広告:彼が彼女になったわけ-角川文庫-デイヴィッド-トーマス
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■女子大生たちの男女混乱(2)

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「満年齢ですか?学年ですか?数え年ですか?」
「まあ、それもバラバラだよね」
「本来は数え年なんだけど、最近は満年齢や学年方式も増えてるね」
 
「満年齢でやる場合、11月前後に生まれた子はどちらの年でやるのか悩んじゃうよね」
「お友だち同士一緒にお祝いできること考えると、学年方式が合理的」
 
「どの方式でやるかによって対象者がかなり変わるんだよね」
 
「数え年方式だと、2007年1月〜12月に生まれた子が今年3歳のお祝い」
「ところが2007年12月に生まれ子ってまだ1歳10ヶ月だから着物着せて3歳のお祝いするにはちょっと辛い」
 
「満年齢方式なら、2005年11月16日〜2006年11月15日に生まれた子が今年3歳」
「但し11月生まれの場合、実際にお参りに来る日との兼ね合いが微妙」
 
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「学年方式なら、小学1年生が7つのお祝いだから2002年4月〜2003年3月の子。そこから考えると3歳のお祝いの対象者は2006年4月〜2007年3月の子」
 
「満年齢方式で7歳の対象者は2001年11月16日〜2002年11月15日ということになるけど、2001年11月16日生まれは小学2年生なんだよね。小学2年生で七五三というのは、違和感がある」
 
「7歳は数え年方式で年長さんか、あるいは学年方式で小学1年生でしょうね」
 
「まあ親のふところ具合で後の年になることもある」
「ああ、それは大きい」
 
「でもそもそも3歳だけやってあとは放置という家も結構ある」
「ああ、あるある」
「男の子はそもそもやってもらえないケースもある」
「ああ、あるある」
 
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「子供が生まれた時は親もテンション高いけど、段々落ちていくんだよ」
「子供の写真も年齢が高くなるにつれて少なくなっていくよね」
 

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「男の子と女の子で祝う年齢が違うのはなぜなんでしょうね」
「女の子の方が生存率が高いからという話はあるんだけど、それなら女の子が5歳で男の子が7歳になりそうな気もする」
「まあ、よくは分からない」
 
「男の娘はどうするのかな?」
「ん?」
「男女の双子で、ふたり一緒に3歳・5歳・7歳と3回やったという人を知っている」
 
「双子なら、片方だけお祝いするの可哀想だもんね」
 
「じゃ男の娘も3回ということで」
「ふむふむ」
「男の娘はやはり女の子の服を着せるんですか?」
「本人はそちらを着たいと思うな」
 
「3歳の時はまだ分からないだろうけど、7歳だともう本人も母親も分かっているよね」
 

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この日は子供と一緒に昇殿祈祷というのが多いので、通常は巫女2人でやる所を3−4人体制でやって、途中で泣き出したり母親の制止を振り切って走り回ったりする子の対応をしていた。
 
祈祷の希望者が多いので、一度にまとめて10組15組と入れるのだが、数が多いと祝詞(のりと)で読み上げる名前の数が増えて、奏上時間も長くなる。すると子供は確実に飽きる。それで更に大変になる。
 
その回の時も走り出す子を捕まえて、座っていようねと言って母親の所に戻すというのを何度かやりながら、祈祷をしていたのだが、その時、立っている子を2人捕まえた友香ちゃんが、キョロキョロとしている。
 
千里はまだ龍笛を吹き始めるまで少し時間があったので寄って行って
「どうしたの?」
と訊く。
「この子たちのお母さんはどこだろ?」
と友香が困ったように言ったのだが、友香に確保されている子の1人が千里を見て
 
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「お母さん」
と言う。
 
「あれ、京平じゃん」
と千里はちょっと微笑んで言う。
 
「お母さん!?」
と友香は戸惑っている感じ。18歳の女子大生に9-10歳の子供がいたら8-9歳で産んだことになる。
 
「そちら友だち?」
と千里は京平に訊く。
 
「うん。大光円龍王様が連れて来てくださったんだよ。何かここに龍王様たちが集まっていたから、ちょっと降りた」
 
「今御祈祷中だから、おとなしく座ってなさい」
「はーい」
 
それで友香がふたりを昇殿している人たちの列の端に座らせ、祈祷は続いた。神職の祝詞は続いている。やがて別の神職が太鼓を打ち、千里は龍笛を吹く。女子大生巫女の美歌子さんが鈴を鳴らしながら舞を舞う。祈祷は神秘的な雰囲気で続いていく。そして祝詞のクライマックスで太鼓も龍笛も舞も盛り上がってきたところで例によって雷鳴が響く。
 
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神職さんたちは慣れたものだが、昇殿しているお客さんたちの中にはビクッとしている人たちも居た。京平たちは何だか上空を眺めていた。
 

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祈祷が終わって、昇殿したお客さんたちに御神酒を勧めるが、子供たちにはカルピスである。京平たちもちゃっかり友香からカルピスをもらって美味しそうに飲んでいる。
 
「これ美味しい。何て言うの?」
と千里に訊く。
「それはカルピスだよ」
「へー。伏見にもあるかなあ」
「じゃ、今度持っていってあげようか?」
「わあ、嬉しい!」
と言ってから京平は、神社の庭に走り出した友だちを追って自分も走り出す。
 
「じゃお母さん、またね!」
「うん。京平も元気でね」
 
お客さんたちがみんな行ってしまった後で、友香から訊かれる。
 
「千里さんの息子さんですか?」
「まあ息子みたいなもんだね」
「千里さんが産んだんじゃないですよね?」
「さすがに産むのは無理かな」
「びっくりしたー。何歳の時の子供だろうと思った」
 
