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■夏の日の想い出・3年生の新年(5)

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(C)Eriko Kawaguchi 2012-11-27
 
ローズクォーツの音源制作が予定より2日余分に掛かってしまったので、本来6日から始める予定だった、次のローズ+リリーの方のシングルの音源制作は10日・日曜日から始めることにして、8日金曜日と9日土曜日はお休みにした。
 
学校は春休みである。8日。私と政子はいつものヴァイオリンとフルートを持ち朝から東北新幹線に乗った。
 
一ノ関駅で降りて改札を出た時、私たちは少し先に見知った感じの女子中学生を見た。
「青葉〜!」
と私は声を掛ける。向こうはびっくりしたような顔をして振り向いたものの、すぐに笑顔になってこちらにやってくる。
 
「お仕事?」
とお互いに言って笑顔になる。
 
「私たちはプライベートな旅行。これからレンタカーを借りて陸前高田まで」
「私はちょっと緊急に大船渡まで。良かったら、陸前高田まで乗せてくれません?タクシーで行こうかと思ってた」
 
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「タクシーで大船渡まで行ったら2〜3万掛かるんじゃない? 私たちは自由スケジュールだから、大船渡まで乗せてってあげるよ」
「すみません。助かります!」
 
そういう訳で、私たちは一ノ関駅前で予約していたアクアを借り、青葉を後部座席に乗せて、気仙沼・陸前高田経由で大船渡まで行った。
 
「もう高校は内定出たんだっけ?」
 
青葉は進学予定の高校から既に内々定を受けているのだが、受験勉強で頑張っている同級生に悪いので、通常の内定者発表までは、あまり派手に動き回らず、霊能者のお仕事もしばらく休業と言っていたはずである。
 
「いえ、来月なんですけどね。今回は緊急で」
「何があったの? って聞いていいんだっけ?」
 
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「大丈夫です。大船渡の神殿というか佐竹さんちの結界を作っている勾玉をですね、野犬が掘り返しちゃって」
「はあ?」
 
「野犬は即死だったようです。慶子さん、こわがって近寄れないというか、家の外にも出られない状態みたいなので、処理してきます」
「結界って、野犬には無力なの?」
「そうですね。霊に対する防御だから、実体のある生き物には無力です」
「難しいものね」
 
「冬さんと政子さんは、お仕事じゃなかったんですか?」
「ゲリラライブなのよ」
「へ?」
 
私たちは震災後の5月から毎月、東北のどこかで私たちが路上ゲリラライブをしてきたことを青葉に説明した。
 
「いいことだと思いますよ。それを聞いて、自分たちを応援している人たちがいるんだということを感じられるだけでも力づけられると思います」
 
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やがて、大船渡に着く。青葉は佐竹家からかなり離れた場所に車を駐めるよう頼んだ。まるで爆弾処理だ!
 
青葉は車内で着替えていた巫女衣装で車から降り、そちらへ歩いて行く。そして15分ほどで戻って来た。
 
「終わりました」
「お疲れ様」
「処理ってどうやるの?」
「埋め直して結界を再起動しただけです。犬の死体の処理は『女だから怖くてできません』と役場に泣きついてみましょうと言っておきました」
「まあアラフィフの女性に泣きつかれたら、誰か何とかしてくれるかもね」
 
「しかし触っただけで野犬が即死するようなものを青葉は触れるんだ?」
「触れる人はごく少数です」
「うーん。私たちは触らぬ神に祟り無しだな」
「それがいいです」
と青葉はにこやかに言う。
 
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「ねえ、冬。せっかくここまで来たし、今日のゲリラライブは、大船渡・陸前高田・気仙沼の三連チャンにしない?」
「ああ。いいね。青葉も一緒に歌う?」
「あ、はい!」
 
そこで私たちは近くの公園に移動し、ヴァイオリンとフルートを取り出して突発ライブを始めた。最初の曲は「G線上のアリア」だ。青葉は最初ラララで歌い始めたが、そのうち、勝手に歌詞を付けながら歌う。公園を通り抜けようとしていた人が1人、2人と足を留め、聴いてくれる。
 
ここで私が歌いたくなったので、私はフルートを青葉に押しつけると、気仙甚句を歌い始める。「大漁唄い込み」の「遠島甚句」の親戚のような歌である。政子のヴァイオリンが合わせてくれる。いきなりフルートを押しつけられて青葉は どうしよう? みたいな顔をしていたが、気を取り直して吹き始める。なーんだ!吹けるんじゃん!
 
