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■八犬伝(5)

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(C) Eriko Kawaguchi 2021-10-09
 
さて、姨雪世四郎は信乃たち3人に、自分の(事実上の)妻・音音(おとね)が住んでいる荒芽山に行くとよいと言っていたのですが、4人の中で最初に荘助がその荒芽山に向かっていました。
 
荒芽山の麓には、音音(石川ポルカ)と、力二郎・尺八郎の各々の妻である曳手(ひくて)(大仙イリヤ)・単節(ひとよ)(美崎ジョナ)が暮らしていました。曳手と単節は姉妹で、つまり兄弟と姉妹で結婚したのです。
 
1478年7月6日(刑場破りの4日後)、久しぶりに世四郎が戻って来たのですが、音音は彼がずっと敵の領地の住人になっていることに怒っているので、家の中にも入れてくれません。
 
見かねて単節が義父を柴置き小屋で休ませました。世四郎は単節に「これを絶対開けて中を見たりせず家の中の戸棚に置いてくれ」と言って、何やら重い包みを単節に渡しました。単節は何だろうと思いながらも、頑張って運び入れ、戸棚に置きました。
 
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また世四郎は単節に伝言を頼み、音音に、ここに若者が4人来るはずだから、助けてやって欲しいと言いましたので、単節はそれを音音に伝えました。
 
やがて日が落ちますが、仕事に出ている曳手の帰りが遅いので、心配した妹の単節が姉を迎えに出ました。
 
それからしばらくして犬川荘助が「世四郎殿から聞いた」と言って、音音を訪ねてやってきます。音音は荘助がどういう人なのかと外出したふりをして盗み見しています。するとそこに、自分が乳母をしていた子・道節が戻ってきます。道節は大きな包みを土間に置きました。
 

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荘助と道節は円塚山で浜路・村雨丸を巡って争っていたので、顔を合わせると緊張が走ります。
 
しかし道節は言いました。
「お主の守り袋を預かっている」
 
すると荘助も
「私はお主から飛んできた珠を持っている」
と言います。
 
それで道節は荘助に“義”の珠の入った守り袋を返し、荘助も道節に“忠”の珠を返しました。
 
「これが私からお主に飛んで行ったのか?」
「そうだ」
 
「実は、私は生まれて以来左肩に瘤(こぶ)があったのが、あの時に無くなったのだ。もしかしたら、それがここに入っていたのかも知れない」
と道節は言って、左肩を見せます。
 
「痣(あざ)になってる」
「そうなんだ。瘤(こぶ)は無くなったが、代わりに痣(あざ)が残った」
 
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すると荘助は
「これを見てくれ」
と言って、着物の上半身をはだけ、道節に背中を見せます。
 
「お主、背中に痣があるのか」
「お主の肩の痣と形が似ていると思わないか」
「確かに」
 

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それで荘助はこれまでのいきさつを語りました。
 
「ということは私はお前たちの仲間ということか」
「そうだと思う」
「しかし私は父・犬山道策の仇、扇谷定正を倒さなければならない」
「それは里見家の味方をすることと、目的が一致すると思う」
「確かにそうだ」
 
それで道節も他の犬士たちと当面行動を共にしてよいと同意するのです。ふたりは、義兄弟の契りを交わします。
 
荘助は自分たちを助けるために、姨雪世四郎と2人の息子が身を犠牲にしてくれたことも語りますが、それを隠れ聞いていた音音は、それではさっき訪ねてきた世四郎は幽霊だったのだろうかと思います。
 
荘助と道節は他の3犬士も近くまで来ているのではと考え、探しに出かけました。
 
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やがて曳手と単節が戻って来ます。2人の男性の旅人を連れていました。曳手の話ではこういうことでした。
 
城下で何か事件があったらしく(道節が上杉定正を襲撃したから!)、多数の人が出ていたので思うように道を進めず、その内日も暮れてしまうので困ってしまった。するとそこにその男性2人が来てくれて、頑張って道を掻き分けてくれた。おかげで帰宅できたのだと言います。また2人の旅人はどうも怪我しているようだということでした。
 
音音は道節たちが他の犬士を連れて戻って来ると、客人がいるのは困ると思うのですが、怪我している旅人をむげに放り出す訳にもいきません。それで2人を休ませてあげます。
 
ところで日が暮れた後、真っ暗な中で連れてきたので気付かなかったのですが、灯りのある室内に来ると、2人が、力二郎と尺八郎なのでびっくりします。
 
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「まあ、あんたたちったら、自分たちの夫に気付かないなんて」
と音音は呆れました。
 
