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■私の二重生活(2)

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私はその後で窓を開けて換気をできる状態にした上で、爪をきれいな形に整え、ピンクのネイルを塗った。本当は少し爪を伸ばしたいのだが、さすがにそれは会社で叱られる。ギター弾くからといって右手の爪を伸ばしたりしたらだめかなぁなどと思ってみるものの、やはり無理だよなあと思い、はぁとため息をつく。
 
取り敢えず今日のレポートを作って送っておかなければならないので、窓を閉め空調を入れてから、女装したまま部屋のテーブルに座り、パソコンを取り出し、Excelで作られた報告書のフォームを呼び出して必要事項を記入していく。経費なども記入しておく。
 
このままだと足が冷えるので、膝掛けを出して掛けておく。普通の女性だとかえってズボンを穿いてしまうのかも知れないが、私は少しでも長い時間スカートを穿いていたかった。
 
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作業が終わったのはもう3時近くである。会社から貸与されている通信端末(AU Wifi-Walker)からネットにつないで送信する。こういう時に、絶対にホテルのLANなどは使ってはいけないことが内規で定められている。日本国内のホテルは多くのところがしっかりしているのではあるが、たまにセキュリティの甘い所があるので、危険を回避するため禁止しているのである。
 
報告書の送信が終わったので、せっかくこういう格好をしているし、お出かけする。女性雑誌の付録でゲットした可愛いトートにお財布とハンカチ・ティッシュだけ入れ、部屋の鍵を持っていることを確認して外に出る。
 
エレベータで1階まで降りて、フロントの前をドキドキして通過する。
 
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「行ってらっしゃいませ」
というフロントの声に会釈して外に出る。右手50mほど先にコンビニの看板が見えるので、そこまで歩いて行く。でもスカートで歩く感覚ってすっごくいい!
 
中学生の頃まではスカートを穿くだけで興奮してしまっていたよなあと昔のことを思い出していた。中に入ってまずはトイレに入る。男女が左右に分かれているタイプだ。これっていいよなあ。男女共用だとあまり面白くない。私はもちろん赤いマークの付いた方のドアを開け便器に座った。さっき一度出したばかりなのでほとんど出ないけど、無理してちょっとだけ出してトイレットペーパーで拭く。座ってして、した後を拭く、というだけでも結構女の子気分になれる。
 
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トイレを出た後、女性雑誌のコーナーを見る。あ、nonnoの新しい号が出てるじゃん、というのでカゴに入れる。ついでにsweetも少し立ち読みする。
 
水分が欲しいなと思ったので、ウーロン茶を買う。それから衛生用品のコーナーに行き、ちょっとドキドキしながらナプキンの小さいパックを買う。生理があるわけでもないけど、こういうのを買うことで自分の「女としてのアイデンティティ」を追認できる。更に、着替えは充分持って来ているので必要ないのだけど女性用ショーツを1枚、パンティ・ストッキングも1足買う。女性用のハンカチも1個買っちゃう。更にお化粧品のコーナーで、少し迷ったあげくパープル系のアイカラーを買った。今持っているのがブルー系とグリーン系なのでパープルも一度試してみようかなと思った。
 
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会計をする。レジの人が20代女性の客層ボタンを押すのを見た。この「コンビニチェック」って、けっこう自分の精神を左右するよなと思う。疲れが溜まっているような時は、完璧に女装しているのに男の方を押されてしまうこともある。それをされると結構落ち込む。やはり女をするには体調を整えることも大事だよなと日々思う。
 

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ホテルに戻ってから、ショーツを取り出して眺めていると、それだけで気分が高揚する思いだ。最初、高校を出て大学生になってすぐの頃、ショーツ1枚買うのにも、物凄く勇気が必要だったよな、というのを思い出していた。取り敢えず今は買うのにそんなに勇気は必要無くなった。女子トイレに入るのもけっこう平気になったしな。
 
ナプキンは生理用品入れにも常備しているのだけど、せっかく買ったので1枚取り出してショーツにセットした。これを付けているだけでもけっこう女の気分が味わえる。また少しHな気分になったので、女装したままベッドに入りスカートをめくってショーツを下げて、あそこに指を当て、ぐりぐりと回転する。さっき逝ってからあまり時間が経ってないのでさすがに逝けない。
 
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でもそれをしている内にいつの間にか眠ってしまっていた。
 

朝目が覚める。もう9時だ!
 
