広告:ここはグリーン・ウッド (第6巻) (白泉社文庫)
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■夏の日の想い出・3年生の新年(3)

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「ジャケット写真は、全員が女装して演奏している所の写真で決まりね」
「待ってください」
「だって、女装は楽しいよ。ね、ケイちゃん」
「そ、そうですね」
 
と私たちは雨宮先生の勢いに圧倒される。
 
「あの・・・・女装って僕もやるんですか?」
とヤス。
「当然。もうヤスちゃんは、ほとんどローズクォーツのメンバーと同等だもん。一緒に女装しよう。あ、お化粧、私がしてあげてもいいよ」
「ひょっとして、それって、ジャケ写取る時だけじゃなくて、音源制作中も女装するんでしょうか?」
とサトが訊く。
 
「もちろん。だって女の子バンドの曲を演奏するんだもん。こちらもちゃんと女の子の意識になって演奏しなくちゃ。音源制作している間は24時間ずっと女の子の服を着ているようにしよう。家とスタジオの間を往復する時も女装してなきゃだめだよ」
「えーーーーーーー!!??」
 
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「トイレも女子トイレ使ってね」
「それは逮捕されます」
 
「なんなら、私が選曲してあげようか? 今までのプレイズ・シリーズ見てるとさ、何か自分たちが弾きたいって曲を弾いてるでしょ? それじゃダメだよ。ちゃんと売れる曲を選ばなくちゃ」
「えーっと」
 
「ついでに私が編曲もしてあげようか? ケイが編曲してもいいだろうけど、ケイが編曲してると、またローズ+リリーとローズクォーツの路線が混乱する問題になるからさ」
「雨宮先生が編曲してくださるんですか!?」
とタカが驚いている。
 
「あの・・・・先生の編曲料はおいくらくらいでしょうか?」
とおそるおそる美智子が訊く。
 
「ん? 私は1曲100万円取るよ。音源制作の立ち会い込みね。録音の際の指導料とミクシングまで。アルバムならマスタリングまでサービス。私はシモやんみたいに1曲3万で編曲しただけで放置、みたいな仕事は、しないから」
 
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下川先生が笑っている。
 
「1曲100万なら、12曲で1200万円ですか?」
「まあ、そうなるね。実質プロデュース料込みだね」
「すみません。予算が足りません」と美智子。
「じゃ、予算増やせばいい」
「そうすると赤字になるので」
 
「仕方無いなあ。じゃ12曲まとめて400万で勘弁してあげる」と雨宮先生。
「編曲の予算が40万くらいしか取れないのですが・・・・」
「それはさすがに話にならん」
 
「1200万出しましょうか」と私は言った。
「いいよね?マリ」
「うん。雨宮先生がどんな味付けをするのか見てみたい」
 
「それで少しアレンジの勉強をさせてください。ね、ヤスちゃん、雨宮先生が編曲、制作指示なさる現場を見せていただいて、私と一緒にアレンジの勉強しない?」
「ああ・・・それはちょっと僕も興味ある」
 
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実は先日、私と美智子で「ローズクォーツにはアレンジャーがいない」という話をしていて、一度ヤスに編曲をさせてみたいね、という話になっていたのである。この件は他のメンバーも了承済みである。
 
「勉強させてというなら1500万出して」
「了解です。出します」
 
ということで、次の「Rose Quarts Plays Girls Sound」では、雨宮先生が編曲・プロデュースをし、版権もUTP中心のローズクォーツの音源制作のフレームではなく、サマーガールズ出版が中心になるローズ+リリーのフレームに準じて処理されることになった。しかし1500万円の編曲・プロデュース料を払うなら20万枚くらい売らないと赤字になる! このシリーズ、これまでは1万枚程度しか売れてないのに。
 
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もっともこの件では、みんな「女装して音源制作」ということの方が気になって仕方無い感じであった!!
 

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翌17日は私たちは美智子と一緒にマンションで待機しておいて、そこに多数の歌手・ユニットの人たちが新年の挨拶に訪問してきた。
 
SPS, ELFILIES, 富士宮ノエル, 坂井真紅, 山村星歌, 小野寺イルザ といった面々である。そして最後に来たのが花村唯香であった。
 
「新年明けましておめでとうございます」
と言う花村唯香はきれいな振袖を着ていた。
「唯香ちゃん、成人式おめでとう」
「ありがとうございます」
 
「その振袖で成人式に出たの?」
「ええ。ちょっと嬉しかった。2年くらいまでは、私も成人式は振袖で出たいなあ。。。でも出られるかなあ、なんて迷いがあったから」
 
「だって、唯香ちゃんは女の子だもん。振袖着たいよね」
「はい」
 
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「そして、本当の女の子になっちゃうんだって?」
「ええ。30日に富山の例の病院で手術してもらいます」
「国内ってのが安心だよね」
「ええ。あの先生、ちょっと変わってるけど、腕は確かみたいだし」
「そうそう。凄い変人だよね」
 
と私たちは松井先生の噂話をする。
 
「私のおちんちんいじりながら、ね、今すぐ切っちゃわない?手術予定ねじこむよ、なんて言われました」
「気に入った患者さんには、それ言うみたい、あの先生」
「なんか、おちんちんを切るのが楽しくて楽しくて仕方無いみたいです」
「うん。元々外科の先生は人間の身体を切るのが大好きな先生、多いけどね」
 
「手術の日取りが決まった時も、この日、君は女の子になれるよ。邪魔なおちんちんから解放されて、可愛い女の子になれるんだよ、お嫁さんにもなれるよ、って何だか自分が女の子になるかのように、嬉しそうに話してました」
 
