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■夏の日の想い出・ジョンブラウンのおじさん(6)

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「美来(光帆)の契約期間って4月から3月までだったんだ?」
 
私たちのマンションを訪問してきた美来にエルシーからもらった山梨産フェーダーヴァイサー(発酵途中のワイン:ワイナリーから持ち帰る最中でも炭酸が発生してくるので瓶のふたを閉めることができない。当然長距離輸送は極めて困難だし日持ちもしない)を勧めながら私は尋ねた。
 
「うん。実際に最初のメンバーで《XANFAS》が結成されたのは2008年6月1日で、私の最初の契約も6月1日発効だったんだけど、年度の境界がキリがいいよねと言って4月1日更新にしたんだよ。契約解除申し入れは自動継続になる3ヶ月前までに書類で提出する必要があるから、12月末までに出す必要があるんだよね」
 
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「まあ4ヶ月前に提出すれば、充分信義に反しないと思う」
と私も答える。
 
「社長さん何か言った?」
「途中契約なら違約金5000万円要求する、と言ったんだけど、私が途中契約じゃなくて契約期間の終了で次の契約をしないというだけですと言ったら、いったん預かると言われた」
 
「まあ放置されたら内容証明だね」
「うん。それを年内にやることになると思うから、この時期にまずは普通に提出した訳だけどね」
 

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「そうだ。面白いもの見せてあげる」
 
と言って私はビデオをパソコンで再生する。美来は画面をのぞきこんだが、
「何これ〜!?」
と声をあげた。
 
それは札幌のスタジオで収録された映像で、ふたりの女性が『Take a Chance』という曲を歌っているものである。
 
「これ XAYA っていうんだ?」
と言って美来は楽しそうに見ている。
 
「うん。XAN作曲・AYA作詞だって」
「へー!」
 
歌っているのは、ゆみ(AYA)と織絵(音羽)である。
 
「権利関係の調整に手間取ったんだけど、$$アーツと★★レコードの承認が取れたんで、今日の夕方にもyoutubeに登録する」
 
「織絵元気そう」
と言って美来は少し寂しそうな表情をした。
 
その時、音も立てずにそっと美来の後ろに忍び寄っていた女性が、いきなり美来の目のところに後ろから手を当てると
 
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「だ〜れだ?」
と訊いた。
 
「オリー!?」
と言って驚いたように美来は後ろを振り向いた。
 
そして織絵と美来は堅く抱きしめ合って熱いキスをした。
 
私と政子は静かに席を立った。
 
「客用寝室の右側に暖房入れておいたから自由に使ってね。あと食べ物も飲み物も自由に。そのフェーダーヴァイサーも全部飲んじゃっていいから」
と私。
 
「ろうそくと亀甲縛りロープと叩いても痛くない鞭とダブルのおちんちんも置いておいたよ」
と政子。
 
「じゃね」
と言って私と政子は自分たちの寝室に籠もった。
 

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KARIONのアルバムで12月に入ってから最初に制作したのが『皿飛ぶ夕暮れ時』
(櫛紀香作詞・黒木信司作曲)である。
 
ところがこの曲の演奏方針について話し合っていたら、SHIN(黒木信司)が
「あれ?」
と言う。
 
「どうかしました?」
「これクレジット違う」
「え?」
「これ僕の作曲じゃないよ。櫛君が詩も曲も書いたんだけど」
「そうでしたっけ?」
「僕が渡した手書きの譜面、そう書いてなかった?」
 
「ごめんなさい。私が入力する時にたぶん櫛紀香作詞というのを見て、SHINさんから譜面もらったしで、黒木信司作曲と入力しちゃったんだと思います」
と和泉が謝る。
 
「僕は今回曲の構成とかについてアドバイスはしたし、スコアにまとめたのも僕だけど、作曲のクレジットを入れるほどまでは関わってないよ」
「すみませーん」
 
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その時、小風が「あっ」と言う。
 
「どうしたの?」
「ここでSHINさんが抜けると、例の人数が24になるなと思って」
「あ、ほんとだ!」
「これで四・十二・二十四、というタイトルが不自然にならない」
「SHINさん、ナイスプレイ!」
 
