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■眠れる森の美人(6)

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明け方、城は沈痛な空気に包まれていた。
 
本来なら今日はめでたいデジレ王子の成人式が執り行われる予定だった。しかし本人は100年の眠りについてしまった。更には大公殿下がデジレ王女を殺そうとしてお付きの侍女に身をもって阻止されたらしいという噂が広がると、かなりの動揺が起きていた。大公の側近5名と奥方が拘束され、子息のラスプ王子も監視下に置かれていることが城内には知れ渡って行った。
 
「陛下、私はこれから城をデジレ様と一緒に100年の眠りに就かせます。食料なども眠らせてしまいますので、100年後、デジレ様が目覚められた時にお食事などに困ることもないでしょう。100年の間の様々なお世話、トイレの始末などは私たち妖精が責任を持ってします」
とリラの精が言った。
 
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「分かった。それは頼む」
 
「それでこの城に居るものは全て眠らせてしまいますので、皆様は全員退去してください」
 
「でもそれでは姫はひとりぼっちになってしまう。寂しくないだろうか?」
と王様が言う。
 
「私もデジレと一緒に眠らせてください」
とお妃様が言った。
 
「母親が一緒であれば寂しくないでしょう」
 
「だったら私も一緒に眠らせてくれ」
と王様も言ったが、リラの精はそれを否定した。
 
「それはいけません。国民からたくさん愛されたデジレ様がこのような事態になった今、国王まで一緒に100年の眠りに就いてしまったら国民が不安がります。陛下にはこの国を治める義務があります」
 
「そうか。分かった。ソフィー、すまぬ。そなただけデジレに付いてやってくれ」
「はい」
 
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王様とお妃様は周囲に人がいるのも構わずキスをした。
 

「リラ様、私も一緒に眠らせてください。私はデジレ様が寝床から出られたのに不覚にも気づきませんでした。その責任を取らせてください。それに100年後に目覚められた時に侍女もいなければ不便ですよ」
 
とティアラが言った。
 
するとティアラの母の乳母も言う。
 
「でしたら私も一緒に眠らせてください。私はもう今日で引退するつもりでした。そして娘のティアラに後事を託して田舎に帰るつもりでした。私は既に夫も亡くなっています。ティアラと私たった2人の親子です。ティアラだけが眠ってしまって私が先に逝くのは辛いです。娘と一緒に100年後までデジレ様にお仕えしとうございます」
 
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「分かった。ふたりの願いは聞き届ける。ではデジレ様と一緒に100年眠るのは王妃陛下、乳母様、ティアラ様の3人だけで良いか?」
 
「あの、私も一緒に行けませんか?私もデジレ様に7年間もお仕えしました」
と家庭教師のカピア先生が言い出すが、これもリラの精は否定する。
 
「カピア殿には年老いた両親もおるであろう。まだ学校で学んでいる最中の息子もいるではないか。そのお前が今眠ってしまうのは残された者がたまらない」
 
そうリラの精に言われて、カピア先生は涙を流した。
 

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更に年老いたローラン侍従長がお供を申し出た。
 
「元はといえば、私がカラボス様をご招待しそこなったのが全ての発端です。私も一緒に眠らせてください。王女様がお目覚めになった時、男手も必要なはずです」
 
「そなたの気持ちは分かった。お供するがよい」
「はい」
 
もうひとりフランソワ准尉がお供を申し出た。
 
「私のような卑しい身分の者がこのようなことを申し出る失礼をお許し下さい。私はデジレ王女殿下が幼い頃から何度も行啓にご同行させて頂きました。どうか私も100年後までお供させてください。年は取りましたが、若い頃拳闘や水泳、ポームなどで鍛えていますから、力仕事はまだまだ行けますよ。私は結婚していないから身軽ですし」
 
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「分かった。そなたもお供してやってくれ」
「はい」
 
ローラン侍従長とフランソワ大尉(国王がこの場で特進させた)は各々の家族に手紙を書いた。ふたりの家族には国王から、退職金相当の慰労金と年金の支払いを約束した。
 
アンジェロ准将もデジレ姫に同行することを申し出たのだが、参謀長も兼ねていたハンス殿下の死で動揺している軍を抑えるのに、軍の中では中立的でハンス殿下系の将校にも顔が利くそなたの力は必要だと言われ、国王とともに城を去る道を選んだ。
 

