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■サクラな日々(7)

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そのほか、学校のこととか、数学や物理の理論の話などをしていたら、男女6人のグループがSA施設に入ってきて、「あ、寺元!」と言って寄ってきた。「やあ、おまえたちもドライブ?」と寺元が訊く。
私は「こんばんはー」と彼らに挨拶した。
「寺元の彼女?」「あ、いえ友達ですが」
「照れることはないよ」「えーっと」
 
「おまえらどこに行くの?」
「韮崎で降りたところにさ、24時間入れる温泉があるんだよ。そこに行こうかと思ってる。寺元たちもこないか?デート中なら邪魔しないけど」
「いや、俺と彼女は別にそういう関係ではないから」
「じゃ、一緒に行こう行こう」
「あ・・・・・うん」寺元がこちらの顔色を見ながらためらっているので「私行きたい!」と笑顔で言う。
「じゃ、決まりな」
 
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女の子たち3人は花梨(かりん)・麻耶(まや)・美紗(みさ)と名乗った。
「晴音(はるね)です。よろしくー」
私は彼女らと『女同士』の気安さで、すぐに仲良くなり、学校のことやら、ファッションのことやら、芸能人のことやら、いろいろおしゃべりをした。今夜は男の子と女の子のペアで3台の車でここまで来たらしい。
 
休憩が終わり出発する。韮崎ICで降りて少し走ったところに、その温泉はあった。入浴料がなんと300円だ。安っ。近くにもう少し立派な施設もあり、そちらは700円だし、深夜は営業していないのだということだった。
 
私たちは中に入ったところにあるホールで缶ジュースを買って飲みながらしばらく雑談をしていたが、やがて温泉につかってこようということになり、男女分かれて脱衣室の方に行く。寺元がこちらを心配そうに見ていたが、私は笑顔でVサインを送った。
 
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脱衣場に入る。以前ネットカフェのシャワールームは経験しているが、普通のお風呂の脱衣場は初体験だ。でもきっと大丈夫。照明もそんなに明るくないし。私は花梨たちとふつうにおしゃべりしながら中に入ると、隣り合った4つのロッカーの前で服を脱ぎ始めた。
 
ポロシャツとスカートを脱ぎ、たたんでロッカーに入れる。下に着ているTシャツを脱ぐ。ブラがあらわになる。
「晴音、おっぱい小さいね」
「へへ、まだ成長期なの。花梨大きいね」
「Fカップだからね」
「何食べてるとそんなに大きくなるの?」
などと言いながら、私はブラを外し、パンティーも脱いで、ほかの子と一緒に浴室の中に入った。
 
平常心、平常心、と自分に言い聞かせていたが、さすがに初めての女湯は少しドキドキした。でも花梨たちのヌードを見ても、特に興奮したりするようなこともなく(あそこも反応しない)、何だか日常風景のような感じで見ることができた。
 
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体を洗ってから湯船に入る。温泉というから、硫黄の臭いがするようなぬるっとした湯を想像していたのだが、そんなに臭いもなく、さらさらした普通の感じのお湯である。でもけっこう温泉の成分は溶けているらしく、ここの湯に入った後はお肌がすべすべになる、などと花梨は言っていた。
 
浴室内に打たせ湯とか、電気風呂とか、ジェットバスとか、いろいろな浴槽があるので、私たちはおしゃべりしながら、浴槽を移動して楽しんだ。十分温泉を堪能したところで湯から上がり、体を拭いて服を着る。脱衣場から出て行くと、男組が待ちくたびれたような顔をして待っていた。
「なんだ、もうあがってたの?」と花梨。
「おまえら何時間入るつもりなのか?と今話してたところだよ」と花梨の彼氏の椎名君。
 
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私たちは水分補給にお茶やオレンジジュースなどを飲み、またしばらく雑談などをしてから出発した。
 
私は「高速代は私出すね」といって寺元に5000円札を渡した。
「いや、半分でいいよ」
「でもガソリン代もかかってるし、運転は寺元君がしてるし」
「ん〜。じゃ遠慮無くもらっておく」
 
財布に収めてから、寺元から訊かれる。
「ね・・・・お風呂入ったの?」
「入ったよ。気持ちいいね、この温泉。なんかすっきりした」
「その・・・・服、脱いだの?」
「もちろん。お風呂入るんだもん。裸になったよ」
「えっと・・・・・」
「ま、いろいろテクがあるの。お風呂くらいは大丈夫だよ」
と私は笑いながら言う。
「そうなのか・・・・」
と寺元がまだ悩んでいるようである。
 
