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■夏の日の想い出・ジョンブラウンのおじさん(4)

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千里には7月26日の苗場ロックフェスティバル、8月9日の三浦半島でのサマー・ロックフェスティバルにもKARIONのステージで醍醐春海として出てもらった。千里はサマーロックフェスティバルの打ち上げにも出てくれて、音羽や美空と「付けおちんちん」で盛り上がっていた。
 
その打ち上げの翌日、音羽が私に
「昨日の打ち上げに出てたメンツの中で性転換してる人って何人だっけ?」
と訊くので私は
 
「4人じゃないかな」
と答えた。千里、私、チェリーツインの桃川さん、近藤うさぎで4人だ。すると音羽は
「じゃ5人ってのは勘違いかな」
と言った。
 
「誰か5人って言ったの?」
と私が訊くと
「あ、いや多分適当に言った数字だよ」
と音羽は言った。
 
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ところが10月になってから、私はあの打ち上げに出ていた八重垣さんが、外見上男性であるのに、元々は女性として生まれていたFTMであったことを知ることになる。それで、あの時、5人と言っていたのは、もうひとりは八重垣さんだったのか!と思い至ったのだが、次にではその「5人」と言ったのは誰なのか?と疑問を感じた。音羽と話す機会があった時、一度それを訊いてみたのだが、音羽はその話自体を覚えていなかった。
 
それで少し考えていた私は、これは音羽や美空と何だか盛り上がっていた場所にいた千里ではないかと思った。そこで千里に訊いてみた。
 
「うーん。私って、天から降りてきた言葉をそのままま言ったりしてるから、不確かだけど、私もそんなこと言った気はする。何人と言ったかまでは覚えてないけど」
と千里。
 
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「ああ。巫女さんって、そうなのかもね。実際あの場には5人の性転換者がいたんだよ。MTF-TSが4人と、FTM-TSが1人」
と私は言う。
 
すると千里は何か自分の斜め後ろの方に意識を移しているような気がした。そして言った。
 
「それは違うと思う。そのFTM-TSという人にもし可能なら訊いてみてごらんよ。その人、たぶんまだ手術はしてないよ」
「え!?」
「そして私が言った性転換者はあくまで男から女に変わった人だと思う」
「えーーー!?」
 
それで★★レコードに行った時に偶然八重垣さんに会ったので、個人情報だから訊いてはいけないのだろうけどと断った上で、身体の改造はどこまでしているのかを訊いてみた。
 
「普通の人には教えないんだけど、ケイちゃんは同じ当事者ということで言っちゃうけど、実はメスは一度も入れていない。男性ホルモンをずっと取っているから、体毛は男みたいにあるし、喉仏もあるし、生理はもう完全に停止しているけど、実はまだおっぱいもあるし、卵巣や子宮もあるんですよ。せめておっぱいは取りたいんだけどね。お金の問題もあるし、忙しくて仕事を休めないというのもあって」
 
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「八重垣さん、わがままな歌手をたくさん担当してるから、他の人には代替できないですよね!」
 
「うん。それはある。一度インフルエンザで一週間休んだ時は、代行してくれた人がもうパニックになってた」
「そうでしょうね」
「女房は僕のおっぱいは気にしない。太っている男性でおっぱいのある人もいるからと言ってくれているから、それで放置してるんだ」
 
「結婚なさっているんですか?」
「法的には内縁なんだけどね。会社から扶養手当はもらってるよ。法的には僕が手術をしないと入籍できないんだよね」
「そのあたりは面倒ですよね」
「もういっそレスビアンカップルと同様に養子縁組方式で籍を一緒にしようかというのも話しているんです。でもそれやると後で僕がちゃんと性転換手術して戸籍を男にできた時に正式結婚できなくなる」
 
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養親と養子はたとえ離縁した後でも婚姻はできないのである(民法第736条)。
 
「そのあたり同性婚に関する法的な制度ができるといいんですけどね」
 
そういう訳で「性転換者が5人」という話はまたまた分からなくなってしまったのであった。
 

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11日3日。私は東京ベイエリアにある有明スポーツセンターを訪れていた。熱い戦いが繰り広げられていた試合が終わり、選手がフロアから引き上げて来たところに私は降りて行って、
 
「お疲れ様」
と声を掛けた。
 
「冬!? 来てたんだ?」
と40minutesという名前の入ったユニフォーム姿の千里が言った。
 
「凄い熱戦だったね」
「負けちゃったけどね。でも知ってたの?」
 
「なんかこちらのことばかり、いつの間にか調べられているからさ。私も少し千里のこと調べてやろうと思ってね。現役から遠ざかっているにしてはステージでのパフォーマンスが凄すぎたから、ひょっとしたら実は現役なのではと思って興信所の人に尾行させた」
と私は言う。
 
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「ああ、尾行されてるのは気付いてた」
「さすがさすが」
 
「千里、この人誰?」
と同じユニフォームを着たチームメイトから質問が出る。
 
「私の友だちで歌手をしているんだよ」
と千里が答えたのに
「へー」
という反応があるが、ひとりの選手が私を見て
 
「ちょっと待って」
と言う。
「あなた、もしかしてローズ+リリーのケイさん?」
「はい、そうですよ」
 
「うっそー!」
「千里、こんな有名人と知り合いだったの?」
 
「まあ郵便配達人と大邸宅に住む貴婦人という感じ」
と千里が言うと
「なるほどー」
という声があがるが、私は反撃する。
 
「その郵便配達人が実は郵便会社の社長だったりする感じだね」
と言ったら千里は笑っていた。
 
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この日行われていたのは東京都バスケット秋季選手権(兼関東総合予選)という大会の準決勝と決勝で、優勝すれば関東総合(皇后杯予選)に出ることができたのだが、残念ながら決勝で江戸娘というチームに敗れて進出はならなかった。
 
