広告:ここはグリーン・ウッド (第5巻) (白泉社文庫)
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■女子大生・秋津島(2)

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2009年7月5日(日).
 
剣道の昇段試験がおこなわれ、双葉と公世は四段に昇段した。公世は男子の四段である。またシルキーは1級に合格した。
 

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7月上旬、“££新報”という週刊誌がこんな記事を掲載した。
 
成人式に振袖が無い!?
 
・京都の呉服店“雅”に例年の15倍もの振袖購入申し込みが押し寄せている。
 
・この注文に見合う数の振袖を用意できないのは確実
 
・ここで振袖を注文していた新成人は可哀想なことに成人式に振袖が無いということになるだろう。
 
・雅はどう責任を取るつもりか
 
・本社が取材を申し入れたところ、雅は「注文を受けた分はちゃんとお渡しする」と根拠の無い主張をするだけだった。
 

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この記事に対して雅には物凄い数の問合せが殺到した。これが原因と見られるキャンセルの申し出も10件あった。
 
小川社長は再度記者会見を開いた。
 
(1) 仮注文を頂いた数の1.5倍の振袖を製作できるだけの反物を既に確保している。
 
(この時点での仮予約数約1800, 振袖用縮緬反物確保数2700−これ以外にシルックもある)
 
(2) 廉価品を染めるためのインクジェットプリンタを2台増設した。
 
(3) 手描き友禅の技術者も経験者を中心に大増員した。
 
(4) お仕立てをする縫い子さんも経験者を中心に増員中である。作業をするための工房も既にひとつ(山崎)増設したし、今月もうひとつ(姫路)増設予定である。
 
(5) また他社からの買い付けにより、既製品振袖も大量に確保した。
 
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(6) ご注文いただいた振袖は責任持って製作し、間違い無くお渡しする。また仮注文していただいた方には、本注文の受付終了後も既製品振袖の中から選んでお渡しすることが可能である。
 
雅はこの雑誌社を事実無根の記事により名誉毀損・営業妨害したとして民事告訴した。裁判所はこの裁判の審理を12月まで延期した。つまり結果を見てから判断しようということだろう。
 

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雅はお客様の不安解消のため「作業進行度」というページを雅のウェブサイトの中に作った。特上品/準特上品/上級品/友禅風/振袖21 という5ランクに分けて、各々の進捗状況を掲示する。これと別に既製品振袖の在庫点数と販売数も表示した。
 
全ランクとも第1段階の反物調達数は大きな数が表示された。これは上から順に丹後縮緬、但馬縮緬、東京縮緬、里王縮緬、シルックの反物確保数である。特に里王縮緬の確保数が2000反と表示されていたのは、消費者にかなりの安心感を与えたようである。6月末までに入った仮注文の数が1729である。
 
ほかに但馬縮緬はこのページができた時は250だったが、すぐに350に増えた。これは千里の指示で5月中旬から臨時養蚕場で育て始めた蚕から採った生糸で作った縮緬が7月頭に納入されたためである。蚕は育て始めてから約1ヶ月で繭を作る。
 
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また最上級品の丹後縮緬も当初150だったのがすぐ210に増えた。これは新たな縮緬業者との契約が取れたためである。
 
雅では倉庫に大量に積まれた反物の箱の写真、飛行機に大量の反物の箱が積まれた写真、インクジェットプリンターの写真、多数の技術者が働いている工房の写真、更には(但馬の)製織工房で織機が多数動いているところの写真などもホームページに公開した。
 

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飛行機の写真が公開されたことで、やはり海外から大量に生地を輸入したのだろうと消費者は認識したようである。また「飛行機をチャーターして運んできました」とコメントしたのも、雅の“マジ度”を感じさせて好感されたようである。
 
7月頭の段階では各ランクごとに「受付可能残数」が表示されていた。雅ではこの残数は上から順に早く無くなるだろうと予想し、実際そうなったのだが、消費者は逆に安いのが先に売り切れるのではと思ったようであった。実際の注文も下のグレードから先に入りはじめた。しかし用意している反物の数が上のグレードほど少ないので、最初に残数ゼロになってオーダーストップになったのは丹後縮緬使用の特上品であった。
 
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またこのサイトで注文番号とパスワードを入力すると、現在のその注文番号の着物の製作段階が表示されるようにもなっていた。(染め準備中→染め中→染め完了・反物乾燥中→裁断中→縫い待ち→縫い中(1->10)→仕上中→完成:縫い待ち中の場合あと何人目かというのも表示される:その数字が日々小さくなっていく)
 
しかし消費者が安心感を持ったことから、本注文は仮注文を大きく超える数入ることになる!
 
