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目次]
そしてモルジアナは薬を飲んだ翌日は、自室でぐっすり眠っていたのですが、夕方起きてから、お股を見てみると自分のお股の“割れ目”のいちばん奥の所に穴ができていることに気付きました。これは膣だ!と思いました。
薬の説明書では「1錠飲んだら睾丸が消え膣が生じる」ということでしたが、自分の場合、元々睾丸は無いので、単に膣ができたのでしょう。しかし1錠飲んだだけで、こんなに苦しい思いをするとは思いませんでした。
薬の説明書には最低1日空けろと書いてありましたが、もっと間を空けることにします。
モルジアナはだいたい28日おきに女の小屋に入っていました。それで次に女の小屋に入る日(5月某日)にこの薬を飲むことにしたのです。
女の小屋に行く前日夜に2回目の薬を飲みました。そして翌朝はすごく辛かったのですが、頑張って女の小屋まで行きました。女の小屋では、モルジアナが辛そうにしているので、年上の女性が
「大丈夫?」
と声を掛けてくれましたが、モルジアナは無理に笑顔を作って
「今回少し重いみたい。寝てます」
と言ってひたすら寝ていました。
それでも心配した年上の女性が
「ちょっと見せなさい」
と言ってモルジアナのお股を見ます。するとこの時は既に陰唇ができていたのでモルジアナはもう外見上は完全に女になっており、見てくれた人も
「炎症とかは起きてないみたいね」
などと言って、不審がられることはありませんでした。
モルジアナは4歳で手術された時に、傷跡が偶然にもまるで女の割れ目のようになっていました。それは遠目で見られれば分かりませんが、近づいて見ると、女の形とは違うことが分かるので、あまり近くで見られないよう気をつけていました。しかしこの日、とうとう割れ目が本物になったので、人に見られても問題無くなったのです。
そしてモルジアナは6月の“女の日”前日に3錠目の薬を飲みました。一晩寝て翌日また頑張って女の小屋に行きましたが、今回もモルジアナがひたすら寝てるのでみんな心配したものの
「疲れが溜まっているからかも」
と言うと
「あんたはそうかもね!」
と言ってくれました。
モルジアナが家政に店の運営にフル回転なのはみんな知っています。
「あんた、家の仕事は他の女奴隷に任せた方がいい」
「それがいいかもという気もしてきている」
「だいたい、あんた実際はムハマドの奥さんなんだろ?さっさと結婚式あげた方がいいと思うよ。そうすれば家事からは解放されるからさ。それにちゃんと結婚してないのに妊娠とかしたら、処分くらうよ」
「私まだムハマドとは“して”ません。寝室も別ですよ」
「ああ、あの子が成人するまでは控えてるのね」
「それはあるんですけどね」
「でも男の子はきっと我慢できなくなって、いつか“やっちゃう”よ」
「やはりそうなる前に結婚すべきかなあ」
「絶対それがいい。ムハマドは少しくらい年齢足りなくても成人させてしまえばいいんだよ」
3錠目を飲んだ後、モルジアナは身体が下腹部の付近から“暖かく”なったのを感じていました。私の身体の中に卵巣ができたんだというのを確信します。
「これでその内“本当の”月の者が来るかも」
とモルジアナは思いました。
7月11日(月)。
カシムの一周忌の法事が行われました。カシムが死んだのは世間的には7月19日ということになっているのですが、カシムがラバを連れて岩山の財宝を取りに行ったのは7月11日で、その日が本当の命日と思われました。それで
「7月19日は仕事などの都合がつかないので」
と称して、それより少し早い7月11日に一周忌法要をおこないました。
そして7月21日(木)には、ムハマドの成人式をおこないました。彼はまだ13歳ではありますが、実の父が亡くなっていて早く独り立ちしたいということでこの成人は認めてもらいました。
その上でモルジアナとムハマドは、結婚したいという旨をメジディ(モスク)に届け出ました。
一般に、メジディでは結婚の申請があれば、2人が結婚可能かを審査しますが、少なくとも男がムスリムであれば、後は各々が独身(寡婦・寡夫を含む)であることが確かであればすぐ許可されます。ところがモルジアナとムハマドの場合、ムハマドがムスリムなのは確かなので、モルジアナの宗教については確認されなかったものの(実際女は異教徒でも構わない)、うるさ方が
「この2人、既に結婚していたのでは?」
と言い出し、結局、アリと(バーナから頼まれた)ワシムが証言してあげて、やっと認められました。
モルジアナは処女検査されるかもと言われて「やだー」と思ったものの、その検査は受けなくて済んでホッとしました。