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私が何種類かの歌詞で甚句を唄ったところで、突然政子が私にヴァイオリンを押しつけてきた。そして『地球星歌』を歌い出した。私は一瞬ぎゃっと思ったものの、押しつけられたら仕方無いのでヴァイオリンを弾き始めた。
 
それが終わった所で、青葉がフルートを政子に渡して『Shine』(家入レオ)を歌い出す。フルートを渡された政子は、困ったような顔をして、フルートをバトンのようにくるくる回し始めた!
 
その後、私がヴァイオリンを青葉に押しつけて『北上夜曲』を歌い始める。ヴァイオリンを手にした青葉は困ったようだが、政子のフルートと交換する!そして青葉がフルート、政子がヴァイオリンを弾いた。
 
続けて、政子の歌で『神様お願い』、私がヴァイオリン・青葉がフルート。最後に青葉が『夢をあきらめないで』を歌う。青葉がフルートを政子に押しつけたので、私が政子と楽器を交換し、私のフルート、政子のヴァイオリンでの演奏となった。
 
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最後は30人くらいの人が集まっており、中には青葉の知り合いもいたようで演奏が終わったところで青葉とハグしていた。それから私たちは引き上げた。
 
この日はこんな感じで、その後、陸前高田の郵便局前、それから気仙沼の駅前で私たちは演奏した。曲目は、陸前高田ではパッヘルベルのカノンから始まってフライングゲット・帰れソレントへ・レーザービーム・地球星歌・おもいで書店・神様お願いと続けた。
 
結局フルートは私と青葉が吹けて、ヴァイオリンは政子と私が弾けるということから、
 
私が歌う時は、政子がヴァイオリンで青葉がフルート。(Fl:私→青葉)
政子が歌う時は、私がヴァイオリンで青葉がフルート。(Vn:政子→私)
青葉が歌う時は、政子がヴァイオリンで私がフルート。(Fl:青葉→私,Vn:私→政子)
 
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という組み合わせで丸く収まることに気付き、陸前高田・気仙沼ではそういう組合せで順に歌を回しながら演奏した。
 
最後に気仙沼では、主よ人の望みの喜びよから始まり、空も飛べるはず・気仙甚句・春になったら(miwa)・荒城の月・Everydayカチューシャ、そして最後は神様お願いを歌った。
 
私たちは一ノ関に戻り、レンタカーを帰して3人で新幹線に乗る。もうすっかり遅くなったので、うちに泊まるよう言った。
 
「そうだね〜。週末だし、そうさせてもらおうかな」
「彼氏を千葉から呼んで、ふたりで一緒に寝てもいいよ」
「えー!? そんなの・・・・」
と言って彼にメールしている。行く!という返事があったようであった。
 

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「そうそう。唯香ちゃんのヒーリングありがとね」
と私は言った。
「いえ、お安いご用です」
「だいぶ楽になったと言ってた。青葉自身は性転換手術の跡、もう痛まない?」
「全然痛みません。傷は完全に治りました」
「すごいね。7月に手術してまだ半年ちょっとなのに。普通ならまだ痛みと戦ってる人も多いよ」
「私、普通じゃないから」
「私も青葉にヒーリングしてもらってから画期的に痛みが取れたもんね」
「去年1年冬がフル稼働できたのは、何と言っても青葉のお陰だよね」
 
「そういえば、青葉、女の身体になってからオナニーした?」
と唐突に政子は訊く。
「えっと・・・・してますけど」
と青葉は笑って答える。
 
「ちょっと、何セクハラ発言してんの?」
と私は注意する。
 
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「いや、男の子のオナニーと女の子のオナニーとどちらが気持ち良かったんだろう、と純粋な好奇心」と政子。
「私、男の子だった頃にオナニーしたことないから分からないです。むしろ、それは冬さんに訊いて下さい」と青葉。
 