それで残念会をやろうということだったので私がスポンサーになった。監督・コーチも含めて女子ばかりなのでアルコールが入らない。ファミレスでやけ食いしようという話であった。
 
「すみません。私までおごちそうになっていいんですかね」
と監督さん・コーチさんが恐縮していたが、選手たちはみんな遠慮が無い。
 
「ごちになりまーす」
などと言ってたくさん注文している。
 
「薫ちゃんたちのチームは出てなかったんだね」
「ローキューツは千葉だから」
「あっそうか!」
「向こうは千葉県秋季選手権で既に優勝して関東総合への出場を決めている」
 
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「対戦したかったんじゃないの?」
「まあね。それで今思いついたんだけど」
「ん?」
「冬、バスケットチームのオーナーにならない?」
「へ?」
 
「実は千葉ローキューツもこの東京40minutesも私が活動資金を出している。向こうの主力は18-24歳くらいの世代なのに対して、こちらのチームは見ての通り、みんな一度現役を引退していた選手ばかりで。最初は身体がなまらないようにとか、健康増進のためとか言って始めたんだけど結構強くなっちゃってさ」
と千里が言うが、私と過去に会ったこともある溝口さんが
 
「いや、このメンツが集まれば強いよ。かつてのU18/U22日本代表が何人もいる」
と言う。
「但しA代表になった選手がひとりもいない」
とチャチャが入る。
 
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「それで関東大会で、うちとローキューツがぶつかる可能性も出てきたんで、どちらも私がオーナーというのはやりにくいなと思ってさ。給料とかも払ってないし、手弁当だから年間の純粋な経費は連盟への登録料と大会の参加費で10万円くらいなんだけど、千葉ローキューツは全国大会にも出るから実は年間150-200万くらいの遠征費が掛かっている」
 
と千里。
 
「200万くらいなら出していいよ。じゃ、私がローキューツのオーナーになろうか?」
 
「うん。そうしてもらえたら助かる。儲けにはならないけど」
「いや、今年はけっこうローキューツさんにステージのパフォーマンス協力してもらえたし、その縁ということで」
 
「お、なんか商談がまとまっている」
「しかし200万をポンと出してくれるところが凄い」
 
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実際の『黄金の琵琶』の収録は11月中旬に行った。青葉が送ってくれた琵琶の演奏に完全に合せてDAIにドラムスを叩いてもらい、それに合わせてギター・ベースを収録。それに合せて他の楽器も収録した上で最後に4人の歌を入れた。完成音源を聴いて小風が「かっこいいー!」と感激していた。
 
「ね、この曲、トップに置こうよ」
と和泉が言う。
 
「うん。私も思ったところ!」
 

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この曲のPVは金色の部屋のセットを作り、そこで4人が戦国時代の女性のような感じの白い小袖に色打ち掛けといった服装で座って、琵琶を爪弾いているところを撮影した。この打ち掛けも多数の金糸の刺繍をした豪華なものを使用している。
 
これは都内の某私立大学の服飾科の研究室に協力を求め、こちらで資金を出して当時の雰囲気のものを再現して制作してもらったもので、撮影後は先方の大学の資料館に展示するということであった。制作は7月から始めて10月まで4ヶ月を要している。
 
4人ともギターやベースが弾けるので、その応用で琵琶を持って音源に合わせて本当に弾いてはいるが、PV上で実際に撥が弦をはじいている部分は、風帆伯母の教室の20代の生徒さんたちに弾いてもらったのを撮影して使用している。(指で年齢が分かるので同年代の人に弾いてもらった)
 
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「このPV、凄くお金が掛かっている気がする」
と小風が言う。
 
「この打ち掛け・小袖のセットが1着200万円掛かっている」
「じゃ4着で800万円!?」
 
「この金色の部屋のセットは300万円、琵琶はうちの伯母からの借り物だからタダ。伯母ちゃんとこの生徒さんたちの出演料は合計20万円」
 
「まあだいたい1500万円くらいかな」
と和泉が言うと小風はもう絶句していた。
 

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「そうだ。24の辻褄合わせ分かったよ」
と私は言った。
 
「何だっけ?」
「4人の歌い手・12組のソングライター・24人の創作家というので四・十二・二十四だったはずが、八雲さんが増えて25人になってしまったという話」
 
「ああ」
「どうすんの?」
「数え方が悪いんだよ。マリ&ケイというのはレノン・マッカートニーと同様のひとつの名義、スイート・ヴァニラズもひとつの名義だから、各々1で数える」
 
「それだと5人減って20人」
「その場合、マリ&ケイと岡崎天音は別に数えるから21」
「なるほど。でも今度は3足りないじゃん」
「編曲者まで数える」
「ほほぉ」
「『Around the Wards in 60 minutes』『ゆりばら日誌』『アイドルはつらいよ』、『滝を登る少女』『嵐の山』『アラベスクEG』は編曲がkarion、『皿飛ぶ夕暮れ時』、『もう寝ろよ赤ちゃん』『トランプやろう』『フレッシュ・ダンス』『夕釣り』は編曲がtravelling bells, そして『黄金の琵琶』は青葉がお友達と一緒に作ったスコアをそのまま使用したから編曲はflying sober。これで24名義」
 
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「それ苦しい気がする」
「やはりもうケイと歌月は同一人物と認めよう」
「もう今更じゃん」
「う・・・・」
 
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夏の日の想い出・ジョンブラウンのおじさん(4)

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