と私たちは声をあげたが、当のSHIN本人は「何?何?」と訳が分からない様子であった。
 

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この曲のPV制作では海外ロケを行った。
 
バンコクに実在する、料理の皿をテーブルへ投げて配膳するという名物レストランで取材させてもらい、その様子を背景に4人が歌っている。皿が飛んできて目を丸くする4人の様子も映っているが、これは日本国内で撮影したものである。料理の皿を実際に投げてくれたのは千里だが、撮影中に割れた皿は3枚だけでちゃんとテーブルの上で停まるし料理もこぼれないので「もんげー」と小風が言っていた。小風はどうも例のアニメにかなりハマっているようである
 
曲自体はライトロック風に、ギター・ベース・ドラムスを中心に演奏。これにサックスとトランペットを絡めたのだが、櫛紀香さんにも参加してもらい、彼にオカリナを吹いてもらっている。このオカリナの柔らかい音色がこの曲に優しい雰囲気を添えてくれた。
 
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『トランプやろう』(樟南作詞作曲)は元ネタが『トラック野郎』なのでツテを頼って電飾トラックを所有している人数名に協力してもらい、夜の道を電飾トラックが走っている所を撮影し、その電飾トラックを背景にKARIONの4人がポーカーをしているところをPVとして制作している。
 
歌はサウザンズっぽいロックンロールのリズムに乗せてこれも軽快な雰囲気にまとめている。
 
最後に収録したのが『もう寝ろよ赤ちゃん』(スイート・ヴァニラズ作詞作曲)である。実はこの曲、最初に「1曲できちゃったけど」とEliseから連絡があったのが9月の中旬だったのだが、その後何度も「あ、やっぱし少し改訂する」という連絡があり、譜面が確定したのは結局11月も下旬であった。
 
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「もう改訂無いですか?」
「うん。たぶん」
 
というEliseの返事を信じて制作に入ったものの、録音している最中に
 
「ごめーん。あと1回だけ変更」
という連絡が入った。
 
「ところでEliseさん、22小節目の記号が意味が分からないのですが」
「あ、それ瑞季の悪戯書き」
 
どうもEliseの赤ちゃん(3月8日生)は活発だし、音楽好き(楽譜好き?)なようである。
 
「もう活発で活発で、女の子でもこんなに活発なんだっけ? もしかして女の子というのは勘違いで男の子じゃなかったっけ?と思わずお股を再確認したよ」
 
などとEliseは言っていた。
 
「女の子でした?」
「うん。男の子の形には見えなかった。念のためそのあたりにおちんちんが落ちてないかも探したけど見付からなかった」
 
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「あれって落ちるもんなの?」
「私が使うのはよく落ちるけど」
「それ外出先で落としたりしないようにしてくださいよ」
「なっちゃん(スイート・ヴァニラズのマネージャーで事務所の社長)から、外出する時は装着禁止と言われてる」
 
禁止されたってことは一度落としたのか??
 
この曲は、スイート・ヴァニラズっぽい甘い雰囲気のハードロックに仕上がっている。トラベリングベルズの通常の構成に加えて、小風がリズムギター、私がキーボードを弾いてスイート・ヴァニラズと同様の Gt1/Gt2/B/KB/Dr という構成で演奏するのを基本に、サックスとトランペット、更に和泉のグロッケンを乗せている。美空が暇そうにしていたので、AYAのゆみから譲ってもらったという(特製の)オタマトーンを演奏してもらった。結果的にはこのオタマトーンの気の抜けたような音が赤ちゃんが騒いでいる雰囲気を出して、いい感じに仕上がった。
 
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XANFUSの件は、事態は私たちの想像を斜め上に逸脱する形で進んだ。
 
美来が契約解除の申し入れをした翌日の12月1日、&&エージェンシーは唐突にホームページ上で、光帆を解雇したと発表した。事務所側の言い分では光帆は新しいシングルの制作に協力的ではなかったので、アーティスト契約上の信義に反するとした。また事務所は光帆に対して、その問題に関する違約金として1億円を請求すると言明し、本当に弁護士名義での請求書を送ってきた。それで光帆は私からお金を借りて1億円を即支払った。
 
