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翌日(8/14)は朝からムーミンワールドに行った。バスで1時間ほどでナーンタリに到着した。ここのカイロ島にムーミンワールド(*14) は、ある。
(*14) ムーミンワールドは1993年に開園した。営業は夏季のみ。行く人は開いてる日と営業時間の事前確認を。
公園沿いの道を歩き、橋を渡ってムーミンワールドの中に入る。中はムーミン谷の世界が再現されていた。子供の客が多かった!
日本のアニメを見て原作者が激怒したなどという話も聞いていたので本場のは日本のとは全然違うかなりおどろしげなものかも、などとも思ったのだが、良い意味で想像を裏切るとても可愛い世界であった。双葉だけでなく、清香も子供に戻ったように歓声をあげていた。ムーミンママにハグしてもらい、ムーミンパパやムーミン、フローレンと握手して、はしゃいでいた。公世も結構楽しそうだった。シルキーも初めてきたらしく、色々驚いていた。
ムーミンの家、スノークの研究室、ニョロニョロの洞窟など多数のポイントがあり、各々が丁寧に作られている感じであった。基本的にはお子様向けの遊園地だが、大人も充分楽しめるテーマパークだと思った。
お昼すぎまで遊んでから帰る。トゥルク行きのバス乗り場まで戻り、トゥルク駅から特急でヘルシンキに戻る。食料を買い込んでからここから北方に向かう特急に乗る。買った食料をだいたい食べ尽くした頃、普通列車に乗り換える。そしてイダルという駅で降りる、ここにシルキーのお父さんが車で迎えに来てくれていた。助手席に身体の大きなシルキー、後部座席に公世、千里、双葉、清香とやや無理な乗り方をしてシルキーの家に行った。
シルキーのお母さん、祖父母も居て歓迎してくれた。
「ヒュヴァーパイヴァー(こんにちは)」
と挨拶する。
「Welcome from east end asian country to west end asian country」
とお祖父さんが言っていた。清香が意味が分かってないようなので説明する。
「フィンランドはアジア人の国だからね」
「そうだったのか」
「フィンランドはどちらかというとハンガリーとかに近い」
「ほほお」
「どちらもフン属の末裔」
「へー」
「フィンランド人の祖先は間違ってこんな寒い国に辿り着いた。ハンガリー人の祖先は正しく暖かい国に辿り着いた、なんて言葉がある」
「なるほどー」
「これ日本のお菓子です」
と言って、白い恋人を渡したが、
「美味しいお菓子だ」
とお母さんが言っていた。
シルキーも初めて食べたらしく「こんなお菓子があったのか」と言っていた。
「まあシチューでも召し上がれ」
とシルキーのお母さんが言って、鶏肉のクリームシチューを出してくれた。
「美味しそう!」
と言ってたくさん食べる。添えられたパンはロールパンだが、焼きたてっぽい。
「Breads are handmaid?」
と訊くと
「Yes, yes」
ということで、自家製であった。
「パンもシチューも美味しい」
と言って、みんなたくさん食べた。
「鶏肉は宗教的な禁忌が無いからと思って鶏肉を使ってみた」
とお母さんは言っている。
「ああ、イスラム教徒は豚を食べないとかヒンズー教徒は牛を食べないとか面倒くさいですよね」
「日本人はわりと何でも食べるね。ポーク、ビーフ、チキン、マトン、ホースミート、フィッシュ、・・・」
「お魚というとフィンランドではわりと鰊(にしん)料理がポピュラー」
「私と千里と公世の出身地ルモイは昔は鰊がよく穫れる港だった」
「おお」
「でも今は全く穫れなくなったんですよ。鰊たちはみんなロシアの領海に移住してしまって」
「あらら」
「ロシアなんかに行ったって何もいいことないのに」
とお父さんが言っている。
(会話は英語である)
その夜だが、これだけの人数を泊めるだけのスペースが無いので、イダルの町にホテルを取ってくれてそこに泊まった。
翌日(8/15)、双葉がサンタクロースに会いたいと言っているのでシルキーとお母さんとで行ってくることにする。一方千里と公世はお祖父さんから、所有している森のことを聞くことにした。
それで双葉たちは早朝のロヴァニエミ方面の列車に乗った。清香は、起きれるわけがないので、千里が眠ったままの清香を列車内に転送した!
一方、千里と公世はおじいさんに話を聞く。千里は青池を召喚した。もっとも正確には、千里が髪留めに変えて連れてきていた小銀、小白というキタキツネの姉妹のうち、小白と位置交換でこちらに呼んだ、ふたりの兄弟の銀白という男の子も一緒に連れて来ている。この“フィンランド事業”でこの姉弟3人に雑用をしてもらうことにしている。
青池が小形のドローンを庭に置く。そして離陸させる。千里はお祖父さんに説明する。
「この小形のクワッドコプターが見たものがこちらのモニターに映ります」
「おお」
「おじさん、道案内お願いします」
「よし。まず村の北の登り口まで行こう。左に行って」
それでお祖父さんの道案内で青池が操縦するドローンは登山口まで行き、山に登って行く。
「日本には凄いものがあるね」
「このドローンはノキアの製品ですよ」
「へー。スオミ(フィンランドのこと)もやるねぇ」
ノキアはフィンランドの企業である。ちなみにエリクソンはお隣のスウェーデンである。
ドローンはやがて左右(等高線沿い)に幅3mほどの山道があるところに来た。
「このpolku(小道)をkielo polku という。kieloって英語では何だっけ?」
とお祖父さんが言うと、お祖母さんが
「lily of the valley」
と言った。
「日本語だとスズランだね」
「すずらんの道か」
「この道を左に行って。黄色い紐を結びつけたkoivuの木がある。えっと英語では」
「white birch」
「白樺か」
「要するに黄色い紐を巻いた木があるのね」
それでしばらく行くと、それらしき木がある。
「あれかな」
「うん。あれあれ。あれがうちの、タリスネン家の林の右端だから。それでこの道をそのまま300mくらい行って。今度は赤い紐を巻いた白樺がある」
ドローンは物を見つけやすいように6km/hほどのゆっくりした速度で飛び、3分ほどでその赤い紐を巻いた白樺を見つけた。
「ここがタリスネン家の林の左端。この赤と黄色の間の木は自由に切っていい」
「分かりました。上端と下端は?」
「特に端は無いよ。下は村が見えてきたら終わり、上はヒグマに会ったら終わり」
「ヒグマに会ったら晩飯だな」
と九重が言っている。
(九重は小銀と位置交換でこちらに呼んだ)
「どちらの?」
「運が良ければヒグマが俺たちの晩飯、運が悪ければ俺たちがヒグマの晩飯」
と九重が言うと、お祖父さんが笑っていた。