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帰りもいったん談合坂で休憩する。ドライバーを務めている男組は少し仮眠するといっていたが、女組はSAに入ってスナックコーナーで思い思いのメニューを食べながらおしゃべりをした。私は運転中ずっと寺元と話していたが、ほかの3人はここまで寝ていたという。
「晴音も遠慮せずに寝るといいよ。私なんか寝ててくれた方が運転しやすいって言われるよ」と美紗。
「私もこのまま帰るまで寝る」と麻耶。
「そうさせてもらおうかなあ」
 
「晴音、まだ寺元君とHしてないんでしょう?」と花梨。
「あ、えっと・・・・」
「だって『寺元君』『吉岡さん』なんて呼びあってるし、微妙にお互い遠慮してる感じだし」
「うん、まあ」といって私は真っ赤になる。
きゃー、照れてる、可愛い、などと言われた。
「ホントそういう仲じゃないし、ドライブしたのも今日が初めてだし・・・・」
 
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「へー。でも、晴音、前の彼女より寺元君とお似合いみたいな気がする」
と麻耶がいうと、花梨が『ちょっと、』と咎めるような顔をする。今の彼女の前で昔の彼女のこととか話題にするなという意味だろう。私は完全に寺元の恋人扱いになっているようだ。
 
「あ、朱実さんだったっけ?」と私は言った。
「あ、知ってたんだ」
「寺元君自体とは昔からの知り合いだったから。彼女とも1度顔会わせたことあるよ。6月に別れたというのも聞いてたし」
「なんか、いつも喧嘩してたもんね」と麻耶。
「寺元君も朱実自身も穏やかな性格なのに、よほど相性が悪いんだろうなとか思ってたよ」などと言う。
「へー。そういうのは知らなかった」
 
この男の子4人が高校の同級生で、しばしば一緒にドライブしているというのもこの時に聞いた。ただ寺元は6月に朱実さんと別れてからは、しばらく参加してなかったらしい。私は3人と携帯の番号とアドレスを交換した。
 
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出発しようということになり車に戻ると寺元からも少し寝た方がいいと言われたので眠らせてもらうことにした。かなり長時間起きていたし、お風呂に入った後でもあるので、なんだかぐっすり寝た。寺元に起こされるともう自分のアパートの近くだった。私の道案内でアパートの前まで連れて行ってもらい、ありがとうと言って別れる。私はちょっとだけ悪戯心が出て、別れ際、寺元の頬にキスをした。「あ・・・」と言って私を見つめてる。「じゃね」といってバイバイして、車のドアを開けて降り、まだ雨が降る中アパートの階段を駆け上がった。
 
10月下旬、学祭が行われた。私は莉子に頼まれて、模擬店のメイド喫茶のスタッフに応援に行った。
「嘘。Mかと思ったらSなのね」
私はSサイズのメイド衣装が入ってしまった。
「あれー。ウェスト少し細くなったのかなあ」
「Sが入るということはW61のスカート穿けるはずよ」
「へー。じゃ今度61にしてみよう。確かに64のスカートが歩いているうちにずれ落ちてくることあるんだよね」
「じゃ61でいいよ。でも可愛い!」
「我ながら可愛いと思った」と私は鏡に映った自分の姿を見ていう。
「ハルリン、マジでメイド喫茶でバイトできたりして」
 
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「やってみたい気もする。羞恥心は30分で克服できそうだし」
マジでもし今のパイトが続けられなくなったりしたらメイド喫茶に応募してみようかな、なんて思った。
 
「でも、まるで胸があるみたいに見えるね」
と莉子。莉子も同様のメイド服を着ているが、この衣装は胸がけっこう開いているので、ちょっと背の高い男の子なら、胸の谷間をのぞき込める感じだ。
「ブレストフォームなんだよね。偽乳。こないだこれ付けて温泉入ってきた」
「温泉って女湯?」
「私、男湯には入れないよー」
「度胸あるね〜。でも逮捕されても知らないからね」
「えへへ」
 
メイド喫茶は繁盛して、私たちは大忙しだった。
「お帰りなさいませ、お嬢様」とか「いってらっしゃいませ、ご主人様」
などとおきまりの言葉を言っていると何だか不思議な高揚感がある。
オムレツは作るのが得意な子が2人でじゃんじゃん作っていたが、ケチャップでハートマークと指定のイニシャルを描くのは、テーブルで各メイドがする。私は「お、うまいね」などと言われながら、その作業をしていた。
 
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また来客がある。手が空いていたので飛んでいった。
「お帰りなさいませ、ご主人様・・・・って、寺元君」
「おっと・・・こんな所に吉岡さんがいるとは」
「ご案内します」
といって空いているテーブルに案内する。
「じゃ、コーヒーとオムレツね」
「かしこまりました。ご主人様」
 