8月に里王縮緬が500, シルックも300追加されたので何とかなった。この追加されたシルックは東レの正規の代理店から納入されたものである。割増金を払って特急で納品してもらった:シルックはその後も毎月150反納入してもらった。丹後縮緬が毎月30, 但馬縮緬は毎月100, 里王縮緬は毎月200追加された。
 
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なおこの“振袖ミッション”中は留袖や訪問着の注文は全部他の呉服店を紹介して、雅ではお断りしていた。
 

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インクジェットプリンター製品に関しては7月はだいたい注文後2〜3日以内に染め完了になった。また染めができると初期段階ではだいたい2週間で仕立てた。これは初期段階では上手い縫い子さんがフルに稼働できたからである。それで7月1日にインクジェットで注文した人は7月15日(水)にその振袖を受け取ることができた。注文番号1の人の記念写真が(本人同意のもと)公開されたので、消費者には「雅はマジでやる気だ」と思われたようである。しかしやはり早めに本オーダー入れたほうが確実だろうと思われたようで、7月中に本オーダーが多数入った。本オーダーした人の7割が7月中にオーダーをしている。
 
しかしこのページが公開されて以来、業界でも消費者にも、雅は本当に全オーダーをさばきそうだという見方が広がった。ただ一部には、この注文をさばくため、なりふり構わず大量投資しているみたいだけど資金繰りは大丈夫か?と心配する声も出始める、情報通?の人の意見として、雅はこれだけ大量の反物を仕入れるだけでも、昨年の和服売上額の3〜4倍の資金を使ったはずという説を出していた。
 
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しかしこれに関しては、友禅の組合と友好的な関係にある京都ローカルの新聞が、雅の関係者から聞いた話として、今回の“ミッション”には、プリンス・プリンセスグループから100億円ほどの資金が投入されているという話を報道し納得された。またそれだけの資金が投入されているのならきっと大丈夫だろうという見方も消費者の間には広がった。
 
実際には千里は但馬縮緬・東京縮緬・里王縮緬・シルック反物の代金、インクジェットプリンターの代金、臨時倉庫や新工房の建設費などを請求していない。小川社長には「振袖の売上代金が入ってからでいい」と言っている。雅が自己負担しているのは増員したスタッフの労賃の類いである。これについても千里が新株を買う形で大量の資金が注入されている。
 
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千里としては、第1にこういう困難な状況を乗り切るということ自体が楽しいし、このミッションが成功すれば巨額の利益が得られるのとともに、雅の事業が大きく伸びるのも確実なので、投資の価値があると判断している。
 

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7月13日、ロサンゼルスから関空に到着したアメリカン航空の飛行機にrio tango silk の技術者が5人乗ってきた。多忙なロビンの代わりにジェーンが出迎え、コリンの運転するエスティマで豊岡市の但馬縮緬製織場に連れて行った。
 
彼らにはこのあと1ヶ月ほど掛けて、縮緬や友禅の製作過程を見学してもらう。ガイド役はふだん釧路のきーちゃんの家に居る小樅に頼んだ。小樅は英語はできる。また青と黄色が区別できる。何かあった時はポルトガル語のできるコリンがフォローする。(ブラジルはポルトガル語。アルゼンチンやペルーはスペイン語。1494年のトルデシリャス条約の結果でこういうことになった)
 

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7月19日、タイムシフト中の東の千里は、成田から世界選手権が行われるバンコクに向けて出発した。この千里は、タイムシフト中のブレンダと通常時間に居るゆきが合体したもの(変則フランソワ)である。
 
