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■眠れる森の美人(3)

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この頃は下着をつけるのはあまり一般的ではない。ドレスの下はもう裸である。そのデジレ姫の裸を見て侍女ティアラは「へ〜!」と思った。デジレ姫のお股のところは、普通の女の子と同じ形になっている。おちんちんもタマタマも見当たらず、代わりに縦に割れ目ちゃんまで見える。
 
自分もすぐにドレスを脱ぐ。自分も裸である。葦の精も服を脱いで裸になった。
 
村長の妻も既に裸になっているので、4人で一緒に浴室に移動する。入っていた女性たちがこちらを見て仰天する。
 
「わ、王太女殿下だ!」
「申し訳ありません。私たちすぐ上がります」
 
といった声があがるがデジレは言った。
 
「皆さん、そのまま入っていてください。充分温まらずに出たら風邪を引きますよ。私は国民とともにありますから、お風呂も一緒ですよ」
 
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女たちは顔を見合わせたが、デジレのみならず、そばに付いている同じ年頃の少女も、年齢不詳に見える大人の女性も頷いているので、みんな湯船から出ようとしていたのを再度入り直した。
 
デジレは身体を自分で洗うとティアラ、葦の精と一緒に湯船に浸かる。
 
「本当は恥ずかしいんですけどね。私、まだおっぱい無いし」
などとデジレが言うと
 
「10歳ではまだおっぱい無いですよ」
という声が村の女たちからあがる。
 
「うちの娘なんて、もう16歳なのに、ぜーんぜん胸が無いですよ。あんた、それじゃまだお嫁に行けないね、などと言うと、私がお嫁さんもらうからいいなんて言って」
 
とひとりの女が言うと、デジレがおかしそうな顔をして笑うので、それで壁が無くなった感じがした女たちは、そのあとたくさん村の噂話を出す。誰々さんはマッシュルームが苦手みたいな話、誰かがどこで転んだら靴が頭にジャスト乗ったみたいな本当にどうでもいい話をし始める。しかしデジレはそういうくだらない話を笑顔で聞いて、頷いたり相槌を打ったりするので、女たちも本当に姫と打ち解けた感じになった。
 
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「でも水不足でもこの温泉は豊かに湧いているんですね」
「そうなんですよ。それだけが助かっています」
「この温泉の湯の冷めたのを畑にも使えたらいいんですけどね〜」
「硫黄がたくさん入っているから、こんなの掛けたら作物は死んでしまうし」
「なかなか難しいですね」
「まあ飲むくらいは問題無いから、温泉に入ったついでに結構飲んでますけどね」
「少し苦いけど、何だか身体にいいような気がするよね」
 
「それにこの温泉、入ったあとお肌がすべすべになるんですよね〜」
 
「じゃ私もここに入っていたらすべすべになるかな」
とデジレが言うと
「お姫様は最初からすべすべお肌ですよぉ」
と言われて若い娘に身体のあちこちを触られる。
 
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あはは、こんなに触られたら、万一おちんちん付いてて、お股の間にはさんで隠していたりしたら、女の人に触られたのでおちんちん大きくなって困ってた所だよぉ、などと思ってデジレは冷や汗を掻いていた。
 
「いや、姫様が女王になったら、この国はますます繁栄しますよ」
などとみんなから言われて、デジレはお風呂を後にした。
 

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身体を拭いてから、村長の妻が用意してくれた服を着、今日泊まることになっている集会所の居室に入る。乳母と家庭教師が心配そうにして待っていた。
 
「あなたたちもお風呂頂いてくるといいよ」
とデジレが言うが
 
「姫様、女湯に入られたのですか?」
と家庭教師が訊く。
 
「入ったけど?」
「まあ王女様が男湯に入ろうとしたらパニックだろうね」
 
「でもおちんちんを見て村の女たちが驚いたのでは?」
「おちんちんは見られてないから大丈夫」
とデジレが言うし、ティアラが
 
「姫様がどうやってごまかしたかは私たち3人だけの秘密ね」
などと言う。
 
それでまあ騒ぎにならなかったのならいいかということで、2人もお風呂をもらいに行った。
 
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「で、これどうなっているの?」
とデジレは3人だけになった所で葦の精に訊く。
 
