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■夏の日の想い出・1羽の鳥が増える(12)

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この時点で青葉は何の話なのか全く聞いていなかった。巫女服を着てなんて言われたので、霊関係の相談事かと思っていたという。
 
それで現地に着いて、ここでビデオの撮影をすると言うと青葉が驚いている様子。
 
「何か問題がある?」
「あの、いえ。実はここは私が建立した神社なので」
と青葉。
 
「えーーー!?」
「ちょっとこの神様に縁があって、どこか適当なお祀りする場所が無いかと探していたら、ここが見つかったもので。先月ここに御神体を入れたばかりなんですよ」
 
しかしそんな展開にも動じないのが氷川さんである。
「所有者がおられるなら、ちょうどいいですね。ご本人にここで舞でも舞ってもらって、その前でマリさん・ケイさんが歌えば最高の演出です」
 
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などということで、私たちはその玉依姫神社の前で扇を持って巫女装束で舞う青葉をバックに、振袖姿で歌ったのである。実はマリ&ケイ+リーフの共演であり、またリーフが映像出演するのは初めてとなった。
 
結果的にテレビ版とは全く雰囲気の異なるビデオに仕上がった。コンサートの観客も、純日本風の雅な雰囲気に酔いしれていた感じであった。この日の演奏では、キーボードで箏の音なども入れて少し和風っぽい感じにまとめていた。
 
この撮影場所はどこですか?という問合せに、青葉は公開は構わないと言ったので、千葉市のどこどこと教えた所、聖地巡礼の人が結構来るようになっていた。お賽銭のコインが散乱するので、管理している神社では急遽お賽銭箱を設置した。
 
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そして元々の歌詞が男女の睦み事を暗示する内容なので、ここは恋愛成就やカップルの円満に利くという噂が立ち始めるのである。
 
更に夏になるとここに狛犬代わり?に祠の左右に黒猫と白猫の招き猫(常滑焼)が設置されたのだが、祠に向かって左に居て右手を上げている黒猫はオス、右に居て左手を上げている白猫はメスだと言われ、オスの黒猫を拝むと男性の精力が増し、メスの白猫を拝むと女性の女らしさが増すという噂が立ち、更に女の子になりたい男の子は白猫を拝むと良いなどという噂まで立って、参拝客のバリエーションが増えることになる。
 

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コンサートでは、その後、『時間の狭間』『Spell on You』『影たちの夜』
『キュピパラ・ペポリカ』『恋座流星群』『夜間飛行』『花の国』『疾走』と進み、前半最後は、お玉を振って『ピンザンティン』を歌った。
 
各々、その曲用に制作したビデオを背景に流した。(このビデオの制作費は全部で5000万円ほど掛かったが、DVDにして1枚4000円で今回のツアーの会場で売った所、10万枚売れて軽く制作費を回収できた:直販なので中間経費不要!)
 
ゲストコーナーはこのツアーでは毎日違うゲストを迎えることになっているが、この日は谷川海里ちゃんであった。昨年デビューした新人であるが、村田英雄の『王将』をテクノ風にアレンジした『OHSHO』がいきなり30万枚を売る大ヒットとなり、昨年は大忙しであった。
 
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そもそも『谷川海里』というのは将棋の用語で、古い時代の棋譜記号である。現在は例えば右から3番目・上から7番目の升は3七と書くが、昔はこれを「いろは」で表していた。1一が「い」、1二が「ろ」、1三が「は」と表していき、いろはを使い果たすと漢数字を使用し、その後は花鳥風月とか春夏秋冬といった漢字を入れていく。そして、左端の上、9一から9四までのところが「谷」「川」「海」「里」という漢字に対応しているのである。
 
お父さんが将棋大好きでアマ六段の段位(事実上のアマ最高段位)も持っているという人なので、この芸名を考えたのだそうである。
 
ただ、そういう個性的な芸名でそれにピッタリの曲でデビューしてしまって、しかもそれがヒットしてしまった場合、問題は「次の曲」である。2匹目のドジョウを狙うのは確実に失敗する。実際『OHSHO』の次は、北島三郎の『歩』
をテクノアレンジして『HUH』という案が海里の実質的なプロデューサー役であるお父さんから提示されたものの、★★レコードの加藤課長は「それは絶対売れません」と言った。
 
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それで2曲目はオリジナル曲で行くことになり、《バーチャルバンド》カトラーズの《中の人》である、進藤歩さんに新曲を書いてもらうことになり『Lancer』という曲が提供され、お菓子のCMにも使用されることが決まった。すると海里のお父さんは、作曲者の名前が《歩》だし、Lancer(槍騎兵)というのは香車のことでは?と勝手に解釈して受け入れてくれたのであった。
 
