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■夏の日の想い出・胎動の日(11)

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ということで5人でカラオケに行くことになった。
 
「あっ。さっき冬が言ってたKARION、新着に入ってるよ」
「掛けてみよう」
 
前奏のオルガンの音が響く。自分が弾いた部分なのでちょっと面はゆい。私はマイクを取って中性ボイスで歌い出した。(音域的に男声ではこの曲は歌えない)
 
「なんかきれーい!」
「あの鐘のような音が美しいね」
「グロッケンシュピールの音だよ」
「へー。よく知ってるね」
「実はこの曲の録音は、ボクがバイトしているスタジオでしたんだよ。だから制作の現場を見ていたから」
 
「すごーい。じゃ、KARIONの子たちとも話したりした?」
「うん、まあね」
と言って私はそのあたりは曖昧に誤魔化しておく。
「お疲れ様〜、とか言って、ジュースやお弁当渡したりとかしたよ」
「あ、そういうのもいいな」
 
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「でも冬ちゃん、さっきまで話していた声と違う」とカオル。
「ああ、冬は今みたいな声も出るんだよ」と理桜。
 
「ふつうのバリトンボイスでは、この曲は音域が高くて歌えないから」
と私は説明する。
 
「でも音域が分かってるって、かなり歌い込んでいる?」
「ああ、ボクは一度聴いた曲は歌えるから」
「へー」
 
というか、この曲は譜面も持ってるからね〜。大量の書き込み入りだけど。作詞家のゆきみすずさんが悩んで何度も歌詞を修正した部分がゆきさん本人の筆跡で書き込まれていたりもする。私は当時の音源制作の場面が記憶の中に蘇って少し気分が昂揚した。思えばあれは初めてスタッフではなく演奏者として参加した音源制作だ。またやりたいな。
 
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「半年以内くらいに聴いた曲なら、歌詞見ないでも歌えるよ」
 
「試してみよう」
「誰か冬に目隠しして」
「よし」
 
というので、政子が掛けていたスカーフを私の頭からかぶせて目隠しをする。
 
「この曲行ってみよう」
と言って、理桜が掛けたのは KAT-TUNの『喜びの歌』である。私はバリトンボイスを使って余裕で歌ったが
 
「これ確か去年の6月に出た曲。半年以上前」
と文句を言う。
 
「アバウト半年だよ。じゃこれ」
と言って次に掛けたのはYUIの『LOVE&TRUTH』であった。私は今度は中性ボイスを使って歌った。
 
そのようにして更に3曲ほど理桜が最近の曲っぽいのを掛けたが私は目隠しされたまま全部完全に歌った。
 
「歌詞を全く間違えなかった」
「3番とかまで歌えるって凄い」
 
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「でもさ、冬ってそもそも歌が凄くうまいね」
「うん。冬、これだけ歌えたらプロになれるよ」
「デモ音源作って、持ち込んだりしてみない?」
 
「あ、でも添える写真は女の子の格好した写真がいいよ」
「それって、女の子歌手としてデビューしろと?」
「当然」
 
まあ、そのつもりだったけどね!
 

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3月3日の卒業式の後で、政子は実は、父がタイに転勤になるので、自分も一緒に付いてこいと言われているということを私に打ち明けた。こないだから政子の様子がおかしかったのはそれだったのか!と思い至ったが、それは私にとっても大きな衝撃だった。
 
しかし政子はせつない目をして私に言った。
「私にキスしてくれない?そしたら私、頑張って日本に留まる」
 
政子は唇にしてと言ったが、唇へのキスは花見さんとしなよと言ったら頬でもいいというので、私はそっと政子の頬にキスした。政子も私の頬に強くキスをした(キスマークが残るくらい!)。それが私と政子のファーストキスだった。
 
その時期、政子は本当に自分にとって欠くべからざる存在になっていたので、政子がタイに行ってしまうかも知れないという話は、かなりショックで、その週、私はクラスメイトの仁恵や紀美香に「唐本さん、どうかしたの?」などと言われるほどだった。
 
