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■夏の日の想い出・胎動の日(9)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-05-07  
「あれ、蘭子ちゃんだ」
という声がする。びっくりして振り向くと、先月のKARIONのキャンペーンで一緒になったコーラス兼キーボードの穂津美さんだった。
「こんにちは。穂津美さんでしたね」
 
脱衣場で立ち話も何なので、浴室に入り、浴槽につかりながら話をする。
 
「KARIONは今週もキャンペーンで飛び回ってるみたいだけど、蘭子ちゃんは行かなくてよかったの?」
「いや、穂津美さんこそ」
「私は臨時参加だったからね。でも蘭子ちゃんは元々のバックバンドの人かと思ってた」
「ああ、元々メンバーにも勧誘されたんですけど、断ったので、じゃ音源制作にだけ参加してと言われて、それからなしくずし的に先日のキャンペーンにも」
 
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「ああ、それはそのまま、なしくずし的に固定メンバーになるね」
と穂津美さんは笑っている。
 
「でも実を言うと、私、芸能活動に関する許可をすぐには親から取れない状況にあるんですよ。それで和泉たちに迷惑掛けてはいけないからというので辞退したんですよね。でも今年中には親の許可を取って、別途デビューを目指したいと思っています」
 
「ふーん。頑張ってね」
「穂津美さんはメジャーデビューを目指さないんですか? キーボードうまいし、いきなりベース弾けちゃったみたいに器用だし、歌もかなりうまいと思ったんですけど」
 
「うん。目指すよ。今回は∴∴ミュージックさんの仕事だったけど、別の事務所との付き合いもあってね。そちらから行っちゃうかも」
「ああ、みんな結構複数の事務所に関わっているもんなんですかね〜」
「ふーん。蘭子ちゃんも?」
 
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「ええ。実は別の事務所とのつながりも以前からあって」
「この業界、デビュー予備軍の子に、そういうのは珍しくないよ。私も小学生の頃は◎◎レコードのスカウトの人から声掛けられて、そちらでレッスン受けてたんだけど、中学に入ってからは今度は★★レコードから声を掛けられて。実はマリンシスタのバックで踊ってたんだよ」
「すごーい!」
 
「あっという間に解散しちゃったから、こちらもあっという間に失職して。今は半分スタジオミュージシャン、半分歌手修業中・作曲修行中って感じかな。短大卒業するまでには、自分の方向性に決着付けたいんだけどね」
「作曲もなさるんですか?」
「あれ?蘭子ちゃんも?」
「ええ。まだまだ未熟ですけど」
 
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「へー。作品聴いてみたいな」
「あ、じゃお風呂上がったあとカラオケにでも行きませんか? 穂津美さんがどんな曲を書かれるのか聴いてみたいです」
「ふふふ。私の作曲はすごーく非常識だよ」
「ますます興味を感じます」
 

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私がお風呂をあがって部屋に戻ると
「長風呂だね〜」
と言われる。
 
「いや、お風呂から上がってから知り合いに2人も会っちゃって。ついつい長話になっちゃって」
「へー」
「ひとりとはカラオケに行く約束しちゃった」
 
「何?カラオケ?」
「お、私たちも行きたーい」
「うーん。。。いいのかなあ」
「いいじゃん、付き添い、付き添い」
 
ということで4人でぞろぞろと玄関の所に行ったら、向こうも二人連れだった。
「ごめーん。一緒に来た友だちもカラオケ行きたいと言って」
「こちらもですー」
 
ということで6人で一緒に旅館街にあるカラオケボックスに行った。
 
都会にあるシダックスとかビッグエコーのような洗練されたカラオケボックスではなく、30年くらい前に流行したような、コンテナタイプである。入口の小屋で料金を払い、中庭?に並べられたコンテナの中のひとつに入る。衛生的にもちょっと疑問がある感じだったが、幸いにも今回来たメンバーの中にはそういうのに神経質な子はいなかった。
 