曳手と単節も驚いています。
 
もっとも力二郎・尺八郎は曳手・単節と結婚した翌日に合戦に出て行き、その後、1度も帰宅していなかったので、曳手・単節が自分たちの夫を、真っ暗闇の中では認識できなかったのも、そう責められないかも知れないと音音は思いました。
 
「あんたたち、久しぶりだからさ、少し“休み”なよ」
と音音は言いました。曳手と単節が少し恥ずかしそうな顔をしましたが、結局、力二郎と曳手、尺八郎と単節は各々別の部屋に下がりました。
 
音音は自分も少し仮眠しました。
 

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二時(にとき:4時間)ほど経った真夜中、5人は囲炉裏(いろり)そばに集まりました。
 
力二郎・尺八郎は音音に、自分達と父・世四郎のここしばらくの活動状況のことを語りました。自分たちが敵地に住んでいたのは諜報活動のためであったことを話したので、それで音音の世四郎に対する誤解も解けたのです。
 
ふたりは、世四郎が道節の仲間となる者を集めていたこと、そして信乃たちを見つけ、彼らなら道節と一緒に大願を果たしてくれるだろう思ったことを語りました。だから音音にも、信乃たちの力になってあげて欲しいと言いました。
 
力二郎と尺八郎の話はかなり長く、明け方近くまで掛かったのですが、彼らの話の中で、世四郎が戸田川の戦闘で亡くなったことを聞いた単節(美崎ジョナ)は驚きます。
 
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「だって、お義父様は昨日戻ってこられたではないですか」
「きっとあれは幽霊だったんだよ」
と音音。
 
音音は昨日盗み聞いた荘助の話で、世四郎と力二郎と尺八郎が信乃たちの盾になってくれたことを聞いていたので、その時に世四郎は死んだものの、力二郎と尺八郎は九死に一生を得たのだろうと思ったのです。
 

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「そんな・・・・」
と言ってから、単節は
「だったらお義父様が持って来た包みは何だっんだろう」
と言って、戸棚に置いている包みを取ろうとします。
 
するとなぜか力二郎と尺八郎(水谷姉妹)は
「だめだ。開けてはいけない」
と言うのです。
 
「あんたら何焦ってるの?」
と言って音音はその包みを開けてしまいます。
 
すると突然、力二郎と尺八郎の姿は陽炎(かげろう)のように揺らいだかと思うと、掻き消すように消えてしまいました。
 
「え!?」
と音音も曳手・単節も声に出して驚くのですが、音音が開いた包みの中にあったのは、見たこともない男の首2つでした。
 

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そこに
 
「おーい。小屋で寝るのはいいけど、腹が減ったから飯でも食わせてよ」
と言って、世四郎が家の中に入ってくるので、仰天します。
 
音音たちは、今力二郎と尺八郎から世四郎が死んだと聞かされたばかりです。
 
音音が薙刀を取り出して
「この妖怪め、退散しろ!」
などと言うので、世四郎は
 
「ちょっと、妖怪はないだろう?そりゃ不義理してたのは悪いけどさ」
と言います。
 
そこで、さっきから出るに出られないまま話を聞いていた道節、そして荘助・信乃・小文吾・現八が出て来ます(深夜に戻って来ていた)。
 
「その首は俺が討ち取った、越杉遠安と竃門五行の首だ」
と道節は言います。
 
(越杉遠安は主君・練馬倍盛の首を取った者で、竃門五行は父・犬山道策の首を取った者で、各々偶然にも自分の仇であった。ただ道節はそもそもの張本人である扇谷定正を狙っている)
 
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「ここにそれがあるということはもしかして」
と言って、自分が土間に置いた包みを開けます。
 
そこには、力二郎と尺八郎の首があったのでした。
 
曳手と単節が気絶しました。
 

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2人を介抱して息を吹き返させ、彼女たちには少しお酒を飲ませてから、世四郎が説明しました。
 
戸田川での戦いで、息子たちが戦死した。自分もいづれ討たれるだろうと思ったが物凄い雷雨があり、川が増水して流される者もあり、役人たちは撤退した。自分も流されたが、泳ぎには自信があったし、何とか岸に泳ぎ着いた。息子たちの首が刑場に晒されているのを見て、闇に紛れて奪い取り、持って帰ったきたのだと。
 
つまり幽霊は世四郎ではなく、夜通し音音たちに話をしていた力二郎と尺八郎のほうだったのです(*20)
 