今日のステージではその新曲『Lancer』を含めて3曲を歌うが、彼女はゴールデンウィーク中、色々なアーティストのライブにゲスト出演して顔を売ることになっている。取り敢えず最初の曲がプラティナディスクになったことは忘れて今年はまた新人のつもりで頑張ろう、という営業方針に海里自身も「その方がしっくり来ます」と言っていた。昨年は夢を見ていたようなものと彼女は言う。
 
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ただ、この業界では、こういう切り替えのできる人は少ないのである。ついつい何かがうまく行くと甘い夢を見がちだし、天狗になってしまう人もまた多い。
 

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ステージ後半はアコスティックタイムである。
 
最初に『花園の君』をヴァイオリン六重奏をフィーチャーして演奏するが、第1ヴァイオリンは、アスカの生徒さんで私にとってはヴァイオリンの先生のひとりである鈴木真知子さんにお願いした。現在高校2年だが、私が中1の時、当時小学1年の真智子さんに私はヴァイオリンの模範演奏を見せてもらっていたのである。つまり小学1年の時点で既に物凄く上手かった訳で、彼女はこの『花園の君』の第1ヴァイオリンに指定されている超絶パート(雨宮先生のアレンジ)を1日練習しただけで美事に弾きこなした。
 
第2ヴァイオリン以下は、松村・鷹野・香月・宮本・七星というメンバーである。これに近藤さんのアコスティックギター、酒向さんのウッドベース、月丘さんのグランドピアノが入る。
 
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この『花園の君』では、私と政子が実際にこの曲を書いた植物園でふたりが散歩している様子を収めたビデオが流れた。この曲を書いた時はコスモスが綺麗だったのだが、春に撮影したので、桜が7分咲の感じで明るい雰囲気だ。
 
そして2曲目は『花の女王』である。これはヴァイオリン三重奏なので、松村・鈴木・鷹野の3人で弾く。『花園の君』の第1ヴァイオリンは鈴木さんのレベルでないと弾けないが、『花の女王』の第1ヴァイオリンは昨年からずっと松村さんにお願いしているので、第1ヴァイオリンを交替するのである。七星さんはフルートに持ち替え、香月さんはトランペット、宮本さんはお休みである。
 
その後、松村・鈴木の2人に香月さんも退場して、ふつうのスターキッズ5人(近藤:Gt, 酒向:Wood-B, 月丘:Pf, 七星:Fl, 鷹野:Vn)の演奏で『あなたがいない部屋』、『雪の恋人たち』、『花模様』、『言葉は要らない』『坂道』
と演奏していく。『言葉は要らない』のパイプオルガン・パートは山森さんがエレクトーンで弾いてくれた。『あなたがいない部屋』と『坂道』の胡弓パートは昨年のアリーナツアーでも胡弓を弾いてくれた従姉の美耶にお願いした。このツアー全部に付き合ってくれる。
 
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『雪の恋人たち』のビデオは2月にこの曲を書いた山形県の白湯温泉で実際に撮影してきてもらった映像に、ケイとマリのスタジオで撮影した映像を合成したものである。『花模様』は今回沖縄の植物園で撮影してきてもらった映像にやはり私たち2人を合成している。
 
その後、更に『君待つ朝』『A Young Maiden』『100時間』『夏の日の想い出』
『天使に逢えたら』『ネオン〜駆け巡る恋』『アコスティック・ワールド』
と演奏していくが、『夏の日の想い出』以下の4曲にはパイプオルガンをフィーチャーしているのでまた山森さんにお願いした。最後の『アコスティック・ワールド』は弦楽四重奏も入れているので、Vn:松村・鷹野、Vla:香月、Vc:宮本で演奏した。
 
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『アコスティック・ワールド』でミラーボールも回して美しく終曲する。緞帳が降りる。アンコールの拍手で呼び戻される。そして緞帳が再び上がって物凄い拍手が起きる。
 
しかし・・・・
 
「アンコールありがとう!」
などとステージ中央で言っているのはローズ+リリーではない。観客たちの知らない女の子2人である。観客がざわめく。
 
しかし彼女たちは
「ではアンコールにお応えして『青い森の記憶』」
などと言って勝手にマイナスワン音源で歌い出す。観客は戸惑いながらも一応手拍子をしてくれる。このあたり、日本の観客はほんとに律儀だ!
 
