広告:ここはグリーン・ウッド (第2巻) (白泉社文庫)
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■女子大生たちの男女混乱(8)

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千里が運転するハイエースは中央道の富士吉田線を走り、大月JCTから中央道本線に乗って東京方面に向かう。首都高を通って、約1時間のドライブで新宿駅西口に到達する。そこで降りる人たちを降ろした後、また首都高に乗って次は東京駅で人を降ろす。千里と毛利さん・高倉さん3人だけになって、横浜まで走り毛利さんを自宅アパート前で降ろした。
 
「毛利君、なんか安アパートに住んでるね」
と高倉さんが言う。
 
何だか今にも崩れそうな感じの木造アパートだ。
 
「儲かってないですから」
「お酒とか風俗とかでお金が消えているのでは?」
「俺、風俗は行かないですよ」
「だけど毛利君、年収は1000万以上あるでしょ?」
「そんなに稼いでないです。昨年の申告所得は400万円くらいだったし」
「400万でも、もう少し良いマンションに住めそう」
「俺、あまり無駄遣いしてるつもりないけど、なんかお金が無いんですよね。国民健康保険も滞納してるし」
 
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「毛利さん、お金の管理の仕方を見直した方がいい」
「新島からも言われました!」
 

それで毛利さんはスカート姿でアパートの2階に消えていった。千里たちがアパートの前で会話している間に《こうちゃん》は《せいちゃん》まで誘って勝手に一仕事してきたようで、何だか満足そうな顔をしていた。
 
その後、高倉さんを羽田まで送るが
 
「だけど醍醐ちゃん、ほんとに運転うまいね」
などと言われる。
 
「ありがとうございます」
「行く時の毛利君の運転は荒っぽかったからね。正直、ドライバー交替するというのでホッとした」
「あはは」
 
「でも初心者というからどうだろうと思ったけど、凄く乗っている人に優しい運転だった。私もかなり内臓が落ち着いてきた感じだよ。さすがベテランだね。実際は何年くらい運転してるの?」
 
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「免許取る前に運転したのは数回ですよ。雨宮先生、面白がって私が運転せざるを得ない状況にするんだもん」
「ああ、だいたい分かる」
 
「でも春に免許取ってから12000kmくらいは運転しているから」
 
「すごーい。半年でそれだけ運転していれば、上手くなる訳だね! ドライブが趣味なの?」
「実は私、彼氏が大阪にいるんです。毎月2回くらいそれで大阪まで往復してるんですよね。他に雨宮先生に言われて、新潟とか福島とか、先日は鹿児島まで運転しましたし」
 
「なるほどー。遠距離恋愛か。私も雨宮先生が九州に来た時はかなり運転してるからね。私、熊本だから福岡にも鹿児島にも呼び出しやすいなんて言われる」
 
「ドライバーが欲しいから全国各地に弟子を作っているんだったりして」
「そうかも。雨宮先生、あまり自分では運転しないもんね。フェラーリとかも人に見せるのが主目的みたいだし」
 
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「無事故無違反になるいちばんのコツは運転しないこと、なんて言ってました」
「ある意味正解だな」
 

年が押し迫ってくると神社は参拝客が増える。千里が奉仕しているL神社でもアルバイトの巫女さん(大半が女子高生・女子大生)を入れて、対応に追われる。千里は龍笛の名手なので、昇殿祈祷に、儀式に、結婚式にと大忙しであった。11月23日の新嘗祭でも龍笛を吹いたし、何度かバスケの練習中に呼び出されて神社に行ったこともある。
 
またこの時期、お正月にたくさん絵馬が奉納されることから、事前に一定期間経っている絵馬を回収してお焚き上げした。
 
「色々な願い事を書いていく人がいるんですね」
と友香が言う。
 
「その願い事がここに絵馬を掛けに来た人たちの目に触れる効果も大きいと思う。ひとりの願いが、多くの人の願いになるから」
と副巫女長の田口さん。
 
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「病気平癒とか、受験の祈願が多いですね」
「もうセンター試験は目の前だからね」
「かわいい字でチョコレートたべたいと書いてある」
「願いがかなったらいいね」
 
「ん?」
と言って同い年の巫女、美歌子が手を停める。千里もその絵馬を見る。
 
「女の子にしてくださいと書かれている」
「女の子になりたい男の子なんだろうか」
「病気平癒とかは神様頼みから知れないけど、これはむしろお医者さん頼みかな」
「そうだね。朝起きたら女の子になってた、ということはないだろうし」
 
と千里は言うが、それ自分にはよく起きてたよなあと思う。もう男の子にはなりたくないとは思うが、この後まだ何度か男の身体を体験しなければならないことになっている。
 
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『次はいつだっけ?』
と《いんちゃん》に訊いてみたら
『来年の9月18日』
と教えてくれた。
 
「でもあの手術って高いんでしょう?」
「男を女にするのは100万円くらい、女を男にするのは200万円くらい」
「高いなあ。あれ?女を男にするのもできるんだっけ?」
「みかちゃん、男になりたい?」
「なってみたい気もするなあ。でも男を女にするのより高いのね」
 
「男を女にするには、余分なものを切っちゃえばいいけど、女を男にする場合はその余分なものを作らないといけないから大変なんだよ」
 
「余分なものですか」
と友香が少し考えるようにして呟いた。
 

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12月19日(土)。ローキューツのメンバーは東京都内の私立高校の体育館に集合した。この日と明日の2日間掛けて、純正堂カップという洋菓子屋さん主催のオープン戦があるのである。参加チームは、東京・千葉・埼玉・神奈川など主として南関東の中学・高校・大学・クラブチームなど。バスケ協会に加盟していないチームも参加可能だし、男女混合チームも参加できる。
 