「おちんちんは私が一時的にお預かりしました」
と葦の精は答える。
 
「あら」
「元に戻しますね」
「あ、待って」
「はい?」
 
「こういうことってまた起きるかも知れないし、しばらく葦の精さんが預かっていてくださいよ」
とデジレが言う。
 
「おちんちん無くても大丈夫ですか?」
と葦の精が尋ねる。
 
「取り敢えず今回の旅が終わるまではそのままで。まあ、13歳の誕生日が来て私が王子に戻る時までに戻してもらえばいいです」
「分かりました。それでは取り敢えずお預かりしておきます」
 
「でもこれおしっこ、どうやってしたらいいの?。女の子ってどうやっておしっこするんだっけ?」
とデジレが尋ねる。
 
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「私、男の子になったことがないので、男の子だった人に女のおしっこの仕方を説明するの難しいですけど、私がおしっこする所を見ますか?」
とティアラが尋ねた。
 
「じゃ1度だけ見せて。その後は自分で頑張ってみる」
とデジレは言った。
 
それでティアラはデジレ姫と一緒にクローゼットの中に入り、便器を出してきて座っておしっこをしてみせた。終わった後、麻布でその付近を拭くのを見て「へ〜!拭くの?」とデジレが尋ねる。
 
「男と違って女は身体の内側から発射するので、どうしてもあちこち濡れるものですから。拭かないでおくとドレスが濡れたりしてまずいんですよ」
とティアラは答える。
 
「なるほど〜」
 
それでティアラは予備の麻布をデジレに渡し、デジレがおしっこをしてみる。
 
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「あ、出た出た」
と何だか喜んでいる。
 
「すごく感触が違うけど、すぐ出し方分かったよ」
「それはよかったです」
「でもほんとにこれ濡れるね〜」
と言ってデジレは自分のお股を麻布で拭いていた。
 
「でも恥ずかしい所見せてもらってごめんねー」
「大丈夫ですよ。私の身体も心も全て殿下のものですから、好きにしてもらってもいいんですよ」
 
とティアラは言ったが、デジレは意味が解ってない雰囲気だった。
 

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デジレ一行は1ヶ月ほど掛けてあちこちの村を訪れたが、行程中10回もデジレが来たところで雨が降った(その度にずぶ濡れになり、お風呂を頂いたりした。最初からお風呂を空にしてくれた所もあったが、村の女たちと裸の交流をすることも多かった)。デジレは女たちと一緒にお風呂の中でおしゃべりしていて「私女の身体にしてもらって良かったぁ」と思っていた。
 
「でも私って雨女なのかも〜」
などとデジレは言っていたが、どこでも恵みの雨だとして喜ばれた。村々から「雨を降らせてくれた御礼」といって、その村特産のワインとか工芸品とかをたくさん頂いた。
 
デジレ王女が来ると雨が降ってくれるようだという噂まで立ち、ぜひうちの地方へなどという話も出る。デジレは「私は神様ではないので、私が行っても降るとは限りませんよ」とは言って出かけて行ったものの、実際には姫が行くと2回に1回くらい雨が降り、結果的にデジレは何度も何度もずぶ濡れになっていた。
 
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警護の兵士は毎回違うものの、自ら志願して全ての行啓に同行したフランソワ軍曹は「私もにわか雨でずぶ濡れになるの、かなり慣れました」などと言っていた。
 

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国王はこの厳しい状況で子供が間引かれたり餓死するのをできるだけ防ぐため、各村や町の長に、貧乏で子供に御飯を食べさせきれずにもう殺すか売り飛ばすかしかないと思い詰めてそうな家庭があったら子供を村で引き取るように指示した。その子供たちを国内30箇所の拠点に創設した慈善院に集め、王室の予算でその子供たちに御飯を食べさせ、また字や算数を教えたりした。
 