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そんな会話をしていたら、女子大生巫女の美歌子さんが不思議そうに声を掛ける。
 
「あんたたちさっき、拝殿で何か会話してたけど、何かあったの?」
 
「あ、すみません。親と一緒じゃない子供が2人紛れ込んでいたんですよ」
と友香さん。
 
「ごめんなさい。私の関係者です。私を追って来ちゃったみたい」
と千里は言う。
 
「へ?そんな子供いたっけ?」
 
「国宝の宝剣とかにも触ろうとするから停めたんですよね」
と友香。
 
「そんな子供、私見てないけど」
と美歌子。
 
千里は笑って
「まあ、あの子、誰にでも見える訳じゃないし」
と言う。
 
「えーーー!? まさか幽霊?」
「座敷童みたいなもんだよ」
「そういう系統か!」
 
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「でも友香ちゃん、霊感あるんだな、と思った」
と千里。
 
「それ自分では意識したことなかったんですけど、辛島巫女長からも言われました」
と友香。
 
「ああ、私は全く霊感無いもんなあ。私、蛇とかも見ないんだよね」
と美歌子は言った。
 

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ところで、千里が5曲、冬子が5曲、楽曲の「リアセンブル」をしたチェリーツインの楽曲(紅ゆたか作詞・紅さやか作曲)について、雨宮先生を中心とするチーム(雨宮・新島・田船)と紅紅(紅ゆたか・紅さやか)および伴奏バンドのドラマー桃川さんにζζプロの青嶋部長、★★レコードの加藤課長とで、11月中旬に検討会を持った。
 
「物凄く洗練された改編を掛けてあって、びっくりしました」
と紅さやかさんが言う。
 
「かなり改編されているのに僕たちらしさはそのままなので、凄いなと思いました」
と紅ゆたかさん。
 
「私、むしろオリジナルよりも、より紅紅らしくなっている気がしたよ」
と桃川さん。
 
「私もそれ感じた」
と青嶋部長も言う。
 
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「全体的な傾向として、ターゲットが不明確で、それぞれの曲の世界観も不明確だった。それを純化させてもらった」
と雨宮先生は言った。
 
「じゃ、ひとつひとつ見ていこうか」
 
ということで、10曲の内、5曲について8人で議論しながら、曲を確定させていく(残り5曲は雨宮版をそのまま使用することになった−実際には冬子や千里が作った版から主として歌唱や演奏を易しくする変更を多少したもの)。千里は秘書兼操作係と言われて、パソコンの前に座り、話し合いの結果をDAWに反映させていった(画面はプロジェクターでみんなが見られるようにしている)。最初試唱もしていたが「あんたはいい」と言われて途中から桃川さんが試唱係になった。
 
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紅紅のふたりも積極的に意見を出していくが
 
「なぜここは、こちらのメロディーを先に出すんですか?」
という紅さやかさんの質問に
 
「私のセンスでその方が良いと断言する」
と雨宮先生が言う場面も多々あった。
 
そういう時にしばしば桃川さんが「私もそちらがいいと思う」と言っていた。
 
「絵を描く時に、この人物はなぜこの位置に立っていなければならないのか、みたいな議論だよね」
と加藤課長は言う。
 
「まだ僕たちも勉強不足ってことなんだろうな」
と作詞者の紅ゆたかさんは言っていた。
 
「むしろ自分たちの世界観を明確にすることが大事。それから主と従を明確にする。君たちの曲は、活け花でいえば、メインの花が何本も乱立している状態。それは結局とっちらかった感じにしかならない。メインは1本、どーんと存在して、他はそれを支えるものであればいいんだよ」
 
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「私、活け花の先生に『山』の字を考えろって言われました。山の字は真ん中に1本高い棒があって左右の棒はそれより低い。活け花はそういう形に活けるんだって」
と桃川さんが言う。
 
「ちょっと活け花教室に通ってみようかな」
「うん。センス鍛えられると思うよ」
 
「絵画教室もいいですよね?」
と桃川さんが言うが
 
「油絵や水彩画より、実用イラスト講座みたいなのがいいんじゃないかな?」
と青嶋部長が言う。
 
「そうそう。そのあたりが役に立つと思う」
と雨宮先生も言った。
 
作業は毎日夜10時から朝4時頃まで(こういう時間帯でないと、メンツのスケジュールが空かなかった)5日間ぶっ通しで続けられ、この一週間は千里もファミレスのバイトを休ませてもらった。
 
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「今から録音してリリースとなると、発売は年末か年明けだよね」
「さすがに『秋祭典』はまずいな」
「それ歌詞を改変して『冬祭典』にします」
「うん、よろしくー」
 

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最終日の作業が終わった後、雨宮先生、新島さん、千里の3人で早朝のファミレスに行き、束の間の休憩をする。田船さんは子供を起こして学校にやらなきゃと言って先に帰った。
 
「今回の5日間は私も凄く勉強になりました」
と千里が言う。
 
「まあ新島とふたりで事前にかなり検討したから、それで紅紅に言い負かされずに済んだね」
「ああ、その議論の場にも居たかったです」
 
「いや、千里ちゃんや美玲ちゃんが居たら言えないようなこと私言ってたから」
と新島さん。
 
「まあ、愛する私たちふたりの秘密ということで」
と雨宮先生。
 
「私、別に愛してませんけど」
「ホテルへの遠回しのお誘いなのに」
「ホテルまで行くタクシーに乗せてあげますから、セルフサービスで」
「つれないわね」
 
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