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■夏の日の想い出・2年生の秋(11)
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(C)Eriko Kawaguchi 2011-09-07/改訂 2012-11-11
私が性転換した後で、初めて政子とセックスしたのは、誕生日を目前にした10月3日の月曜日であった。月曜日は仕事がオフの日なので、私は授業が終わった後、政子と一緒に渋谷に出て食事をしながらおしゃべりを楽しみ、またあちこちのお店をのぞいたりした後、一緒に私の家に戻った。
シャワーを浴びてから(私の家には政子の服もかなり置いてある)、お茶を飲みながら12時頃まであれこれ話していて、さあそろそろ寝ようということになり、いつものように同じベッド(ダブルなので充分な広さがある)で並んで寝ていた時、しばしば政子がやる『いたづら』を仕掛けられた。
普段なら「もう。やめてよね」などと言ったりして、ブレーキを掛けるのだが、その晩は少し疲れが溜まっていたこともあり、私は停める気力がなくて政子にされるままにしていたら、なんだか気持ちよくなってきてしまった。
寝ていて政子にいたづらされるのは昔からだったし、それまではそういう所まで行くことは無かったのだが、私は前日の夜に青葉の遠隔ヒーリングを受けたばかりで、かなり性器の付近が活性化していた感じであった。それで政子のいたづらに反応してしまったのだろう。
「冬、凄く濡れてる」
「だって政子が気持ち良くするんだもん」
「実は私も今けっこう濡れてるんだけどね」
「濡れても女同士だから、何もできないね」と私は言ったのだが、政子は「あら、冬はレスビアンというのを知らないの?」と言う。
「いや、それは知ってるけど・・・・あれってその、あれの形をした道具とか使うんだっけ?」
「うーん。ああいう道具使うのは、一部の人だけだと思うよ。普通はそんなの使わない」
「使わずにどうやってやるの?」
「一応知識としては知ってる。ね。少し試してみていい?」
「試すって何を?」
「だから、レスビアン・セックス」
そういって、政子は私にセックスを仕掛けて来た。
静かに熱い時が過ぎていった。それは今まで経験したことのないような、物凄い快感であった。男の子だった頃にも、こんな快感は経験したことが無かった。男の子だった頃にひとりでしたりしていた時の快感は、風船が膨らんでいってある所まで行ったら割れてしまう感じだったのが、女の子同士でやっていると、風船が膨らんだまま、昂揚した状態がずっと続いていって、脳内が陶酔物質で満たされたままの状態がひたすら継続する感じだった。頭がおかしくなりそう、というより、もうおかしくなってしまっている感じだ。
「あのね、マーサ」
「うん」
「私、凄く気持ち良かった。こんな気持ちいいの初めて」
「私も。ほんとに気持ち良かった。やみつきになりそう」
でもその日は、やはり今日のセックスはハプニングということで、こういうことをした事は忘れようね、などという話をしたのである。まさか翌週のEliseたちとの告白大会で、あっさりバラされるとは思いもよらなかったのであるが。
そして2回目がその日だった。
「分かった。正直に言う。私、マーサのことが好きだから」
「私も冬のこと、好きだよ」
それは自分達は友達、と過剰なまでに言い続けていた自分達の言葉を初めて否定して、ずっとお互いに思っていたことを、とうとう口に出してしまった瞬間であった。
私達はそのまま5分くらい何も言わずに、お互いの顔を見つめ合っていた。私はそのうち、どうしても政子にキスをせずにはいられない気分になった。
そっと唇を近づける。政子は目をつぶらずにじっと私を見つめている。私も目をつぶらない。そしてふたりの唇は接触した。
瞬間、お互いの舌を絡め合う。そしてそのままベッドに一緒に横になり、お互いの身体をむさぼりあうように愛撫した。そしてそのまま自然な流れで私達は結びついた。行為はたぶん2-3時間続いたろうか。
男の子だと出してしまうとそこで終わりなのだろうけど、女の子同士なので終わりというものがない感じだった。その日はいわゆる「松葉」の姿勢を多用した。この姿勢自体が脳には刺激的なのだけど、さすがに疲れてくると体勢を維持できなくなってきた。もう限界と思って身体を離し、ふつうの添い寝状態になって、優しく政子の身体を撫でながら、半分まどろみつつ会話をする。
「こないだのセックスはハプニングだったけどさ」
「うん」
「今日のは、本物だよね」
「私、今ずっとずっとマーサと一緒にいたい気分」
「私も、ずっとずっと、冬と一緒にいたい気分」
「私達、このまま恋人になっちゃうのかなあ」
