25日)で、結婚とか開店とかに良い時期らしい。
 
「午前中に式を挙げてお昼にお食事会をぶつけよう」
「式の予約が取れたらそれが理想的だね」
 
それで和彦が神社に電話を掛けまくる。すると市内の中心部近くにある住吉神社で10:00からなら挙式OKということだったので、それで押さえた。
 
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食事会の場所としては天神に割と近いTホテルでプライベートダイニングが利用可能ということだったのでそこを予約した。ここは婚礼衣装の貸し出しもするということだったので、ウェディングドレスとタキシードを借りることにした。すぐ2人でそのホテルに行き衣裳合わせをした。また京都から来てくれる親族をこのホテルに泊めることにし、早急に人数をまとめることにした。ただ平日なので来る人はそう多くないと思われる。朝日は親戚とか呼んで性別のことを話されたりしたらヤバいので、やはり平日結婚式でよかったぁと思った。
 
(きっと大丈夫だよ。みんな朝日ちゃんのことは女の子だと思ってるよ)
 

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さて、雅の内部で組織した生産能力評価委員会は(派遣・短期雇用・残業無しでの)各ランクごとの生産能力を次のように見積もっていた。
 
手好き友禅:300(昨年650)
プリンタ染め:500(昨年800)
セパレート:600(昨年1000)
合計1400(昨年2450)
 
特別製作期間中は亀岡工場の縫子さんたちに姫路ネオラボに入ってもらうことは見込んでいる。
 
残業無しという前提だが、実際には独身者を中心に“たくさん残業したい”という人がいるし、派遣と短期で600人月の縫い子増加が見込まれているので、社長・沢村副社長・常務・雅夫・祥代の会議で、制作方法毎のキャパを次のように定めた。製造現場を把握している副社長・常務・祥代の3人から、ボトルネックになる縫製能力は昨年の実績は1450だが、残業を大幅に減らし派遣も3分の1になるなら800で停めるべきという線が出たので、社長の政治判断で、その能力の7割を普及品のプリンタ染め製品に割り振ることにした。
 
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本友禅 200
準友禅 50
友禅風 550
セパレート 800
 

検討委員会の数値より低価格帯にシフトしている。商品戦略的には準友禅(里王縮緬+手描き)は無くてもいいのだが、若い彩色技師の訓練のためにこれは確保しておきたいのである。最終的に各ランクごとの注文受付可能数を次のように決めた。
 
京友禅・夢:東山工房・丹後縮緬 100
京友禅・光:山崎工房・但馬縮緬 100
準友禅:東山山崎・里王縮緬 50
友禅風:ネオラボ・里王縮緬 550
振袖21特:ネオラボ・セパレート刺繍入・里王縮緬 300
振袖21:ネオラボ・セパレート刺繍無・シルック 500
 
(この他に既製品のみで注文は受け付けないが他社製の“京友禅・花”がある)
 
千里や沢村副社長の努力により、今年は生地の調達には不安がないのでほぼ縫製能力だけの問題になった。
 
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少し悩んだのが振袖21と振袖21特の比率である。実は昨年、京都市内や東京・横浜では刺繍入りのほうがよく売れたのに大阪・福岡・舞鶴・大津などでは刺繍無しのほうがよく売れたのである。住民の気質の違いなのだろうと思われたので今年は半々に近い数字を設定してみた。
 

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5月30日、鳩山由紀夫内閣で連立政権を組織していた社会民主党が全国幹事長会議などを開催し、沖縄県アメリカ軍普天間基地移設問題を巡って福島瑞穂党首が内閣府特命担当大臣を罷免された(閣議了解の書類への署名を拒否したため)ことに伴い、連立政権からの離脱を正式決定した。
 
6月2日 - 内閣総理大臣鳩山由紀夫が民主党臨時両院議員総会の席で退陣を表明。また小沢一郎民主党幹事長も同時に辞任を表明した。
 

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