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4月中旬。公世が自宅(京都南邸)で
「ああ、まただぁ」
と言っている。
「どうしたの?」
「頼んでた住基カード受け取ってきたんだけどね」
と言って、それを見せてくれる。
「ああ、女にされてるね」
住基カードに記載されている性別が女になっているのである。
「きーちゃん、またお願い」
「うん」
公世の住基カードは昨年姫路で発行してもらった時も女になっていた。それで、きーちゃんの知り合いの弁護士さんに頼んで訂正してもらったのである。
きーちゃんが連絡すると弁護士さんは「了解了解」といって昨年同様まずは留萌市役所に手紙を出して、公世の戸籍謄本を取り寄せた。ところがである。
「工藤さん、性別訂正したんだっけ?」
「いえ」
「君は戸籍の上で“二女”になってるんだけど」
「え〜!?」
千里たちも見せてもらったが、公世の戸籍謄本には、長女・弓枝、二女・公世、二男・大樹と書かれている。
「これで公世は女のパスポートも取得できるな」
と清香は言っている。
「いやだぁ!」
「ああ、だいたい分かった」
と千里は言った。
「きみちゃん、ちょっと付き合って」
と言うと、千里は公世を連れて桜ジェットで留萌に急行。市役所で本人に戸籍の写しを取らせた。ちゃんと公世が長男と記載されている。すぐに京都に戻る。謄本の写しを弁護士さんに渡すと、弁護士さんはすぐ市役所に行き、住民票の訂正をやってくれた。それで公世は連休前にはちゃんと性別が男になっている住基カードを受け取ることができたのである、
「きみちゃん、すぐパスボートも申請した方がいい」
「そうする」
それで公世は旅券事務所に行き、パスポートの申請もおこなった。
(sex:F と書かれたパスポートの方がトラブルが少なかったりして)
「でもなんで郵便で申請した時は戸籍が女になってたんだろう」
「まあ気合の問題だね」
「気合で性別が変わるの〜?」
バスケット女子U19代表の高田コーチはぶつぶつ呟いていた。
4.PG.入野朋美(愛知J学園大学)
5.PG.鶴田早苗(山形D銀行)
6.SG.村山千里(千葉市?)
7.SG.中折渚紗(筑波大学)
8.SF.前田彰恵(筑波大学)
9.PF.橋田桂華(筑波大学)
10.SF.佐藤玲央美(習志野市?)
11.PF.鞠原江美子(大阪体育大学)
12.PF.大野百合絵(松蔭大学)
13.C.森下誠美(エレクトロ・ウィッカ)出場不可
★14.C.中丸華香(???)
★.C.熊野サクラ(???)
*.PG.海島斉江(聖カタリナ学園)出場困難
*.SF.竹宮星乃(松蔭大学)
*.PF.高梁王子(USA?)
*.C.花和留実子(北海道教育大旭川校)
*.C.夢原円(愛知J学園高校)出場困難
*.C.富田路子(大阪E女学院高校)出場困難
所在が不明宿な代表候補の中で村山と佐藤はちゃんと合宿には合流するらしい。となると、何とかして中丸と熊野の所在を見つける必要がある。高梁には渡米して直接参加を要請しようと考えていた。
実は村山千里から、高梁の居る高校を教えてもらったので先方の学校に選手派遣許可を得るべく電話を入れてみたのだが
「当校にそのような生徒は居ない」
と言われてしまったのである。高田はこの学校を教えてくれた村山千里に電話してみた。
千里(グレース)は答えた。
「学校は知らないでしょうね。プリン(高梁のこと)がしたのはこういうことです。昨シーズンのリーグで準優勝した高校を確認して、そこの体育館に行き、バスケ部が練習しているところに行って、豪快にシュートを決めてみせてから、can I practice with you? と言っただけ」
「道場破りだな。あるいは殴り込み」
中国でゆきがしたのと似たようなことである。
「でも現地の日本人会の人が骨を折ってくれて10月からはそこの高校に編入できる予定です」
