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■女子大生・春の小川(5)

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清香はシルビアに言った。
「英語にも日本語の『庭には2羽鶏が居る』みたいなのがあると聞いたんだけど、サンプル忘れちゃった」
「色々あるよ。単純なのではPut spaces between cats and and and and and dogs というのがある」
「どういうこと?」
「これは元々 It rains catsanddogs というテキストがあって、それに対する校正を指示する文章。cats とandの間、およびandとdogsの間に空白を入れてということ」
「It rains cats and dogs って土砂降りということだっけ?」
「そうそう」
「なんで猫と犬なの?」
「色々説はあるけど、元々はcatdoupe という滝を意味する単語があって、それを誰かがcats and dogs と聞き違えたという説が有力」
「なるほど。“空きっ腹にパン団子”(*6)の世界か」
 
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(*6) プロコル・ハルムの名曲『青い影』(A Whiter Shade of Pale) の歌詞の最初付近we skipped the light fandangoの部分が「空きっ腹にパン団子」と聞こえるというネタ。タモリの『ボキャブラ天国』で多分1993年頃に紹介されたが「兄は夜更け過ぎに由妃絵と変わるだろう(ここで映像では女装する兄の姿が流れる。元歌詞:雨は夜更けすぎに雪へと変わるだろう)」とか「僕が初めて君を見たのは白い扉の“爺さんのコサック”(元歌詞:小さなスナック)」、「ある日森の中熊3P(くまさんぴー)」などとともにボキャブラ初期の名作のひとつである。
 

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「あれ?英語の諺で“降れば土砂降り”ってあったよね」
「It never rains but it pours(*7)」
「そのpours というのも土砂降りということなのね」
「そそ。cats and dogs より普通の表現」
「なるほど」
 
 
(*7) アン女王の侍医だった John Arbuthnot (1667-1735)という人の 著作「It Cannot Rain But It Pours」を発端にできた言葉とされる。
 

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「でも聞き間違いが語源というのはよくあるね。ワイシャツとかwhite shirts だし、背広はcivil clothes」
「背広って英語だったのか。でもワイシャツを地域によってはカッターというのは」
「あれはボート競争で『勝った勝った!』と言う歓声からきたもの」
「歓声だったのか」
「郷ひろみの芸名はファンの女の子たちが『Go,go go go, Lrt's go Hiromi』と叫んでいたことから生まれた(*8)」
「ほほお」
「ヒグマという動物は最初に羆という字があり、昔は縦書きだから、誰かがこれを四熊という2文字だと思って“しぐま”と読んだ。それを誰かが“ひぐま”と聞き違えた」
「きっと犯人は江戸っ子だ」
 
(*8) 郷ひろみの本名は原武裕美(はらたけ・ひろみ)。当時はジャニーズに所属していた。ジャニーズを辞めてからの方が伸びた数少ないタレントのひとり(バーニングに入った。寄らば大樹である)。ジャニー氏は生前(SMAP事件前)「今まで一番辛かったのが郷ひろみが辞めた時」と語っていた。
 
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この類いのもので富山県の“五箇山”は最初は“五箇谷間”と書いて“ごかやま”だったのが誰かが“五箇山”と誤記し、それが定着したものと言われる。北陸では“谷”の字は概ね“や”と読む。北陸でわりと見る苗字“谷内”は“やち”である。
 

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「本題に戻って We eat what we can and we can what we can't というのがある。特に後半が一見矛盾してるように思われるが、これは可能を表す助動詞can と、缶詰にするという意味の動詞 can が使われている。“食べられる分は食べますし食べきれない分は缶詰にします”ということ」
「ああ、缶詰にするというcanがあるのか」
 
「極めつけはこれ。Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo.」
「あ!聞いたのはそれだ!どういうこと?」
「動物の種類のbuffalo(*11), 街の名前のBuffalo(*10), そして“いじめる”という意味の動詞 buffalo が使われている。少し単語等を補うと (Buffalo buffalo) which (Buffalo buffalo) buffalo, buffalo (Buffalo buffalo). ここで動物の種類のbuffaloは単複同形なのがミソ(*9)。バッファロー市の水牛が虐めているバッファロー市の水牛がバッファロー市の水牛をいじめている」
「いじめの連鎖か」
「いじめられっこが自身、後輩をいじめるというのはよくあること」
「いやな伝統だな」
「お母さんと子供でもいわれるね。子供の頃親から虐待されていた人は自身が親になった時に子供を虐待してしまう」
「嫌な負の連鎖だね」
「部活でも中高生の頃に暴力指導を受けていた人は自分が指導者になった時に生徒に暴力指導する」
「どこかで悪い連鎖を断ち切らないといけないよね」
 
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顧問から暴力をふるわれたこともないし親から暴力をふるわれたこともない自分は幸せなのかもと清香は思った。
 

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(*9) 動物を表す名詞は原則として単複同形。ただしdog や cat など身近な動物は複数形の s を付ける。この文章はbuffalo が単数なら動詞のbuffaloに三人称単数のs が付いてしまうので buffalo は複数である。しかし単複同形なので複数形の s も付かない。但しアメリカの一部地域ではbuffaloes とも言うらしい。身近にバッファロー(*11) が走り回っている地域??
 