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3月9日。私は少し沈んだ気分のまま、ヴァイオリンと三味線と胡弓を持ち渋谷に出かけた。雨宮先生と落ち合い、道玄坂を少し登った所にあるスタジオに入った。
 
「ケイちゃん、何かあったの? 心配事とかありそう」
「いえ、なんでもないです」
 
「今の気持ちを楽器にぶつけてみない?」
「そうですね」
 
私はヴァイオリンを取り出すと、ほんとうに自分の今の気持ちをぶつけるつもりで弓を動かした。
 
「凄くきれいな曲になった。今の曲、譜面に書いてあげるよ」
 
と言って、先生は私が今即興で弾いた曲を五線紙に書き出してくれた。凄い速筆である。音符の玉も線のみだ。しかし音符の位置はしっかり書かれているので、あとで清書する時に迷うこともないだろう。
 
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「なんか譜面書いてる内に歌詞を思いついちゃった。付けちゃっていい?」
「はい、お願いします」
 
それで先生は20分ほどでその曲に詩を付けてしまった。私はリクエストされてその曲をヴァイオリンでずっとリピート演奏していた。
 
「しかしこれが例の600万円のヴァイオリンか」
「従姉は400万円でいいよと言っているのですが、400万ってことはないだろうと思うんです」
「うん。600万円か、ひょっとすると800万円くらいするかも」
と雨宮先生も言う。
「ああ、そのくらいしますか」
 
「その代金、来年には払えるようにしようよ」
などと先生はおっしゃった。
 
「そうですね」
「さて、歌詞完成。私がピアノで伴奏してあげるから歌ってみて」
「はい」
 
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それで雨宮先生がピアノ伴奏する中、私は『あなたがいない部屋』というタイトルが付けられた、その曲を熱唱した。雨宮先生がピアノを弾くというのもひじょうに珍しいシチュエーションだったのだが、そのことを当時は特に何も思っていなかった。
 
「まるでもう何十回も歌っているかのように歌うね」と先生。
「ハッタリです」と私。
「そのハッタリが凄い才能だと思うよ、ケイちゃん」
 
この『あなたがいない部屋』について、先生は「モーリー作詞・柊洋子作曲」
のクレジットでJASRACに登録してしまった。柊洋子はJASRAC登録済の名義だがモーリーというのもJASRACに登録されているらしい。この時期、この人はやはりプロなんだろうな、しかも「先生」などと普通のアーティストから呼ばれるような、指導的立場にある人なのだろうというのは薄々感じていた。
 
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その後、私は三味線で『黒田節』、胡弓で『越中おわら節』を演奏した。
 
「三味線の音はポップスにはうまく使えないなあ。でも胡弓は使えると思う。今の音の感じを考えて『花園の君』のアレンジしてあげるよ。それと今できた『あなたがいない部屋』も編曲しちゃおう。こちらは編曲料サービス」
「ありがとうございます」
 
「ベッドに付き合ってくれたら『花園の君』もタダにするけど」
「お断りします」
 
私は当時、雨宮先生を女性と思い込んでいたのだが(雨宮先生も私を女の子と思い込んでいたらしい)、レスビアンなのかなと思っていた。実際にはバイのようで、可愛い子は女の子でも男の子でも摘まみ食いしているようだ。
 
その日はその他、そのスタジオにある楽器を演奏してみせた。
 
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「確かにギター、ベース、ドラムスはそんなにうまくないね。でもこれ以下の演奏技術で、ロックバンドとかで活動しているアーティストはたくさんいるよ」
 
「特にロック系は、弾ければいいやというノリでバンド作ってる人も多いから」
「それで人気出ちゃうとずっと下手なままってのもいるしね」
「ああ、いますねー。プロになったのなら、アマチュア以上に努力すべきだと思うのに」
「そうそう。プロはアマの3倍は練習すべきだよ」
 