「じゃこちらも殴り込みで行くか。でもよくそんな情報つかんだね」
「偶然聞いたんですよね。それとどうも中丸はどこかの工事現場にいるようです」
「工事現場!?」
「建設関係には人脈があるので、引き続き情報集めます」
「頼む」
それで高田は
「さて鬼ごっこを始めるか」
と言うと、アメリカ行きの航空券を手配した。
4月25-26日、東の千里は雨宮先生を車で新潟県の上越市まで送り、ついでに大阪まで走って貴司と会ってきた。
4月29日(祝)、姫路の立花K神社で今年も姫祭りが始まった。夜梨子は姫路に戻ってこれに参加した。姫路滞在中は花絵の家に泊めてもらった。(姫路の家は大たちが使っている)なお夜梨子が姫路に行く間、京都北邸には、ジェーンに入ってもらった。司令室はコリンに見ていてもらう。
夜梨子は花絵に訊いた。
「花絵さん、彼氏と会ってます?」
「4月4日に一度帰って来た。その後また会ってない」
「大変ですね」
「もうセックスの仕方を忘れちゃったよ」
「彼のちんちんを指3本で押さえて回転運動を掛けてあげればいいんです」
「面白いこと言うね。してあげよう」
「ついでにコンドームに指を入れて彼に入れてあげて前立腺を刺激してあげたら悦びますよ」
「おお、それもやってあげよう」
ちなみに夜梨子は処女である。念のため。
祭りでは今年も最初に姫様道中が行われる。姫様役の男の子が馬に乗り、上臈役の男の子3人を連れて町内を歩く。今年も橘丘新町を一周してから上町社まで歩く1.6kmほどのコースで行われた。今年は小雨がちらつく天気だったので、先導役の和也も含めて全員唐傘を差しての道中となった。
午後からは小学生相撲大会が行われる。例年は拝殿の前に土俵が作られるのだが今年は小雨が降っているので、拝殿の中にマットを敷いてそこで行われた。雨が降り込まないようにブルーシートで壁も作られた(兵庫県をはじめとして暖かい地域の拝殿には壁が無く吹きさらしである。北陸など寒い地域の拝殿には壁があり、普通の家の形をしているが。両形式の境界がどの付近かは不明。たぶん調べてみた人がいない)。
今年は女子の参加者のひとりがベスト4まできた。来年の姫様道中に参加決定である。
「持田さん、来年姫様役しない?」
「姫様は優勝した杉沢君でしょ?」
「いや、ぜひ持田さんにしてほしい」
ということで来年は3年ぶりに女子が姫様をすることになった。彼女はミニバスをしているということで身長も165cmほどあり、男の子に負けない体格である。
5月2日(土)には姫舞が行われる。常連の巫女さん五名ほどが、お姫様のような衣裳を着て拝殿で舞を奉納する。今年は北町社で10時と16時、上町社で14時に行われた。夜梨子もこの舞に参加した。
5月3日(日)は“姫捜し”が行われる。北町社の境内に多数の姫様人形が置かれているのを子供達に見つけてもらう。午前中は未就学児、午後からは小学生が探す、小学生たちにより人形は全て見つけられる。
人形は円柱状の穴が空いており、そこに籤の番号が入っている。その番号を引換所に持っていくと景品がもらえる。未就学児の景品はほとんどがおやつである。スナック菓子や果物などが当たる。小学生の景品は、もう少しいいものである。三色ボールペン、クーピーのセット、手帳、電卓、マウス、マグカップ、お皿、紅茶セット、コーヒーセット、貯金箱、シューズ(引換券)、傘、タオル、腕時計、置き時計、将棋セット、碁盤セット、オセロ、トランプ、レゴ、ファイフ、木琴、特賞でギター、DVDプレイヤー、コーヒーメーカー、電気ケトル、たこ焼き器、mp3プレイヤーなどが用意された。
今年は5月1日には小学生柔道大会、2日には小学生剣道大会が行われた。柔道大会は男女別に行われたが(でも女子は3人だけ!)剣道大会は男女混合でベスト8まできた女子が居た。優勝者には金色のキーホルダー(“平成21年姫路立花K神社**大会”という大会名入り)が贈られた。柔道大会と剣道大会の上位の子にも来年は姫様道中に参加してもらう、