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取り敢えず自己紹介する。
「すみません。いろんな名前で呼ばれていて混乱していると思いますが、蘭子こと、柊洋子こと、唐本冬子でーす」
「冬子ちゃんってのが本名?」
「はい。蘭子は例のユニットでの名前、柊洋子は元々は小学生の頃に使っていた名前なんですけど、今はスタッフとして動く時に使ってます。おかげでJASRACにも作曲者とか編曲者として柊洋子が登録されているし。他に民謡の方の仕事をする時は、若山富雀娘(ふゆすずめ)というのも使っています」
「なるほど」
「なんか良く分からん」
 
「でも冬ちゃんって、そんな声も出るんだ?」
とその場に居た全員に言われる。私は笑って誤魔化しておいた。私はここでは男声も女声も使えない雰囲気だったので、中性ボイスを使っていた。
 
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「橘理桜です」
「倉越圭子です」
と続いたが、政子は何だかボーっとしている。隣に座っている圭子がトントンと肩を叩く。
「あ、中田政子です」
 
ということで政子はこの時ボーっとしていたので、私が色々な名前の説明をしたのを聞いていなかったようであった。
 
「私は長丸穂津美。いろんな名前というと例の仕事してた時はLCと言ったのよね」
「LCですか?」
「長丸という苗字を英語に訳して Long Circle. その頭文字を取ってLC」
「へー。凝ってますね」
 
「私は、てらいりみすと」
「みすと?珍しい名前ですね」
「『霧』と1文字書いて『みすと』と読む」
「読めません」
「振り仮名を振らずに名前を書いて、正しく読んでもらったことないよ」
「でしょうね〜」
「私も穂津美ちゃんと一緒に例の仕事してたんだけど」
「あ、そうだったんですか?」
「その時は『ティリー』だった。寺入という苗字からテイリでティリー」
「なんか格好いい」
 
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「あ、待って」
と理桜が言う。
 
「エルシーにティリーだったら、もうひとりレイシーさんが居れば例の3人ですね」
と理桜。
「そうなのよ。だから、レイシーってニックネームの子がいたら、仲間にしてドーアマイスとかいうユニット作ろうよ、なんて話をしてるんだけどね」
と霧。
 
「何?それ」と圭子が訊く。
「不思議の国のアリスに出てくる、ヤマネの三姉妹なんだけどね。実はアリスのモデルのリデル三姉妹の名前の変形なんだよね」
「へー」
「ヤマネのこと、英語でドーアマウスというんだよ。眠りネズミって意味だけどね」
 
「その名前がエルシー、ティリー、レイシーなんだけど、レイシー(Lacie)というのが Alice のアナグラムなんだよね」
「ほほお」
「だから、レイシーって子がいたら、その子をリーダーに据えちゃう」
「なるほどー」
 
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「れいこさんとかなら、レイシーになるんじゃない?」
「そうそう。そういう名前の子で、私たちの音楽と融和性のありそうな子を物色している」
「見つかるといいですね」
 

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お互いの曲を披露しあう。私は政子に許可を取って、これまでふたりで作った曲のいくつかを披露した。
 
『あの夏の日の想い出』(後に『あの夏の日』のタイトルでリリースしたもの。ただしこの当時は本来の譜面が行方不明になっていて、暫定楽譜を使用した)、『ギリギリ学園生活』、『ピンク色のクリスマス』、『盗まれたハート』、『渡り廊下の君』といった曲を荷物に入れて持って来ていた小型キーボードで伴奏しながらで歌ってみせる。
 