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「可愛い男の子を見たら、おちんちん切って女の子にしてあげたいとつい思っちゃう、なんて言ってたこともあるよ」
「外科医になってなかったら、性犯罪者になってそう」
「おちんちん切り魔って、過去にも何度か出没したことあるしね」
 

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18日金曜日。大学の授業が終わってから事務所に出て行くと、美智子が疲れたような顔をしていた。
「どうしたの?」
と訊いたら、私より1時間半早くインしていた政子が代わって
「ワランダーズ空中分解」
と言う。
 
「ありゃ」
 
ワランダーズは2011年の夏にメジャーデビューした4人組のバンドで、UTPとしてはローズクォーツに続く2つめのメジャー・アーティストだったのだが・・・これまで出した5枚のミニアルバムはいづれも数百枚しか売れていない。最も売れたものでも1200枚である。当然大した報酬も支払われていない。
 
「4人には給料形式で毎月12万払ってきたんだけど、生活が苦しいので給料をあげてもらえないかという打診はあったものの、今のセールスでは上げられないと言ってたのよね」
と美智子。
「まあ、仕方無いですね。500枚売れても売上額は50万。演奏印税は4500円。4人で分けると1125円ですから」
「それで**君は今の状況なら、むしろインディーズに行きたいと言って」
 
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「インディーズなら自分たちで全部もらえますからね。でも500枚売れないです。普通せいぜい20-30枚の世界ですよ」
「それで**君とかは、まだもう少しメジャーで頑張りたいと言って」
 
「それで分裂ですか?」
「一方**君はそろそろ音楽活動に見切りを付けてふつうの会社勤めをしようかと思っていたと言い出して。彼、結婚を考えている彼女がいるから、今の収入では結婚出来ないと悩んでたみたいで」
「それなら仕方無いですね。そもそもいつ見切りを付けるかは難しい問題です」
 
「で、**君は音楽系の大学に入り直して、自分の技術を鍛え直したいと思っていたと言い出して」
 
「完全に4人バラバラですか!」
「そういうこと」
 
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「じゃメジャーに残りたいと言っていた**君は?」
「ワランダースとして全然実績を残してないから、すぐにメジャーは無理」
「ああ」
 
「ということで3人はUTPとの契約解消。**君は一応契約は残るけど、今までの給料は払えないと言っている。本人は仕方無いですねということで納得してもらった。多分少し落ち着いた所で新たな名前でバンドメンバーを募集することになると思う」
 
「まあ、たくさんアーティストが出てきて、そしてたくさん消えていくのがこの世界だから」と私は言う。
 
「うん。私もそれをたくさん見てきたよ」
と美智子。
 
「毎年メジャーデビューする歌手・ユニットが200〜300組あるけど、1年後まで生き残るのはその1割。ワランダースは1年半持ったんだから、その1割の内に入る。完全な失敗とは言えないよ」
 
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「まあ、成功したとも言えないけどね。私自身もメジャーで2枚CDを出したけど、全然売れなかったからなあ」
「でも、仕掛け人としては、ビリーブ、エピメタリズム、そしてローズ+リリー、ローズクォーツ、スターキッズと5発も当てたんだから、凄いです」
 
「まあそうだね。なんか敏腕プロデューサーとか言われたりすることもあるけど」
「敏腕プロデューサーだと思います」
「ふふ。今日はそのお世辞をマジに取っておくかね」
と美智子は疲れた表情のまま少し笑顔を作った。
 

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翌週から、早速『Rose Quarts Plays Girls Sound』の音源制作が始まったのだが・・・・・
 
初日は雨宮先生による、女装指導で終始した!
 
スタジオには行かず、UTPの社内でその作業をする。
 
ローズクォーツの4人の男性は、全員ヒゲを抜くことを要求され、毛抜きでヒーヒー言いながら抜く。その悪戦苦闘をした後、足の毛を剃るが、眉毛はみんなうまく処理出来ないので、私と政子で処理してあげた。政子が異様に楽しそうにしていた。
 
そして女物の下着を渡されるものの、そんなものを穿くと、みんな大きくなってしまう。「ダメでしょ、大きくしたら、ちゃんと穿けないじゃない」などと雨宮先生に言われるが、そんなことを言っても健全な男性なら自然な反応である。結局水冷されて小さくなっている間にハードタイプのガードルを穿かされ、またまた悲鳴をあげていた。
 
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スカートを穿かされるが、そんなもの穿いたことない人ばかりなので転ぶ転ぶ。そこで「足の運び方」の指導がなされる。
 
最後はお化粧になったが、これは教えたって短期間にまともにはならないだろうということで、これも私と政子で分担してメイクしてあげた。最後にロングヘアのウィッグを付けて出来上がりである。小柄なタカ以外はみんな頭が大きいので通常の女性用のウィッグをつけようとすると留め金がとてもはまらず、輪ゴムを使って留めた。
 
朝から始めたものの、ここまで完成したのが結局お昼過ぎで、その後も女性的な仕草とか、女性的な声の出し方とかの練習までやらされるが、さすがに半日やそこらで女性的な声が出るようになるわけがない。
 
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結局、夕方「明日はこの格好で出てきてね」と言われ換えの下着を渡されて解散となる。
 
「あのぉ・・・これ、この格好で家に帰らないといけないんですか?」
とヤスが情け無さそうな顔で訊く。
「もちろん。ずっと女の格好をしててね。男装に戻ったらダメよ」
 
「娘が自分を見て泣かないか心配です」とヤス。
「お仕事なんだから理解してもらおう」
 
「俺、女装にハマってしまったらどうしよう・・・」とタカ。
「ケイちゃんに性転換手術してくれる病院を紹介してもらいなよ」
 
この日、大柄なサトは帰る途中の駅で警官に職務質問されたらしい!
 

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夏の日の想い出・3年生の新年(3)

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