(*10) Buffalo city はニューヨーク州。あまりバッファローは居そうにない。この名前はフランス語のbeau fleuve(ボーフラーヴ。美しい川)の聞き間違いとする説がある(語源についてはほかにも幾つか説がある)。
 
(*11)バッファローと似た動物にバイソン(bison)がある。一般にバッファローは水牛、バイソンは野牛と訳される。バイソンはアメリカ・ヨーロッパに棲息しており、バッファローはアジア・アフリカに棲息している。ただしアメリカの一部地域ではバイソンのことをバッファローとも呼ぶ。上記の文章のバッファローもバイソンのことと思われる。
 
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ちなみにパイソン(python)はニシキヘビ。濁点と半濁点で大違い。
 

「Home on the Range (峠の我が家)」の歌詞にこうある。
 
Oh, give me a home where the buffalo roam, where the deer and the antelope play,
where seldom is heard a discouraging word, and the skies are not cloudy all day.
 
ああ、私に住まいを下さい。水牛が歩き回っていて鹿やレイヨウが遊んでいるような所でいいから。でも人を傷つけるような言葉は聞かず天気も悪くないところ。
 
discourage は正確に訳すと「くじけさせる」。courageは勇気。それを否定する言葉。
 
Home, home on the range, where the deer and the antelope play,
where seldom is heard a discouraging word, and the skies are not cloudy all day.
 
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この歌はカンザス州の州歌にもなっている。19世紀にできた歌だが多くの人に歌われる内に歌詞はかなり変わっている。日本では「峠の我が家」と訳されているが、カンザスには山も峠も無い。大平原地帯である。バッファロー(バイソン)も平原に居る動物である。rangeは峠ではなく、“その地”程度の意味とされる。
 

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「まあ日本語なら、おっとっと取っとってって言っとったとに、なんでおっとっと取っとってくれんかったとって言っとっとぉ」
「食べ物の恨みは怖い」
「関西弁なら、あれチャウチャウちゃう?/ちゃうちゃう。チャウチャウとはちゃうんちゃう?」
「面白いけど、おっとっとほどではないな」
 

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4月9-10日、西の千里たち京教グループは京都市郊外の研修所で新入生合宿をしたのだが、だいたい4人くらいずつの部屋割だった。
 
食堂で夕食を取った後、各部屋に入る。
 
「みんなクラブ活動とかするの?」
とひとりの子が訊いた。
 
「私は剣道部」
と千里は答えておく。
 
「私は混声合唱」
と言っている子がいる。
 
「やはり彼氏見つけるには男女が混じるクラブでないと」
「それは言えるな」
「だから女声合唱ではなく混声合唱」
「一理ある選択法だ」
 
「私は何もしない」
という声。
 
高井ミヤという子が言った。
「私は囲碁部。無かったら作る」
 
「へー。囲碁とかするんだ」
 

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「あ、村山さん、囲碁ができそうな顔してる。ちょっと一局打たない?」
「まあいいけど」
 
それで彼女は折り畳みの囲碁盤を広げた。
「私が握っていい?」
と訊くので、千里は
「よろしくー」
と言った。
 
彼女が白石を握る。千里は黒石を1個出した。白石は8個だった。それで彼女が先番となり黒を持って打ち始める。
 
5分後に彼女は言った。
「負けました」
 
「嘘。まだ大して打ってないのに」
と見ていた2人から声があがる。
 
「だって実力差がありすぎる。村山さん、何段?」
「私、囲碁は三段だけど」
「かなわねー、私は3級だもん」
「ああ、3段と3級の違いか」
「村山さん、一緒に囲碁部しよう」
「ごめーん。私は剣道部だから」
 
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「村山さん、碁盤はどんなの使ってる?」
とその夜ミヤは尋ねた。ちなみにあの後は、ミヤが5子置いて再度対戦し、それでも10分でミヤが投了している。
 
千里は答えた。
「私お道具のことはよく分からないけど、碁盤は私に囲碁教えてくれた神社の宮司さんがくれたの、材質はヒバだと言ってた。碁石はガラス〜。」
「ヒバかぁ!さすがいいの使ってる!私本榧(ほん・かや)の碁盤が欲しいのよね」
「へー。何か高いの?」
「高いという以前に稀少なのよね」
 
ミヤによると榧(かや)は以前はありふれた木材だったものの、明治以降伐採が進み、一方でほとんど植林が行われていないため、現在ではとても入手困難な木材になっているらしい。
 
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ちなみに囲碁界で“ニュー榧”(新榧)と呼ばれているのは実際にはスプルース(唐檜:とうひ)である。スプルースだって、ギターやピアノなどに使われている充分良い木である。ちなみに千里がヒバの碁盤をもらったのは北海道は江差ヒバが潤沢だからだろう。
 
囲碁界には他に“新桂”というよく分からない材質名もある。これはアガチスのことである。
 

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女子大生・春の小川(5)

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