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■女子大生たちの男女混乱(7)

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それでドドンパに並ぶ。ここには新島さんが来たはずだが、時間が経っているのでもう乗った後だろうか。彼女の姿は見ない。フジヤマは割とすぐ乗れたのだが、こちらは列が長い。入園者が増えてきているせいもあるだろう。結局20分ほど並んで、やっと乗ることができた。
 
こらちはフジヤマと違って、しっかりした器具で身体を押さえられる。足首まで押さえられる!そして、このコースターは、普通のコースターのように巻き上げて上から落下するのではなく、水平に発射!される。わずか1.8秒で時速172kmに達するというコースターである。
 
発射された瞬間、そんなに凄いという感じはしなかった。ただこれは味わったことのない感覚だと思った。飛行機の離陸の時の感覚を少し強くした感じ?右に曲がった後、一気に垂直に上昇する。結構重力を感じる。そして垂直に落下。無重力! しかしその後はわりとイージーな感じだった。
 
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なんかこの時点で頭の中にメロディーが浮かんだので書き留める。もうこれでいいことにしちゃいけないかな、などとも思うが、そういうズルがばれたら、雨宮先生怒るだろうなあ。あんなことも、こんなこともバラされるかもと思うと、やはりサボる訳にはいかない。
 
『だいたい千里、不正行為が大嫌いなくせに』
と《りくちゃん》からも言われる。
 
それで思いついたメロディーを書き留めた後、いったんトイレに行き!覚悟を決めて、ええじゃないかに行く。
 

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座席?に乗り込むと、上半身を厳重に締め付けられる。が、足はブラブラである! もうこの時点で脳内は「やだ、やだ、やだ、やだ、逃げたい」という気分。
 
スタートするといきなり座席が縦回転して逆立ち状態にされる。そして仰向け状態で頭の方を上にして巻き上げられていく。頂点に達するとまた逆立ち状態にされて、落下!
 
で、その後は訳が分からなくなる!?
 
とにかくジェットコースターの走行と座席の回転が絡みあって複雑な感覚。もう身体がバラバラになってしまうような感じで「もう殺して〜!」と叫んだら《こうちゃん》が『千里、死にたいなら殺してやってもいいが』というので『まだ80年くらい先にして』と言っておいた。
 
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もう上も下も左も右も訳が分からない状態で到着。
 
三半規管がおかしくなって、座席から降りても最初歩けずに座り込んでしまい、スタッフさんから「大丈夫?」と声を掛けられた。いや、もうこれって臨死体験じゃないか?と思ったほどであった。
 

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取り敢えず降りてから近くの、あまり邪魔にならない所にしゃがみ込み、しばらく重力の方角を身体に再認識させる。そして千里は五線紙を取り出してそこにひたすら音符を書き込んでいった。
 
でもこれ・・・・メロディーラインが前後上下に回転してる!?
 
ひととおり書いてから推敲していた時、雨宮先生が回って来た。
 
「できた?」
「だいぶ出来ました。推敲中です」
「見せて」
 
というのでお見せすると、頷いている。
 
「最近、千里は曲が若くなった」
などと言う。
 
「それ、下手になったということですか?」
「2年くらい前の、作曲を頼み始めた頃にあったフレッシュさが戻ってきたんだよ。技術的には向上しつつ、初々しさも持っている。凄く良い状態。最高」
 
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「最高ということは、この後は落ちていくとか?」
「褒めてんだから、素直に喜びなさい」
「御意」
 

だいたいできあがった人は観覧車の前に集まってというメールを、今日来ているメンツが受信できるメーリングリスト宛てに送る。それで千里たちもそちらに向かう。千里と雨宮先生が観覧車前に行った時、北原さんと新島さんは既に来ていて、ほかの人も徐々に戻ってくる。田船さんは来たついでに、自分の担当の鉄骨番長の後で、フジヤマ、ドドンパ、ええじゃないかにも乗ったらしい。ええじゃないかは「楽しかった」から2度乗ったと言っていた。
 
しかし楽しんだのはどうも田船さんと北原さんの2人だけのようである。新島さんも疲れた顔をしている。彼女は昨夜徹夜だったらしいので、それでこんなのに乗ったら死にそうな気分だったろう。
 
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「私降りたあと30分くらい立てなかった。内臓を荒っぽく掻き混ぜられた感じ」
などと福田さんは言っていた。
 
だいたい集まった所で、毛利さんがまだ来てないということになる。新島さんが電話を掛けるが・・・・
 
「電源が切れているか電波の届かない所、と言ってる」
「バッテリー切れ?」
「なってないなあ」
 
「彼はどこでしたっけ?」
「えーっと誰か覚えてる?」
「確かグレート・ザブーンだよ」
「メールも受け取れていなかったりして」
 
「一応終わった後ここに集まるというのは最初に言ってたけど、毛利はいつもボーっとしているから、ちゃんと聞いてたかどうか心配だ」
 
「私、見て来ます」
と千里が言った時、向こうからずぶ濡れの毛利さんがやってくる。
 
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「済みません。気持ち悪くなって、降りた後吐いてしまって。休んでたら遅くなりました」
などと言っている。
 
「吐いた所はちゃんと掃除した?」
「吐く前にスタッフの可愛い女の子がビニール袋を渡してくれたので、そこに吐きました」
「可愛いというのを見ているのは余裕がある」
「でもまだ地球が回ってる」
 