一方同じ日、通常時間にいるほうのブレンダは、雨宮先生たちと一緒に日食観察のため、奄美行きのフェリーが出る鹿児島に向けて車で東京を出発した。こちらはブレンダだけであり、黄色の千里は同行していない。鹿児島まで車出行くのは、奄美行きの飛行機も鹿児島行きの飛行機も満杯でチケットが取れなかったためである。
 
(筆者もこの時は、奄美空港行き・鹿児島空港行きが取れず、福岡空港に降りてレンタカー(乗り捨て)で鹿児島港に移動して、鹿児島−奄美のフェリーに乗った)
 
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この時期、西の千里は、ロビンが7/11-12にP神社の夏祭りに参加してきたし、雅の大量受注問題でも、姫路ネオラボの設置などで忙しくしていた。
 

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今年は7月19日と31日が土用の丑である。プリンス・プリンセスグループでは今年も鹿児島産の国産うなぎ、台湾産のうなぎ、安価な中国産うなぎなどのほか“うなぎそっくり”もよく売れた。
 
去年産地偽装問題でトラブったプリンスも今年は問題無く各々のランクのうなぎが売れた。値段の手頃感で台湾産がいちばん売れた。もっともうなぎの倍以上“うなぎそっくり”が売れた。
 

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7月22日、奄美大島北半分などで皆既日食が観測された(南半分では見られない)。通常時間にいるブレンダはこれを奄美大島の宇宿漁港で観測した。薄雲はひろがっていたもののダイヤモンドリングは観測できたし、なによりも昼間なのに真っ暗になって鳥が騒ぐのなどを体験できた。
 
最も長時間の日食が見られるはずだったトカラ列島に行った蓮菜は暴風雨のため、日食どころか学校に避難するはめになった。
 
タイに行ったタイムシフト中のブレンダとゆき、玲央美、福岡に居た桃香と通常時間の玲央美、関西に居た西の千里などは部分日食を見た(京都でも0.8まで欠けた)。
 

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奄美で皆既日食を見た(通常時間の)ブレンダは帰りの途中、福岡でマンハッタン・シスターズのライブ製作を1ヶ月ほどにわたってすることになる。
 
この“マンハッタン・シスターズ”というのは、福岡では“ブロードウェイで人気のダンス&コーラスグループ”という触れ込みだったのだが、実はそんなものは存在せず、福岡のイベントの主宰者が現地の代理人に頼み、ニューヨーク近辺で歌や踊りのできる女の子を30人ほど寄せ集めて日本に送り込んで来ただけのものであった。千里と雨宮はこの女の子たちをまとめるのに苦労していた。
 
・歌のうまい子3人を抜擢して前面に立たせメロディーを歌わせる
・ダンスのうまい子4人をその後ろで踊らせる。
・ほかのメンバーには3種類のフォーメーションを教え、曲によって使い分ける。
 
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千里と雨宮は初公演の前夜に突然このグループを任され、小学校の学芸会未満だったこの集団を一晩で、何とかお金を取って見せられる程度にするのに苦労した。
 

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タイムシフトしていたほうのブレンダと玲央美は世界選手権を終えて帰国したあと、8月4日のあと、2009年12月の通常時間に戻って行った。ゆきのほうは、このあと、通常時間のブレンダが福岡から戻るのを待って合流する。
 

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8月2日(日なる).
 
留萌駅に桜観光が製作した駅弁“桜鱒弁当”がお目見えした。桜の花の形の容器を使う。
 
この容器は地元産の白樺の木で作った“曲げわっぱ”である。それに料理がくっつかないようにクッキングシートを敷いている。最初はプラスチックの容器で企画したのだが、型代が高額になると言われ、取り敢えず木で作ったのだが、かえってこのほうが風情があるとして、これが正式になった。
 
メインは桜鱒のフレークをご飯(ゆめぴりか)に混ぜたもの(鮭飯)である。表面には桜でんぶを掛け、桜の形の麩、イクラも散らしている。それに桜鱒の昆布巻き、桜鱒のフィッシュフライを添えている。このフィッシュフライがお魚の形をしている。
 
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値段は田舎の駅での販売ということを考えて700円に設定した。初日は30食売れてまずまずのスタートとなった。
 

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