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■夏の日の想い出・胎動の日(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2013-05-06
 
今回のKARIONの「デビューイベント」では特に福岡・大阪・金沢の反応が良くて、この3箇所だけで連休明けまでに結局5000枚売れていた(福岡は放送が流されたのがイベントの後の時間帯になってしまったので、イベント自体はあまり人がいなかったもののその後で結構売れたらしい)。
 
そこで畠山さんは急遽翌週の週末19-20日にも、東京・仙台・札幌の3ヶ所でイベントを行った。これはあまりにも急に決まった予定だったので、ミュージシャンさんたちの確保ができず、マイナスワン音源での演奏になったが、好評で東京ではサイン会に1000人以上並び、その週で1万枚売れた。
 
そこで更に気をよくして翌週26-27日には、長崎・博多・神戸・横浜と
「港町ライブ」と称してイベントをすると、横浜ではCDショップが配った整理券が水曜日の時点で1500枚も出てしまい(そこでいったん発行停止をお願いした)、急遽、偶然空いていたホールを借りて、実質ミニコンサートをするような形になった。
 
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この横浜での「KARION初ミニコンサート」には、相沢さん・黒木さん・私の3人も出た(長崎・博多・神戸はマイナスワン音源)。
 
私はキーボードを弾いて、臨時で頼んだ、ベース、ドラムス、グロッケンの人を入れて6人編成で伴奏をした。コーラス隊は∴∴ミュージックに出入りしている女子中学生3人に頼んだ。
 

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この「港町ライブ」をする直前、金曜日に私たちは事務所に集まって簡単な打ち合わせをした。
 
横浜ライブでは、折角ホールでやるので、少し多くの曲目を演奏しようということになり、デビューシングルに入っている3曲に加えてSPEEDの『White Love』
と国生さゆりの『ヴァレンタイン・キッス』を演奏して全5曲の演奏にすることにしたが、
 
「きっとアンコールあるよね?」
「うん、来る来る」
「それで演奏できるような、何かきれいな曲無いかなあ」
 
などと話をする。この時居たのはKARIONの3人と私、畠山さん・三島さんに、たまたま忘れ物を取りに来たのをキャッチして「ついでにちょっと作戦会議に出ませんか?」と誘った相沢さんの6人であった。
 
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その時、和泉が
「この曲どうでしょ? いいなあと思ったんですが」
と言って譜面を見せる。
 
「クリスタル・チューンズ?」
「何かきれいな曲だね」
と譜面を斜め読みした相沢さんも言う。
 
「冬なら初見で弾けるよね?」
と和泉が言うので、私は「うん」と言い、事務所のキーボードを借りて演奏する。それに合わせて和泉が歌う。
 
「きれーい」
と小風も美空も言い、ぜひ歌いたいねという話になった。
 
「これ作者は?」
と畠山さんが訊く。
 
「ああ。私の友人が2人で書いたものですけど、使ってもいいけど恥ずかしいから名前は出さないでと2人とも言ってます」
と和泉。
 
「了解。2人か。じゃ使用料代わりにこれでもあげて」
と言って畠山さんは和泉に何だか高級そうな紙袋に入った小さな包みを2つ渡した。
 
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「何ですか?」
「火曜日に打ち合わせで長崎に行ってきた時に買った鼈甲製のギターピック」
「へー!」
 
すると
「あ、いいなあ」
と傍で相沢さんが言うので
「じゃ、相沢さんにもひとつ。3つしか買ってないので、これで最後ですけど。相沢さん、良かったら、これの編曲をお願いできませんか?」
「いいですよ。それではこのピックは編曲料代わりに」
 

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土曜日は、マイナスワン音源を持って、KARIONの3人と三島さん・畠山さんの5人で長崎・博多と行ったのだが、日曜日は神戸のイベントは三島さんに任せて、畠山さんは一足先に横浜まで戻ってきて、先行して会場入りした私と相沢さん、黒木さんの3人に合流する。
 
まだ畠山さんが戻ってくる前、音響会社の人が来ていたので、私たちは各楽器の音をひとつずつ出して、音響を確認してもらう。この付近、∴∴ミュージックの若い男の子が来てはいたが、要領を得ないので、結局私が設営関係も含めて全体的な指示をしていた。このあたりは民謡関係のイベントで散々経験しているのが大きい。音出しは、ギターとベースは相沢さんが、サックスとドラムスは黒木さん、キーボードとグロッケンは私が行った。
 
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「黒木さん、ドラムスうまいじゃないですか!」
「でもこないだは俺がドラムスに回ればサックスパートは外さざるを得なくなったから」
「確かに。サックスは口に咥えるから他の人には吹かせられないし」
「でも蘭子ちゃんだって、けっこうドラムス打つんでしょ?小風ちゃんから聞いたよ」
「えー? 私下手ですよ〜」
「下手かどうか、打ってごらんよ」
 
と言われるので少しディスコのリズムを打ってみる。
「俺よりうまいじゃん!」
「いや、私は素人だから」
「俺だってドラムスは素人だい」
 
そんな話をしていた時に、神戸で朝の確認だけしてから新幹線で横浜に戻ってきた畠山さんが到着する。
 
「12〜14日の演奏ビデオを編集してたんだけどね。結果的には最後の金沢公演がいちばん雰囲気いいね」
と言って、畠山さんは先々週のビデオを見せてくれた。
 
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「こうして見ると、やはり和泉はスターですね」
と私が言うと
 
「うん。今和泉ちゃんはスターになった。冬ちゃんは今はただのスタッフ。君と和泉ちゃんは古い友人ということで気軽に話したりしているようだけど、実際にはもうこの世界では天と地くらい違う立場だよ」
と畠山さんはわざとそういう言い方をしている感じだった。
 
