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千葉の東の千里は体育の授業はソフトボールを選択した。他に運動部の経験者がいなかったため千里はピッチャーを頼むと言われる。それで東の千里は6年ぶりにマウンドに立ちウィンドミルでボールを投げた。西の千里は高校時代に球技大会でも投げているが、東の千里は高校時代には全くソフトをしてないので、中学の入学直前(赤青黄に分裂直前)に投げて以来6年ぶりの投球だったが、千里のスピードボール主体で時折カーブを混ぜる投球に相手チームは三振と凡打を重ねていった。
京都の西の千里は体育ではバスケットを選択した。千里が高速にドリブル走するし、ロールターンで相手を抜くし華麗にスリーを決めるので
「元バスケ部?」
と訊かれる。
「中学時代にバスケ部の助っ人は、してました」
「バスケ部の子が勧誘したがるよ」
「すみませーん。剣道部なので」
「しかしよくあんな遠くからゴール決めるなあ」
ゲームをしたら千里はひとりでスリーを20本決めて82-20のクアドルプル・スコアで千里のチームが勝った。
「村山さんスリーを一本も外さなかった」
「外すようには撃ちませんよ」
「でもNBA選手だって3割くらいしか入らないよ」
「外し方が分からない」
「なぜそんなに入るのかが分からない」
「だってゴールまでボールを運べるだけの腕力のある人がゴールに向けて撃ったら入りますよ」
「それでも普通専門のシューターでも3割しか入らないんだけどね」
4月18日 - 佐賀県唐津市肥前町星賀地区と鷹島(長崎県松浦市)を結ぶ鷹島肥前大橋が開通した。
東の千里は部活には入らず、自分でボールを買って、通学路の途中にある体育館でひとりでシュートの練習を始めた。ここでローキューツの子たちと知り合うことになる。
西の千里たちは4月20日(月)に部活が開始された。武道場2階に集合し(1階は柔道場)、入部希望者は名前と所属クラスおよび剣道の競技年数または段位(級位)を書いていく。男子は福井男子副部長の前、女子は横田女子副部長の前に並んだ、千里・清香・双葉はむろん女子の列に並ぶが、公世が男子の列に並んでいるので言われる。
「君、女子はそちらに並んで」
「ぼくは男子です」
「嘘ついてはいかん」
千里が横から言った。
「工藤は剣道連盟から男子の部への出場が認められてるんです」
「嘘」
「インターハイ男子の部で準優勝しましたから強いですよ」
「ほー。それは楽しみだ」
千里と清香は四段と書いたので
「浪人した?」
と訊かれる。普通は高校一年で三段を取ったあと3年経たないと四段になれない。
「私たち中学3年の時に特例で三段を頂いたので3年経った高校3年の時に四段の受験資格ができたんです」
「へー凄い」
「この夏には五段を頂けることになっています」
「うそー!?」
その後、男女に分かれ、武道場内を男子5周・女子3周したあと、準備体操、柔軟体操とするが公世は
「君悪いけど柔軟体操は女子とやってよ」
といわれる。それで彼は千里と組んで柔軟体操をした。そのあと男女に2人ずつ、いた未経験者を除いて、素振り・切り返しをする。そのあと来月頭の四教戦の代表を決める選考試合を実施しますと言われる。未経験者を除き、新入部員を含めて男子12名・女子10名を4人ずつグループにして各々の中で総当たり戦をする。
女子の方から試合をするが女子は10人なので、立浪部長と横田副部長を代表当確とし、残りの8人を4人ずつにして各々で総当たり対戦する。全勝した千里と清香を当選とする。2勝1敗だった双葉と4年生の飯田さん、それにいったん当確としていた立浪・横田も入れた4人で再度総当たり戦をする。双葉が全勝して当選、2勝1敗の立浪部長も当選とする。残りの2人と各予選リーグで3位だった2人も入れて第5代表を選ぶ総当たり戦をして横田副部長が全勝して代表に滑り込み。2位の森田さん(3年)、3位の飯田さん(4年)を補欠とした。
「村山さんと木里さんはあまりにも強すぎる」
「確かに五段の強さかも」
「島根さんも無茶苦茶強い」
男子の試合に行く。12名を4人ずつ分けたグループで総当たりをして各全勝した、公世、斎藤部長、福井副部長を当選とする。
「工藤さん無茶苦茶強い」
「男子に出たいわけだ」
という声。このあと各グループ2位になった3人の総当たり戦であと2人の代表が決まった。この2位リーグで代表に選ばれなかった人は補欠。もう一人の補欠は男子顧問の佐伯先生が指名した。