と言ってから雨宮先生はふと私に訊いた。
 
「ケイちゃん、サウザンズとかはどう思う?」
「音が合ってたら、あの人たちうまいですね」
「うんうん。音が外れてるけど演奏技術はあるという不思議なバンドだよ、あれ」
と言って笑う。
 
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「でもこないだ出たアルバムは全曲きれいに音が合ってた。ポリシーが変わったのか、あるいは良いサウンドスタッフが付いたのかなと思って聴いてたんだけどね」
 
「そのチューニングさせてもらったのは私です」
「へ?」
「私がバイトしているスタジオでサウザンズの録音をしたので、その時、チューナーとかで音を合わせるのを拒否するメンバーに困ったマネージャーさんが『そこにいる女子高生にチューニングさせるのはどう?』と訊いたら、『高校生の若い耳で合わせてくれるんならいい』と言ってくれて。それで毎日スタジオに通って、ギター、ベースのチューニングをして、ドラムスも皮の張り具合の調整をしました。次回も頼むと言われています」
 
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「へー! それでか。あれは今まで音の外れ具合でサウザンズ買ってなかった人にも聴けるアルバムになってたよ」
 
と言ってから雨宮先生は更に付け加えた。
 
「ケイちゃん。君はもう既にプロだよ。KARIONに深く関わって。サウザンズにもそうやって関わって。だいたい『柊洋子』でJASRAC検索してみたら、けっこう作曲・編曲でヒットするじゃん」
「そうですね」
 
「だから人の3倍練習しない?」
 
「・・・私あそこ通おうかなあ・・・」
「ん?」
「○○プロの人から、授業料の要らない特待生にするから系列の○○スクールで少しレッスン受けてみない?と言われていて」
 
「ああ、せっかく授業料ただでいいっていうんなら通えばいい。別に特待生になったからといって、○○プロからデビューしなきゃいけないことないんでしょ?」
「ええ。それは拘束されたりしないと言っておられました」
 
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「じゃ行ってご覧よ。ケイちゃんなら3〜4回レッスン受けただけでも凄く進歩すると思う」
「はい」
 

「ケイちゃん、次空いてるのは?」
「今週の週末から23日までの予定でKARIONの音源制作に入ります」
「君は何を演奏するの?」
「前回はピアノ弾いてコーラス入れて。実は1曲だけメインボーカルにも加わっていたんですが、今回はヴァイオリン弾けるのがバレちゃったんで、ヴァイオリンも弾いてと言われています」
 
「おお、頑張ってきてね。じゃ私たちの次のセッションは3月30日ということで」
「分かりました。よろしくお願いします」
 

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雨宮先生とスタジオで過ごした翌日、私は政子からひとりで日本に残ることになっこと、そして花見さんと婚約したことを聞いた。
 
私は政子とまだ一緒にいられるようになったことが嬉しくてついハグしてしまった。また、花見さんとの関係についてもハラハラしていたので素直に婚約おめでとうと言った。その「おめでとう」という言葉に政子は少し不満があるかのような顔はしていたが。
 
「それでさ、冬。今週末どこか行かない?」
「ごめん。今週末から来週末まで、バイト先のスタジオで集中して音源制作の現場に入らないといけないから」
「えー。私用事があるからといって啓介とのデート断ったのにな」
 
「デートしたくないの?」
「うん・・・まあ・・・」
 
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「じゃなんで婚約したのさ?」
「なりゆきかなあ・・・・」
 
「そんなんで結婚したら後悔するよ」
「そうだよねぇ・・・仕方無い。今週末はひとりでどこか行こう。何かお勧めの場所とかない?」
「うーん。ライブでも行ってくる? これ知り合いの社長さんからもらったんだけど」
 
と言って私は、丸花社長からもらった保坂早穂の30歳誕生日記念ライブのチケットを渡した。
 
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