「その質問は間違ってるよ、冬」
「え?」
「私達、これまでもずっと恋人だったし、これからも恋人なんだと思う」
「そっか。そう考えた方がすっきりする」
「あ。でもそれなら、ほんと私、性別変更しないほうが良かった?」
「そんなことない。だって私が好きなのは、女の子の冬だもん。男の子の冬には私興味無いよ」
「私も自分が女の子だからこそ、マーサのことが好きだって気がする」
「ところでさ、冬の心の中で私達の愛と、男の子との恋って両立する?」
「それが・・・さっきまでは両立しないから、マーサのこと好きな以上、正望とは結婚できないと思ってたんだけど・・・・、今マーサと気持ちを確かめ合っちゃったら、なんか、困ったことに両立する気がするの」
「実は私も、両立する気がするの。冬とこういうことしていても、直哉のことは直哉のことで、私、彼のことが好きなのよね」
「じゃ、やはり私達さ、公式見解としては、お友達です、ということにしておけば、いいんじゃないの?」
「そうだよね。別に恋人宣言する必要ないよね」
「お互いの心の中で思っていればいいだけだもん」
「それで、各々男の子の恋人作ってさ」
「それぞれ別の男の人と結婚しちゃって」
「うん。でも私達は愛し合ってる。さすがにお互い結婚したら、なかなかセックスできなくなるかも知れないけど」
「セックスしてもしなくても愛は変わらないと思う」
「うん、私も同感。でも結婚しても年に1度くらいはセックスしたいね」
「みっちゃんには、どう言うの?」
「ありのまま言えばいいと思うな。でも男の子の恋人を作るのはカムフラージュじゃなくて、それはそれで本気の恋なんだというのもちゃんと言う」
「理解してくれるかなあ」
「みっちゃんなら分かってくれる気がする」
「言ってみるしかないね。私、みっちゃんに嘘はつきたくないし」
「私も」
「で、具体的な問題として、冬、正望君とのことはどうする?結婚する?」
「なんか気持ちの整理ができた気がする。私、ちゃんと正望に自分の気持ち、言いに行ってくる」
「結婚してもいいって?」
「ううん。結婚しない。私、今は、音楽に集中したいの。だから結婚はできないし、婚約もできない。7年後には分からないけど」
「恋人として付き合うだけならいいんだ」
「うん。彼がセックスしたいといったらセックスしてもいい。でも結婚はできない」
「でもそれって、まるで遊びの恋だと言ってるみたい」
「そう思われちゃったら仕方ない。でも、私、正望のこと、遊びじゃなくて本気で好き」
「正望君のこと話している時の冬の表情って、本物という気がする」
「ありがとう。正直な所を話して、理解してもらえるように頑張るしかないと思う」
「うん。頑張ってね。って。冬ったら私に相談とか言ってて、結局自分で解決しちゃったね」
「ごめーん」
「私も、直哉とセックスしちゃおう。今度会ったら誘惑しちゃう」
「しばらくさせないんじゃなかったの?」
「私も今日、冬とセックスしたので、心に余裕ができちゃった。私、彼のこと好きだから、好きならセックスしてもいい気がする」
「じゃ、そちらも頑張ってね。突然結婚しようと言われたらどうする?」
「しちゃうかもよ。私、子供産めるし」
「えーん。私はそれができないからなあ」
「でも、前言ってたみたいに、私が産んだ子供の半分は冬の子供にしてあげるから」
「・・・・それはまた、そういうことになった時に」
「だけど、前にもこんなことあったなあとか思った」
「ん?」
「私が窮地に立ってると、なぜかマーサが助けてくれるの。今夜の電話みたいに」
「そんなことあったっけ」
「ローズ+リリーしてたころさ、みんなでお風呂に入りましょうって話になったことあって」
「ああ、思い出した」
「その頃、私まだタックとかも知らなかったし、胸も無かったし。脱衣場まで来て、他の子たちはどんどん脱いで裸になってるし、もうどうしようかと思ってたら」
「私が来て急用だよといって脱衣場から連れ出したんだよね。まあ実際に急用だったんだけど」
「初めて楽屋で着替えた時は、マーサが自分の身体でうまく私を隠してくれた」
「まあ。ばれなかったら報酬が上がるってんで頑張ってたしね」
「私にとってマーサって、救世主みたいなものかも」
「大げさな・・・・はい、どうぞ」
五線譜とボールペンが出てくる。
「なんで分かったの?今」
「表情で分かった」「すごい」
と言いながら私は譜面を書き始めた。タイトルに「white knightess」と書いた。
その日、私達は手をつないだまま寝た。翌朝、私は正望に連絡し、昨夜話が途中になってしまったことを詫び、まずは正望とふたりだけで、ゆっくり話をしたいと言った。
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