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■夏の日の想い出・3年生の新年(2)

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「でもどうして雨宮先生は『売れる』と直感なさったんですか?」
とサトが尋ねる。
 
「ああ。ケイちゃんと会ったことがあったからね」と雨宮先生。
「そうですね」と私も微笑んで答える。
「えーーー!?」と他の面々。
 
確かにこの件は私も政子と町添さん以外には言ってない。
上島先生も初耳だったようであった。
 
「どこで会ったの?」
「ローズ+リリーのデビューの1年くらい前だよ。私、繁華街で可愛い女子高生をナンパしてさ。あわよくば摘まみ食いしちゃおうかと思って」
「はい、ナンパされました」
 
「飲みに誘ったんだけど、未成年ですからダメです、って硬いんだ、これが」
「あはは。それでカラオケに行きましたね」
「そうそう。それで4時間くらい歌ったよね」
「ええ。雨宮先生って美声なんです。歌手としてCD出せばいいのに」
 
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「まあ気が向いたらね。だけどケイちゃんの歌のうまさとレパートリーの広さに私は感嘆したからね。目を瞑って適当に数字打ち込んで歌を呼び出して歌う、なんてゲームやったら、何が出てきても歌うんだもん。凄かったよ。ポップスからロックから、演歌から軍歌から、民謡から唱歌から。何でも歌っちゃう。あのゲームは完全に私の負けだった」
 
「あのゲーム、その後も何度かしましたね」
と私も微笑んで言う。
 
「負けた側は何かペナルティあったの?」
「カラオケ屋さんの代金、私が全部持ちにした」
 
「ケイが負けてたら、ケイが払ってたんですか?」
「高校生には払えないくらいの勘定にしてやったから。わざと高いメニューを頼んで。それでごめんなさい。払えませんと言ったらホテルに」
「あはは」
 
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「でもとにかく凄い子だと思ってたから、この子がデビューするんなら、絶対売れるから、良い曲書いてあげなよって、雷ちゃん(上島先生)に言ったんだよ」
と雨宮先生。
 
「ありがたいです」と私。
「でもあの時、私はケイちゃんのこと、本当に女子高生だと思い込んでいたよ」
と雨宮先生。
「私も雨宮先生のこと、本当に女性だと思い込んでいました」と私。
 
「へー。同類なのにお互い相手の性別に気付かないって、ふたりともパス度が凄いね」
と上島先生が言うが、政子が手を挙げて発言を求める。
 
「済みません。質問です。その時って、ケイは女子高生っぽい服装をしていたのでしょうか?」と政子。
 
「うん。高校の制服を着てたね。それで夜10時でカラオケ屋さんから追い出されちゃったんだよ。それが無かったら、夜通し歌って、ふらふらしてきたあたりであわよくばホテルに連れ込もうと思ってたんだけど」
「あはは。カラオケ屋さんの店長さんのお陰で貞操を守れたのかな、私」
 
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政子は「うーん。高1の時に雨宮先生と会ったとは聞いていたけど、その時既にケイは女の子だったのか・・・」とうなっている。
 
「ケイ、後でその件、しっかり追求するから」
と政子。
「また拷問?」
「当然」
などと言っていたら
「あんたたち、ほんとに仲いいね」
と雨宮先生に言われた。
 

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「あの時、雨宮は僕に『この子は僕のライバルになる』と言ったけど、本当にそうなったね」と上島先生。
 
「そうそう。そういう意味では敵に塩を送ることになるだろうけどね、と言ったのよね。ケイちゃんに作曲とかしないの?と訊いて見せてもらった習作に才能を感じたから」
と雨宮先生。
 
「デビューした年の10月に先生にお会いした時も、おっしゃいましたね。私とマリは自分のライバルになると思ったから、全力で作品を書いたのだと」
 
「そうそう。雨宮に言われてからあらためてジャケ写見ると、ふたりが持ってるオーラが凄い気がしてね。ちょっと闘争心が出てきたんだよ。僕は基本的には敵に塩を送るの好きだから」
「ありがとうございます」
 
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「それでボクが『その時』を書いて送ったら、翌日『遙かな夢』ができていて、その譜面を見て、やっと雨宮の言った言葉の意味を理解したよ。『その時』を捨てて、もっと凄いの書いちゃろかとも思ったけどね。まあ時間が無かったのでやめたけど。でも確かにこの子たちは僕のライバルになると確信した」
と上島先生。
 
