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■サクラな日々(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2011-09-16
 
その日、ボクと清花の会話は凄く盛り上がって、その後、ファッションやメイクの話もしたし、ジャニーズとかの話もしたし(清花は嵐とV6が好きらしい)、あまり話が盛り上がったので、ファミレスの後、カラオケ屋さんに行き、2時間歌った。お互いの携帯の番号とアドレスもしっかり交換した。
 
「わあ、歌もちゃんと女の子の声で歌えるのね」
「最初どちらかというと歌の方でうまく出せるようになった」
「へー」
清花は、ボクが20歳ならお酒でもいいよね、といって水割りを注文して、それを飲みながら、歌を歌っていた。清花は歌もうまかった。主として浜崎あゆみとか、MISIAとか、けっこう歌唱力を要求する歌をきれいに歌う。ボクは女声を鍛える時によく歌っていた、松田聖子とか宇多田ヒカルを歌った。
 
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「そんな高い声がよく出るね−。私あまり高いの出ないのよね」と言われる。
「高い声は、裏声と実声を混ぜた感じの出し方なの。いろいろ試行錯誤している内に、この出し方発見して」
「ふーん。ミックスボイスというやつか」
「ああ、そういうの?」
「うん。民謡やってる友達がそんなこと言ってた気がする」
 
カラオケ屋さんを出たのは夜中の2時くらいだった。
「終電無くなっちゃったね。タクシーで帰る?」
「ううん。もったいないから、今夜はネットカフェにでも泊まる」
「じゃ、一緒に泊まろう」
といって、手近なネットカフェに入る。身分証明書の提示を求められ、ふたりとも運転免許証を見せる。こういう時、ボクの名前って便利なんだなと思った。ボクは会員登録用紙の性別の所には敢えてどちらにも○を付けなかったのだけど係の人が勝手に女の方に○を付けた。そして、ボクたちは女性専用席の隣り合ったブースを割り当ててもらった。
 
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「女性専用席と聞いて、ちょっとドキっとした」
「男の人が近寄らないから、それだけ安心感があるよ」
「私少しゲームしてから寝るね」と清花。
「私はもう寝る」とボク。
「うん。じゃ、おやすみー」「おやすみー」
ということで、ボクは先に寝せてもらった。クレンジングシートでメイクを拭き取ってから横になると、すぐに睡魔が寄ってきた。その日は凄く充実してたから、ぐっすり寝ることが出来た。
 
朝は7時くらいに起きた。隣のブースの様子をうかがう。何か物音がした。トントンと叩いてみると「おはよう」という声が帰ってきた。
「シャワー浴びて来ようよ」
「でも・・・・」
「中は個室だから大丈夫だよ」
というので、清花に手を引かれて、おそるおそる女性用のシャワールームに入る。中には多数のブースがあり、入口はカーテンで視界が遮られている。ボクはほっとして、空いているブースに入り、カーテンを9割方閉めてから中で服を脱いで、入口傍にある脱衣籠に入れた。シャワーを浴びる。気持ちいい!でも、これひとりで泊まってたら、ここに入る勇気無かったなと思った。
 
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バスタオルで身体を拭いてから服を着て(パンティだけは新しいのに替えた)、ブースの外に出た。清花はもう出てメイクをしていた。ボクはその隣の鏡の所でメイクをした。
 
「だいぶ練習したんだけど、アイラインの引き方がまだよく分かってなくて」
などというと
「どんなアイライナー使ってる?」と言われる。
ボクが見せると「ブラックか。。。。これで重たくなりすぎるようなら、もう少し明るい色のを使うといいかもね。グレーとか」
「あ、そうか。今度やってみよう」
 
結局その日はそのあと一緒にマクドナルドのモーニングを食べてから別れた。別れて学校の方へ行こうとして、ふと気付いた。
 
ちょっと待て・・・・・ボクはこの格好のまま学校に行くのか?
この格好で昨日の午後から歩き回っていたのに、それを考えると急に恥ずかしく感じてしまった。だけど、今からアパートに戻って、それから学校へ行くと1時限目に遅刻してしまう。『はあ・・・・・・』
 
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結論を出すのに1分も掛からなかった。
「ま、いいや」
ボクは開き直ると、そのまま学校の方に行く地下鉄に乗り、女の子の格好のままで校門をくぐった。構内を歩くのは別にいい。いろんな人が歩いているし。だけど・・・・
 