ローキューツは薫の参加資格について男子ということにして混合チームとしての参加にする手もあったのだが、事務局と交渉した結果、来年2月から女子選手扱いになるのであれば、この大会も女子として参加してもらって良いという回答が得られたので、女子チームとしてエントリーしている。
 
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この大会は、直前まで参加チーム数が不明確だったが、この日の朝のアナウンスで女子の部は46チームであることが発表された。参加チームが多いのでこの日行われる1回戦から3回戦までは10分ハーフの20分の試合という特別ルールになっている。
 
ローキューツはチームの戦績から1回戦は不戦勝となり、2回戦からである。試合は12:10からということだったので、いったん会場を出て地下鉄で2駅ほど移動した所にあるモスバーガーに入って休憩する。
 
この日来ているのは、浩子・千里・麻依子・夢香・夏美の常連5人のほか、美佐恵・菜香子・玉緒・薫の4人である。誠美と来夢については今日はたぶん出番が無いから明日だけでいいよと言ってある。
 
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取り敢えずドリンクだけ頼んで話していたのだが、数人、朝御飯食べてなかったといってバーガーのセットを頼んでいる子もいた。
 
「玉緒ちゃんルールが分からないということだったから簡単に説明するね。ダブルドリブルとか、トラベリングは分かるよね?」
「うん。それは分かる。だからパス受ける時は両足を床につけておけって言われてた」
 
「そうそう。両足がついていれば、どちらを軸足にしてもいい」
「その足が動かない限りはトラベリングは取られない」
「空中でボールを取った場合は両足着地」
「空中でボール取るなんて私無理〜」
「まあ初心者の内は知識として覚えておくだけで」
 
「ゴール近くの制限エリア、あるいはペイントエリアというのは分かる?」
「台形状に囲まれた所でしょ? 良い会場だと色分けされてる」
「そうそう。中学や高校の体育館だと枠だけ囲ってある」
 
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(制限エリアの形が台形から長方形に変ったのは2010年9月で日本では2011年4月から適用された。ただし2013年3月までは猶予期間であった)
 
「そこには攻撃の選手は3秒しか居てはいけない」
「3秒って測られるの?」
「無理。審判の感覚」
「細かく出入りしてると、あまり取られない。じっとしてると取られる」
「なるほどー」
 
「ボールをコントロールしたチームは24秒以内にシュートを撃たないといけない」
「シュートって成功しなくてもいいの?」
「リングには最低当たらないとシュートとはみなされない」
「バックボードとかに当たっただけではダメ?」
「だめ」
「結構厳しいね」
 
「シュートなのか、パスやドリブルなのか曖昧なのが結構あったからね」
 
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「バックコートでボールをコントロールしたチームは8秒以内にボールをフロントコートに進めなければならない」
「バックコートって、センターラインより手前?」
「そうそう」
「ちなみにフロントコートからバックコートにボールを戻すのも禁止」
 
「要するにちんたらと試合してはいけない。さっさとやりなさいということ」
 
「他に5秒ルールというのもあるけど、取り敢えず3秒、24秒、8秒の3つは覚えていて欲しい」
 

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その他、結構細かい点について質疑応答していたが、実際には半分くらいしか頭に入っていない感じもあった。
 
「試合中によく分からないことあったら、試合が終わった後で誰かに訊けば教えてくれると思うから」
「たくさん訊くと思う!」
 
10時頃に少し早めのお昼ということで、バーガーやチキンを頼み、それを食べてから会場に戻る。千里も焼肉ライスバーガーとオニオンリングを頼んだ。
 
(モスの焼肉ライスバーガーは2012年11月12日で販売終了したようです)
 

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2回戦は高校生のチームである。1回戦で中学生チームに勝って上がってきているが、さすがに中学生のチームは1回戦で全て消えたようであった。また、男女混合チームはオンコート男子1名までなら女子の部、2人以上入るなら男子の部に出てということだったが、この混合チームも1回戦で全て消えたようであった。
 
高校生と言っても実力はいろいろあるので、最初は警戒して取り敢えず浩子/千里/夏美/薫/麻依子、という今日来ているメンツ内での最強ラインナップで出て行く。しかし最初の5分で6対18になってしまったので、ここでちょうどボールが外に出てゲームが停まった所で選手交替。
 
美佐恵/夏美/玉緒/夢香/菜香子というラインナップでその後はプレイした。それでも最終的に28対46で勝利した。玉緒はゴールを2つ決めて嬉しがっていた。
 
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3回戦は14:50からの予定だったが、予定がずれこんで15:10の開始になった。相手は神奈川のクラブチームであるが、昨年は裏関(関東クラブ選抜)に出ていたチームというので、浩子/千里/夢香/薫/麻依子というスターティング5にした。夏美は前の試合20分間出ていたので、取り敢えず休ませておく。
 
確かに強いチームではあったが、全力で戦うほどではない感じだったので軽く流していく。それでも前半10分だけで18対24と6点差が付いたので、後半は千里と麻依子が下がって、浩子/美佐恵/夢香/薫/菜香子というラインナップにした。薫が気持ち良さそうに得点を重ね、菜香子もリバウンドを頑張って、最終的に32対42で勝利した。
 
 
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