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■夏の日の想い出・1羽の鳥が増える(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-12-21
 
「でも性別が曖昧というと、今日のこのメンツもですよね」
などと青葉は言っちゃう。
 
「ん?」
「まあ上島先生以外は怪しいかな」
と私も言う。
 
「いや、雷ちゃんも結構怪しいと私は思ってた」
と雨宮先生。
 
上島先生は苦笑している。
 
「でも君も怪しいの?」
と雨宮先生が青葉に訊く。
 
「そうですね。私も冬子さんと同じで生まれた時は男の子だったので」
 
「えーーーー!?」
と上島先生・雨宮先生。
 
「でも1年半前に手術を受けて女の子になりました」
「凄い」
「手術済みか」
 
「最近、若い内に手術しちゃう子が多いわね」
と雨宮先生。
 
「まあ20歳まで待てというのが酷ではある」
と上島先生も言う。
 
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「小学3-4年生でやっちゃうのが理想的ですけどね」
と私は正直な気持ちを言う。
 
「ケイちゃんは小学3年生くらいで性転換したんだっけ?」
「してませんよー。手術したのは19歳の時です」
 

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「あぁあ。私もいっそ性転換しちゃおうかしら」
と雨宮先生が言ったが、
 
青葉が
「やめた方がいいです。後悔しますよ」
と言う。
 
「どうして?」と雨宮先生。
「雨宮さんは心は男性だから」と青葉。
 
「あんた凄いね。私みたいにしてると、みんな女になりたいんだろうと思う人多いのに」
 
「雨宮さんは女性の格好をするのが好きなだけであって、女になりたい訳ではないと思います」
と青葉。
 
「その見分けが付くのが凄い」
 
「でも雨宮さん、性器の調子が悪いようですね」
「これ実はもう2年くらい立たない」
「ヒーリングしていいですか?」
 
「回復させられる?」
「今ならまだ行けますよ」
 

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さすがにここでは出来ないので、4人で雨宮先生の御自宅に移動した。
 
タックを外し、裸になってベッドに横になり毛布をかぶってもらう。そして青葉は「失礼します」と言い、毛布の中に手を入れて直接性器に触っている模様。
 
「ね。何か気持ちいいんだけど」
「気持ちよくなるようにしてますから」
と青葉。
 
「青葉、性器のヒーリングなんてのもするんだ?」
「そういう依頼自体が少ないですから、あまり多数はやってませんけど、男女合わせて20回くらい経験あります」
 
「凄い」
 
「ね、凄く逝ってしまいたい気分なんだけど」
と雨宮先生は言うが
「まだ無理ですよ」
と青葉。
 
「あと30分くらい待って下さい」
「あと30分もこのまま生殺し?」
「仕方無いです。この部分を治さないと射精できないはずです」
と言って青葉はどうも、体内のメカニズムそのものを治療しているようだ。
 
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「射精って、精子無いのでは?」
と上島先生は言うが
 
「精子が無くても射精機能はあるし、射精すると何も出なくても逝った感があるんです」
と青葉は言う。
 

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青葉のヒーリングは本当に30分ほど続いた。その間、ずっと辛そうにしていた雨宮先生は最後に、どっと脱力して、放心状態になった。
 
私も上島先生も青葉も少しベッドから離れて放置してあげる。
 
「あはは、2年ぶりに立ったし、逝けたの3年ぶりくらい」
と雨宮先生は5分ほど経ってから言った。
 
「よかったですね」
と青葉。
「一度ちゃんと逝けたから、次からはもう少し簡単に逝けますよ。毎日寝る前に試してみてください」
 
「よし、また誰かナンパしてみよう」
「女の子とやる前に少し自分で練習した方がいいですよ」
「そうか。じゃ1ヶ月くらい頑張ってみてからにするか」
 
しかし、ヒーリングなどせずに、使えないままだった方が世の中のためになったんじゃないか?と私は一瞬思ってしまった。
 
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青葉を連れて自宅に戻り、政子と一緒に夕食を食べながら今日の高岡さんの家での話をしていたら、唐突に政子が言い出した。
 
「あれ、そういえば私も自分で作詞してないのに、作詞印税もらってる作品ある」
「私と政子が作った作品は、全部マリ&ケイにすると約束したからね。だから、私が作詞までした作品も、政子が作曲までした作品も、全部マリ&ケイにして印税山分け」
 
「いいんだっけ?」
「多分あいこくらいだしね」
 
「何か有名な作品でそういうのあるんですか?」
と青葉が訊いたが
 
「それは青葉は自分で分かるはず」
と投げ返す。
 
「そうですね・・・『美味しい食事』は冬子さんの作品じゃない気がする」
「あれはマリ作詞作曲」
「そうか。『神様お願い』もそうでしたね」
「政子は物凄く感動すると、メロディーまで思いついてしまうことがあるんだよ」
 