1時限目の講義のある教室に入る。あまり目立たないようにと思って後ろの方の席に座っていたのだが、クラスメイトの莉子がボクを認めて近づいてきた。
「おはよう。この授業、以前から受けてたっけ?」
「えへへ。私、吉岡」と女声のまま答える。
 
「え?・・・・・・」と言って莉子はしばらくボクを見つめていたが
「あ、ほんとだ!吉岡君だ!どうしたの?その格好」
その声につられて、他にも何人かのクラスメイトが集まってきた。
 
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「たまには気分転換もいいかなあと思って、ちょっと服装の路線を変えてみた」
「それ服装の路線というより、性別の路線が変わってるじゃん」
「ってか、女の子の声なんですけど」
「うん。練習した」
「お化粧、きれいにできてる」
「それも練習した」
「髪がきれいにセットされてる」
「昨日、美容室に行った」
 
わいわいがやがやと騒がれたが、みんな「でも可愛い」「女の子にしか見えない」
「俺、こんな子が道を歩いてたらナンパするかも」「こんな美人なら男でも構わんから恋人にしたい」などなど、男子からも女子からも褒められる。寺元も「吉岡についときめいてしまうよ」などと言っていた。
 
「で、これからは女の子の格好で学校に出てくるの?」
「今日だけのつもりだけど」
「えー、こんなに可愛くなるんだもん。もったいないよ。毎日これでおいでよ」
「そ、そう?」
「うん、似合ってる、似合ってる」
と、かなりおだてられると、だんだんその気になってきた。しかし、そうなるとボクの人生、これからどうなるんだろう?ははははは。
 
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1時間目が終わってトイレに行く。個室が空いていたのでそのまま中に入り、用を達してから出てきて、手を洗っていたら
「あ、ハルリンは当然女子トイレだよね」と声を掛けられた。
ボクのニックネームは女子達の間で『ハルリン』と決められてしまっていた。
 
「うん。この格好で男子トイレにはいけないし」
「あ、スカートの後ろが変になってるよ」
「え?」
「直してあげる」
「あ、ありがとう」
 
2時間目は出席を取る授業だった。名簿順に名前が呼ばれていく。ボクは名簿のいちばん最後だ。「吉岡」と呼ばれて「はい」と返事をする。先生が「え?」という顔をしてこちらを見る。「君、吉岡君なの?」「はい、間違いなく本人です」
「じゃ、問題無い」と先生は平然とした顔で言うと、名簿を閉じて授業を始めた。
 
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「竹中教官、平然としてたね」
「普段から世俗を超越して生きてる感じだから性別も気にしないんだよ」
「ああ。でもますます明日からも女の子の格好で出てこないといけなくなった感じ」
「えー、もちろんハルリンはこれからずっと女の子だよ」
 
などと、昼休みにボクは学食で女子のクラスメイトたちとおしゃべりしながらお昼を食べていた。むろん、ボクの女装のことだけが話題になっている訳ではなく、ふつうにファッションのこととか、ジャニーズのこととかも話す。ボクがそういう話題に問題無く付いてくるので
「ハルリン、随分前から女の子してたんでしょ?」
などと言われる。うーん。メール上では女の子してたけど、リアルではまだ3回目なんだけどな・・・・
 
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理系クラスなので、女子は3人しかいない。その3人の団結力は強いようでいつもまとまって行動していたが、どうもボクはそのメンバーに『仮入団』を許可されたような雰囲気であった。
 
結局、この日を境に、ボクは学校にもバイト先にも、女の子の格好で出て行くようになってしまった。いつも女の子の格好をしているので、服も大変だった。かなり大量に女の子の服を買ったので、その月は洋服代だけで5万円以上使った。でもバイトで20万円近く稼いだので、そのくらいの出費は問題無かった。ボクはこの資金のおかげで洋書の学術書をアメリカのアマゾンに直接注文して取り寄せたりして読むこともでき、勉強にもほんとにプラスになった。
 
クラスメイトの女子3人とも仲良くなった。いつもお昼を一緒に食べるようになったし、映画に行こうなんてのにも誘われたりした(レディースデイ1000円で入ってしまった)。学校はすぐに夏休みに突入したが、少人数教室や、先輩の院生(女子)の院生室などを借りて一緒に勉強会などをしたりもした。
 