それで
「結婚するだけでも手続きが大変だ」
「まあ仕方ないね」
などと言い合いました。
結婚式は8月7日(土)に行われることが決められました。
当日は、モルジアナはダニヤ・ザハラ・バーナに伴われて、ムハマドはアリおよびワシムに伴われてメジディ(モスク)に行きます。ここで“結び役”の人がふたりに結婚の意思を確認します。それで双方が同意したところで結婚の契約書が作成されます。ムハマドとモルジアナが署名し、ムハマドの親としてアリが署名、モルジアナの親代わりとしてワシムが署名して結婚は成立しました。
(イスラム社会ではわりと女性側の意思確認が厳格で、略奪婚などは困難)
この後、一同は“モルジアナの家”に移動し、ここの庭で祝宴が行われることになります。
この家は、ほぼこの結婚式のためにアリが用意したもので、アリ邸(旧カシム邸)の近くにあります。アリ邸の倍の広さで、庭は3倍広いので、祝宴を開くには便利でした。
実を言うと、結婚式にアリ邸の庭を使うと、その場所はモルジアナが盗賊たちを殺した場所なので、モルジアナが辛いだろうという配慮から、アリがモルジアナの名義でこの家を購入しました(岩山の金貨を使用したが、世間的には彼女の父から受け継いだものということにした)。
でもここには使用人などは居ませんから、アリ邸の奴隷たちがそちらに来て料理を作り、お客さんたちに提供しました。カシムの友人だったワシムの家の女奴隷たちも手伝ってくれました。
祝宴では、最初にモルジアナ邸の屋根の上にワシム(モルジアナの父代わり)が登って、そこからお菓子を入れた袋を撒いたりします(お菓子の中に銀貨が埋め込んであったりする)。有名歌手に来てもらって歌を歌ってもらい、力自慢の男性数人で相撲の試合をしたり、楽隊の演奏など、舞踊や演劇の上演など派手なパフォーマンスがあります。
炊き出しがあり、貧しい人たちに食事の施しがされます。それでモルジアナたちは多くの人々から結婚の祝福をしてもらいました。
その後、ご近所の人たち(ムスリム以外でもどんどん呼んじゃう)、ムハマドの店の取引先の人たち、などを入れて祝宴が行われます。この祝宴は3日3晩続くのですが、その間、新郎新婦は主賓席に居ないといけないので(さすがに交替で休ませてもらう)、この祝宴が終わるまでは初夜はお預け!です。
「結婚するって大変なのね」
「僕もう疲れてきた」
などと言っていたら、ダニヤが
「私とカシムの結婚式なんて、7日7晩続いたから」
などと言います。
「きゃー!」
とモルジアナが悲鳴をあげます。
「今回そこまでしないよね?」
とムハマドが不安そうに言います。
「一応3日3晩で終わる・・・予定だけどね」
「あはは」
実際祝宴は3日3晩(日月火)で終わったので、ムハマドとモルジアナは、祝宴が終わるとこのモルジアナ家の寝室でベッドに潜り込み、眠りました。
あまりにも疲れていて、この日(水曜)はセックスできず!昼近くになってからワルダから
「初夜のお楽しみで疲れたでしょうけど、そろそろ起きましょう」
と言って起こされました。
「初夜はしてない」
「なんでしてないの?ムハマドちゃん、立たなかった?」
「祝宴で疲れ切って2人ともひたすら寝てた」
「あはは。じゃ今夜頑張ってね」
ということで、祝宴の終わった翌日(木曜)の夜に2人はやっと初夜を迎えることができたのでした。
2人はきれいに沐浴してから、寝室に入りました。モルジアナは豪華な服を着ています。実はモルジアナ自身が縫った服です。ムハマドも立派な服を着ています。
ムハマドがそわそわしています。
「してもいいんだよね?」
「私はあなたの妻ですから」
「好きだよ、モルジアナ」
「愛してます、ムハマド」
ムハマドがモルジアナの服を頑張って脱がせます。実は女の服の構造?がよく分かってないので、脱がせるのにかなり苦労していました。それでも何とかモルジアナを裸にすることができました。ムハマドが自分でも服を脱ぎます。
そしてムハマドはモルジアナにキスすると、同じベッドに入ってきました。
「好きだよ」
と言って、抱きしめます。モルジアナは彼を導いて気持ち良くしてあげたのですが・・・・
「あ、しまった」
彼はあまりにも気持ち良すぎて、入れる前に逝ってしまったのです。
「少し休めばまた行けますよ」
「ごめーん」
2度目の挑戦で、やっとモルジアナは彼とひとつになることができました。
この春までは、この子とすることになった時は、うまく誤魔化して逝かせてしまおうと思っていたのに、本当に男女の交わりができるとは思わなかったとモルジアナは思いました。
でも入れられるのって気持ちいい!!