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「なるほど。『渡り廊下の君』は逆に作詞が政子さんじゃない気がします」
「あれはケイ作詞作曲」
 
「『恋座流星群』は作曲が冬子さんではないというのは以前聞きましたけど、後で考えていて、作詞も政子さんではない気がするんですけど」
 
「あれはね。ケイ作詞・いづみ作曲なのさ」
「そうだったのか!」
 
「え?あれ冬が作曲までしたんじゃなかったの?」
と政子が訊く。
 
「そうそう。あの時期、豊胸手術を受けた直後で、痛くてまともに曲が書けなかったんだよ」
と私。
 
「それでも印税は冬と私で山分け?」
「あれはマリと和泉で山分けするようになってる」
 
「そうだったんだ! でも私、作詞してないのに」
「だから、ふたりで山分けする約束」
「ケイが受け取ってないじゃん」
「だって作曲してくれた和泉には印税渡さなきゃ」
「私もらってもいいの?」
 
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「まあ実際、私が受け取るのも政子が受け取るのも同じことだけどね。私たち夫婦なんだし」
「まあ、それはそうだね」
 
青葉が微笑んでいた。
 

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「だけど、その豊胸手術って、実は胸が結構あることを誤魔化すためだったりして」
などと唐突に政子は言った。
 
「まさか」
と私は否定するが、
 
「和泉ちゃんは口が硬いんだよね。若葉も口が硬いんだよね。でも最近美空からけっこう色々聞き出してるのよね」
 
「あははは」
「こないだEliseさんが持ってた写真集から、冬が小学6年の時に既にBカップのバストがあったことは分かった」
 
「そんなに無かったよ。あれは上手な人が上げ底してくれたんだよ」
「じゃ、本当はどのくらいあったのさ?」
「うーん。。。。AAAカップくらいかな」
「男の子の胸がAAAあること自体が有り得ない。特に冬って細いのに」
「えっと・・・」
 
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「美空の証言だと、高2の夏、私たちがローズ+リリーとしてデビューする直前頃、Cカップより大きかったというから、もしかしてDカップ」
 
「それは何かの間違い。上げ底してCカップ行ってない」
「つまり、小学6年から高校2年までの間に上げ底した状態でBからCに成長しているということは、実胸もAAからBに成長しているということで」
 
「ちょっと待って。それ絶対計算がおかしい」
 
青葉はおかしくてたまらないという感じで笑っている。
 

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3月18日。ローズ+リリーの『Flower Garden』の英語版・スペイン語版CDが北米・南米・オセアニア・ヨーロッパで同時発売された。また世界的な大手ダウンロードストアのgSongs storeおよび、★★チャンネルでもダウンロード可能になった。
 
それでこの英語版・スペイン語版をわざわざ日本でもダウンロードするファンが結構発生していた。主な国では私が振袖を着て箏を弾きマリが篠笛を吹いている純和風のテレビスポットも流されて、結構興味を持ってもらえたようである。アメリカやヨーロッパではgSongs storeから日本語版をダウンロードする人も結構出た。
 
このローズ+リリー初の海外版であるが、最初は英語版を公開して、様子を見てスペイン語版をと言っていたのだが、gSongs および、FMIレコード側から、営業の効率化のためにはむしろ一緒に発売したいという要望があり、結局同時発売となったものである。
 
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ところでこれを公開するにあたって、ちょっと揉め事があった。
 
英語版は Rose+Lily『Flower Garden』、スペイン語版は Rosa+Azucena『Jardin de Flores』というタイトルで発売することにしたのだが、gSongsのアルゼンチン支店から
「Rosa+Azecena というのは、もしかして Rosa mas Azucena ではないのか?このアーティストは詐欺の疑いがある」
 
という注意が入ったのである。
 
実はローズ+リリーの『恋座流星群』の「海賊版」が2010年9月にgSongsのアルゼンチン支店に Rosa mas Azucena『Amords』のタイトルで「誰か」により登録され、★★レコードの著作権管理部門が気付くまで、日本やアジアで合計23万件もダウンロードされた事件があった。
 
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アルゼンチン支店の担当者がその時の騒ぎを覚えていて、また詐欺ではないかと注意したのであった。それで★★レコードの町添部長が直接gSongsのアルゼンチン支店の販売部長さんに電話して、前回のは海賊版だったが、今回は間違い無く本人の公式なアルバムの登録であることを説明して、了承された。
 

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私がローズ+リリーとKARIONを掛け持ちしていたことを「08年組」の中で最後まで知らなかったのが、AYAのゆみと、スリーピーマイスのレイシーである。
 