「でもグレートザブーンって、そんなに目が回るような乗り物だっけ?」
「すみません。グレードザブーンに並んだつもりが、ええじゃないかだったので」
「それでええじゃないかに乗ったんだ?」
「なんか体中が回転してる感じです。きんたままで回転してる」
「毛利君のタマタマって回転するの?」
「それもう、ちぎれているのでは?」
 
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「だけど、なんでずぶ濡れなの?」
「グレートザブーンって、水の中に飛び込むんですよ。iPhoneもダウンして電源が入らない」
 
「ああ壊れたかもね」
「水没したようなもの」
 
「ずぶ濡れになるって知らなかったの?」
「知りませんでした」
「カッパ着なかったの?」
「確か100円で売ってたはず」
「他の人は着てました。なんでそんなの着てるんだろと思ってた」
 
「まあ、着ない人もあるかも知れないけど」
「その場合はちゃんと着替えを持って来ている」
 
「毛利君、着替えは?」
「まさか濡れるとは思わなかったので、持って来てません」
 
「そのままじゃまずいよね」
「うん。車の座席が濡れる」
 
「そっち心配するのかよ?」
 
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「毛利君は風邪とか引きそうにないし」
「何とかは風邪引かないというよね」
 
千里はこの時、毛利さんが雨宮グループで大事にされている訳が分かった気がした。
 

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「でも風邪引かれて楽曲ができないと醍醐が困るわね」
などと雨宮先生は言う。
 
「なぜ私が困るんです?」
「だって毛利が書けなかったら醍醐が3曲書くことになるから」
 
「その計算はよく分かりませんが、私の着替えでよければお貸ししますが」
「醍醐は身長いくらだっけ?」
「168cmくらいですよ」
「さすがバスケット選手ね。毛利は172cmくらいだよね。じゃ、悪いけど貸してあげて」
「はい」
 
それで千里はバッグの中から着替えをワンセット出す。
 
「毛利さん、これ返さなくていいですから。不要でしたらそのままゴミに出して下さい」
「ああ。毛利が着たあとのは着たくないかも」
 
そんなことを言われながら服を受け取る。
 
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「さんきゅ。じゃ、ちょっと着替えてくる」
 

それで毛利さんは着替えを持って近くのトイレに入っていく。
 
そして15分後に出て来た毛利さんを見て、みんなが眉をひそめる。
 
「毛利君、なんでスカート穿いてるのよ?」
「だって醍醐君が貸してくれた着替え、スカートだったんだもん」
 
「ね、もしかして下着も女物だよね?」
「身につけただけで、俺ちんこ立っちまった」
 
「それスカートのファスナー、上まであがらないの?」
「無理。穿くだけでも苦労した」
 
「千里、ウェストいくつだっけ?」
「59ですけど」
「毛利君、ウェストは?」
「85です」
 
「まあ物理的に入るわけないね」
 
「とりあえずロングスカートだから、足のすね毛は隠れているか」
 
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それで帰ることにする。楽曲は各自まとめて週明けまでに新島さんの所に送るということになった。
 
「誰か帰りは運転してくれない? 俺運転してたら今日はもう一度捕まりそうで」
とスカート姿で、あまり見詰めたくない感じの毛利さんが言う。
 
「んじゃ、醍醐運転して」
「了解です」
 
それで千里がバッグから初心者マークを出してハイエースの前後に貼り付けていると、ツッコミが入る。
 
「醍醐ちゃん、初心者だったんだっけ?」
「免許はこの春取ったばかりです」
 
「うそ。あんた2年くらい前に運転してた」
「ごめんなさい。無免許です」
 
「まあ犯罪者だね」
などと雨宮先生は言っている。もう!
 
「でも若葉マーク持って来たのは、最初から運転するつもりだったんだ?」
「いえ。そのつもりは無かったんですが、持っていったほうが良い気がしたので」
 
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「まあ、何でも用意周到すぎるのが醍醐だね」
と雨宮先生は言った。
 

一部から「御飯食べる?」という声も出るが、大半は「無理。内臓が落ち着くまでは飲み物も入らない」という意見である。それでそのまま車は中央自動車道に乗り、東京を目指すことになった。
 
「みんなどこで降りるのが便利なんだっけ?」
「私は羽田だけど、東京駅でいいですよ」
と熊本在住の高倉さんが言うほかは、だいたい東京駅や新宿駅などが便利なようである。
 
「じゃ、新宿と東京で人を降ろして、高倉を羽田まで送ってやって」
と雨宮先生が言う。
「了解です。この車はどこに?」
 
「都内のどこかに乗り捨ててくれれば後で回収に行かせるから」
「じゃ、江戸川区の私の車の駐車場に駐めておきます。私はそれで自分の車で帰宅しますから」
「んじゃそれで」
 
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「醍醐ちゃん、悪いけど、俺の自宅まで送ってくれない? 俺、この格好で電車に乗ってたら警察につかまりそう」
と毛利さんが言う。
 
「ああ、それはまずいわね」
「充分変態に見えるからね」
「まあ女子中生が、その格好の毛利君見たら悲鳴あげるレベル」
「女の子の服を着て可愛くなる男の人もいるのに」
「女の子の心を持っているんだと思うよ、そういう人は」
 
「じゃ、高倉さんを羽田まで送った後で、お送りします」
「助かる!」
 
しかしここで高倉さんが言う。
 
「可愛い女子大生を毛利君と2人きりにするのは問題あるから、先に自宅に送ってあげてよ。私は最終便までに乗れたら大丈夫だから」
 
それで新宿駅・東京駅の後で、毛利さんの自宅に寄ってから羽田に向かうことになった。
 
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