そのような政策もあり、この年の日照りは死者もあまり多くなく、8月の下旬には大雨が降って何とか解消された。王様はこの機会に国のあちこちにため池を整備するよう大臣に命じ、これも王室の私的財産を供出して予算を取り、工事をさせた。その工事に携わった人夫の賃金が農作物が育たず途方に暮れていた人たちをまた救った。
 
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状況が改善されたことから慈善院に集められていた子供たちも半分くらいは翌春までに実家に帰還した。
 
今回の日照りは結果的に王様と、そして王太女であるデジレの評価を高めた感があった。
 

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やがてデジレが12歳の誕生日を迎えた時、乳母と葦の精がふたりで話し合った。
 
「何とかあと1年まで来ましたね」
「カラボス様も本当はあまりデジレ様を殺すおつもりは無いのでは?」
「ちょっとツムジを曲げられただけだと思いますよ」
 
「まあ乳母の仕事もどっちみちあと1年。私はもうこれでお仕事は引退するつもり。ティアラを置いて田舎に帰って畑でも買って耕して暮らそうかと思っています。ティアラはこのまま王子付きの侍女にしてもらえたら、それでもいいし」
と乳母は言う。
 
「ティアラ様、デジレ様のこと好きでしょ?」
と葦の精が言う。
 
「好きにならなきゃ、侍女なんて務まりませんよ。まあ筆降ろしの練習くらいはしてもらってもいいですよ。求められたらいつでも応じるようには言ってますが、まだ誘われたことは無いみたい」
 
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実際には今デジレにはおちんちんが無いので、そういうことをしようにもできない。もっともそもそもデジレが性行為を理解しているかどうかもやや怪しい。
 
「でもデジレ様はたぶん自分の友だち的にティアラ様を見ていますよ。欲情したりはしないかも」
 
「まあそれはそれで。ティアラは自分の立場は分かっています。どんなに好きになっても妻にはなれない身分。ティアラはデジレ様がどこぞの姫君と婚姻なさったら、その姫君のサポートもして結びつきの見届けなどもする覚悟でいます」
 
「まあ王族に身近で仕えるものの辛さですね」
 

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ある日ティアラが葦の精と話をした。
 
「こないだから気になっていたんですけど、デジレ様、まだ声変わりが来ませんよね」
とティアラが言う。
 
「ああ、それはおちんちんを預かっているから、来ようにも来ないのです」
と葦の精。
 
「あら」
「13歳の誕生日の日におちんちんを戻しますので、そのあと男性としての発達は始まると思います。今はデジレ姫は中性なんですよ」
 
「へー。女の形になってますけど、おっぱいが膨らんだりはしないんでしょ?」
「しません、しません。卵巣や子袋などもデジレ様にはありませんし」
 
「だったら問題無いですね」
とティアラは言う。
 
「デジレ様の胸が膨らんできたりしたら、王様もお妃様も仰天するでしょうね」
「でもデジレ様、すごく優しい性格だから、本当の姫君になってしまっても悪くないかも」
「ああ、それはチラッと何度か思いました。デジレ様からおちんちんをお預かりして、すぐにも返してと言われると思っていたのに、無いままでずっと普通にお過ごしのようですし」
 
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「デジレ様とルイーズ王女殿下、殿下のお気に入りの侍女セシルさんと私の4人で一緒にお風呂に入ったことあるんですよ」
「あらあら」
「ルイーズ姫には『こうなっているのは誰にも内緒ね』とおっしゃってました」
 
「ルイーズ様は口が硬いから大丈夫ですよ」
「あの方、母君のステラ王女よりしっかりしておられますね」
 

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誰の仕業か分からないものの、相変わらずデジレ姫の近くに時々思い出したように糸車が出現していたが、みな侍女や兵士たちが片付けてしまう。
 
