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■夏の日の想い出・胎動の日(7)

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「さっきの曲はね、ケイちゃんでもいいんだけど、誰か声の透き通った子がいたらそういう子に歌わせると良い。何か伴奏にはきれいな音が欲しいなあ。何だろう。グラスハープ・・・・ヴィブラフォン・・・・違う。グロッケンシュピールだ。この曲には揺れるヴィブラフォンの音よりシンプルなグロッケンシュピールの方が似合う」
 
モーリーさん、鋭すぎます。。。と私は本当に感心した。私もこの曲は和泉の透明感のある声、そしてグロッケンという楽器に本当によく合うと思っていた。
 
「でもこの2曲、世界観が全然違うね」
「これ別の友人が書いた詩にそれぞれ曲を付けたものです。だから世界観はその詩を書いた子の世界観をそのまま借用してるんですよね」
 
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「なるほど。でも詩の世界観をそのまま使って曲が書ける人はレアだよ」
「そういうものですか?」
「たいていの作曲者は自分の世界観に置き換えてしまう。『荒城の月』なんていい例でしょ?」
「作詞者の土井晩翠は仙台青葉城、作曲者の瀧廉太郎は大分岡城でしたね」
「うんうん。世界観をそのまま使うってのができる作曲家は私の友人にひとりいるけど、彼もレアだと思う」
「へー」
 
この時雨宮先生が言ったのはもちろん上島先生のことであるが、私もこの時はそれ以上、向こうの話には突っ込まなかった。ただ私はその「友人」という言葉に微妙な感覚を感じ取った。
 
「そのご友人って、モーリーさんの彼氏?」
 
すると雨宮先生は突然ゴホン、ゴホンと咳き込んだ。
 
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「違うわよ〜。確かにそんなこと人から言われたことあるけど。彼との間には恋愛感情はないと思うよ」
「あ、すみませーん」
 
「もう。こんなこと言われたの4年ぶりくらいだな。仕返しにケイちゃんの恋愛も言い当ててやる」
「え?」
「あんた、その『ギリギリ学園生活』を書いたほうの子のこと好きでしょ。レスビアン的に」
 
「えーーー!?」
 

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「でもさ、半年前に会った時に見せてもらった曲からは格段の進歩だよ。何かあったの?」
 
「そうですね。私、去年の春から録音スタジオの助手のバイトしているのですが、それでプロのミュージシャンさんたちの録音の現場で生の真剣な音作りの場を見て、物凄く刺激されたのがあります」
「なるほど」
 
「それと、去年の8月から10月までテレビの歌番組のリハーサル歌手やってたんです」
「うそ?なんて番組?」
「『歌う摩天楼』です」
「おお!良心的な番組だ」
 
「それで現役バリバリの歌手やバンドの歌を間近に見て、物凄く刺激になりました」
「それは君のレベルの子があの現場にいたら凄い勉強になるだろうね。でもケイちゃん、本番に出演する歌手より上手かったりして」
 
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そういえばプロデューサーさんから、本番に出ない?なんて言われたなと思い出した。
 
「そのリハーサル歌手を先日KARIONというユニットでデビューした和泉って子とふたりでやってたんですけど、和泉の方があの番組が終わった後で、デビューが決まって、こちらも負けてられない気持ちになって。少し頑張ったかな」
 
「おお。君を差し置いてデビューさせるとは、凄い実力の子なんだろうね」
 
「実は私もそのユニットに誘われたんですけどね。彼女とはむしろライバルになりたいという気持ちがあったのでお断りしました」
「へー」
 
と言ってから、雨宮先生は再度そちらのユニット名を尋ね、メモしておられた。
 
「ね、ね、私レコード会社とかプロダクションとかにたくさん知り合いがあるからさ、ケイちゃん取り敢えずデモCD作ってみない?」
「えー、でもデビューする気になった時はうちに声掛けてね、と言われている事務所もありますし」
 