請求書が届いたのが12月2日で、光帆はその翌日、現金で1億円(銀行の封がされた100万円の札束を100個)を持ち込んだので事務所のスタッフが数人がかりで確かに1億円あることを確認するのに1時間掛かったらしい。
 
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しかしこれで光帆は12月4日付けで自由の身になった。
 
一方、ゆみと音羽がデュオで歌った「XAYA」の映像は11月30日の夕方にアップされてから、またたく間に話題になった。巷では$$アーツが音羽と契約するのでは? という観測も流れたが、当の音羽は新たに開設したツイッターのアカウント(神崎美恩・浜名麻梨奈に、私とゆみが即フォローしたことから真性と認められた)から、@@エンタテーメントと12月1日付けでアーティスト契約を結んだことを2日の朝に発表した。
 
@@エンタテーメントは、一度引退した歌手の再起プロジェクトで、この時点では∞∞プロの一部門という性格であった。この時点で所属していたのはKARIONの夏のツアーに参加してもらったマミカとテルミ、ローズ+リリーのライブに出演してくれた近藤うさぎ・魚みちる、など10人ほどであったが、音羽の参加はこのプロジェクトで最も大物となった。
 
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そして&&エージェンシーとの契約が切れた光帆も12月5日付けで@@エンタテーメントとアーティスト契約をした。@@エンタテーメントは12月6日、音羽と光帆のデュオによる新ユニットΦωνοτον(フォノトン)を結成すると発表した。
 
音子(おんし・フォノン)と光子(こうし・フォトン)の合成語である。
 
あわせて@@エンタテーメントは、神崎美恩・浜名麻梨奈とも契約したこと、Φωνοτονの音楽はこのふたりで制作していくことも発表した。
 

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「結果的にはXANFUSがまるごと、&&エージェンシーから@@エンタテーメントに移籍したようなもんだよね」
 
と、その日私は和泉たちと話していた。
 
「収支的には、音羽は退職金2000万円をもらい、マンションを3000万円で買い取ってもらって5000万円もらっている。それで光帆は違約金として1億円払ったから、相殺計算すると5000万円事務所に払ったようなもの」
 
「要するに移籍金として5000万円払ったみたいなもんだよね」
 
「そのままPurple Catsも合流したりして」
「うん。昨日noirと電話で話したんだけど、そのつもりだって。今丸山アイちゃんの制作をやっているから、それが終わったら@@エンタテーメントと契約してフォノトンの伴奏をやることにすると。だから春のツアーは丸山アイとフォノトンの日程をずらして、両方やると言っていた」
 
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「頑張るなあ」
 
「音羽・光帆・神崎美恩・浜名麻梨奈・Purple Catsといった名前の権利はどうなってたの?」
「元々&&エージェンシーでは申請していなかった。悠木さんが社長になってから申請したものの、商標出願が却下されたらしい。XANFUSも却下」
 
「商品の品質を表示するのに使用する名称は商標として認められないって論理だよね(商標法第三条の三)。CDに演奏者:XANFUSと表示した場合、それはXANFUSが歌っているということを表すのにすぎないから、そういうものは商標ではないと。レディ・ガガとかも商標登録の申請が拒否されている」
 
「でも商標登録されている歌手名もあるよね?」
「どうも通る通らないの基準が曖昧なんだよ。でも最近は拒否される例が増えてる」
 
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「ということはXANFUSという名前でさえ自由に使えるんだ?」
「まあレコード会社がうんと言わないよね」
「でもバンドが分裂して双方が同じ名前を名乗ったりする例もあるよね」
「全く同じでなくても紛らわしい名前だったりね」
 
「私と小風が喧嘩別れしたら、KARIONがふたつできたりしてね」
と和泉が言う。
 
「何で喧嘩するの?」
と小風。
 
「おやつの取り分をめぐって争うとか?」
と美空が言うと
 
「それはみーちゃんやマリの話だ」
と私は言った。
 

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夏の日の想い出・ジョンブラウンのおじさん(6)

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