「カラボス様のしわざですよね?」
とその日も糸車を1個庭で焼却したフランソワ軍曹が訊く。
 
「だとは思うけど最近は何だかおざなりだなあ。壊れた糸車とかが多いし、今日のやつはそもそも紡錘が紛失していて無害だったし」
 
などとバラの精は言っていた。
 
「そうだ、フランソワさん、お酒好きだよね?」
「大好きです」
「プロイセンに住んでる友だちのバラの精がバラのリキュール作ってこちらにもお裾分けしてくれたんだよ。飲むなら今度持ってくるよ」
「バラの精が作ったバラのリキュールなら本物ですね!ください」
「じゃ今度お城に来る時持ってくるね」
「はい。私は非番の日もお城に来ますから」
「ああ、ティアラやコロナに便利に使われているね」
 
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コロナもデジレ付きの侍女でデジレお気に入りの侍女のひとりである。ティアラがお休みの時は「東宮侍女長代行」を名乗っているが、そもそも「東宮侍女長」なる職名は存在しない。
 

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それで無事に1年も過ぎ8月14日になる。いよいよ明日はデジレの13歳の誕生日である。城では一緒に成人式もすることになっていた。本来は男子の成人式は15歳なのだが、女子の成人式は13歳である。しかしデジレはここまで表向きは王女ということになっていたので、13歳で成人式をしなかったら国民から奇異に思われる。また王太子の場合は少し早めに成人式をしても構わないことになっていた。
 
成人式で初めてデジレは男子の礼服に身を包んで国民の前に姿を現し、これまでは事情があって女装していたことを公表することになっていた。これはカラボスの呪いを避けるため、明日までは公表できないのである。
 

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その日はハンス殿下とステラ王女が部屋にやってきて
 
「私たちからのプレゼントです」
と言ってデジレが明日の誕生日のお祝い兼成人式で着る服と腰に下げる剣を持って来てくれた。
 
「わあ、ズボンだ」
とデジレは声を挙げる。
 
「殿下はこれを初めて穿くことになりますな」
と大公が言う。
 
「ちょっと穿いてみる?」
とステラ王女が言うものの
 
「明日穿く!」
と言ってとりあえず断っておく。
 
今着替えると、おちんちんが無くなっているお股を見られて困る、とデジレ姫は思った。
 
剣の方はふつうに兵士たちが使っている剣より随分長い。バスタードと呼ばれる長剣だとハンス殿下は説明した。鞘から抜いて見せてくれたが剣というよりナイフの大きいのという感じである。平らな形状で刃が鋭い。
 
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「この剣は突くこともできるが斬るのにも適しているし、そしてこうやって両手で持つんだよ。普通のラピエル(後のレイピア)は相手の鎧の隙間を狙って突くことが多いんだけどね」
 
などと言って何度か高く構えて振り下ろしてみせてくれた。
 

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「でも私、13歳になるまでの間に糸車の針に刺されて死ぬと予言されていたんでしょ?」
とデジレ姫が言う。
 
「ええ。でも国王が全国の糸車を5つの町に集約させて絶対にそこから出さないようにさせましたからね。でもたまにひょいとミュゼ城の周辺で見つかることがあるんですよね〜」
とステラが言う。
 
「私見たことないから、実物を見てもそれが糸車って分からないかも」
 
「あなたに付いている誰かが認識して排除するから大丈夫よ」
 
「そういえば、こないだうちの部下が宮殿の北塔で糸車の音を聞いたらしいよ」
と大公が言う。
 
「あら」
「すぐに兵士たちを動員して調査させたが、北塔のどの部屋からも糸車らしきものは見つからなかった」
 
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「でもそれ気になるわね」
「うん。お城のどこかに隠されているかも知れないと思うとヒヤヒヤだよ」
と大公は言っていた。
 

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■眠れる森の美人(3)

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