「今はとてもかないませんが、いづれライバルになれたらいいですね」
と私は言うが
 
「嘘嘘。ケイちゃん、実際はかなり雷ちゃんに負けないような曲作りしようとしてるでしょ。特に、アイドル歌手に提供している曲とか、そういう感じの力(りき)が感じられるよ」
と雨宮先生。
 
「先生を目標にして頑張ってるだけですよ」
と私は言うが
「まあ、実質お互いに刺激しあって切磋琢磨してるんじゃ無い? マリ&ケイが積極的に楽曲を書くようになった頃から、上島の楽曲の方も切れが増したから」
と下川先生が言う。
 
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「あの『ヴァーチャル・クリスマス』を書いた夜がきっかけだよね?」
と上島先生。
「はい。私とマリは『2度目のエチュード』を書いて。私、あの一晩で物凄く鍛えられました」
と私。
「僕もあの晩から、曲の書き方が変わった」
と上島先生。
 
「何かさ。大学生時代に高岡とふたりで議論しながら曲を書いていた頃のことを思い出したんだよ、その夜」と上島先生。
「ああ、よく何か夜通しやってたね。私はそばでひたすら飲んでたけど」
と雨宮先生。
 
「高岡の詩は突き抜けていたけど、扱いに困るものが多かった。だから僕は曲を付ける時にいつもかなり議論した。これでは歌にならないから、ここは例えばこうしてくれないかとか。でも高岡は自分の意見を曲げない。徹夜で話しても妥協しない」
「あんまりふたりが熱くなってるからさあ、それで私が色々茶々入れてたんだけどね」
 
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「うん。雨宮が入ってくれたおかげで、高岡も何とか少し折れてくれてね。じゃ、この歌詞は2番に持って行って1番はこうしようとか」
「やってた、やってた」
 
「凄いですね。そうやってワンティスの曲を作っておられたんですね」
とマキが感心したように言う。
 
すると上島先生と雨宮先生が顔を見合わせた。
 

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「あのこと、知ってるのはここにいるメンツでは誰?」と雨宮先生。
「僕たち3人と、ケイちゃんだけかな」
 
「何ですか?」と美智子。
「今からしゃべることは、オフレコにして欲しい。というか、むしろ忘れて欲しい」と上島先生が言う。
 
「了解です」
と美智子もタカも言う。
 
「高岡が詩を書いていたのはアマチュア時代と、ワンティスがデビューして最初の数ヶ月までなんだよ。後は実は、僕や下川、雨宮、それに水上とかでも分担して書いていたんだけど、大半は実は高岡の婚約者の夕香さんが書いていたんだ」
「えー!?」
 
「高岡はデリケートな性格で、結局プロとして活動していくプレッシャーに耐えられなかったんだ。それで詩が書けなくなってしまった。高岡と夕香さんは元々詩のサークルで知り合った関係でね。夕香さんの方もすごく優秀な詩を書いていたんだ」
「ああ」
 
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「夕香さんの詩もやはり天才的だけど、高岡に比べれば非凡さが少なかった。でもすごく歌にしやすかったし、ヒットが狙える詩だった。そういう意味で夕香さんは凄かったと思う。ワンティスがヒット曲をたくさん出したのは、やはり夕香さんのおかげだよ」
 
「そんなことになっていたとは・・・・」
とタカが絶句する。
 
「マリちゃんの詩って高岡を思わせるところがあるね。僕ならとても曲を付けきれないと思うものがある。だけどケイちゃんはその扱いにくい詩にうまくマッチした曲を付けちゃう。そこがケイちゃんの凄い所だと僕は思う」
 
「ああ。それは何か似たことを★★レコードの氷川さんにも言われたね」
と政子。
「青葉にも言われたけどね」
 
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「夕香さんの詩と傾向が似てるのはKARIONのいづみちゃんの詩だね。とても扱いやすそうに見える。でも普通の人ならそういう扱いやすい詩にはそのまま素直な曲を付けてしまう。それではヒットしない。僕はだから、夕香さんの詩には普通じゃない曲を付けていた。なんかそういう曲の付け方がKARIONの水沢歌月にも感じられてね。僕は実は水沢歌月にも一目置いている。あの人、KARION以外には曲を提供しないのかな?凄く才能ありそうなのに」
と上島先生は続けた。
 