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「そこと契約書とか交わしたり、具体的な音源制作とかしてるの?」
「いえ、全然」
「じゃ、自主的にデモ音源作るのは全然構わないよ。作った後、そこに持ち込んでもいいし」
「あ、そうですよね」
 
「ケイちゃん、これだけ曲が作れるなら、自作曲を使った方が良さそう。何か適当な曲は無い?」
 
「そうですね・・・これとかどうかな」
 
と言って、私はノートパソコンを取り出し、少し考えてひとつの曲を開いた。
 
「へー、ノートパソコンを持ち歩くようになったのか」
「実はそのKARIONの音源制作には参加しているので、その報酬としてもらったお金で買いました」
「なるほどー」
 
(私が「演奏料」をもらったのは1stシングルのみである。2ndシングル以降は歌唱印税の形でもらっている。KARIONの歌唱印税は和泉・小風・美空と私で4等分している)
 
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私は『花園の君』という曲を見せた。「歌ってみせて」というので、MIDIを鳴らして、それを伴奏に歌唱する。
 
「うん。いいね。その曲、私に編曲させてよ」
「わ?いいんですか? でも編曲料は?」
「そうね。私と一晩一緒に過ごすというのは?」
「却下です」
「ふふふ。じゃ出世払いでいいから100万ちょうだい」
「了解です」
 
「お、受けたね」
「私、あちこちに出世払いにしてるものあります」
「あはは、借金しまくりなのかな」
「ええ。でもその内、シンガーソングライターとしてばりばり稼いで返しますから」
「うん、君は絶対売れると思うよ。どのくらい借りてるの?」
 
「えっと、民謡やるんで、この三味線は母のを譲ってもらったのですが、胡弓を買ったのが値段聞いてないけど100万円くらい、それから従姉からヴァイオリンをもう3年以上借りっぱなしになってて、これについても適当な時期に私が買い取るということにしています。これが600万円くらい。で、今回モーリーさんに編曲していだくので100万円。取り敢えず800万円かな」
 
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「あはは。でもヴァイオリンも弾くんだ?」
「はい」
「今度聴かせてよ。えっとね・・・・」
といって雨宮先生は手帳を見る。
 
「3月9日、空いてる?」
「はい。大丈夫です」
とこちらも手帳を見ながら言う。
 
「あんた、その手帳見せてくれる?」
「あ、はい」
 
「何? この物凄い詰まりようは? これ、お仕事の予定ばかりみたい」
 
「そうですね。私、今日もですけど、民謡の伴奏に結構出て行っているし、スタジオの仕事で、音源制作やコンサートのPAなどで出て行くこともあるし、音源制作では仮歌を歌ったり、キーボードやヴァイオリン・三味線・胡弓を実際に弾いて演奏参加している時もありますし、KARIONに関しては私は<契約していない準メンバー>という立場なので、音源制作には参加しますし、先月は全国キャンペーンにも伴奏者として帯同しましたし」
 
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「あんた、実質スタジオミュージシャンだ!」
「あ、それ何人かに言われたことあります」
 
「キーボードも弾くのね?」
「ええ」
「他に何の楽器できる?」
「音源制作や演奏会でやったことのあるのは、ピアノ、電子キーボード、グロッケンシュピール、クラリネット、ヴァイオリン、三味線、胡弓、エレキギター、アコスティックギター、エレキベース、ドラムス、と、このくらいかな。でもギターとかベースとかドラムスは緊急避難的に私が演奏したもので、素人に毛が生えた程度ですけど」
 
「ケイちゃんの言う『素人に毛が生えた程度』は並みのプロと大差ないレベルのような気もするなあ。よし。3月9日はスタジオに行こう。それで実際に色々楽器を演奏してもらおう。三味線と胡弓とヴァイオリンとクラリネット持っておいでよ」
「あ、すみません。クラリネットは持ってません。演奏の時は楽団のを借りたので、個人で持っているのはマウスピースだけです」
「うん。じゃ、それはいいや。三味線と胡弓とヴァイオリンは持ってるのね」
「はい」
 