3日には小学生将棋大会、4日には小学生囲碁大会も行われた。
将棋大会では優勝者に金の王将、囲碁大会では金の碁石が贈られた。金色の将棋駒は木製(かえで)、碁石は陶器で、実はオーリタが作ってくれたものである。金色にするのは大好きである。カエデは北海道で千里が所有している林から切り出して製材していたものから駒の形に切り抜いた。陶器は一般に売っている陶芸用の粘土で形を作り、焼いてもらったもの。そのあと金色に着色した。
将棋の駒は柘植(つげ)が高級品だが、カエデはそれに準じるものとしてよく使われる。
大会自体に使用する将棋・囲碁の道具(将棋盤と駒、碁盤と碁石、チェスクロック)は近隣の学校からお借りした。ただしいづれも決勝には神社で新規に購入したものを使用した。将棋盤と碁盤はスプルース(新榧)、将棋の駒は柘植、碁石は硬質ガラスである。
(翌年からは千里が寄贈した備前榧の将棋盤・碁盤が使用され、スプルースのは準決勝に回された)
お祭り中、北町社の境内には色々な出店が並んだ。また昨年好評だった播磨工芸市とお肉もりもり市は今年も行われどちらも好評だった。今年は少し?イベントを増やした。1日:華道展示会(立花華道教室)
2日:書道展示会(立花小学校書道部)
3日:絵画展示会(立花小学校美術部)
4日:手芸展示会(立花小学校手芸部)
1-2日:播磨植木市
3-4日:播磨工芸市(三木の刃物とか姫革細工とか播州織とか)
5-6日:播磨陶磁器市
1日:全国銘酒祭り
2日:全国銘菓祭り
3日:全国駅弁祭り
4日:パン祭り
5日:お肉もりもり市
6日:ハム・ウィンナー市
陶磁器市には伝統的な丹波立杭焼のほか、関西組がほぼ趣味(というより遊び)で焼いている“播磨窯”の磁器(播磨焼き)、また本当は播磨から外れるが、神戸の陶磁器会社の製品なども出している。播磨焼きは茶碗とか紅茶セットなどの日用品がよく売れた。売上は千里が母里酒造の清酒に“両替”して彼らに渡した。
概ね好評だったが、植木市と銘酒は微妙だったので来年は別のにするかも。
「全国の銘酒じゃなくて兵庫県の地酒のほうが良かったかも」
「ああ。それは一理ありますね」
「お酒よりチューハイがいいよ」
「選定基準が分からん」
「任せて」
「任せた」
「飲み比べの資金ちょうだい」
「はいはい」
今年のゴールデンウィークでは、5月3日の憲法記念日が日曜であった。そのため、3日の振替休日は5月6日(水)となり、史上初めて水曜日の振替休日となった。
高田コーチは渡米前に大阪に行き、鞠原江美子と会った。橋田桂華から鞠原と村山が一緒にトレーニングしていると聞いたからである。村山は本人も橋田も「合宿には必ず来る」とは言っていたものの、動向は把握しておきたい。
鞠原は言った。
「トレーニングというより修行ですね」
「修行!?」
「山伏の集団に入れてもらって、一緒に山駆けしてるんです」
「それは激しいな」
「毎年4−5人死者がでてますから」
「恐ろしい」
「死んでも山駆けを続ける」
「えー!?」
「山駆けしている集団自体、人間と幽霊と精霊と神様が入り乱れています」
「あの世との境界を駆けていく感じか」
「まさにそうです。私がまだ死にたくないと言ったら、村山は私の携帯に自分の居る場所を表示するアプリを入れてくれたんですよ。お陰で私は集団から後れても、それを頼りに追いつけます」
「いいね」
「だから私は常に村山の居る位置が分かります」
「今どこにいるか分かる?」
「ちょっと待ってください」
と言って、鞠原はパソコンを出して確認している。
「また2つに分裂してる」
「分裂?」
「村山はよく2つに分かれてるんです」
「へー」
「片方は千葉市ですね。もう片方は中国にいるみたい」
「中国って大陸の?」
「ええ。中国できっと仙人の修行でもしてるんですよ」
「あり得るなあ」
しかし高田は鞠原が村山の所在を常時把握していると知り、安心して渡米するのである。