「水沢歌月は、いづみちゃんの中学の時の友人で、今は大学生だとチラっと聞いた気がします」
とヤス。
 
ヤスさん凄い!と私は思った。その話は和泉が1度だけ秋田のローカル局でしゃべったことがあるだけなのである。
 
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「学業の方で忙しいんでしょうかねぇ」
と美智子。
 
その時、雨宮先生が私の方をチラッと見たのが少し気になった。
 

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「しかし、それ夕香さんが書いた曲の印税はどういう形になってるんですか?」
と美智子が質問する。
 
「実際には夕香さんが書いていたんだけど、事務所の方針で高岡の作詞として発表されていた。高岡が書いたことにしないと売れないからと言われて。だからワンティスの曲の作詞印税は、今でも高岡の遺族に支払われている」
「夕香さんの遺族には?」
 
上島先生と雨宮先生が顔を見合わせる。
 
「行ってない。夕香さんはどうせ高岡と結婚するんだから、どちらが作詞印税を受け取っても同じ事と思っていたみたいで。ところがふたりは籍を入れる前に死んでしまった」
 
「それはちょっと問題では?」
 
「それで、上島は自分が受け取ったワンティスの曲の作曲印税全額を、ずっと夕香さんの妹の支香さんに渡していたんだよ。この9年間」
と雨宮先生。
「なんと」
「最初は半額渡していた。でもこちらに資金的な余裕ができた時点で遡って全額渡すようにした」と上島先生。
 
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「有名シンガーソングライターに実はゴーストライターが付いているというのは良くある話ではありますが、なんかこの件はもやもや感が残りますね」
と美智子が言った。美智子がこんな言い方をするのは珍しい。
 
「実はその件に関わっていた当時の事務所の社長が年末に亡くなったのよね」
「ああ、ニュースで見ました」
 
「それもあって、こないだから、雷ちゃんとはこの件で何度か話してたんだけどね。一度高岡の遺族とも話したいという方向になってきてるんだよね」
「それがいいと思います」
 
「でも雷ちゃんが、どんなに忙しくてもゴーストライターを使わないのは、そのせいもあるのよ。もしゴースト使って作った曲が大ヒットしたりしたら、感情的に嫌でしょ?お互いに」
と雨宮先生が言った。
 
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「そんなことがあったんですか・・・」
と珍しくマキが発言した。
 
「でもマキちゃんのこないだの曲、メルティングポット。結構いい曲ね」
と雨宮先生。
「ありがとうございます」
 
「ケイちゃんのアレンジが、うまく魅力を引き出している。ケイちゃんって作曲でもそうだけど、自分のカラーに染めてしまわずに、元の詩の魅力を生かす作曲、元の曲の魅力を生かす編曲をするよね」
 
「ああ、透明なクリエイターだってのは言われたことあります」
「透明というよりは、顕微鏡か望遠鏡みたいなクリエイターだよね。他の人どころか本人も気付かないような魅力をちゃんと見つけて、それを生かすから」
と雨宮先生。
「今日は何だか褒められすぎる」
 
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「褒めちぎってベッドに連れ込みたい所だけどね」
「ケイは渡しません」と政子。
「なんなら2人一緒にでもいいけど。3Pでも楽しませてあげるわよ」
などと雨宮先生は言うが上島先生が
「雨宮」
と言ってたしなめる。
 
私とマリは高校生時代に上島先生から「ベッドに来ない?」などと言われたこともあったが、今日は上島先生の方が止め係のようだ。
 

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「ローズクォーツ・プレイズの方は次は何やるの?」と雨宮先生。
「GSをやろうかと思うのですが」とタカ。
 
「GSって、ガールズサウンド?」と雨宮先生が言うが
「いえ。グループサウンズです」とタカは訂正する。
 
「グループサウンズ〜? そんなのやって売れるの?」
「曲をピックアップするのに、タイガースとかワイルトワンズとか、浦中部長とかにも尋ねて名前を挙げてもらってCDを聴いてみたのですが、へー、こんな曲を演奏していたのかって、なんかビートも心地よくて。けっこう今の人にも受けるんじゃないかと思うんですけどね」
とタカ。
 
「そんなの買ってくれるのは浦中部長みたいなお年寄りだけだよ」と雨宮先生。
「ちょっー」
「今の発言は無かったことに」と下川先生。
「今、雨宮、50代以上の読者を敵に回したね」と上島先生。
 
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「ガールズサウンドやりなよ。その方が楽しいよ」
「ガールズサウンドというと?」
「女の子バンドの曲をピックアップして演奏するんだよ。あ、ついでに全員女装して演奏しよう」
「えーーー!?」
 
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