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「じゃ、それ持って、朝11時に渋谷のハチ公の上で落ち合おう」
「ハチ公の上??」
「うん。目立つようにハチ公にまたがっておいて。目印に薔薇の花を持って」
「嫌です」
「じゃ仕方無い。ハチ公の前でもいいよ」
 

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カラオケ屋さんを出て、駅に行き、一緒に特急で東京に戻る。私たちは車内で、最近の国内の音楽シーンについて色々話していた。先生の趣味が基本的にポップスの実力派アーティストにあることを感じた。
 
そしてそろそろ東京に着く頃に突然先生は言った。
「あんたさ、遅れついでにあと1時間くらい時間取れる?」
「はい」
 
先生は東京駅からそのまま私を新宿に連れて行き、裏手にある小さなホールに連れて行った。「A・Y・Aミニライブ」と書かれている。
「エーワイエー?」
「そのまま読んでアヤと言っているみたい。この子たち良いんだ」
 
当日券(500円)を買って、それで一緒に会場に入る。(雨宮先生はこういう所でチケット代をおごってくれるような親切な性格ではない)
 
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やがて拍手に迎えられて3人の女の子がステージに登場する。
 
「AYAの、あおいです」
「ゆみです」
「あすかです」
 
と自己紹介して歌い出す。ほほぉと思って私は聴いていた。
 
同じ3人組といってもKARIONとは全く違うタイプだ。KARIONの場合は和泉がメインメロディーを歌い、小風が3度下、美空が5度下を歌って三和音にしており、そのハーモニーが美しい。(本来はこれに「蘭子」がカウンターを入れたり和泉とユニゾンしてメインメロディーを強調したりしていたのだが、それは現在コーラス隊に委ねられている)
 
AYAの場合はユニゾンで歌うか、交替で1人だけでメロディーを歌い他の2人はダンスしている箇所も多い。『モーニング娘。方式』とでも言おうか。
 
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しかし私は聴いてて「うーん」と少し悩んでしまった。
 

ライブが終わった後、私は会場のロビーで売られていたCDを3種類買い求めた。雨宮先生は全部持っているらしい。会場の外に出てから、雨宮先生から訊かれる。
 
「ケイちゃん、不満がある感じだね」
と言われる。
 
「えっとですね。結構いいんですけど、ゆみちゃんと、残りのふたりの実力が違いすぎます」
と言う。
 
「うん。そうなんだよ。そこが問題だと思う。正直ゆみちゃんのソロでもいいよね、これ」
 
「いや、3人でやるなら、残りの2人の活かし方があると思うんですが、今のように並列方式では実力差だけが目立って、良くないです」
「ふーん。ケイちゃんなら、残りの2人をどう使う?」
 
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「メインボーカルはゆみちゃんと割り切っちゃった方がいいです。残りの2人はコーラスとダンスで頑張ってもらう。『SPEED方式』かな」
 
「ああ、その方が残りの2人の魅力がよけい生きるだろうね」
 
「このCDのレーベル、聞いたことないですが、インディーズですか?」
「そそ。でも★★レコードから4月にデビューすることが決まっている」
「へー!」
 
「まあ色々問題はあるけど、今日みたいな感じでライブはいつもたくさん客が入っているんだよね」
「ああ、これだけ歌えたら人気出るでしょうね」
 
「でも実際問題としてファンはほとんど、ゆみちゃんのファンだよ」
「歓声が『ゆみちゃーん』てのしか無かったですね」
 
「それでさ。この3人も、ケイちゃんと同じ学年だよ」
「・・・・・」
 
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「ライバル心、出ない?」
「出ます」
 
「この程度の子たちがメジャーに行くなら、自分もという気持ちになるでしょ?」
「なります」
「よし。頑張ろうね」
「はい」
 

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■夏の日の想い出・胎動の日(7)

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