1コーラス歌った所で、私とマリが出て行く。
 
「ちょっとちょっと、君たちは誰?」
と私が声を掛ける。
 
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「私たちはゴールデンシックスだ。私がリーダーのカノンだ」
「私はサブリーダーのリノンだ」
 
「ゴールデンシックスって、2人しか居ないじゃん」
「私たちは1人で3人分の魅力があるからシックスだ」
「ついでにギャラも6等分して各々3人分ずつもらう」
「それ最初から2等分するのと同じじゃん!」
 
会場で笑いが起きる。
 
「私たちはローズ+リリーに挑戦するぞ」
「何挑戦するのさ?」
「カラオケ対決して私たちが勝ったら、この後のコンサートは私たちが主役だ」
「ほほぉ。何で戦うのさ?」
「ゆきみすずさんの『深窓』でどうだ?」
「いいよ」
 
それで唐突に得点板が出てくる。マイナスワン音源というかカラオケの音楽が流れる。それでカノンが1コーラス歌う。得点は80点と出た。一応拍手が来る。続けて私が歌う。得点は98点であった。
 
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「くっそー。負けた! また挑戦するぞ」
「まあ、頑張ってね」
「では失礼する!」
と言って駆け足で退場する。観客は暖かい拍手で送り出した。
 

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「ええ。失礼しました。それではローズ+リリーのアンコール曲『夜宴』」
 
拍手がある。伴奏陣が入ってくる。
エレキギター(リードギター):近藤、エレキギター(リズムギター):宮本、エレキベース:鷹野、ドラムス:酒向、キーボード:月丘、ウィンドシンセ:七星、トランペット:香月、エレクトーン:山森。これにヴァイオリンが鈴木・松村に美耶まで加わって三重奏になる。美耶は胡弓の名手だがヴァイオリンも上手い。
 
この賑やかな伴奏で私たちは『夜宴』を歌った。
 
そしていったん全員退場する。
 
アンコールの拍手で呼び戻される。私とマリだけが出て行く。アンコールの御礼を言う。そして私がグランドピアノの所に座り、マリはその左側に立つ。ミドドミ・ミドドミ・ファソファミレミという前奏に引き続き、私たちは『あの夏の日』を歌い出す。
 
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伊豆のキャンプ場でこの曲を作ってから、7年弱。その間の色々な思いが胸に浮かぶ。
 
夢中で走っていた時もあったし、ローズ+リリーもこれで終わりかなと思った時もあった。マリのリハビリをしていた時期は長かった。もっともその期間もマリは詩だけはたくさん書いた。むしろこちらの作曲が追いつかなかった。でも2年前、やっとマリはステージに戻ってきた。
 
ファンサイトに書かれていたけど、確かにその後は私はローズ+リリーだけをやってきたような感じもある。そして大学を卒業して、これからまたスタート。いつまで売れるか分からないけど、求められている間はこんな感じでやっていきたい。まあ、売れなくなったらスタジオミュージシャンでもしながら趣味で歌い続けるのもいいかもね。
 
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私の歌声に三度でマリの声が調和する。そのハーモニーが美しいままに曲は終わりに達する。
 
余韻が消えると同時に大きな拍手がある。私たちは立ち上がり、観客に向かって深くお辞儀をした。
 

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公演終了後、私がローズクォーツの公演冒頭にホログラフィ出演したことが話題になっていた。
 
ローズ+リリーとローズクォーツの公演の時刻が30分ずれているのは、そのためだったのか! というので、ファンサイトは湧いた。それで、まだ売れ残っていたローズクォーツのチケットが翌日、南相馬以外、全部売り切れてしまった。大宮副社長がわざわざ私に電話をしてきて
 
「ケイちゃんのおかげだよ」
と言った。
 
2年前のホールツアーで散々売れ残りが出たのに、私が辞めることを公表した途端ローズクォーツのチケットが好調な売れ行きになったことを私が気にしていたので、フォローしてくれたようであった。
 
そしてファンの声。
 
「でもローズクォーツの最終日、5月11日の南相馬だけは30分差じゃないぞ」
「完全に時間がずれてるよな」
「最初から最後までホログラフィで出演するんだったりして」
「初音ミクのライブみたいな感じか?」
 
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とローズクォーツの南相馬のライブに関してはファンサイトも予測がつかない感じであった。
 
「ところで南相馬って放射能大丈夫なの?」
「ライブは屋内だから平気だろ」
「だったら俺行ってみようかな・・・」
 
そんな声が出始めて、結局最後残っていた南相馬のライブも4月30日までには全部売れてしまった。ローズクォーツのツアーでの初の全公演ソールドアウトであった。
 

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「冬、ローズクォーツの公演のホログラフィ出演はギャラ幾らもらうの?」
と政子に訊かれた。
 
「タダ。あれは友情出演扱い」
 
「KARIONの公演にこっそり出ていたのは?」
「あれもギャラ無し。それで打ち上げの費用を私が持ってた。今回5年半ぶりにギャラをもらう」
「それって参加する度に赤字だったのでは?」
「まあ表に出てないお詫びということで」
 
「美空がいる打ち上げ費用は恐ろしい気がする」
「マリちゃんで慣れてるから平気」
と言って私は政子にキスをした。
 
 
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■夏の日の想い出・1羽の鳥が増える(12)

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