「でも冬ちゃんって、凄く素直な曲を書くね」
「詩を書いてくれる政子が、凝った詩を書くので、曲はとても単純に」
「ああ、それは良い創作方法だと思う」
 
「よし、今度は私たちの番だ」
と言って、霧さんがギターを弾き、それに合わせて穂津美さんが歌う。
 
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彼女たちも5曲歌った。
 
「凄いです。こんなの私には書けません」
と私。
 
「ふふふ。こんな曲を書けるのは私みたいにクレイジーな頭脳の人間だけだよ」
と穂津美は得意そうに言う。
 
「和音の使い方がなんだか凄い。こんな使い方初めて聴いた」
と理桜も言っている。
 
「でもメタルとかじゃなくて確かにポップスですね」
「うん。だから、この音楽を理解してくれるプロダクションが存在するかどうかも問題なのさ」
「畠山さんの趣味には合わないかも」と私。
「うん、そんな気がする」
「もう1ヶ所、よく顔を出している事務所の社長さんにも聴いてもらったんだけど『うーん』と言ったきり悩んでいた」
「ああ、悩みそう」
 
「まあ最初は自主制作でCD作ってみようかね、なんて言っているんだけどね」
「でもこれ絶対買う人いますよ」
「多くはないかも知れないけどね」
 
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「でも最後の曲」
「『愛の武闘会』?」
「ですかね。ラーララララッララーってやつ」
「よく歌えるね」
「うん。こんな無茶なメロディーラインなのに」
 
「それはヒット性があると思います」
「あ?そう思う。これ以前聴かせた友だちにも言われた」
 
「ポップスにもハードロックにも強い人にアレンジしてもらうと、凄く聴きやすい曲になりそうな気がします」
「うーん。聴きやすくするのはポリシーに反するのだが」
と穂津美さん。
「だけどたまには世間に迎合してもいいかもよ」
と霧さん。
 

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カラオケ屋さんから戻って来たのはもう24時少し前だった。
 
「明日もスキーたっぷり滑りたいから寝なくちゃ」
「ごめんねー。ボクがカラオケに誘ったから遅くなっちゃって」
「いや、楽しいお姉さんたちとおしゃべりできたし」
「うん。あのふたり面白い人たちだと思った」
 
「そうだ。冬ちゃん、そういう中性的な声が出るなら、私たちともそれで話しなよ」
「うん。男の子の声で話されるより、その方が私たちも気楽」
「うん。そうだなあ。そうしようかな」
 
「ほんとに性別曖昧な声だよね」
「いつの間にそんな声を練習していた?」
「えへへ」
 
「その声、もう少し練習したら、もっと女の子っぽくできるよ」
「そうかな」
「練習してごらんよ」
「うん。頑張ってみようかなあ」
 
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「ところで、どういう組合せで寝る?」
と圭子が訊くが
 
「私と圭子、政子と冬子でいい気がする」
と理桜が言う。
 
「たぶん、異論無さそうね?」
と政子も言う。
 
そういう組合せになるというのは、部屋をツイン2個にしてもらえないかと言われた時に、既に全員の頭の中にあった感じではあった。
 
「じゃ、私と冬は向こうの部屋に行くね」
「うん。じゃ、お休み〜」
 

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ということで、私と政子は荷物を持って隣の816号室に移動した。
 
「ねえ、冬。セックスしない?」
といきなり政子は言った。
 
「なぜ〜!?」
「だって、誰にも分からないよ」
「そんなことない。ボクたちが今夜セックスしたら、明日の朝のボクたちの顔を見て、理桜たちには絶対バレる」
 
「ああ、それはそうかも知れないね。でも理桜たち言いふらしたりしないよ」
「それはそうだろうけど」
 
「ね、コンちゃん持ってたりしないよね?」
「その質問にはお答えできません」
 
「ふーん。持ってるんだ?」
 
ボクはきちんと説明することにした。
 
「実は何人かの友だちに言われたんだよ。ボクと政子が恋愛関係になってるんじゃないかって。それで念のため持っておきなさいと言われたんで、持ってはいる。でも使うようなことをするつもりはない。ボク、以前言ったように、女の子には恋愛的な関心が無いんだ。ボクの恋愛対象は男の子だよ」
 
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「ふーん。じゃ、私のこと好きじゃない?」
と政子は問う。
 
「好きだよ。友だちとしてだけど。ボクにとって政子はとても大事な友だちだと思っている」
 
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