その夜、ふたりは何度も結び付き、心をひとつにすることができました。
モルジアナとムハマドは、モルジアナの家で3日過ごしましたが、その後は、結局アリ邸に戻って暮らしました。結果的には、“モルジアナの家”は結婚式に使われただけですが、この後、別邸的に使われることになります(ずっと後に店を事実上継ぐことになる娘のフィルヤールの家になる)。
なお、ムハマドが成人し、モルジアナと結婚したことから、アリは店長を引退し、ムハマドが正式に店長になりました。モルジアナは女番頭として采配をふるい実際問題としてモルジアナが店のことは指揮していました。
女の小屋で先輩から言われたように、モルジアナは家政からは卒業させてもらい、自分が抜けた戦力補填のため、女奴隷を2人雇い入れました。
その内の1人、まだ7歳のマラークは実は“男の娘”でしたが、モルジアナは
「君は誰が見ても女の子にしか見えないから、うちでは女奴隷として働きなよ」
と言って雇い入れました。彼女(彼?)は最初は女の服を着るのを恥ずかしがっていましたが、すぐに慣れたようでした。ラーニヤたちも彼女が本当は女の子ではないことには、全く気付かなかったようです。
モルジアナはこの子が望むなら、10歳くらいになったら牝精を飲ませちゃおうなどと考えていました。
(マラークという名前は歴史的には女の子の名前に結構使われているが、元々は天使の名前で、天使には本来性別が無いことから、現代では使用は回避される)
モルジアナは岩戸のある山に遠慮無く入れるようにするため、あの山の所有者を調べ、“通常の”山の値段で買い取りました(岩戸の金貨使用!)。そして拠点にするのと、山を買った目的のカモフラージュのため、山の麓に広い敷地の別邸(メルヴのモルジアナ邸の3倍の広さ)を建てました。
そして岩戸の奥の家にあった服をいったんこの麓の家に移し、型紙を作った上で、新たな布を使ってそのコピーを2つずつ作り、コピーの片方を岩戸の奥の家に戻しました。布製品は年数が経てば傷むので、今後も更新していくことにします。実際麓の家に持って来た時に、既に崩壊寸前になっていたものもありました。(“ジュジュ”の力で型紙を作るまでは崩壊を留めておくことができた)
この服の中にはかなり魅力的なデザインのものもあったので、そのデザインの服を作ってお店に出すと随分人気になりました。
モルジアナはムハマドと結婚した2年後に可愛い女の子マナールを産みました。その2年後には男の子アムロ、続いて男の子ザイン、女の子フィルヤールと合計4人の子供を作り、ムハマドは21歳にして息子2人・娘2人の父親となりました。
モルジアナは妊娠中も仕事をしましたし、出産後もすぐに仕事に復帰して周囲を驚かせましたが、実を言うと自分の“影武者”を使っていました。
モルジアナが岩戸の近くで助けた小鳥は実はルフ鳥(朱雀)の幼鳥でした。このルフ鳥(朱雀)は、この後モルジアナを助けて、彼女の仕事の手伝いまでしてくれることになります。モルジアナは彼女にジュジュという名前を付けてあげました。実は出産直後のモルジアナに代わってお店に出ていたのは、このジュジュでした。
ムハマドのお店はますます繁盛して、支店なども作ることになりますが、その繁栄は実は、モルジアナとジュジュの二人三脚によるものだったのです。
アリが「やはり遊んでばかりではダメになる」から仕事をくれというので、モルジアナはメルヴの町に病院を建て、アリをその院長にしました。そこには医師を招き、看護士・看護婦を多数雇いました(男の患者は男の看護士、女の患者は女の看護婦が世話する)。
そしてそこで多くの人の命を救うことになります。モルジアナは腹心の薬剤師に岩山の中の家にあった薬を少しずつ分析させ、幾つかの薬は再生産に成功して病院の患者の治療に大いに役立ちました(原材料の関係で生産困難なものも多かった)。この病院は後にモルジアナの次男ザインが継ぐことになります。
モルジアナはこの病院の運営こそが自分が39人の盗賊を殺した罪滅しかも知れないと思いました。
そして岩山は、モルジアナとムハマドの子孫に密かに受け継がれていくことになります(モルジアナの死後はフィルヤールが管理する)。
モルジアナの子孫は政治的な変動を避けて、トルクメンからシンド、ヒンド、中国へと移動し、岩山の中の財宝もそれに合わせてジュジュの力で何度か移動しました。しかし岩山のことは子孫の中でもごく一部の人(基本的には子供の中で1人だけ)に伝えられていたので、何度か伝承が途切れてしまいます。その場合は、ジュジュが子孫の中で彼女が見込んだ人に伝えるということも行われました。
600年後の中国でモルジアナの遠い子孫に当たる男の娘が100年近く途切れてしまっていた伝承を受け継ぐことになるのですが(ジュジュが気に入った後継者がなかなか見つからなかったため)、それはまた別のお話です。