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(*20) 現代ではこれと似た怪談がよく知られているが、ひょっとすると元ネタは八犬伝だったのかも知れない。
 
カップル2組(仮にA君とa子、B君とb子とする)で一緒にキャンプに行った。A君とB君が出かけている間、a子とb子はバンガローで留守番をしていた。
 
そこにA君が青い顔をして帰って来る。
「Bが崖から落ちて死んだ」
と言うので、b子がショックを受け泣き出す。
 
ところがそこにノックがある。
「どなたですか?」
「俺だ。Bだ。Aの奴が崖から落ちて死んだ。今救助隊の人と一緒に遺体を回収してきた所だ」
 
この時、バンガローの中に居たAが
「開けるな。きっと幽霊だ!」
と叫ぶ。
 
しかしb子はドアを開けた。
 
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するとそこには怪我したふうのB君、そして救助隊の人たちが持つ担架に乗せられたA君の遺体があった。
 
そして振り向くと、バンガローの中にいたはずのA君の姿は無かった。
 
(b子は恐らく“シュレディンガーの箱”を開けてB君が生きている世界を選択したのだと思う)
 

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様々な誤解も解けたことから、道節や曳手・単節らに勧められ、世四郎と音音はあらためて結婚式を挙げることにしました。
 
またここで道節は村雨丸を信乃に返しました。
 
「もし良かったら、犬飼(現八)様と、しの様で仲人(なこうど)をして頂けません?」
などと曳手が言います。
 
「仲人は夫婦でするものでは?」
「あれ?済みません。しの様って犬飼様の奥方ではなかったんでしたっけ?」
「違う違う。結婚などしていない(*21)」
と現八(白鳥リズム)が焦って言います。
 
「失礼しました!」
と曳手。
 
「だいたい私は男だし」
と信乃(アクア)。
 
「またご冗談を。女侍姿は、りりしくていらっしゃるけど、さすがに性別を間違えることはないですよ。それに“しの”って可愛い名前だし」
と単節。
 
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信乃は困ったような顔をしたものの、小文吾は笑っていました。道節はまだ状況を把握していません!
 
結局、曳手・単節の姉妹が、隣に亡夫の力二郎と尺八郎の首を置き、それで一緒に仲人を務めて、世四郎と音音は三三九度をし、道節が嘆仏偈を唱えました。
 

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(*21)例によって、ネットでは、リズムとアクアは結婚可能かという問題について議論が行われた!
 
大半の意見は結婚可能というものである。
 
「アクアは今年紅白に紅組から出ることからも分かるように間違い無く女」
「リズムも今年紅組から出るけど、性別の変更は20歳までできないから多分戸籍上はまだ男だと思う」
「だったら今なら結婚可能か?」
「アクアはもう戸籍は変更したの?」
 
「アクアが SEX:F と書かれたパスポートを持ってたという話は複数の証言がある」
「じゃもう変更したんだ?」
 
「法的にも性別変更が完了して女になったから、紅白も紅組から出るのかもね」
 

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7月7日朝、役人3人が道節たちを捕らえようと家の中に飛び込んできましたが、世四郎・音音・道節に倒されました。
 
役人に目を付けられたことから、一同はどこかに退避した方がいいと話し合います。
 
しかしどこに行くかを話し合っている最中に、本格的な捕り方が大勢やってきます。巨田助友(坂出モナ *22)自身が軍勢を率いています。それて折角集まった犬士たちはまた逃走することになってしまったのでした。
 
(*22)巨田は“おおた”と読む。実は太田道灌(物語中では巨田道寛)の息子という設定である。太田道灌が定正に殺されたのは1486年でこの離散があった1478年の8年後。ここでは巨田助友は忍者か妖術使いという感じで、台本を読んだモナが面白ーいと言って喜んで演じていた。むろんこのシーンはボディダブルを2人使用して撮影し、編集したものである(一部は合成)。モナ(154cm)のボディダブルを務めたのは 153-154cmの宮地ライカと知多めぐみである。
 
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家の中で世四郎と音音が闘っているので、信乃たちは軍勢の後方に回って攪乱しようとしました。
 
ところが軍勢を率いているはずの巨田助友(坂出モナ)が目の前に現れます。ふと後を振り向くと、後にも巨田助友が居ます。
 
「どうなってんだ?」
と混乱した現八が言っていると、第3の巨田助友が現れました。軍勢を率いている助友まで入れると4人です。
 
「何かの妖術だ。いったん引こう」
と現八が声を掛け、犬士たちはバラバラに逃げ出しました。
 
(荒芽山の離散)
 

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