オムレツのストックが出払っていて作っている最中だったので少し待つ間にコーヒーをサーバーから注ぐ。トレイに乗せ、オムレツができあがるのを待って、寺元のところに持っていった。
「なんか書いてもらえるんだっけ?」
「ハートマークとイニシャルを描く方が多いです。カップルでご帰宅なさった方ですと、相合い傘を描くことも」
「じゃ、相合い傘でさ、Shinpei Harune って」
と寺元は私の顔を真剣な表情で見つめながら言う。ドキッとした。
『進平』は寺元の下の名前である。
 
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「・・・・・かしこまりました」
私はオーダー通りに、相合い傘を描き、Shinpei, Haruneと傘の下に書いて、傘の上にハートマークを描いた。
「ありがとう」
「恐れ入ります」
といってキッチンに戻る。今の会話を聞いていたっぽい莉子が私の手を引いて更衣室に連れ込んだ。
 
「ね、ね、いつの間にあんたたち、そういう仲になったのよ?」
と聞く。
「いや、別にそういう仲もなにも・・・・・」
「じゃ、もしかして今の遠回しの告白とか?」
「まさか。寺元君、私のこと知っていて、それはあり得ないよ」
「ハルリン、こんなに可愛いんだもん。心がぐらっと来ることもあるかもよ」
「えー?」
「デートとかしたことはないの?」
「デートって・・・・元々友達だからお茶くらい飲むことはあるし、こないだは夜中に一緒にドライブしたけど。あ、別れ際に私、彼にキスしちゃったけどね」
 
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「ひょっとして、充分、恋人になってない?」
「ただの友達だよ〜」
「向こうは結構意識してるかもよ。それにさ、あんた以前は彼のこと『寺元』って呼び捨てしてたのに、最近『寺元君』て呼んでるよね。向こうも『吉岡さん』だし」
 
「いや、それは以前は男同士だから呼び捨てだったけど、私が女の子になっちゃったから、呼び捨てしちゃ悪いかなと思って『君』付けてるんだけど」
「呼び方変わったので、よけい意識してるかもよ」
「そ、そうかなあ・・・」
 
こないだのキスはほんの悪戯心だったのだが、あれで意識させてしまったりしたろうか・・・・などと思って眺めていたら、やがて寺元が席を立ち会計に行く。私はさっとレジの所に寄った。
「ご帰宅代、800円です」
といって代金をもらう。
「ありがとうございます。いってらっしゃいませ、ご主人様」
 
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「あ。あのさ」
「はい?」
「今夜また少し遠くまでドライブするんだけど、よかったら付き合わない?」
「いいよ」
「何時にバイト終わるの?」
「だいたい9時に終わる予定」
「じゃ、スタバの前に9時半」
「OK」
「じゃ、また」
 
寺元が出て行くと、すかさず莉子が寄ってきた。
「おー、しっかりデートの約束してる」
「あ、えーっと」
「こないだキスしたんなら、今夜はセックスだね」
「えー?だって私、女の子の器官無いのに、どうやってすればいいの?」
「何うぶなこと言ってんのよ。Vが無ければAもあるし、お口もあるでしょ」
「ひぇー」
私、今夜彼とそんなことするんだろうか・・・・・
 
その日のバイトで私が休憩室でコーヒーを飲みながら少し考えていたら、レモンがやってきて
「あーあ。ちょっと疲れた。私もコーヒー飲んで一息」
と言って、コーヒーを飲みながら、「あれ、ミュウミュウ、何か悩み?」と訊く。
「いや。ちょっと、その・・・」
「ここで言いにくいこと?今日何時に上がる予定?」
「9時のつもりではあったんだけど。9時半に約束あるし・・・」
「じゃ、一緒に8時に上がらない?悩み相談に乗るよ」
「ありがとう」
 
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ということで、私とレモンはその日8時に上がり、一緒に近くの居酒屋さんに入り、ボックス席に『並んで』座った。
 
「ここ、BGMが大きいからさ、隣の席の会話が全然聞こえないの」
「なるほど、個人的な話をするのには便利なんだ」
「その代わり、このくらい寄ってないとお互いの話が聞こえないけどね。向かい合って座ると会話が成立しないよ」
私とレモンはほとんど恋人か?というくらいの距離に座っている。
 
「それで、どうしたの?」
そこで私が先日の夜の出来事、そして今夜ドライブに誘われたことを語る。清花は大笑いしていた。
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サクラな日々(7)

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