この日は男子の部長と副部長で模範試合をおこない、未経験の人にルールの説明などをした。
中国黒竜江省栄龍市。桜栄大学。
体育館で女子籃球部が練習していたら、そこにボールをドリブルしながら、ゆき(Y1)が近づいていき、4mほどの距離からシュートを放った。ボールはバックボードにも当たらずダイレクトにゴールに飛び込んだ。
歓声が上がる。
ゆきは(北京語で)言った。
「しばらくあなたたちと一緒に練習させてもらえない?」
「いいよ!」
きーちゃんは熱心に“おしごと”をしていた。
「君可愛いね、いくつ?」
「19です」
「大学2年生?」
「はい」
「だったら来年は成人式かな」
「ええ」
「何着るの?」
「スーツかなあ」
「振袖着なよ」
「えー?でもボク男の子ですよ」
「男の娘でも君くらい可愛かったら振袖着ていいんだよ」
「そうですかねー」
「きせてあげるよ」
と言って。きーちゃんはその子に京友禅の振袖を着付けしてあげた。
「きれーい」
と本人も言っている。
「この振袖、君にあげるから成人式で着なよ」
「え〜?いいんですかぁ?」
「普段もスカートくらい穿くんでしょ?」
「持ってはいるけど、それで外出したことはないです」
つまり部屋の中では穿いているわけだ。
「本物の女の子になりたくない?」
「なりたい気持ちはあるけど、性転換手術って高いし」
「手術なんて受けなくても女の子にしてあげるよ。うちに一晩泊まっていかない?明日の朝には女の子になってるから」
「ちょっとまだ心の準備が」
「だったら今日は取り敢えずちんちんか、睾丸かどちらかを取ってあげるよ。どちらを取る?」
「じゃ睾丸を」
「OK。でも睾丸取る前に精液の保存をしよう。この容器に出して」
「はい」
桜栄大学。
2時間ほどの練習を終えて解散する。
「明日も来ていいですか?」
とゆきは尋ねる。
「ずっと来て。うちの大学の学生?」
「旅行者です」
メンバーが顔を見合わせる。
「でも身体が動かしたくて」
キャプテンの白(バイ)が言った。
「いいよ。練習だけしよう」
「謝謝(シェシェ)」
「君の名前は?」
「雪(シオ)」
「OK、雪。じゃ君にはとりあえず23の背番号あげるね」
「謝謝」
それで、ゆきは23の番号のユニフォームを渡された。
4月頭。グレースはA大神様に呼ばれて出羽に行った。出羽のH大神を紹介される。大物が並んでいるのにさすがのグレースも圧倒される。日米首脳会談の部屋に来た気分である。
H大神はおっしゃった
「うちの眷属たちが少し余計な親切をした結果、極めてややこしい問題が起きているのだよ。これは私が直接説明して対処をお願いするしかないと思い、A大神に相談した」
H大神の説明はこのようであった。
(1) 高校1年生の時、男子バスケット選手であった村山千里を女子の部に参加させようと性別検査の結果を操作した。
(2) その結果。千里は女子の部に移籍されてしまった。これを本人が違反だと悩んでいたので、IOCが打ち出した性転換選手に関する新しい規定に基づき、性転換してから一定期間経っていれば女子に参加しても良いという規定を適用すべく(*12)、千里の時間を組み替え、千里が性転換した後、実際に女子の試合に出る前に大量の日数を挿入した。そのため大学時代の日数をかなり高校時代に消費している。しかし千里は“高校生”の大会に出る場合、女子であるのみでなく高校生の年齢である必要もあるため、この組み替えは困難を極めた。しかし何とかなった。
千里は無事アジア選手権もウィンターカップも“女子高校生の時間”で参加した。
(3) ところがこの操作の結果、今年7月の世界選手権は、12月のところに余分な1ヶ月“Special month”として挿入されることになった。
(4) だからブレンダの方は12月まで掛けてゆっくりトレーニングをしてもらえばよい。しかし実際に世界選手権に参加するゆきは、今から7月頭までに世界で戦える競技能力を付けてほしい。
そこで、グレースはA大神と話し合い、ゆきをしばらく中国に留学させることにしたのである。
(*12) この当時IOCが出していた性転換選手が女子に参加できる条件は次の2つのうちどちらかを満たすこと
(a) 思春期以前に性転換したケース
(b) 性転換後2年以上経っていること。
美鳳たちは(b)の条件をみたすべく時間の組み替えをしたのだが、実は千里は(a)のほうで条件を満たしていた。これは美鳳も千里(ブレンダ)自身もかなり後になってから気が付いた。