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この日、デジレ王子の成人式は行われなかった。そして「病死」と発表されたハンス殿下の葬儀が行われた。ノール大公家は廃止とされ、ハンス殿下の息子のラスプ王子は廃王子となって王位継承権を失った。殿下の奥方は修道院に入るということも発表された。
 
デジレ王女が姿を見せず、健康そうだったハンス殿下の急な病死と大公家廃止の発表は人々の憶測を呼んだ。
 
「ハンス殿下の側近が数名処刑されたらしいぞ」
「いや俺は殉死だと聞いた」
「俺は名誉ある死を賜ったと聞いた」
「やはりハンス殿下がクーデターを起こそうとしたという噂は本当か?」
 
「デジレ王女も死んだのか?」
「それが生きてはいるが動けない状態らしい」
「大怪我をなさったのか!?」
 
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王様とお妃様は最後のキスをしてから、お妃様は城に残り、王様は城を出ていった。王様たちが出て行くと茨が大量に発生して城の周囲を包み込み、もう人が近寄れないようになっていった。
 
ティアラと乳母タレイア、王妃ソフィーがデジレの部屋にベッドを用意してもらい、そこに寝る。そしてローランとフランソワは部屋の前の廊下にベッドを置いてそこに横になって、目を瞑った。
 
「それでは城を完全に眠らせます」
と言ってリラの精はお城全体に魔法を掛けた。
 
それでティアラたち5人も眠ってしまったし、料理番がうっかりお肉をオーブンで焼いている最中だったのを忘れてしまっていたものも、そのまま焼く途中の状態で時が止まってしまった。
 
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事情によりこれまで国王が居城としていたミュゼ城を封印したことが発表され、今後の執政はノール大公が使用していたシャトン宮殿を使用するとした。またデジレ王太子が「病気療養中」のため、国王の妹のステラ王女が摂政に就任するとともに、新たにエスト大公家を創設してその当主となることも発表された。またソフィー王妃も病気療養中であることが発表された。
 
「発表文でデジレ王太子(Prince heritier Desire)って書いてあったけど、デジレ王太女(Princess heritiere Desiree)の間違いだよな?」
 
「デジレ姫様が男になっちまったとか?」
「まさか」
「デジレ姫様は男にするにはもったいなさすぎる美人だよ」
「あんた見たことあるの?」
「日照りの年に巡回なさっていた時見たんだよ。あんな美人は今まで見たことなかった。今はもっとお美しくなられているのでは」
「ご病気だというけど、早く良くなって欲しいね」
 
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「まあ発表文は男女を区別せずに王太子と言ったんだろうね」
などと人々は噂した。
 
「しかしひょっとしてミュゼ城を封印したのは、そこにデジレ王太女様がおられるからでは?」
「もしかして何かの伝染病にかかられた?」
「お妃様もきっと同じ病気なんだよ」
「それで人に移さないように城を封印したのかな?」
 
そしてこの噂話がやがては「封印されたお城に美人のお姫様が眠っておられる」という噂話に変化して行くのである。
 

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一方リラの精たち6人の妖精(バラ・チューリップ・カーネーション・桑・カナリア・リラ)はデジレを守って死んだ葦の精を追悼する会(国王の名代としてソフィー王妃の母君アラヤ王女、眠っているデジレ王女の名代として王女の侍女でティアラの親友でもあったコロナが出席してくれた)を開いた後で妖精だけでミュゼ城に移動してから話し合った。
 
「1人ずつ、半日交替くらいで城に詰めて眠っている人の世話と警護をすることにしましょう」
「次に城に付く者がその近くでバックアップするということで」
「そうしたら3日に1度当番をすればいいね」
 
「あと幼い竹の精は主としてバラが面倒を見るけど、他の子もサポートするということで」
 
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そこにカラボスが姿を現す。
 
「カラボス様?」
 
「葦の精はヘッピリ腰だったね。あれじゃ本物の剣を取っても大公には勝てなかったよ」
などとカラボスは言っている。
 
「私たち剣は習ってないもんなあ」
とカーネーションの精が言う。
 
「その交代で城に詰める当番に私も混ぜて」
とカラボスが言った。
 
「はい、お願いします!」
 
「バラは幼い竹の世話で忙しいだろう?だから私が入る代わりにバラを外せばいい」
「済みません!」
 
「ただし私は昼間は苦手なんだ。夜の番にして」
「分かりました。ではカラボス様と私と桑が夜の番、カーネーションとチューリップとカナリアが昼の番ということにしましょう」
とリラの精は言った。
 