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バイト先では毎日せっせと男性会員からのメールへの返信をしていた。けっこうリピーターが付くようになり、そういうメールへの返信はマージンが高いので、ボクの収入は次第に増えていった。週に1回くらいの感じでデートも発生した。ボクはそのキャラの設定年齢に合わせた衣装を身につけデートに出て行き、無難な会話で相手の心のガス抜きをしてあげた。お客さんとトラブルなどが起きることも無かったし、1万円の手当をしっかりもらっていた。
(ボクやレモン以外の子が対応したケースではホテルに連れ込まれそうになって、付き添いの男性スタッフが介入したような事件もあったらしい)
 
レモンとはその後も仲良くしていて、しばしば帰りに一緒に晩ご飯を食べた。さすがに毎回夜中の2時までということはなく、だいたい終電に間に合うくらいの時間で別れていたが、たまにはカラオケに付き合ったりすることもあった。
 
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大学は夏休みに入っていたが、ボクは父と喧嘩したままであったこともあり、実家には帰省しなかった。母から「帰って来ないの?」という電話があったが、
「バイトが忙しいし、秋からのゼミで使いたい本を夏休み中に読んでおきたいから帰れない」と言った。(自主)ゼミ用の本を読んでおきたいのは事実だった。英語の本で400ページほどあるものを3冊、内容をちゃんと理解しながら読破しておきたかったのである。
 
夏休み中は、朝から昼過ぎくらいまでアパートで本を読んだり、日によっては大学に出て行って図書館や仲良くなった先輩の院生室に寄ったりして、夕方近くからバイトに行き、9時か10時頃までメールの返信作業をしていた。
 
8月の中旬頃、図書館の書庫の中で資料を探していたら、クラスメイトの妃冴(ひさえ)とバッタリ会ったので、お昼を一緒に食べた。
「ねー、ハルリンは成人式はどうする?」
「成人式?」
「女の子は振袖着る子が多いよ」
「振袖・・・・・・」
そんなこと考えたこともなかったので、ボクは一瞬振袖を着ている自分を想像して、ちょっと目眩がした。
 
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「まさか背広着ていったりはしないよね」
ボクはそれも想像したが、何だか物凄い違和感があった。
「背広は・・・無いと思う。もう、私、男の子の格好できない」
最近ボクはもう自分が単なる趣味の女装の範囲を超えてしまっていること、自分がもう後戻りできない所まで来ていることを感じていた。
 
「振袖じゃなかったらドレスとかいう子もいるけどね。もちろん平服で出席したって構わないけど、成人式なんて一生に一度のことだしさ。結婚式は何度かやるかも知れないけど」
「確かに・・・・ヒサリンはどうするの?」
「振袖を昨日注文したの。お仕立てしてもらうんだけど、今頼んでできあがるのは11月」
「わあ、時間がかかるんだ」
「みんな頼むからね。この時期は特に混むのよ」
「でも、お仕立て頼むんなら、今注文しないといけないのか」
 
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「買わずにレンタルする手もあるよ。スズ(涼世)や地質学科のマッチー(松美)はレンタルするって言ってた。私とリコは買うことにした。買うなら、お仕立ての速いところだと9月に入ってから頼んでも間に合う所もあるけど、8月中に頼まないと間に合わない所もあるよ」
 
「振袖っていくらくらいするの?」
「ピンからキリまで。ふつうのお店で買ったら勧められるのはだいたい30万くらいから90万くらいかなあ。デパートとかには150万とか200万とかいったのも並んでる。高給呉服店に行けば何千万円とかのも」
「ひゃー」
「思いっきり安いのになるとヤフオクで古着の振袖、2万とか3万なんてのも」
「わお」
 
「私はセット価格60万のを買った。半分親に出してもらって半分はバイトで貯めたお金」
「セット価格?」
「お仕立て代とか、帯とか、いろいろ付属品まで付いた値段。下着は別。私が買ったのは振袖の生地そのものは45万で、お仕立て代その他を加えて60万になるの」
「なるほど・・・・一度呉服屋さん行ってみようかな・・・どこかいい所知らない?」
 
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「有名チェーン店はいろいろ押し売りも激しいのよね。私は佳子先輩のお勧めで、△△屋さんに行った」
「あ、えっと、◇◇商店街の入口のところにある?」
「そうそう。知ってるのね」
「いや、前を時々通るから、なんとなく見てた」
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