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■夏の日の想い出・ジョンブラウンのおじさん(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2015-03-14
 
『Around the Wards in 60 minutes』(森之和泉+水沢歌月)はヴィクター・ヤングの名曲『Around the World in 80 days』を意識して、オーケストラっぽくまとめた。カンパーナ・ダルキに入ってもらい、ストリング・セクションを活かした作りになっている。またツテをたどって、管楽器奏者も集め、MINOを含めたトランペット4人、トロンボーン3人、ユーフォニウム1人、クラリネット2人・オーボエ1人・フルート3人、それにSHINのサクソフォンという重厚な管楽器セクションも入れた。私とエルシーによるツイン・ピアノまで入れている(スタインウェイのコンサートグランドを2台並べて収録した)。
 
「この曲、歌は無くてもよくない?」
と小風が言うので
「それは言わない約束よ」
と私は答えておいた。
 
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『滝を登る少女』(広田純子・花畑恵三)は単純なメロディをカノン、つまり追っ掛けっこにしている。和泉→私→小風→美空の順に同じメロディを歌っていくので1小節ずつずれた歌が響いていく作りである。
 
歌が複雑なので伴奏の方はシンプルにしてあり、ギター・ベース・ドラムスの3つだけでほぼできていて、トランペットとサックスは間奏とコーダにのみ入る形にした。
 

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11月11日。美来がまた例によって公衆電話から私に連絡してきた。
 
「私、あまり占いとか風水とか信じてないんだけどさ、冬、誰か家相とか見られる占い師さん知らない?」
 
「ああ、引っ越すの?」
「いや、今住んでいる所を見てもらえないかと思って」
 
「何か問題があるんだっけ?」
「このマンション、3000万円で買ったんだけど、入居したあとで何気なく住宅情報雑誌見ていたら、本来は5000万円で売ってる物件だったみたいなんだよね」
 
「ああ・・・・」
「入居して間もない頃、織絵が窓の外に男が居るの見たって騒いでさ。12階の窓の外に人がいる訳ないじゃん。カラスか何かを見間違えたんだよ、とか言ってたんだけどね」
 
「なるほどね」
「織絵は結局その窓に厚いカーテンを掛けて『開けるべからず』って紙を貼ってたんだけど。あと、よく人の足音がするんだよね。誰もいないはずなのに。織絵が怖がって、お不動さんのお札を買って来て部屋のあちこちに貼ったんだけど」
 
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「それって占い師さんを呼ぶまでも無いよ。私が事故物件だと断言してあげる」
 
「やっぱり?」
 
「美来。そのマンション出た方がいい。元々美来が借りてた国立市のマンションがあるよね」
「あ、うん」
「そこって美来が家賃を払うようにしたんでしょ?」
「もったいないから解約することにして、12月いっぱいで退去ということにしてあるんだけど」
 
「それまでの期間でもいいから、そちらに移動しなよ。取り敢えず毛布とかだけでも持っていけば何とかなるでしょ?」
 
「うむむ。そうするか」
「今回のトラブルって、そんな所に住んでて運気が落ちたせいもあるかもよ」
 
「そういうもん?」
「よくある話」
「そうなのか。織絵が怖がってたんだけど軟弱なとか言ってたんだけど」
 
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美来は毛布などを運ぶにしても車を持ってないので運べないというので、双方のマンションの合い鍵を1本ずつ私の家に送ってもらい、私と千里・和実の3人で美来の池袋のマンション(ふたりが春に買ったものの事務所が買い上げて現在美来は事務所に家賃を払って住んでいる)に行き、頼まれた荷物を国立市のマンション(元々美来が借りていたもの)に移動させた。織絵の私物など一部の荷物は別途借りたトランクルームに移動した。
 
「禁開封」とマジックで書かれた箱もトランクルームに移動したが
「なんだろう?」
「きっと****とか****とか****とか」
と言い合う。
 
「段ボール2箱も?」
と和実は言うが
「まあ溜まるよね」
と千里。千里と桃香の私生活もどうもよく分からない。
 
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池袋のマンションで私は訊いてみた。
「千里、このマンションってやっぱり変?」
 
すると千里は和実に投げる。
「和実ならこのマンション買う?」
 
「絶対買わない。だって見るからに怪しげじゃん」
と和実は言う。
 
「まあ、そういうことだよ」
と千里は言った。
 
「それが織絵がお化けを見たという窓か」
と言って、織絵の字で『開けるな』と書かれた紙の貼ってある窓に触ろうとしたら千里が言った。
 
「冬もトラブル抱えたくなかったら、その窓には触らない方がいい」
「うむむ?」
「その窓を開けるなんて、病院の床を舐めるようなもの」
と千里。
 
「そんなに危険なの!?」
 

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中旬に行われたXANFUSのドームツアーは悲惨だった。
 
チケットは10月初旬に発売され、その時点では5万枚売れていた。しかし10月18日に音羽の卒業が発表されると、キャンセルの申し出が相次いだ。事務所は当初キャンセルは受け付けないと言ったものの、販売を担当するぴあ・ローソンチケットなどは「メインの出演者が出演しないことになった以上キャンセルは受け付けるべきである」と強く主張。それで事務所も折れて結局7割ほどにも及ぶキャンセルが行われた。これには10月15日に発売されたシングルに「失望した」という意見が相次いだのも影響している。
 
しかし11月初旬に光帆がテレビ記者のインタビューで音羽と連絡は取れていることを示唆した上で「ふたり分頑張りますから来て下さいね」と発言したことで、買う人が少し出て最終的には3万5千枚ほどの売れ行きになった(ただし、事務所側は20万枚売れて「残りわずか」と盛んに宣伝していた)。
 