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この時、カナリアの精が発言する。
 
「今、デジレ様は、中身は男のままで、でもお股の所だけ女の形になっていますけど、これちゃんと男の形に戻してあげなければならないのでは?」
 
「うーん・・・・」
と言ってリラの精は悩んだ。
 
「その魔法は葦の精が掛けたまま死んでしまったので、私の力では何とも。カラボス様にはできませんか?」
とリラの精は尋ねた。
 
「葦の精が預かったまま、消えてしまったから、デジレの男の印と種玉も葦の精と一緒に消えてしまったと思う」
とカラボス。
 
「え〜〜!?」
 
「ではデジレ様は男には戻れないのでしょうか?」
とバラの精が訊くと
 
「いっそ、このまま完全な女にすることならできる」
とカラボスは答える。
 
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「え〜〜〜〜!?」
 
「お前たちも知っているだろう?人間はみな男の能力と女の能力を持っている。だから、男の能力は消えてしまったけど、体内に密かに眠っている女の根源を目覚めさせて刺激する。すると卵巣・子袋と鞘も発生して成長する。失った男の印に代わって、実(さね)もできるだろうね。今デジレは100年の眠りについていて代謝が通常の10分の1程度になっている。だから今女の根源を目覚めさせればちょうど100年後には少女が女になり始める年8-9歳頃から10年後の18-19歳の娘程度には女の身体が発達するよ。体付きも今より丸みをおびて、胸も結構膨らむだろうね」
 
カラボスは説明した。
 
リラの精たちは顔を見合わせた。
 
「そうそう。月の物も発生するから、トイレ以外にその始末も私たちがしてあげなければならないけどね。あ、月の物は侍女のティアラもしてあげないといけないよ。ソフィー妃は面倒くさいから卒業させちゃえ」
とカラボスは補足した。
 
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「ソフィー様のお世話もしますよ〜」
 
「いやデジレ様なら女の子でも構わないと思う」
とカナリアの精が言った。
 
「だって国民はみんな姫様だと信じているし」
「むしろ実は男でしたと言った方がパニックになるかも」
 
「じゃ女の子にしちゃおうか?」
と桑の精が言う。
 
「わりと本人も女のようなお股を気に入っていた気がする」
「むしろ男に戻れるだろうかって不安がってた」
「いや、姫様は本当の女の子になりたいと何度か言っていた」
 
「実際デジレ様って男の素養があまり無いし。運動も不得意」
「女の素養は結構ある。お料理も好きだし。お人形とか可愛いものが好き」
「けっこう料理番たちに混じって夕飯の支度を手伝ったりしてたね」
 
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「国王の務めのひとつは子孫を残すこと。今のままでは子供を作れないもん。男としては子を残すことが出来なくても、女として子を残せるのなら、そうしてあげるべきだと思う」
とバラの精が言った。
 
「んじゃ女の根源を目覚めさせるよ」
とカラボスは言うと、デジレ姫の部屋に行き、自分の魔法の杖でデジレの後頭部の下のあたりを撫でた。
 
「そんな所に女の根源があるんですか?」
「男の根源もあるけどね。そちらは今眠らせた。男の根源の方はもう男の印などを創り出す力は残っていないし」
とカラボスは説明する。
 
「これでデジレの体内時間で1年後、私たちの時間では10年後くらいまでには女の根源の活動で卵巣・子袋・鞘に実もできる。それからデジレは女の子としてゆっくり発達していき、ちょうど100年後くらいには18-19歳の娘程度の身体になるだろう。まあ王子としての成人式はできなかったけど、100年後が王女としての成人式だね」
 
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「19歳ってむしろそろそろ赤ちゃん産むのにいいくらいの年齢ですね」
「うん。14-15でも産めるけど、どうしても不安定だよ。18歳すぎてから産む方が安心なんだ」
とカラボスは言う。
 
「じゃ私たちがいい人見つけてあげなくては」
「いい男がいたら、種を搾り取って持って来て、デジレの鞘の中に流し込んでしまえばいいんだよ」
などとカラボスは過激なことを言う。
 
「姫様目覚めた時は子供10人くらいの母親になっていたりして」
などとカーネーションの精が冗談(?)を言った。
 

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■眠れる森の美人(6)

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