レイシーは
「びっくりしたー。よく掛け持ちできてたね!と言ったらさ、エルシーもティリーも『あれ?知らなかったの?』と言うんだよ。ひどーい。教えてくれてもいいのに」
 
エルシーは元々KARIONの音源制作に頻繁に関わっているので、当然私のことは最初から知っていた。ティリーはXANFUSの制作に関わっているので、昨年XANFUSの五周年アルバムを制作した時に、私が和泉たちと一緒にKARIONとしてXANFUSの制作現場に行った時に知って驚愕していた。
 
しかしスリーピーマイスはそもそもライブをやる時以外は各自勝手にバラバラで行動しているので、情報の流通も悪いようである。最近は各々が他のユニットの制作などにも関わっているため、スリーピーマイス自身の音源制作の時もお互い滅多に顔を合わせないらしい。だいたいエルシーが曲を書いたのにティリーが詩を付けて、それをレイシーが編曲するが、全部メールでのやりとりである。それでレイシーが打ち込みで(仮の)伴奏音源を作るので、各自スケジュールが空いた時に勝手にスタジオに入って自分のボーカルパートと伴奏パートを録音するらしい。
 
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「でも個人主義がスリーピーマイスの特徴だし」
「うん。お互いに他の子のスケジュールとか全然知らないもん。だいたい私、エルシーとティリーの携帯番号がアドレス帳に入ってない」
「ツイッターでもお互い全然フォローしてませんね」
「うん。フォローしてるのはリデルだけ」
 
これはスリーピーマイスの結成の時以来お互いにそういう状態らしく、3人全員に唯一人連絡を取れるのは、エルシーとティリーを古くから知っているリデルのみで、現在リデルは実質スリーピーマイスのマネージャー役になっている。むろん3人は仲が悪いわけではなく、しばしば一緒にお茶を飲んだりケーキを食べに行ったりもしている。単に私生活に干渉されたくないだけだという。
 
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AYAのゆみも知った時「うっそー」と思ったという。
 
「そういえば、ローズ+リリーが休業中だった頃も、考えてみるとケイとマリの様子とかの情報は主として、いづみちゃんがラジオ番組でしゃべったりして流れていたんだよ」
 
「うふふ」
 
彼女と会って話したのは2月下旬であった。
 
「KARIONのライブでKARIONが未発表のローズ+リリーの歌を歌ったりしていたし、ゲストでローズ+リリーが出てきたこともあったし」
 
「和泉たちにマリのリハビリに協力してもらったんだよ。元々和泉とマリは詩人としてのライバル心が強烈だから、和泉としては自分のライバルに復活してもらわないと張り合いが無いという気持ちがあったしね」
 
「だからマリちゃんが復活してから水沢歌月の情報を小出しに出し始めたのか」
 
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「うん。そういうこと。だからKARIONの4人目がケイということに自分は2012年初め頃に気付いたとか書いてた人もいたね。2011年12月に出した『星の海』で水沢歌月がEWI 4000Sを吹いたことを明記したけど、私はスイート・ヴァニラズのイベントでEWI 4000Sを吹いたことがあったから」
 
「あ。それはログで見た気がする。でもKARIONのファンサイトとローズ+リリーのファンサイトが共同で蘭子=ケイの行動をチェックしていたけど、あれまるで『時間の狭間』みたい。巧妙に双方の出番を掛け持ちしているよね。KARIONとローズクォーツあるいはローズ+リリーのライブの時間差が絶妙。そもそも両方のライブの日時を最初からまとめて計画してるとしか思えん。交通費は無茶苦茶かかっているみたいだけど」
 
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「私、2008年はANAのブロンズメンバーだったけど、翌年からは毎年ダイヤモンドメンバーになっている」
「ああ、そのくらい使ってるだろうね」
「新幹線代も年間200万超えてるから、新幹線にもマイルが欲しい。レンタカー代も凄いよ。でも移動時間は私の主たる創作の現場だよ。車運転している時はICレコーダに歌って吹き込んでおく」
 
「なるほどー。でも例の名古屋から金沢に1時間で移動したというのは、どうやったの? きっと東海北陸自動車道をハーレーダビッドソンでぶっ飛ばしたんだとかファンサイトでは言ってたけど」
 
名古屋−金沢間は東海北陸道経由で230kmなのでハーレーで200km/hで走れば確かに1時間10分で到着する計算は成り立つ。バイクを使えば一車線区間も問題にならないというのがミソだ。東海北陸道はオービスも少ない。
 
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「それはさすがに逮捕される。そもそも私、大型バイクの免許持ってないし。あれはドラえもんからどこでもドアを借りたんだよ」
 
「今度、それ私にも貸して!」
「ドラえもんに言ってよ」
 

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