お化粧の乱れを整えてからせっかくなので昨夜買ったストッキングを穿いて、1階のロビーに降りて行った。朝食の無料サービスをしているので、ロールパン1個とサラダ、オレンジジュースを取ってテーブルに座り、のんびりとスマホでいつもやっているゲームサイトにアクセスして、軽くプレイしながら朝ご飯を食べた。
 
朝食のサービスは10時までなので、どうもチェックアウト前に食べて行く人が多いようである。荷物を持ったまま入って来て座る人たちが結構居る。その内混んできたので、引き上げようかなと思っていた時、高校生くらいの女の子がやってきて
 
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「すみません、ここ空いてますか?」
などと訊く。
 
「空いてますよ」
と私が答えると、彼女は座ってそこで御飯を食べ始めた。
 
私はスマホをいじりながらオレンジジュースの残りを飲む。女の子としては男性が座っているテーブルでの相席より、女性が座っているテーブルの相席の方が抵抗無いよなあと思い、私は一応女に分類されているみたいだなというのをまた追認される思いだった。
 

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朝食後、ロビーのトイレに入る。もちろん女子トイレの方に入るが列ができていたので最後尾に並んだ。
 
思えば自分が女子トイレを使うようになったのは中学生頃からだけど、当時は恥ずかしくて列に並んでまで使うことはできなかった。列に堂々と並べるようになったのは20歳前後だったかな・・・・。
 
やがて個室が空いたので中に入って、便器をペーパーで拭いた後で座る。おしっこをしてから、またあそこを拭いてショーツとストッキングをあげスカートをきちんと直す。
 
これもまだ慣れてない頃はトイレに入った後、スカートの後ろが乱れていて、通りがかりの女性に注意されて、ギャッと思ったことなどもあった。今はちゃんと裾が乱れていないか確認するところまでが一連の動作になっている。
 
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電車に乗って自宅アパートに戻る。
 
「荷物預かってます」
という大家さんのメモが入っているので、ふっとため息をつき、お化粧をいったん落として、スカートもズボンに穿き替えた上で取りに行く。ただし顔の化粧は落としたもののマニキュアはそのままである。
 
「すみませーん。お手数おかけします」
「いえいえ」
と初老の大家さんの奥さんは笑顔で荷物を私に渡してくれた。
 
スカートは穿いていないものの、バストは隠していないし、荷物の宛名は《八雲礼江》様になっている。自分の生態って、この奥さんにはバレてるよなあなどと思いながらも、荷物を持ち帰った。
 
荷物はユーキャンの通信講座のメイクレッスンである。そもそもこんなものを男性が受講するわけないし、その時点で奥さんは何か思ってるかな、などとも思うが、女性向けの通信講座を受講することで、自分のアイデンティティを確認するような思いだ。
 
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いっそ会社とか現場にも女の格好で出て行ったらダメかなあ、などとも思うのだが、速攻でクビにされそうな気がする。でも最近、アーティストのツアーに同行して旅をする時は、男物の服は最小限しか持ち歩かないようになった。下着ももう女物しか使っていない。
 

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私が自分の性別に違和感を感じたのはもう物心ついた頃からだったと思う。自分が幼い頃、どんな子だったかについては実は記憶が曖昧だ。父が転勤族だったので、あまり継続して付き合った友人も無かった。それゆえに多くの友人たちは私のことをふつうの男の子だと思っていたと思う。
 