「冬は男の子だった頃のオナニーは何かに無理矢理させられている気がした。した後の罪悪感がハンパ無かったというのよね」
「ああ、分かります」
「女の子になってからのオナニーは純粋に気持ちがいいって」
「なるほどですね。私も女の子になってからのオナニーは気持ちいいです。今まで知らなかった感覚です」
 
「道治にも訊いてみたんだけどね。男の子のオナニーって気持ちいいかって」
「はい」
「気持ちいい。セックスかオナニーか選べと言われたらオナニーだなんて言ってた」
「ああ、男の子はそうかも知れないですね」
 
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「罪悪感とか感じることない?と訊いてみたけど、何それ?って言われた」
「ああ」
「何かの間違いで性転換手術受けちゃって、女の子になっちゃったら、女の子のオナニーで我慢できるかって訊いたら、きっと我慢できなくて悲しくて仕方がないと思うと」
「まあ、普通の男の人は、私たちがおちんちんを無くしたいと思う感覚が理解できないでしょうね」
 
「冬はおちんちん取りたいってずっと言ってたね」
「私や青葉みたいなのは、生まれつきだと思うよ」
「やはり元が違うのか・・・・」
「ある時女に目覚めたとか言ってる人もたいてい嘘だよ。それまで隠していただけだよ」と青葉。
 
「なるほどね。冬も高2の時まで隠してたのね」
「そうそう」と私。
「でも、なんか高2以前にもかなり女の子してるよね」
「うーん。どうだろうね」
 
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「そのあたりをホントに吐かないからなあ」と政子が言うと
「きっと政子さんの想像通りだと思いますよ」と青葉。
「なるほど。想像通りなのか・・・・」と政子は私を見つめて言った。
 
「あ、違う」と青葉。
「ん?」
「多分、政子さんの想像以上です」
と青葉は言って笑っていた。
 
私も笑ったが、政子は「うむむむ」と言って悩んでいるようだった。
 

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東京駅の新幹線改札のところで、青葉の彼氏、彪志は待っていた。
 
4人で一緒に中央線に行く。
「あれ? 新宿区のマンションじゃないんですか?」
「うん。政子の実家に行く」
「へー」
 
政子の家の最寄り駅で降りて、タクシーで家まで行った。
「こちら初めて来ました」と青葉。
「よほどの親友しかこちらには呼ばないからね」
「向こうは仕事場、こちらはおうちって感じね」
「へー」
「私たちの住民票はこちらにあるんだけどね」
「へー!」
 
「でも政子の両親が5年ぶりに帰国するから、今大掃除の真っ最中なのよ」
「わあ! それは良かったですね」
「良くなーい。掃除大変」
 
居間でみんなを休ませ、私は食事を作った。青葉が手伝ってくれる。やがて巨大な鍋に大量のスパゲティ・ミートソースが出来上がり、ふたりで食卓に持って行った。
 
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「なんか下宿屋さんの食卓ですね」
「まあ似たようなもんね」
「私、子供7〜8人作ろうかなあ」
「そんなに作ったら、私はもう食堂のおばちゃんだな」
「子供8人いたら、御飯はどのくらい炊かないといけないんでしょうね」
「まあ、政子みたいなのが混じってなかったら、1升で済むだろうけどね。政子の分を除いて」
「唐揚げは政子の食べる分まで入れて5kgくらいかなあ」
 
「でも8人も子供産むの大変ですね。24歳から1年おきに産んでも最後の子が38歳の時」と青葉。
「その間、ローズ+リリーの活動も1年おきくらいになるかな」と私。
「事務所の社長さんが頭を抱えそう」
「大丈夫。冬に半分産んでもらうから」と政子。
「産めないよぉ」と私。
「受精卵をお腹の中に移植しちゃえば何とかなるんじゃない?」
と政子。
 
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