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売れた内訳は、後から内部資料で判明した数字によれば、北海ドーム1561枚、博多ドーム2042枚、愛知ドーム2274枚、埼玉ドーム3537枚、京阪ドーム7710枚、そして最後の関東ドーム2日間が3618枚・16171枚である。それぞれ3-4万人を収容できる会場で、なんとか形になったのは最終日の公演だけ。あとは本当に観客がまばらで、拍手も前の方に陣取った数十人の熱心なファンが送るだけでかなりしらけたものだったという。
 
光帆はもう泣きたい気分であったと言っていたが、それでもこんな状況の中で来てくれたファンのため本当に熱唱した。それで行ったファンの間では「光帆ちゃん、凄く頑張ってた。ほんとうにいいコンサートだった」と評価は高かった。
 
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「ステージのセットが物凄く安っぽかったよ」
と偵察に行ってきた風花が言っていた。
 
「小学校の学芸会並みのセット。かなり予算をケチってるね。あとあんなにがらがらなんだから席は自由に移動させてもいいじゃん。でも指定の席から動くのは禁止ってことでさ。アリーナががらがらなのに、スタンドで見てる観客が多かったのよね」
 
「まあ価格差があるから、スタンド席を買った人が多かったろうね」
と私は答える。
 
「動員掛けなかったの?」
と政子が訊く。
 
動員というのは客の入りが悪いときに体裁を整えるため無料券を配って客を水増しすることをいう。外タレ(外国人アーティスト)の公演では特に多く行われる。最近の一部のアーティストでは更にバイト代を払って客席に座ってもらうサクラまで使用しているものもある。お金を払って見に来た客からすれば非常に不誠実な行為だ。
 
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「社長さんが、タダで見せるなんてもってのほかと言って許可しなかったらしい」
「その姿勢は評価していいと思う」
 
「でも光帆ちゃんひとりで熱唱してた。あれはほんとに頑張ったと思う」
と風花。
 
「伴奏は誰がしたんだっけ?」
と政子が訊くが
「カラオケだよ。しかも明らかに打ち込みが素人。ベロシティ(音の強さ)が全部同じなんだよ。強弱付けてないから聴いてて凄く不自然(*1)。おそらくアルヒデトさんひとりでは間に合わないからバイトをかなり動員したとみた。それも恐らくタダ同然で使える素人をね」
と風花の答え。
 
(*1)通常たとえばタタタタといったリズムで楽器の音を鳴らす場合、1・3拍目は強く、2・4拍目は弱くなる。そこで例えば各々の強さを100,70,90,60のような感じにした方が、全部同じ強さで打ち込むより人間っぽくなる。但し打ち込み系の人の中には敢えて同じ強さにして機械っぽくするのを好む人も居る。
 
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「更にPAさんが素人。ドームでの音響を経験したことのない人だよ。あれ。せっかくの熱唱がスタンド席ではどこまで分かったか。あと照明も適当」
と風花は言う。
 
「そういうの、ちゃんとした会社を使ってないんだろうね」
「たぶん安さだけで選んでいる」
 
「じゃ、かなり費用節約してるね」
と政子。
「それでも関東ドームの使用料は1日2000万円。それから楽曲の使用料は平均8500円の入場料金で4万人が定員の会場のライブなら330万円くらい。これはどちらもケチれない」
 
と私。著作権使用料は実際のチケット発券枚数ではなく定員×入場料で決まることになっている(そういうルールにしなければ入場者を過少申告する所が相次ぐだろう)。
 
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「7つの会場で1億3千万円くらいかな」
「会場代・楽曲使用料だけでもそのくらいは掛かっているよね」
「それに売れ行きが悪かったから随分テレビスポット打ったよね」
「うん。あれが最低でも1億、随分打っていたし最後の方は無理に枠にねじこんだだろうから割高になって、ひょっとしたら2億掛かっているかも」
 
「一方で売上は3.5万枚・平均8500円として3億円」
「そこからぴあ等への委託料を引けば2億5千万程度だろうね」
 
「最終的には2億円近くの赤字。もしかしたら赤字は3〜4億に達したかも」
「いや、常識的には赤字だけど、あそこまで徹底してケチケチ作戦で行っていたら案外数百万円程度の利益が出ているかも」
 
「それでも本来XANFUSが出せるような利益じゃないよね」
 
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「うん。本気でXANFUSがドームツアーやったら10億利益が出せたと思う。でも今回のやり方では利益が出たとしても、せいぜい5-600万円じゃないかな」
 

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そのドームツアーの悲惨な状況について音楽ファンの間であれこれ議論がなされていた中、また衝撃的なニュースが出てくる。
 
『XANFUSに新メンバー』
というものであった。
 
私もびっくりして記事を読んだのだが、光帆ひとりになっていたXANFUSに新たに震来・離花というふたりの女の子を追加し、光帆を入れて3人による新生XANFUSが誕生したというものであった。
 
新生XANFUSは12月にも新しいシングルを発売すると報道されていた。
 
「どうなってんの?」
「もう理解不能」
 
と私と政子は言い合った。
 
加藤さんに聞いたら★★レコードでは知らないということで、あるいは独自レーベルを立ち上げるつもりではと言っていた。ただどこか大手に流通を委託しないと、まともなセールスは見込めない。
 
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XANFUSが3人になったというのが発表されたのが11月22日(土)で「新生XANFUS」はその連休(22-24日)、関東周辺でのキャンペーンを行った。が、そのことは&&エージェンシーのホームページに掲示されただけで、事実上ほとんど広報がなされなかったので、観客はキャンペーン会場近くに偶然居た人だけで、閑散とした状況であったという。
 
この件は新聞や雑誌も黙殺し、報道さえもされなかった。
 
11月30日、光帆は&&エージェンシーに対して専属契約の解除申入書を提出した。
 

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