しかし小学1年生の頃、仲の良かった男の子とのことを
「お前たち結婚するの?」
とからかわれた記憶があるので、その当時の友人たちは多分私の女性指向を認識していたのだろう。
 
幼い頃、スカートを穿くようにして、バスタオルを腰に巻き付けてみたり、また女の子のパンティを穿くように、ブリーフを後ろ前に穿いたりしていた。女の子のおしっこの仕方ってどうなんだろうと、和式のトイレに後ろ向きにしゃがんでおしっこしてみたりもしていた。
 
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でもあの頃は女の子の身体って私には謎だった。
 

いつしか私はひとりで留守番している時に、勝手に母の服を身につけてみたりするようになっていた。それでみんなでお出かけする、などという時に、調子が悪いとかいって、よくひとりだけ残るようにしていた。
 
母のスカートは大きすぎて、そのままだとずれ落ちてしまうので、洗濯ばさみなどで留めて落ちないようにしていた。最初はスカートだけだったが、その内パンティを穿いてみたら、おちんちんを出す穴の無いパンティに男性器の形が盛り上がって見えるのになんだか凄くドキドキした。この盛り上がりが無ければいいのに、などと思って悲しくなった。
 
ブラジャーも付けてみたが母のブラジャーは巨大なのでぶかぶかであった。
 
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よくおちんちんを足の間にはさんで「おちんちんの無いお股」を疑似体験してみた。また胸の所にテニスボールを1個ずつ入れて、まるでおっぱいがあるかのようにしたりするのが好きだった。
 
小学4年生の時、テニスボールで《豊胸》した自分を鏡に映して、その自画像を描いてみた。髪は短いのだけど、絵の中では長い髪に改変した。その絵を夏休みの宿題として提出したら、銀賞をもらってしまった。先生は姉か誰かを描いたものと思ったようだが、実は自画像だった。
 

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小学5年生の時に思い立って、パンツの前開きを使用しないようになった。おしっこをする時は、ズボンのファスナーは仕方ないから使うものの、おちんちんをパンツの上から出すようにして、前開きは存在しないものと思うようにしたのである。
 
初めて自分で女物のパンツを買ったのは小学6年の夏だった。スーパーのワゴンに「ショーツ100円」と書かれてたくさん置いてあるのを見て欲しい!と思ったものの、なかなかそのワゴンの傍まで寄って手に取る勇気が無くて、初日は撃沈。2日目も近くまでは寄ったり、偶然を装って傍を通過するものの、なかなか手に取るところまではいかない。3日目になってやっと手に取ることができたが、なんだか派手なおばちゃんっぽいデザインのばかりで戸惑う。
 
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今になって考えたら売れ残りを投げ売りしているものなので、変なデザインのものばかりで当然なのである。
 
それでも私は物凄く勇気を出してLサイズのショーツを2枚手に取った。それでレジの所に行くが、レジのお姉さんに何か言われないだろうかとドキドキした。お姉さんは無表情で精算をしてくれた。
 

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それは初めて自分のものとなった女物の服で、私は天にも昇る思いだったが、それを親に見付からないように隠す必要がある。あれこれ考えたあげく私は、部屋の棚の上に方にある分厚い辞書の箱の中に隠した。辞書本体は実は机の上にいつも置いている。
 
そして夜寝る時にそこからショーツを出して穿いたまま寝ると、女の子になった気分になって、私はつい「おいた」をしてしまっていた。そしておいたをした後は激しい罪悪感にさいなまれる。女の子の服なんか持っているのって、自分は悪いことをしているのではないかと、当時は思っていた。
 
それでしばらく自分に「女の子禁止」を課するのだけど、2ヶ月もすると我慢できなくなって、またそのショーツを穿いてしまう。またひとりで留守番をする機会があったら、やはり母のスカートを穿いてみたり、更にはお化粧をしたりしてみていた。
 
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