「はい、自覚しています」
 
「今ならまだ間に合うよ。君もスターにならない? 実はデビューシングルの音源製作にも参加していた『準メンバー』の蘭子を正式メンバーに昇格させます、などと発表すればスムーズに君はKARIONのメンバーとして活動できる」
 
「いえ。和泉たちは先行するバスに乗って出発した。私はその次のバスに乗って和泉たちを追いかけます。そして追い抜きます」
 
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「ほほお。ライバル宣言?」
「はい」
 
「うん。いい返事だ。じゃ、君のデビューに向けても、少し話し合わない?御両親の説得が必要なら、僕も頑張るから」
と畠山さん。
 
「そうですね。でもその前に、私、例の件を両親にカムアウトしないといけないから」
「ああ」
 

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その時、相沢さんが言う。
「蘭子ちゃんさ、別の事務所からも声を掛けられてるんだって?なんかCさんがこないだ言ってたけど」
 
「えー!?」
と畠山さんが驚く。
 
「名刺を頂いただけです。具体的な話があった訳ではありません。紹介してもらってボイトレ教室とかには一時通ってましたが」
「なるほど、その段階までか。しかしやはり、君ほどの素材なら、注目されるか。どこのプロ?」
 
「○○プロの丸花社長です」
「うっそー!」
「なんか大手だ」
「しかも社長さん直々?」
「いや、こちらも社長さん直々ですが」
「そりゃそーだが。売上が100倍違うよ」
 
「でもほんとに具体的な話は無いんですよ。丸花さんとは都合5回くらい顔を合わせているかな。どうも私の行動範囲と丸花さんの行動範囲が重なっているみたいで。それに丸花さん自身言っておられました。自分は名前だけの社長で実質的な経営は浦中部長さんにお任せしているから、もしデビューする気になったら、浦中さんに引き合わせるよ、と」
 
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「うんうん。あそこの実質的経営者は浦中さん」
と相沢さんも言う。
 
「でもそれ、いつ頃の話?」と畠山さん。
「丸花さんに最初にお会いしたのは、もう3年以上前です」
「うわぁ、先に声を掛けたのは向こうか」
「実は私、○○プロの元専務さんがやっておられる民謡教室に小学5年生の頃から通ってたんです」
「元専務って、津田さん?」
「はい。でもそのあたりの関係全然知らなくて」
 
「じゃ、丸花さんと知り合ったのも津田さんの線?」
「いえ。全然関係無い場所で、偶然私が歌っているところを丸花さんに見られて名刺を頂きました。津田さんとのつながりは後で知ってびっくりしたのですが」
「なるほど」
 
「でもホント丸花さんとは業界の世間話とかしているだけで。いちばん最近会ったのは昨年の秋ですけど、ひたすらAKB48の話をしてました」
 
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「いや。冬ちゃん、向こうと特に具体的な話が進行してないのなら、本気でデビューする気になった時は僕の方に言ってよ」
と畠山さん。
 
「はい、そのつもりでいます」
と私は笑顔で答えた。
 

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やがてKARIONの3人と三島さんが神戸のイベントを終えて横浜まで戻ってくる。他のバンドメンバーも集まってきていたので、1回合わせてから休憩にする。
 
「お疲れさーん」
と言って、私は和泉・小風・美空にお茶とお弁当を渡す。
 
「冬〜、今日はまるで付き人さんみたい」
「うんうん。今日の所は和泉たちはスター、私はスタッフということで」
「冬もこちらにきてスターになりなよ。何なら今日はコーラスじゃなくてボーカルで歌わない? ボーカル4人用の譜面もあるよ」
と和泉。
 
「いづれ行くよ。追い抜くかもよ」
「分かった。待ってる」
と言って和泉は私に握手を求めた。
 
続々と客が入ってくるが、あっという間に客席はいっぱいになり、立見まで出る状況であった。こちらは警備スタッフも入れている。
 
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相沢さん、黒木さん、私など伴奏のメンバー、私以外のコーラス2人がステージの所定の位置に付く。相沢さんの合図で演奏が始まる。幕が開く。KARIONの3人が舞台袖から走り出してくる。物凄い歓声。私は小さく呟く。
 
「和泉。私が行く時に失速していたりするなよ。全力で走っていろよ」
 

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シングルのタイトル曲『幸せな鐘の調べ』(ゆきみすず作詞・木ノ下大吉作曲)、カップリング曲『小人たちの祭』(ゆきみすず作詞・東郷誠一作曲)と歌ってから、SPEEDの『White Love』(伊秩弘将作詞作曲)、国生さゆりの『バレンタイン・キッス』(秋元康作詞・瀬井広明作曲)と歌い、最後にシングルのもうひとつのカップリング曲『鏡の国』(広田純子作詞・花畑恵三作曲)を演奏するが、この時、コーラス隊の中学生のひとりYちゃんが前面に出て行くので、私はびっくりする。
 
和泉が私の方に一瞬目をやり、にやりと意味ありげな視線を送った。
 
元々『鏡の国』はボーカル4人編成のために作られた曲で、4人が2人組になってエコーをするように歌う。音源製作の時は、実際に和泉と私、小風と美空が対になって歌っている。しかしKARIONは3人でデビューしたため、この部分の対称性が崩れて、ここまでのステージでは、小風と美空は対で歌っているが、和泉はひとりで歌う変形バージョンで演奏していた。しかしこの横浜のライブでだけ、4人編成用のアレンジを使ったのである。
 
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小風と美空、和泉とYちゃんが対になってこの曲を歌う。
 
私は本当にこの時は和泉とペアで歌っているYちゃんに嫉妬した。あそこは私のポジションだったのに!
 
でも演奏する内に、私は猛然とやる気が出てきた。
 
本気で追いかけるぞ、和泉。
 

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